「本当にバカだよね」
はぁ〜とため息をついて横へ座った。
「馬鹿?」
「うん。幸村様って本当にバカ。それも重度の」
くのいちは「はぁ〜」と二回目のため息をついてから彼の体を見る。
うん。これが「バカ」って言われる原因。
床から起き上がった幸村様はゆったりとした着物を着ている。
ただ、何時もと違うのは着物の下が肩から腹にかけて上半身が
まるまる包帯で巻かれているって事。
単独で乗りこんできた半蔵にコテンパンにやられたのだ。
「こんなにやられちゃってさ〜!武士なのにー!」
「だいたいさ!あんなヘボ忍者に負けちゃうなんて!キー!信じられない!」
くのいちは両手をぶんぶん降り回して怒る。
幸村様があんな根暗忍者にやられちゃうのは悔しい。
今すぐ報復に行ってやる!なんて大声をだしたら
「駄目だ」
主君からのストップ。
「にゃは〜。ケチ」
でも、雇い主様には逆らえないので、ぺろっと舌を出して抗議をしてみた。
「代えてくれないか?」
幸村様は上半身だけ着物を脱ぐ。
無色の着物が逞しい褐色の肌へ変わった。
「うん」
幸村様の後ろに回る。見なれた大きな背中。
背中の中心で頑張っている結び目を解く。
パラっと音がして布が手へ落ちた。まだ白い布。
戦いの傷口を覆う布ありがたい布だ。
でもそれが段々と赤く変わる時が嫌だ。
痛々しい傷後をいち早くを想像させるから。
「……」
手の中でするすると形を変えていく白い布。
ーあ、ここからだ…
白い布は前置きも無く真っ赤になってた。
「すまないな」
「……」
「そなたには心配ばかりかけているな」
「……そんな事、ないけれど」
お仕事だからね。と言いそうになったけど止めた。
するする、するすると。
赤い布が解けていく。
やがて、赤い布も全部消えて幸村様の大きな背中が見えた。
日焼けした逞しい背中。着やせするタイプなんだな〜と関心しちゃう。
でもその背中には大きな傷がついている。
「本当にバカだよね…こんな所に傷作っちゃうなんて。もしさ、
半蔵の鎌に 毒が塗られてたら……どうすんの?」
「毒なんて塗ってあるのか?」
「忍びは暗殺もやるんだよ!、一撃で仕留めなきゃ意味ないじゃん!」
当たり前よ!と言った後
当たり前の事に気がつかない幸村様にまた、「バカ」と呟いた。
「そうか……気をつけないとな」
バカバカ言われっぱなしの性か幸村さまは俯いた。
まあ、何時もの事を気にするくのいちではないが。
「そーなんです!ボケボケした幸村様は何かと危ない目に会います!
この傷跡が何よりの証拠でぇーす!」
にゃははん!と笑うと幸村様も笑った。
「そなたの忠告、ありがたく頂いておく」
「うん……」
その背中が何か言いたそうで、でもくのいちは聞きたくないから
傷口にそっと触れた。
「どうした?」
「バカだよ」
「すまないな…今度から注意しよう」
「そうじゃないよ!バカ!」
――本当に何も解ってない。
くのいちは込上げる怒りを必死に押し殺す。
「幸村様って、本当にバカだよ―――。もう解ってるんでしょ?豊臣は…」
「言うな!」
「えっ……!」
逆に怒鳴られちゃうだなんて予想してないから、くのいちは驚いた。
「あ…うん……」
「……」
「うん……」
「にゃはーん!熱いねぇ!男だよ!」
パンパンと手を叩いてはしゃいで見せる。
「幸村様ったら!そう言うと思ったもん!
ジョークだよ!ジョーク!幸村様の漢度を試すためのジョーク!にゃはは!」
無理な明るい嘘は
幸村様に、自分に言い聞かせる様だった。
にゃははん!と笑いながら背中をバシバシ叩く。
「にゃはん、感服でゴザイマス!やっぱり、もののふ――――」
「すまない――」
一瞬、虚空に浮いた後、ふわっと、大きな腕で包み込まれる。
「幸村…さま……」
「すまない……」
搾り出す様な声。
「何よ……」
「何なのよ……」
心配かけて、怒鳴って、抱きしめて、
こんなの反則だ。
本当に反則だよ。
どちらが先に一線を越えたのか?
気がつけば関係を持っていた。
背中に腕を回し唇を重ねる。
頬に当てられた手が暖かくて、ええと……なんだったけ?
そうだ!恋愛物語のヒロインだ!
くのいちは昔、気紛れで読んだ物語の彼女を思い出した。
彼女もこんな感じだったのかな〜と考えていると
幸村様の舌がくのいちの下唇にチョンチョンと当たった。
それが合図って事でゆっくりと口を開く。
「ん――!」
と、同時に舌が勢いよく入りこむ。咥内で待機中の舌を舌と絡ませ、吸いあう。
咆哮に似た淫猥な音は部屋中から聞こえる様だった。
「あーーにゃはぁん」
やっと開放された唇からは甘い声が漏れた。
「もー!苦しいよ〜!」
「ん……すまない」
激しい愛撫は鎖骨へと移動する。
「あんっ!にゃはぁ……!くすぐったい〜」
クスクスと笑うくのいちを見て幸村様は
胸元に手を伸ばした。二つの蕾は刺激を受け薄布を盛り上げている。
敏感になっている乳頭を片指で擦ってみた。
「きゃはぁ!やぁん!」
乳頭から走る電撃に体をびくびくと痙攣させて仰け反る。
「感じるか?」
くにくにと勃起した先端を弄繰り回と
くのいちは絶え間無く与えられる快感に体をくねらせて悶える。
「あぁ!やぁん!駄目ぇ」
その度に漏れる甘い声。今度は服の上から甘噛してみる。
「はっ!ひゃん――!ヤダヤダー!助平ェ」
これは効いたのか、じたじたと腕の中で暴れる。
「そなたはこれが好きだろう」
耳元でウィークポイントを囁かれたら真っ赤になるしかない。
「あぁん、違うもん。バカバカ!」
あーもう!コレでは真田ペースだ。
ここで何とかしないと、終わりまで幸村様のいい様にされる。
己の危機を感じたくのいちは最後の手段に出た。
「にゃは〜ん、見てろ〜見てろ〜!」
当然、狙うは真田丸。
幸村さまの厚い胸板に置かれていた腕を移動させる。
「うーんしょ!」
くのいちの細腕が伸びた。後少し!後少しで天守閣!にゃはん!
―――が!
逆転を許さない真田丸……じゃなくて幸村様によって、
ひょいっと体を持ち上げられ、倒された。
「あー――酷いよ―!ずるい!」
「ずるい?何がだ」
形勢逆転ならず。こうなったら最後まで幸村様のペースだ。
悔しい事に幸村様は「何がずるいんだ?」って顔している。
「にゃはんチクショー!!」と言う暇も無く服を剥ぎ取れる。
剥き出しになった秘部にスースーと風を感じる。
幸村様の太い指が薄い草原を掻き分け入り口をなぞった。
「あっ!あぅ」
肉ヒダを十分に掻き分け狭い入り口に侵入を試みる。
何度も愛したそこはぐっしょりと濡れ、太指の進入を歓迎した。
「あっ―――!あん!指、太いよぅ!」
ジュプジュプと音をたて、進入する指の快楽。
親指をたて、肉芽を刺激すると膣内がキューっと締まる。
「はぁん!あふぅ、そんなに攻めちゃ……駄目ぇ」
普段とは違う表情。毎回思うのだが、可愛いらしいと思う。
頬にキスをすると、くのいちは嬉しそうに微笑んだ。
「にゃは……くすぐったい」
「あっああ――――!」
十分の濡れそぼった箇所へ陰茎を突き刺す。
少女のそこは十分な程、陰茎を飲みこみ卑猥な音をたてた。
「あっ!にゃはぁ!!」
激しい責めに、両手が布団を離した。
行き場の無い両腕は虚空に伸ばす。
「捕まってろ」
柔らかい手を背中に誘導させると一気に貫いた。
「はっ―――ひゃあ!」
背中に食い込む細い爪。くのいちの気紛れか偶然か、
あるいは……?
食い込んだ場所は傷口を離れていた。
「くっ……」
容赦無い絞めつけに声が漏れた。
更に彼女を貪ろうと、腰を抑えつけてた手を乳房へ移す。
未発達な乳房をふにふにと揉み解し、真っ赤に腫れた乳首を指先で弄んだ。
「やぁん!おっぱいは駄目ぇ!」
「そんなに感じるのか…?」
駄目と言われれば余計やりたくなる。
今は理性がまともに機能しないから尚更だ。
膣内への攻めを行いながら乳房を上下へと揉み解す。
「ああ!すご……すごいよぉ!」
「名前……」
突然、幸村様が口を開いた。
「え?」
「呼んで欲しい……」
くのいちは戸惑った。
理由は簡単。初めてそんな事を言われたから。
真っ直ぐな瞳。幸村様は何を思っているんだろう?
「幸村さま……」
小さな声で呼んでみる。すると、幸村様はふっと笑った。
「幸村さまって笑うと可愛いね」
「む……複雑だな」
クスクスと笑いあう。笑った弾みで頭がぶつかった。
コツンと小さな音。それだけで嬉しくなった。
「幸村さま…」
「なんだ?」
くのいちは真っ直ぐ幸村の顔を見る。
「アタシ、ずっと幸村さまの事守るね」
「そなたが?」
幸村様はちょっと驚いた顔をしたがすぐに真顔に戻った。
「頼りにしている」
「にゃはん。任せて!」
ちゅっと幸村様の頬へキスをする。
そして、二人で快楽へと戻った。
「幸村さま!幸村さまぁ!」
何度も幸村様の名前を呼んだ。
頭が真っ白になるのと、暖かい精を感じたのは同時だった。
「幸村様ケガしてるからね。アタシが何とかしなくちゃ」
何時もの明るい声でトントンと屋根瓦を上る。
「幸村様が死んじゃったら楽しみがへっちゃうし」
「ん〜!家康を倒したらお土産に家康の兜を持って帰ろうかな!
で、お館様のお墓の前でそれ被ってタヌキ踊り。うしし…。笑っちゃう!」
墓の前で踊るくのいち、コラ!っと叱る幸村様。
何時もの光景だけれども、想像してたらおもいっきり楽しくなってきた。
「さぁて、最後のお仕事!頑張りましょ!」
目指すは家康の首。最後の仕事が始まった。
「幸村さま〜ねぇ〜幸村さまぁ〜」
幸村様はぐっすりと寝ている。
早起きな幸村さまにしては珍しい。昨日は徹夜で軍議だったのかな?と首を傾げた。
「起きてよ〜!可愛い部下のお帰りだぞ〜!」
早起きは『三文の得…って真田は六文か!にゃはん!』
なんて言いながらツンツンと腹を蹴る。
「ねぇ〜、寝たふりでしょ〜!」
ここまでして起きないなんて、絶対に寝たふりだ。
ばーって飛びあがって驚かすツモリ。お茶目さんめ。
「ねぇって、ねえってばー!」
「起きろ〜!起きろ〜!」
「幸村さま〜真田さま〜」
「あ―――!もう!バカ!バカ!大バカー!」
何度も揺する。
何度も叩く。
でも意地悪な幸村様は全然起きない。
「もーーー!いいよ!バカー!」
ついに根負けしたくのいち。ピョンっと軽く飛んだ。
ピョン、ピョン。
何度か飛ぶ。
その場を離れる様に。
「バカ。バカ。本当にバカ」
何度も飛ぶ。幸村様から離れる様に。
「バカバカバカバカ―――」
心の中で何回も、何百回もバカって言った。
―バカバカバーカ。
―バカバカバーカ!
―本当にバカみたい!
やがて、足が止まった。
「アタシ……バカみたい……」
もう降り返っても誰もいない。
そう思った。