三方ヶ原の戦いは真田幸村、くのいちらの奮戦により一応の勝利を得た。しかしその代償は
余りにも大きく、そして衝撃的であった。
信玄を失った武田軍は急ぎ本拠地、甲斐の地に戻り今後の対応策を弄する事となった。
(お館様。あなた様のご遺志はこの真田幸村が必ず成就させてみせますぞ)
明り一つない寝室。忠臣、真田幸村は天井を睨めつつ、そう誓った。
――気配。
「誰だ!?」
咄嗟に枕元の刀に手をのばし、叫んだ。
(まさかお館さまを殺った忍か?おもしろい。お館様の仇、今ここで果たしてみせようぞ!)
近づいてくる影。しかしその影は小柄で何処かで見たような風貌をしていた。
「にゃは。アタシだよ〜。どしたの?幸村様。すごい恐い顔してるよん」
「なんだ。そなたか。あまり驚かせないでくれ」
幸村は手に持った白刃を鞘に収めつつ、怒りを隠さずに言った。
見れば、普段の忍装束ではなく若草色に染め抜かれた浴衣を着たくのいちであった。
正直、可愛らしいと思う。――こんな状況でなかったならば。
「ひどいよ。幸村様。こんなケナゲな女の子が傷心の上司を心配して慰めに来たっていうのにさあ〜」
うるうるとくのいちは目を潤ませながら幸村に迫った。
「ああ、す、すまない。てっきり徳川の忍かと思ったのだ」
一転、あたふたとご機嫌を伺う姿にくのいちは「にゃはは〜」と妙な笑い声を立てこう言った。
「嘘だよ。う、そ。幸村様ってす〜ぐ騙されちゃうんだもん。でもアタシもまだまだだにゃあ
そ〜っと気付かれないように入って来たのに幸村様に気付かれちゃったもんにゃあ」
「で、こんな夜更けに何の用なのだ?なにかあったのか?」
くのいちの言葉を意識的に無視しつつ幸村は訊ねた。
「無視しないでよぅ。とにかく、夜のお勤めに参った次第でございます。にゃは」
言うが早いかくのいちは幸村の布団に潜り込み丸くなった。
(何もこのような時でもなくとも。こやつにはお館様の存在なぞどうでもよかったのか?)
「すまないが、今宵はそのような気分にはなれぬ。帰ってはくれないか?」
そう言うと幸村は少々の怒りをこめてくのいちを起こそうと肩を掴んだ。
「そなた、泣いておるのか?」
彼女の小さな肩は細かく震え、嗚咽を漏らしてるのが見て取れたのだ。
一瞬、言いすぎたのではないかと思ったが違う。そんな些細な事ではない。
「な、泣いてなんかないよ。ア、アタシはレイコクムヒな忍だよ?涙なんか流すわけ…」
ああ、この少女も辛いのだ。彼女もお館様――武田信玄公を心から慕っていたのだ。
「すまない。私はそなたの気持ちを全然わかっていなかったのだな」
幸村はそっと背中に手を回し、その小さな身体を優しく包み込んだ。
「泣いてもよいのだぞ。そなたも辛かろう。今宵はずっと一緒にいようぞ」
「…うん」
「…ねぇ、幸村様」
「なんだ?」
「お館様ってホントに死んじゃったのかな?なんだか明日になったら『冗談じゃ』なんて言っちゃって
なんにも無かったように笑ってる気がするんだけどぉ」
そんなはずは無い。幸村は確かに信玄の身体から体温が失われていくのを感じたのだ。
――それでも、それでも、どんなにくのいちの言う通りになればよいだろうか。
「そうだよね。そんなことあるわけないよね。何言っちゃってるんだろ、アタシ。ばっかみたい…」
幸村は自分の胸に顔を埋め肩を震わせるくのいちの髪をそっと撫でててやった。
「ねぇ。幸村様…抱いて欲しい…お願い、今夜は一人にしないで…」
静かな声。幸村はそっと頷いた。
ゆっくりと重なり合う唇。どちらともなく舌を絡め合わせ快楽をむさぼる。
「んっ…。気持ちいいにゃあ。幸村様って上手だねぇ」
幸村は苦笑しつつ、片手をくのいちの胸の膨らみへと移動させると掌でそっと包み込み
さわさわと掌を動かす。薄手の着物の上からでも次第に固くなっていく蕾の存在が見て取れた。
「幸村様……気持ちいいよ…んっ・・・」
「そなたのは、本当に感度がよいのだな」
「そ…そんな事…言わないでよぉ…んっ」
くのいちの着物を肩からはずし、露になった蕾をそっと口に含み舌で転がす。
「んっ……んんんっ…やぁん!」
舌で転がす度に面白い様に背中を仰け反らし快感に震える。それが面白くて幸村は舌で転がしてみたり、
甘噛を繰り返した。無論、空いた手でもう片方の膨らみを弄ることは忘れてはいなかったが。
「やぁん!・…も、もうダメェ……幸村様…もう限界だよぅ・…」
幸村は少女の薄い茂みに手を這わせた。そこは存分に潤い、すでに幸村自身を受け入られるのでは
ないかと思わせるほどであった。それでも幸村は優しく、丁寧に愛撫を加えていった。
ぷっくらと膨らんだ肉芽を指でつまんでみる。
「にゃ、にゃは〜ん!幸村様…き…気持ちいいよぉ!」
(一応アタシだってこの手の修練は積んでいる筈なのになぁ。幸村様にやられると我慢できないんだよねぇ
なんでだろ?)
それが幸村に対する深い恋慕の気持ちからくる物だと気付くのはずっと後の事。幸村を永遠に失う事となった後。
そんなくのいちの嬌声に薄く笑みを浮かべながらゆっくりと膣内に指を侵入させていく。
いつも幸村は思う。一方で真田の名にふさわしい死に方を求めつつ、もう一方ではいつまでもこの少女と共にありたいと思う自分。
(どちらも、今の私にとって大切なものだ。今は、今だけはそれでいい…)
ゆっくりと膣内の感触を確かめながらも外に出ている親指で肉芽をぎゅっと押す。指をしめつける感触は
たまらなく気持ち良い。
「幸村様ぁ…もういれてよぅ…もう、もうダメだよ〜」
「あ、ああ、わかった」
するすると帯を解き、既に充血し大きくなっている陰茎を取り出し少女の濡れそぼったところにあて
一気に侵入させていく。結合部から溢れ出る水音は堪らなく淫靡であった。
「お、おっきい…でも…あったかくて…気持ちいいよぉ」
ただ、身体だけでなく心まで満たされる感覚。くのいちはそっと腕を幸村の背中に回した。
「ねェ…幸村様?アタシは気持ちいいよ…幸村様は気持ちいい…?」
「ああ、きもちよいぞ。そなたの中は…あたたかいな」
「嬉しい……もっと気持ちよくさせてあげるね……」
くのいちはそう言うとゆっくりと動き出した。まるで自分のためで無く相手を悦ばせるように。
「あっ…幸村様っ…おっぱいはダメだよ…ずるいよ……気持ち良くなって欲しいのにぃ…」
幸村はもてあましていた掌で再び胸の膨らみをふわふわと包み込んだ。
「私も充分に気持ちよいのだ。ただ、そなたをもっと愛したいのだ」
――大切な人を失ったこの少女を、そして心から愛しいこの少女を。
「いい…いいよぉ……幸村様…幸村様ぁ…」
自分の名を呼び続ける桜色の唇にそっと口付け、幸村も少女の膣内を愉しむようにそして愉しませるように
動き始めた。
「もう…ダメ…いっちゃうよぉ…お願い…幸村様……一緒に、一緒にぃ…」
くのいちは目の前が真っ白になりながら、男の精をお腹いっぱいに感じていた
「にゃは〜。気持ち良かったにゃあ」
布団の上、くのいちは幸村の腕の中にすっぽりと覆われ、胸に頬を摺り寄せ甘い声で囁いた。
はは、と笑う幸村を見てくのいちは一つの疑問を投げかけた。
「ねぇ、幸村様?これから、どうするつもり?」
信玄がいなくなった今、武田家は確実に衰退の道を辿っている。後継者の勝頼も無能では決して無いが
信玄の才覚とは比べ様も無いのだ。
「勿論、お館様の仇を討ち、この命に代えてもご遺志を成就させるつもりだ」
「…だめだよ。死ぬだなんて言わないでよ」
「しかし…私は」
「アタシは幸村様を死なせるために戦ってるんじゃないんだよ!それは十勇士の皆もおんなじ。
幸村様を死なせないため、守るために戦ってるんだよ!…そんな簡単に死ぬって言うなんて酷すぎるよ。
そんなのお館様だって望んでいなかったと思うよ」
先程までの甘い声色とは打って変わって烈火の如くまくしたてるくのいちを見て幸村は自らの愚かさを
知った。――それでも、この生き方だけは譲るわけにはいかない。たとえ、どんなにも愚かでも誇りと共に
生きて、死にたいのだ。
「ありがとう。それでも私はこれ以外の生き方を知らないのだ」
「ほんと、幸村様って馬鹿だよね。ほ、ほんとに…馬鹿なん…だから」
「すまない」
「あやまってもダメだよ…。馬鹿…」
嗚咽を漏らし再び胸に顔を埋めるくのいちを見て、幸村はもう一つの誓いを立てた。
(私は後悔するつもりは無い。それでもその間まではこの少女と共に歩いていこう)、と。
[終]