女だって、待ってばかりじゃつまらない。
「あなた。」
襖を開ければ夫は居らず、側室のところにでも行っているのだろう。と思考する。
こんな夜の過ごし方はたいてい決まっている。
「蘭丸?起きていて?」
何故か蘭丸もいなくて、拍子抜けする。
これからたっぷり、じっくりと虐め抜いてやろうと思っていたのに。
一度火照り始めた身体は制御がきかない。
光秀でもいいのだが、今日は娘ガラシャと親子水入らずで遊びに行っていた。
「…こういうの、不貞妻っていうのかしら?」
苦笑しながら、色っぽく壁にもたれかかる。
思い当たる男はみんな不在で、一人で処理するしかないと思うと少し寂しい気もする。
「でも、お互い様よね。」
ビィドロの中で泳ぎまわる金魚に呟き、ぽいと餌をやる。
(誰か、めちゃくちゃに虐めたい。)
はふう、と熱のこもった溜息を吐いた。
孫市はどうだろうか。連絡先は知っているが(というか勝手に教えられた)
虐めるなら可愛い、または美形と拘りが彼女にはあるので、今の気分には向いていない。けれどあのいつも飄々とした表情を崩せばさぞかし快感だろう。
たまには新しい刺激も必要だわ、といかにも彼女らしい結論に至り、ここに呼び寄せる事にした。
「どうぞ、入って?」
人払いを済ませ、襖から手だけ出して手招く。
ちゅ、と手の甲に接吻を落とされ相変わらずねと笑った。
「お会いできて光栄だ、姫。嬉しいよ、本当に連絡をくれるとは思ってなかった。しかし貴方も大胆だ、城に呼ぶなんて。」
彼は聞き取れる程度の小声で話し、中に入り音を立てずに襖を閉めた。
「あら、平気よ?そんなに警戒しなくても誰も来やしないわ。すっごく機嫌の悪いふりをしたから、怖がって誰も近づかないわ。」
鬼嫁と称されるほど彼女の気性は激しく、一度起こると兵は恐れおののき、翌日まで部屋に近づくものは誰一人としていなかった。
「ところで、此処によんだ訳なのだけれど…そうね、少し、酔狂に付き合って下さらない?」
色香を大いに含んだ声音を発し、胸元を強調するように片腕を押さえ、孫市を上目遣いで見やる。
彼はぐっ、と思わず唾を飲み込んだ。
「喜んで。」
そのまま床に押し倒そうとした彼を一寸待って、と制御する。
「するのは私。貴方は言うとおりにして?虐めてみたいの。」
そう言いながら、手際よく彼の上半身の服を剥いでいき、上に跨った。
俺にそっちの気は無いと多少困惑するも、相変わらず表情は崩れない。
「あはは、お手柔らかに頼むぜ?」
「無理ね。半端なのは嫌いなの。」
笑顔で言い放つ彼女は、怖いほど妖艶で冷徹に彼の眼に映る。
噛み付くように唇を奪い、胸板に手を這わせ彼女の酔狂は始まった。
「っ、は…凄いな。」
彼女の腰に腕をまわし、尻を撫で太腿に指を忍び込ませればぴしゃり、とその手を叩かれた。
「誰も触れて良いなんて言ってなくてよ?」
そう諭しながら、わざと乳房を押し付け、首筋、鎖骨へと唇を滑らせ、胸の突起に吸いつく。
「ん…ちゅう…ちゅぱ…」
腹の辺りを撫でまわし、時々指先でつ…と撫で上げる。
ぞくり、背中が粟立つ感触が彼を包んだ。
「うふふ、逞しい身体してるのねぇ…腹筋が硬いわ。」
耳元で吐息混じりに呟き、食む。
一点に熱が集中するのを感じ、次第に膨張していく。
「それはどうも。貴女も綺麗な身体だ。」
仕返しとばかりに唇が触れるように耳元で囁いた。
耳を押さえ勢いよく離れたが、直ぐにもとの表情に戻る。
「あらあら、こっちも硬いわよ?虐められて感じちゃったのかしら?」
服の上から触れ、輪郭をなぞる。
「貴女を、どう攻めて、啼かせてやろうか考えてた。」
意地悪な笑みを浮かべ、彼女の顎を掴んだ。
「ふん、随分と余裕な態度じゃない。いいわよ、色男さん?好きなだけ触りなさいよ。その代り、他の女なんかじゃ満足できなくしてあげるから…!」
面白い、と純粋にそう思った。
従順忠実な男も楽しいけれどこういう、余裕綽々な男も楽しい。
この女たらしを、自分しか考えられないように調教してあげる。
「ふふ、立派ね。虐めがいがあるわ…」
かなりの質量を持つそれにくちづけ、先端を、双球を揉みながら銜える。
小刻みに舌を動かし豊かな乳房で挟んだ。
彼はといえば、彼女の尻から首筋までを早さに緩急をつけながら撫でた。
空いたもう片方の指で耳たぶを弄り、淵に爪をたててなぞる。
僅かに腰が揺れるのを見逃さず、自身から彼女の顔を剥がす。
そのまま抱き抱えて、自分の顔に彼女の秘部が晒される体勢にさせた。
「濡れてる。」
指で拡げれば、雌の香りが立ち昇り大きめの陰核が現れる。
直接触れることはせず、周りの膨らみを撫で、時々陰核を掠める程度に留めた。
「ん…!ふぁ…」
深く浅く銜えながら、もどかしさに脚をもじもじと動かし落ち着かない。
刺激を求めひくつく秘部につぷ、と指が挿入されるも第一関節の辺りで引き抜かれる。
「ぷはっ、す、するならして。半端は嫌い…」
丁寧に裏筋を舐め上げ、本人も無意識に猫撫で声で懇願する。
この男、なかなか夜技には精通しているようで。
喉奥を鳴らして笑い、指先だけを出し入れした。
「ね、ぇ、はやく…」
息を荒げ、腰を揺らし催促する。
それと同時に自らの手で胸を動かし、挟んだモノを圧迫し、擦りあげた。
彼は眉をひそめ、小さく呻く。
目の前の赤い花弁は、いっそう蜜に濡れ、滴っている。
「凄く卑猥で、綺麗だ。」
そう呟けば、指を根元まで挿入し陰核を舐め上げた。
「はぁあんっ!」
ビク、と身体を猫のようにしならせ、はしたない声が漏れる。
ねっとりと始まった愛撫に脚が震え、口内の彼のモノを貪る。
「っく…激しいな」
柔らかく弾力のある胸、温かくからみつく唇の感触に、息が荒ぐ。
「ふ…んぅ…んん!」
陰核を吸い上げられる度、目の前で火花が爆ぜる。
「姫、も…出るっ…」
眉をひそめ、下唇を噛む彼のその言葉に、彼女はとてつもない優越感を感じた。
「いいわ、出して?飲んであげるから。」
ひどく妖艶な声音で言えば、とどめとばかりに顔を動かす。
「ぅあ…く…!」
小さく呻き、口の中に白濁を零した。
広がっていく濃い味に胸が焦がれる。
それを余すことなく飲み込み、ゆっくりと口から離す。
「うふふ、どう?多分、貴方の経験したどれよりも勝る自信があってよ?」
唇を拭いながら、笑む。
「は…あ…そう、だな。最高に良かったよ。」
それに気を良くした彼女は上機嫌で結い上げた髪を解き、羽根の襟飾りを外した。
「さてと。また使えるようにしなきゃねぇ…」
達したばかりで萎えたそれを握ろうとする手を掴み、彼女の着物から帯止めを解いた。
そして痛みがない程度にきつく手首を縛る。
「…何の真似?」
堂々と、静かに問う彼女を見て、にやりと笑った。
「たまには、被虐側になってみないか?」
襟から手を忍ばせ、胸を揉みつつ飾りをつねる。
「んっ…そ、うね…いいかもしれないわ。でも、」
お構いなしという風に、濡れた秘部に手を伸ばす。
「っあ!やっ…ちょっと…」
「ん?何だよ…」
指を出し入れしながら、脚を開かせ陰核に吸いつく。
「ひ、あん!」
身を捩るが縛られていては何もできず、ただ快感に襲われる。
「ま、何でもいいか。」
口付けでもするように、執拗に陰核を愛撫する。
次第に彼のモノは再び硬く膨張していた。
「ん、いあっ、はぁん…」
身動きが出来ない状態でするのも、いいかなと熱でぼんやりとする頭で思考した。
(なんだ、被虐側もなかなかね)
ぬるり、と舌が内部に滑り込む。
ヒダを丁寧に弄られ、腰が痙攣する。
「ああん!」
絶頂に追いやられ、しばし放心するも、直ぐに起き上がり、ふらつきながら彼に跨った。
「さぁ、本番と行きましょう?っ…あ…」
ゆっくり、彼女の中に彼を迎え入れた。
「ふふ、がんばって、ね?あんまり早いといやよ?」
淫らに腰をくねらせながら動き、真っ赤な唇から吐息が漏れる。
「ああ、精々頑張らせてもらうさ。」
下から突き上げを始め、結合部から水音が起こる。
「ゃあっ…あ、あ、んふぅ…」
負けじと彼女も腰を振り、喘ぐ故に開きっぱなしの口の端から涎が垂れていた。
内部を抉るように動くソレは、彼女の敏感な所すべてに当たっていて、髪を振り乱して悶える。
「ああぁあ!そ、こ、は…」
「ん、ここか?」
一層強く突かれ、身体に電流が走ったような感覚がして気が狂いそうになった。
「ひあぁあっ!」
「じゃあ、この方がいいか。」
くす、と笑って身を起こす。
座位に移り、縛った腕の間に入り、密着度が増す。
腰をしっかりと抱き寄せて、先程の強さで抜き差しを繰り返す。
「ん、ああ、あ、たって、ふあぁっ、死にそう…!」
と言いながら、意識的だったのがもはや勝手に腰が動いてしまうようになった彼女は、彼の肩に頭をもたげ、吐息が彼の耳にかかる。
「なぁ、感じるか?」
低く囁けば、彼女の全身の肌が粟立った。
「ん、あ、すごすぎっ…感じ、るわ…とっても…あん、はっ…こんなの久しぶりよ…」
恍惚とした笑顔で返し、口づけた。
二度目の絶頂が近づき、快楽の余り目に涙が溜まる。
自ら腰を激しく打ち付けていく。
「あっ!ああっ!い、くぅ…!あはぁっ…んん、や、いや、ひぅ!やぁあぁああっ!」
背中を仰け反らせ、一層甲高く喘ぐ。
抜き出してぐたり、と倒れ込んだ。
「は…はぁ…はぁっ…はっ…ん……ふー…」
呼吸を落ち着かせ、ちらりと隣を見る。
「あはは、大丈夫か?」
頬笑み、汗で張り付く彼女の髪を直してやる。
「え…え…すごいわ、貴方。」
「どうも。」
「まだ一回しか、果ててないわよね?」
「ん、まぁな。」
「…信じられない。」
床で、そんな卑猥な会話をポンポンと交わす。
「待ってて、もう少ししたら、搾り取ってあげるから。」
「ひゅう、恐いねぇ。じゃあ今はなにもしなくていい。俺に任せて?」
仰向けにさせ、正常位で挿入していく。
「あっ…殺す気?まぁ、乱暴なのも嫌いじゃないわ。」
律動が再び始まり、また甘ったるい声で、彼女が啼く。
「なぁ、時々、会いに来てもいいか?」
「ふふっ…癖にっ…なっちゃったの?私の目論見通り、かしら?あんっ…」
「普通にそうかも、しれないな。」
「ひゃあっん!」
そしてそのまま朝まで、貪り合った。
その後、近頃の濃姫様はしばしば機嫌が悪くなる。と兵の間で噂された。
End.