「あぁ…はぁ、…もう……」  
 
 
 
絶えず与えられる刺激に男は限界が近いことを告げた。  
「我慢しなくていいんだよ……ほらぁ…」  
柔らかな手が包み込み、背中には豊かな膨みが押しつけられる。  
女は首筋に舌を這わせ、耳朶を軽く甘噛みした。  
下からそっと舐め上げ、存分に焦らしてから息をそっとふきかければ、男はびく、と体を震わせる。  
「んく、……んん…」  
「あ…あ、はぁ、あ…あぁ!」  
男は背中を小刻みに震わせ、脹れ上がった剛直を扱く女の手に自らの手を添えた。  
「はぁっ!あぁ、く…あぁっ!」  
 
 
 
女は素早く片方の手で器を作り、濃厚な精を受け止めた。  
先端をニ、三度擦り上げ、一滴残らず搾り取る。  
「はぁ……いっぱい出たねぇ……」  
 
 
 
女の名はねねという。  
 
天下人豊臣秀吉の正室である。  
何故この様なことになったかというと、  
それは数時間に遡る。  
 
 
ある日、侍女を通して自分と話がしたい者がいると聞いたので、ねねは直々に部屋に招いた。  
「ん、秀秋? どうしたんだい急に。」  
相手は小早川秀秋。  
ねねが幼い頃から面倒を見てきた部下の一人である。  
「此度は、このような時間を割いて頂き、誠に有難う御座います。」  
「いいから、いいから、そこに座って。うん、それで何の用?」  
「はい、この度、嫁をもらうことになりました…」  
「へぇ。良かったじゃないかい、秀秋。あたしも嬉しいよ!」  
まるで自らの事のように喜ぶねね。  
「それで…誠に勝手ながらお願いがあるのですが…」  
「ん、何だい?」  
 
 
 
暫くの沈黙。  
ねねが伏目がちの秀秋の眼を捕らえた。  
秀秋は顔を真っ赤にして応える。  
「その、お、おねね様に……じょ、女子の身体を教えてほしいのです…」  
「ん……?」  
「は、恥かしながら、私は女子と…ま、まぐわったことが…ありませぬ。そのまま成ると考えただけで…」  
 
その言葉にねねは愕然とした。  
(ま、まぐわい…?)  
小早川側に帰したとはいえ、元々は養子。  
仮にも母と子の様な関係。  
その様な事が出来る訳がない。  
その上、自分には夫がいる。  
「それはあたしより侍女に頼んだほうがいいんじゃないかい?」  
言語道断であった。  
しかし、秀秋は続ける。  
「そ、その様なことは恥かしくて、とても出来ませぬ……お、おねね様なら、その……」  
「秀秋、下がりなさい。」  
ねねは秀秋の言葉を引裂くように冷たく言い放ち、立上がった。  
「ま、誠に申訳ありませんでした!」  
秀秋は深々と礼をし、くるりと背を向た。  
そのまま少し早歩きで角を曲り、直ぐさま去っていった。  
 
 
 
(少し可哀相だったかねぇ…)  
その夜、ねねの頭は昼の件で一杯だった。  
(女子の身体を教えるねぇ……)  
想像するだけでねねの身体は熱を帯びる。  
触れてもいないのに溢れた蜜が衣に染を作っていた。  
(はぁ…いつからこんなに淫らになったんだい、あたしの身体は……)  
正直、「ご無沙汰」だった。  
夫は今夜も帰ってこないだろう。  
側室の所だろうか、それとも……  
上昇してゆく体温と伴にねねの思考がどんどん曖昧になってゆく。  
 
 
(少しだけ…少しだけ慰めてやろうかね…)  
ねねは早々に秀秋を呼出した。  
 
 
 
数分して部屋の前に人影が現われた。  
「失礼します…」  
ぴしゃり、と襖が開き秀秋が歩み寄る。  
 
 
 
「おねねさま…その…」  
「秀秋、昼のことなんだけど、あの…いいよ…その…ほら、あんまり言わせるんじゃないの!」  
ねねの顔が朱色に染まる。  
「服脱いでこっちおいで…」  
ねねは秀秋を布団に導き、自らは衣をはらり、脱ぎ捨て、豊満な裸体を露にした。  
 
 
 
「ふふ、もう元気だね…」  
 
秀秋の陰茎は痛々しい程に膨張していた。  
赤黒く、天に向かって思い切り反り上がっている。  
秀秋は緊張で硬直し、羞恥に顔を真っ赤に染めた。  
胸の鼓動は聞えてしまうのではないか、という程に高まり、体温を上昇させる。  
「ふふ、そんなに固くならなくてもいいんじゃないかい?」  
ねねは秀秋の頬をそっと擦り、熱を帯びた陰茎に滑らかな指を這わせた。  
「はぁっ!おねね様…」  
「緊張ほぐしてあげる…後ろ向いて…」  
ねねは横になった秀秋に添い寝するようにして、陰茎を優しく擦り始めた。  
耳朶に甘い吐息を吹掛け、片方の手できつく抱き寄せる。  
(こんなに硬くして……ほんとに可愛い子だねぇ…)  
久しく触れた男の剛直。  
無意識のうちにねねの身体に火が灯る。  
(あぁ、お前さま……お前さまがいけないんだよ…?)  
首筋に舌を這わせ、耳朶を甘噛みした。  
耳元に接吻を落し、ゆっくりと吸い上げる。  
そのまま脚を絡め、手の動きを早めてやる。  
 
 
そして、  
 
 
「はぅ、あぁ、あ…おねねさまぁ!」  
 
 
びく、びく、と重い水音を立て、勢いよく放たれた精をねねは手いっぱいに受け止めた。  
ねっとりと手のひらを伝う熱い感覚が、ねねの心を一層高ぶらせる。  
 
 
 
自分の胸の中で苦しげに息をする秀秋にねねは囁いた。  
「その、…触ってみるかい?……」  
手を残惜しげに布で拭き取り、ねねは脚を左右に開いて枕元に腰掛けた。  
「ほら……見て…」  
指で花弁を広げ、誘惑する。  
(あぁ、これが……)  
秀秋は息を呑んだ。  
惜しげもなく広げられた秘所は既に濡れそぼっており、だらしなく涎を垂らしていた。  
甘酸っぱい匂いが鼻腔をくすぐり、秀秋の眼を離さない。  
覗かせた果肉は真っ赤に充血し、奥まで吸込まれそうだった。  
秀秋の荒い鼻息がねねの柔らかな花弁に触れる。  
「ひゃぅっ! …ちょ、ちょっと近過ぎないかい?」  
「あ、も、申訳あり……」  
「もう、いちいち謝らなくていいの!ほら、触ってみて……」  
ねねは手を後ろに回し、腰を突出した。  
 
「し、失礼致します…」  
遠慮がちに秀秋の指がねねの秘所に触れる。  
「んん、そ、そのままなぞってみて……」  
「こう、ですか…?」  
「あ、そう、い…いいよ、そのままゆっくり挿れて……そう、もっと下…あぁ、…そこだよ…」  
秀秋が指を進入させると、ねねは甘い吐息を漏らした。  
ひだが指に絡み付き、溶けてしまうほどに締付ける。  
「ぅんっ、あ…そう、いい、感じ…だ、よ…ん、んっ…」  
(あぁ、温い……蕩けてしまいそうだ…こんなとこに挿れたら、私は……)  
秀秋は中指に加えて人差し指を折曲げ、酷くゆっくりと出し入れを始めた。  
ぬぷり、と卑猥な音を立てながら、ねねは秀秋の指を全て飲込む。  
「ん……んん、んっ!」  
指の付け根まで愛液が纏りつき、秀秋の心を駆立てた。  
(あぁ、おねね様!……)  
急に指の動きが早まり、ねねは不意を突かれたように嬌声を上げた。  
 
「ぁふぅ、ふぁ、んん、あ、あ、…んあぁ!…ああ、いいよっ!もっと、もっと強くぅ!…あぁ、おっぱい苛めてぇ、揉んだり吸ったりしてぇ!」  
秀秋は欲望のままに乳房を揉みしだく。  
ねねの大きな乳房は秀秋の片手には到底収まりきらず、苦しげに形を変えた。  
(あぁっ、柔らかい、…良い、嗚呼、良いっ!)  
秀秋は赤子のように乳首に吸付き、舌で転がす。  
ちゅっ、と水音を立て、張詰めた芽を痛いほどに摘む。  
無我夢中に胸を弄りながらも、下方の手は一層激しくさせ、ねねを絶頂へと導いた。  
「んあっ!おっぱいいいよぅ、…んっ、んっ、んっ……あぁ!」  
(あと少し……あと少しなのに…)  
指の抽送はひたすらに激しくとも、やはり動きは稚拙。  
何とも言えぬもどかしさに、ねねは身震いした。  
(はぁ、お前さま、あたし、もう、我慢出来ないよっ!)  
ねねは秀秋を押し倒し、跨がるようにして秀秋の陰茎を秘所へとあてがう。  
「んはぁっ…秀秋っ!このまま挿れちゃうからよく見ててぇ!」  
ねねは指を咥え、ゆっくりと腰を落としていった。  
 
 
 
「ああ…あっ、おねねさまぁ、はぅ…」  
すぶり、と音を立てて陰茎がねねの中に消えていく。  
 
 
「んん、…秀秋気持ちぃ?」  
目の前で豊かな乳房がふわりと揺れ、水気を帯びた肉同士が擦合う淫蕩な音が部屋中に響き渡る。  
味わったことのない快感が押し寄せ、ねねの甘ったるい声が秀秋の理性を崩壊させた。  
「おねねさまっ!もう駄目です!」  
「へ?……ひゃぅっ!」  
秀秋はねねと繋いだ手を離すと、そのまま後ろへ押し倒した。  
身体を起こし、脚を大きく開く。  
動揺している様子のねねを尻目に、秀秋は力任せに抽送を始めた。  
ねねの両膝を肘で押え、くびれに手を添える。  
「ん、はぁっ!、ん、ん、ん、あっ、あぁ!」  
秀秋は狂った様に腰を打ち付け、荒々しく乳房を揉んだ。  
再び芽を口に含み、舌で存分に味わう。  
そのまま汗ばんだ首に舌を這わせ、最奥を目指して突上げる。  
ねねの腰は浮上り、獣の様に身体を舐め上げる秀秋に背筋を震わせた。  
 
ねねは脚で秀秋に絡み付き、両手いっぱいに抱き寄せる。  
そして秀秋の頭を抱え、押し寄せる快感に身体を解放させた。  
「んっ、ん、ん…あぁっ…あっ、あ、あ、んっ…ひ、で、あっ!あぁっ!」  
ねねは果て、秀秋を包み込んでいた肉壁が一気に収縮する。  
「あぁ、出るっ!…出てしまう、はぁ、…くっ!」  
 
 
 
秀秋は寸前で陰茎を引き抜き、ねねの腹へと精を放った。  
ねねは力なく起上り、はぁはぁと息を切らす秀秋の口を塞ぐ。  
「はぁ……ふふ、順番逆になっちゃったね…」  
色っぽい瞳をそっと瞑り、舌を進入させる。  
ねねは戸惑う秀秋の舌を優しく合せ、口内を味わった。  
秀秋はやり方がよく解らず、ただされるがままの状態で座り込む。ねねは身体を乗出して深く交わると、秀秋の困った様子に笑みを浮かべた。  
ちゅ、と音を立てて唇を離せば名残惜しげに銀色の糸が伝う。  
 
「んっ、…んく……ん、はぁ…これで満足かい…?」  
「おねね様…先程はその……」  
「ほら、いいから、全くさっきから謝ってばっかで本当に情けない子だねぇ…何か頼りないけど、ちゃんとガンバるんだよ。ほら、自信持って!」  
ねねは秀秋の背中をぽんぽん叩く。  
そして、小声で続けた。  
「あと、誰にもバレないように帰るんだよ。」  
「はい……」  
まるで子どもの様に言われ、秀秋は少し落ち込んだが、このような貴重な体験をしたことに十分満足していた。  
深々と礼をし、部屋を出ようとした時ねねに手首を掴まれた。  
そのまま顔が近付く。  
 
 
 
「分からない事があったらいつでも言うんだよ、付合ってあげるから。」  
耳元で囁かれ、頬に口付けされた。  
先程とは違う、唇が触れるだけの口付け。  
ねねの柔らかな唇が頬を掠め、秀秋の心を再び駆立てた。  
 
 
 
「おねねさまっ!」  
 
 
「やっ!あっ、秀秋!やめ、今したばっか、……あぁっ、こらぁ!…んあぁ、はぁっ!んんっ!お、おっぱいらめぇ〜」  
 
月明りに照された二人の影は再び部屋の中へと消えていった。  
 
 
 
終  
 
 

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