「奉仕、とは何じゃ?蘭丸、わらわに教えよ」  
 
 
「奉仕…ですか……?」  
 
 
秋の夜も更け、静まり返った城内にまだ明りの灯った部屋が一つ。  
「奉仕とは……」  
冷えが厳しくなる前に床についた方が良い、と蘭丸は何度も説得したのだが、結局ガラシャとの問答は真夜中まで続いた。  
「奉仕とは、他人につくすこと。つまり、相手を思いやり、気分を良くさせることです。」  
「わかったのじゃ!」  
ガラシャはまだ欠伸一つしていないが、彼女にこれ以上夜更かしさせる訳にはいかず、蘭丸は少々強引にガラシャの手を引いた。  
「今宵はもう寝ましょう。」  
「うぅ………」  
「…………?」  
暫くの沈黙の後、座ったまま俯くガラシャが口を開く。  
「蘭丸、少しそこに立っていてくれぬか?」  
「え?…あ、はい。」  
「そこを動くでない…」  
ガラシャは蘭丸に歩み寄り、手に掛けた袴を勢い良くずりさげた。  
「何っ……!?」  
足元に落ちた衣を膝で踏み、反射的に動いた蘭丸の両手を制す。  
「い、いけません!」  
「静かにするのじゃ!」  
蘭丸を掴んだ手に力が籠る。  
「やはり、少し強引だったか…」  
「ガラシャ殿!何を…」  
「静かにと言っておるのじゃ!侍女が起きてしまうであろう」  
「……………」  
南蛮の髪飾りを外し、蘭丸の手を縛る。  
「奉仕とは、他人を気持ち良くさせることであろう?」  
先程までの和やかな時間は何処へ行ったのか、皆が寝静まった城内でこの部屋だけが怒涛の展開を見せている。  
蘭丸は羞恥心に顔を朱に染め、崩れ墜ちてゆく理性をとどめるのに必死だった。  
何が正しいのか、今自分が取るべき行動は何か、盛んな年頃の彼には未知の状況に対応しきれずにいた。  
 
「気持ち、良く…とはこういうことでは…ありません…」  
蘭丸がやっと絞り出した声はガラシャの怒号によって書消される。  
「嘘をつくでない!侍女は士がこれを好むと言っておったぞ!」  
上昇する体温の中で少しでも油断すれば、魔が差し、思いもしないことを想像してしまう。  
何よりも半裸の自身の目の前に女(おなご)が座っているという事実が蘭丸を更に混乱させた。  
露になったままの陰茎が熱を持ち始める。  
「わらわが子供だからか?蘭丸はわらわが嫌いになったのか…?」  
「そういう訳では……」  
「孫を見返すためじゃ。何事も経験が大事だと言ったのは蘭丸であろう」  
「……………」  
さらり、と出た本来の目的は蘭丸の耳に届いたのだろうか。  
ついにガラシャの指が蘭丸に触れた。  
「うぅ………」  
ガラシャの細い指が先端まで伝っては、根元まで滑り落ちていく。  
蘭丸の陰茎が熱を帯び、肥大するのにその律動は十分過ぎる刺激であった。  
「固くなっておる……蘭丸、良いか?」  
「………はい…」  
規則的な速度で数回繰り返せば、陰茎は赤黒く痛々しい程に膨脹し、まるでガラシャの愛撫を懇願するようにびくびくと波打つ。  
「愛しいものじゃな…」  
ガラシャは蘭丸の陰茎に頬擦りをした。  
乾いた熱が頬越しに伝り、布の擦れる感覚が蘭丸を魅了する。  
艶のある亜麻色の髪に先端が触れる度、蘭丸の身体が揺ぐ。  
「強張るでない……そちは何も考えず、ただ感想を述べれば良いのじゃ…わらわに任せよ」  
ガラシャは両手を根元に添え、鈴口に口付けを落とした。  
薄い唇を開き、亀頭を含んで前後に送る。  
「ん、ん、んん…んっ」  
生暖かい感覚が蘭丸を蕩けさせてゆく。  
寒さのだけのせいではなく背筋が震え、脚に力が入らなくなる。  
「ん、んん…んく」  
舌で転がし、少し奥まで咥え込んでから口を離せば、ガラシャの唇から糸が伝う。  
 
「何か出てきたぞ…此処が良いのじゃな…」  
ガラシャは舌で執拗に裏筋を愛撫した。  
唇で甘噛みし、尖らせた舌先で攻め立てる。  
そして流れ出た半透明の液体を丁寧に吸い上げた。  
「ん、んふ…んんっ……そういえば、侍女が此処も効くと言っておったな…」  
ガラシャは竿を指で持ち上げると、唇を裏筋に押し当てたまま滑らせた。  
そのまま啄むように陰嚢に吸い付き、唇で弄ぶ。  
蘭丸はもう何も考えられず、無意識のうちにただ与えられる快感に身を任せていた。  
「んっ、くっ、ん…んっ」  
程良い唇の圧迫で挟み込み勢い良く吸い上げれば、ぼこっ、と大きな音を立て陰嚢が口内に吸い込まれる。  
唾液をたっぷりと含ませた口内で包み込み、片方の手で優しく揉みしだいた。  
口内では舌が繚乱し、蘭丸を更なる快感の淵へと追いやってゆく。  
「そろそろかのぅ…」  
ガラシャは竿を深く咥え込み、細い指で激しく扱き上げた。  
「んく…んっ、んん!」  
「うあっ!……」  
弱点を強く攻められ、蘭丸は思わず情けない声を出してしまう。  
「辛いか?座っても良いぞ…」  
腰から崩れ落ちた蘭丸をガラシャはさらに攻め立てる。  
蘭丸はもう下を向けなくなっていた。  
下を見ればガラシャが髪を必死に振り乱し、自らの股ぐらに顔を埋めている様がまじまじと見え、それだけで果ててしまいそうになる。  
このままではいずれは果てるのだが、青白い液がこの無垢な瞳を汚すと考えただけで、罪悪感が込上げてくる。  
彼女を汚さずに事を終えるには…  
答えは簡単に出た。  
 
「もう、結構です…」  
そんな言葉が蘭丸の口から零れた。  
「……わらわの奉仕は…不足であったか」  
「いや、そういう訳ではありません…ただ…」  
「ただ、何なのじゃ?」  
そこまで言って蘭丸は黙り込んでしまった。  
彼女を傷つけたくない、しかし何と説明すれば良いのか、ガラシャの純真な心が仇となっていた。  
「あ……すまぬ、蘭丸!」  
「………え?」  
ガラシャは蘭丸を柱に寄掛らせ、膝を持上げた。  
「此処が物欲しげに啼いているのに気付かなかったのじゃ…わらわはやはり不足であった」  
そこは一つの穴。  
「いけません!ガラシャ殿!」  
蘭丸の抵抗も虚しく、ガラシャは菊門を舐め上げた。  
手を縛る髪飾りが音を立て、脚ががくがくと震える。  
小さな舌が周りを這い回り、ついにはぐにぐにと中へ侵入した。  
「あぁ…ぅ…駄目です」  
陰茎に指を絡め、鈴口をそっと広げる。  
竿を擦りながら更に激しく菊門を攻め立てれば蘭丸は呻き声を上げ、先端からは蜜が溢れ出した。  
ガラシャは潤滑液が十分行き渡った所で、再び陰茎に舌を伸ばした。  
竿をねぶり菊門に指を埋めれば、ぷつり、と容易に侵入を許す。  
「うぁ………」  
「良いか、蘭丸…すごく波打っておるぞ…」  
根元から唾液を一滴残らず吸い上げ、陰嚢を愛撫していた手で竿を扱く。  
絹擦れの感触が蘭丸を絶頂へと導いていった。  
ガラシャは深く咥え込み、舌の動きとともに菊門の愛撫をより一層激しくさせる。  
全身の熱が下腹部に集中し、蘭丸は至福の時を迎えた。  
「ああっ……うあああ!」  
「んっ、んっ、んっ、…んく、んんっ!!」  
 
 
 
ガラシャの小さな口に大量の白濁液が注がれる。  
蘭丸の身体が二、三度跳ね、その場に崩れ落ちた。  
 
「んっ、んくっ、んん…んっんっ」  
「うああっ!ガラシャ殿!…もう……」  
射精直後の愛撫は刺激が強過ぎる。  
悲鳴にも似た蘭丸の声とくの字に曲った身体でガラシャはようやく状況を理解した。  
「ん、んっ、ん…んん……?」  
根元まで咥え込んだ陰茎から、ずるり、と口を引抜けば名残惜しげに銀色の糸が伝う。  
「ガラシャ殿……?」  
「けほっ、けほっ、苦いのじゃ……」  
処理の仕方も分からず、生唾とともに一息で飲干してしまったガラシャを止めることも叶わず、蘭丸は罪悪感に酷く苛まれた。  
手を拘束され、事後のガラシャを抱擁することも出来ない。  
ガラシャは唇に付着した精液を手の甲で拭い取ると、手袋を外し、未だ萎えきらぬ陰茎へと手を伸ばした。  
 
 
「蘭丸…これは…あと何回出来るのじゃ?」  
 
 
「何……回……?」  
 
 
その夜は蘭丸にとって眠れぬ夜となった。  
 
 
 
終  
 
 
 

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