「お方様、お戯れなさいますな」
勝家の戸惑った声を無視して、濃姫は彼の右手を自分の胸に押し当てる。
大きく、暖かいが少しがさついた指先が乳房の突起に触れると、濃姫は快感に喉をふるわせた。
「私は嫌?」
「そ、そのようなことは…」
勝家の声が裏返る。この男は武振った無骨な男だが、根は単純であることを濃姫は知っている。
濃姫にのしかかられ、その豊満な体に触れていることで、勝家の一物はとめようも無く隆起している。
「ねえ、私は嫌なのかしら?」
彼の顎をつかみ、唇をむさぼる。硬いひげの感覚がくすぐったい。一瞬勝家は体を離そうとしたが、
濃姫は彼の右手を強く掴んでいる。指先に、自分の乳房を触れさせている。
勝家の指が突起に触れるたび、濃姫は甘い吐息を漏らす。突起はどんどん硬くなっていく。
「ふっ…ぁ、んっ…」
「大殿に見つかれば、お怒りを買いますぞ」
「見つからないわ。今日は側室のところに行ってるもの」
だから、勝家を自室に呼び寄せることが出来た。
人払いをして、訝りながらやってきた勝家を布団の上に押し倒している。
信長は、数多抱える側室や蘭丸の相手で忙しい。一人で寝る濃姫は寂しい夜を過ごすことが多い。
寂しさを紛らわそうと、男を呼び寄せた。でも相手が勝家なのは、理由がある。
「お、お方さま」
聞いたことも無いような情けない声を、織田家筆頭家老は出した。
濃姫が勝家の厚い胸板をまさぐり、舌で彼の乳首を舐めたからだ。
彼の手は既に、濃姫の胸を自らの意思で揉んでいる。もう一方の手は、濃姫の背中にまわされていた。
「ぁ…んっ…上手よ、勝家」
「お方様、なりませぬ。わしは、さ、下がりまする」
「いいの?ここはもう、こんなになってるわ」
勝家の一物に触れ、着物の上からしごき始めると、勝家はびくりと体を震わせた。
熊のような男なのに、その所作が若い女のようで、濃姫はくすりと笑った。
着物を脱がせ、下帯も外して、真赤になって怒張する勝家のものを咥える。
もはや抵抗もしなかった。
勝家のものは大きく、とても濃姫の口だけでは足りない。舌と口膣と、手を使って思い切りしごく。
男の押し殺した声が漏れる。唾液が一物に絡みつき、ぴちゃ、としとやかな水音を立てる。
「お市に咥えられていると思ったら良いわ」
息継ぎの合間にそう囁くと、勝家は一瞬、ぽかんとした顔をした。
何故それを知っているといわんばかりの表情で、与えられている快感も忘れてしまったようだ。
「誰も知らないと思っていたのかしら?」
「わっ、わしは、お市様など…」
「織田家中で知らないものはいないわ。あなたが市に憧れているって。
だけど、お市は浅井へ行ってしまった。可愛そうな勝家」
耳まで赤くなかった勝家の顔が可笑しい。舌の先でちろちろと亀頭を舐めると、
驚きに支配されていた勝家の表情が再び歪む。
それを見て、濃姫はいっそう力を込めて彼の雄をしごく。
「お、おかた…さ…」
「いきたいのかしら?いいわよ」
「くっ…ああっ…!」
勝家が達し、口の中に熱く苦い液体が流れ込む。濃姫はそれを飲み込もうとしたが、
量が多い。唇の端から、わずかに白濁が垂れた。
「お方様、わしを呼んだのは、お市様のことで…?」
達してしまったことに呆然としているらしい勝家が問う。
濃姫は帯を外し、襦袢を脱ぎながらそれを聞いている。
「わしは、わしには恋など似合い申さん。慰めなど不要にござる」
「あなたを慰めるためだけでは無くてよ」
はらり、と着物が床に落ちて、濃姫の白い裸体が闇に浮かんだ。
勝家は慌てて顔を伏せたが、自分のものが再び熱を帯びるのを感じる。
心の中でお市に必死に詫びた。詫びられたところで、お市は困るのだろうけど。
「ねえ…私を慰めてくださらなくて?」
再び濃姫が勝家の上にのしかかる。勝家は抵抗できない。
この熟れた体を前にして、抵抗できる男がいるだろうか。
「あの人は今日も別の女のところよ…私をほったらかしにして。
ねぇ勝家、私を慰めて…?」
勝家の頭を掴み、自分の胸に押し当てる。勝家はその乳房に吸い付き、
硬くなっている突起を舐め、甘がみする。
「ひゃぁ…っん! 勝家、ね、二人で、共犯になりましょ…、あ、はぁっ…」
勝家の太い指が、濃姫の背中から腰にするすると降り、濃姫の秘部に触れる。
既にそこはしっかりと濡れており、指先が愛液に濡れる。
茂みを抜けて陰核に触れると、勝家の頭を掴んでいた濃姫の指に力が入った。
「あっ…ふ、ひぁっ…か、つ、いえっ…」
陰核を指でつまみ、弄りあげる。少し指を動かすたび、濃姫の体は激しく反応し、
弓のように背中をしならせる。もう片方の手で乳房を揉みしだき、乳首を舐めると、
上になっている体を支える濃姫の腕ががくがくと震えた。
「お方様は、わしに逆心者になれと仰せか」
「はぁっ…ん、もう、なってるわ…それに」
ついに腕を支えきれなくなった濃姫が、勝家の体の上に体重を預ける。
濃姫の声は、耳元でやけに大きく響いた。
「ずっと一途な恋をしているなんて…そんな男、私、嫌いじゃないわ」
ついに勝家は、濃姫の体を抱きかかえ、上にのしかかった。
勝家の指は、手のひらまで愛液で濡れている。
指を二本、襞を掻き分けて中に入れると、濃姫は再び体をのけぞらせた。
「あ、あぁ…っ、んっ、もっと、奥、まで…っ」
緩慢な速度で抜き差しをするたびに、濃姫の体はびくびくと震える。
もう一本指を増やし、さらに親指で陰核を責めると、嬌声がさらに甘く大きくなって床に響く。
既に汗をかき始めている濃姫の体が揺れると、肢体がわずかな明かりにきらめいて
いっそういやらしさを増す。彼女の指先は、布団の端を掴んで放さない。
「お方様…」
「おかたさま、じゃ、ないわ…はぁんっ…貴方にとっては、お市、でしょう、勝家」
嬌声のせいで上手く聞き取れない声は、少し悲しい響きを持っている。
勝家は濃姫の耳元で、囁く。
「しからば、わしも今夜、畏れ多くも大殿になり申す」
指先が、濃姫の中のある場所に触れると、濃姫の乱れはいっそう強くなった。
指を引き抜き、熱く屹立した己のものを濃姫の秘部にあてがう。
ひどく熱いそこからは、愛液が汁となって布団に垂れている。
「御免」
ゆっくりと濃姫の中に入る。最奥まで到達し、腰を揺らし始める。
掴んだ濃姫の腰は熱いが、中はもっともっと熱い。
先ほど、濃姫がよろこんだ場所を再び突くと、濃姫の声はさらに大きく、激しくなる。
「い、ああっ、はっ…ぁあん、…ひぁっ!」
濃姫の瞳から涙が零れ落ちる。ずん、ずん、という圧力に殺されそうな気すらする。
勝家は退くことを知らず、激しく責め立て、腰を秘部にぶつけて来る。
秘部から脳天、脚のつま先まで快感が響き渡り、勝家の体重を乗せた突きが濃姫の理性を壊す。
「すごい、奥、まで、入って、来てる…あ、んっ、もっと、お願い…!」
ふと体を持ち上げられて驚くと、勝家が布団の上に座っている。
濃姫はその膝の上に乗せられ、自分の重さで勝家に貫かれる体制となった。
思わず彼にしがみつき、夢中で腰を振る。
負けじと、勝家も突き上げて来る。結合している部分から水音が起こり、
荒い息と嬌声に混じって奇妙な音楽を奏でる。
勝家は腰に当てていた指を再び秘部に寄せ、陰核を弄り始め、水音がいっそう大きくなる。
「や、だめぇ、ぁあっ、壊れちゃ、ふぁっ…!」
勝家のものが自分の体の中を暴れまわり、一番感じる場所を、これでもかと突き上げられる。
陰核からの快感も相まって、勝家の体以外、もう何もわからない。
最初に勝家にのしかかっていた高慢な姫君はもうそこにはいない。
「お方様…いや、お濃」
「駄目、も、いく…いっちゃ、中に、はぁん、出し、あぁっ、出して…っ!」
勝家が濃姫に口付けると、濃姫の襞が激しく収縮し、勝家もその中に
熱い白濁を吐き出した。
その瞬間に出したわずかな声は、濃姫にも聞こえなかったかもしれない。
「共犯と仰せになったか」
勝家の腕の中でまどろんでいた濃姫に、勝家が遠慮がちに言った。
彼の逞しい腕や胸板で、つい安らいでしまったらしい。
「…そうよ。共犯。お互いの寂しい身の上を慰めあうの。
ばれたらきっと、修羅場になるわね」
信長も今、別の誰かに腕枕などしているのだろうか。そう考えて、濃姫は瞳を伏せる。
「けれど、今夜限りにしたほうが良さそうね。
貴方はあの人に忠誠を誓っているのだし…。
それに私とお市じゃ、あまりにも違いすぎて、あなたも嫌でしょう」
「さにあらず」
珍しく自嘲気味に語った濃姫は、驚いて勝家の顔を見た。
「わしが大殿に忠誠を誓っているのは、変わり申さん。
お市様を、お、お慕い申すのも…その、変わり申さぬ。
されど、大殿に忠誠を誓い、大殿を心から慕っているという点では、お方様も同じ。
それで辛い思いをしておるのも、同じ。つまり」
勝家が、不器用に濃姫の髪をなでる。
「我らはこの夜を迎える前から、ある意味、共犯だったのかも知れませぬ」
「…今日は良く喋るのね」
その日から、織田家中でうまれた小さな謀反は、誰にも知られずにひそやかに続くことになった。
<了>