徳川軍。稲姫、濃姫にこの度お市が加わった。その事で兵士らの士気が常に上昇するという利点もあった。
また、実兄信長が家康の配下にあるため、お市と顔を合わせる機会も少なくなかった。
「お兄様。お久しゅうございます」
「クク…市か。健やかであったか?」
「はい。皆元気です。長政様を除けば」
沈黙。お市は笑顔で。信長は冷や汗をかいて。
「…光秀、腹が痛い腹が。胃薬持ってないか?」
「よろず屋行けばあるんじゃないすか」
「興味ゼロだねお前」
では、何故お市が徳川軍に在るのか、という説明に入りたい。
賤ヶ岳。信長という主を失った羽柴秀吉は、自らが天下人となるべく雑賀孫市と共に賤ヶ岳で柴田勝家と激突した。
猿と猪の激突。猪には力、猿には知恵がある。
「信長様…こうなったらわしはわしの天下を目指しまさあ!」
そして、勝敗は呆気なく決まった。勝家は元より敵陣のど真ん中で槍を振り回すような方法で功を立てた武人。彼の人となりを熟知し、行動を正確に予測し、また鉄砲隊で武装した秀吉の前には勝家の剛腕など物の数ではなかったのだ。
「猿めが…わしがこの程度でへこたれるとでも…」
本陣にてわざわざ秀吉を嘲笑う素振りを見せるが、体の各所より流血が見え、やせ我慢でしかない事は明白であった。
「最早…柴田はこれまでです」
勝家の妻、お市は懐より二本の短剣を取り出した。
「私は今でも考えます。長政様と何故生死を共にしなかったのか…でも、今なら」
一本を勝家に差し出す。互いに刺し違える為に。満身創痍の勝家も迷う。
「最早織田も浅井も無い…それでもわしは生きる事こそ美しいと存じまするが…」
「ならば、これからの私の生きる道を教えて下さい…」
お市は絶望し、勝家には彼女を抱いてやれる余力も無い。柴田は負けたのだ。
だが、互いを刺し合う寸前、本陣へ馬を駈る雑賀孫市が飛び込んできた。
「困るんだよな勝家さん。市をこのまま死なせる訳にはいかないからさ」
そう言うと、銃の台座でお市の腹を殴る。脱力したお市を無理矢理馬に乗せた。
「悪いが市は俺達がもらってくぜ。長政もあんたも失ったんだ。可哀想じゃねえか」
勝手な言い分だ。お市だけでも奪還しようと多少の傷を我慢し立ち上がろうとする勝家。
だが、一瞬耳をつんざく鋭い音が響き、勝家は壁に叩きつけられ動きを止める。
孫市は無情にも満身創痍の勝家を馬上から狙撃した。
「さあ行こうぜ市?俺達の極楽へ」
勝家に目もくれず、お市を伴い自軍本陣へ走り去る孫市。見えなくなってなお勝家の名を呼び続けるお市の声を、彼は聞く事ができたろうか。
「ようこそお市様!お待ちしておりました!」
敵、羽柴軍本陣。秀吉の場違いに陽気な声色が鬱陶しい。
「…殺しなさい。それが市の運命なのです」
長政を失った。勝家も永くはあるまい。お市はこの運命に抗う気力を喪失していた。
だが秀吉はいやいや、と手を振る。
「つまり何ですわ。それならばお市様をわしの側室として迎えようと思うとるんです」
「嫌です。死にます」
即答。そう言えばこの猿は妻がいるにもかかわらず中々子宝に恵まれなかったのだった。
「ねねとは体の相性が悪いのかも知れん。じゃがお市様とならあるいは…」
「無理です。妊娠したら子供ごと死にます」
断固拒否。そもそも生きていたくない。この猿に仕えて生き延びようなど誰が思うだろう。
後ろ手に縛られたお市の肩口に手が触れた。
「まあまあ。長政や勝家はすぐに忘れさせてやるっての」
孫市の手が衣の中に入る。年がら年中発情している孫市。秀吉も不気味な眼光を此方に向けている。二人の思考が読めた。
「嫌…お放しなさい!」
「へえ、首切られるのは良くて俺達の慰み者になるのは嫌なのかい。よく分かんねぇな」
理論的には孫市が正しい。だが生理的に嫌だ。死ぬ気になれば何でも出来るって、あれは嘘だ。
「とにかく嫌なのです!お前達のように不潔な…」
「相変わらず口がお悪いですのうお市様」
不潔、と称されたのが気に障ったか、秀吉も立ち上がりお市に迫る。
「お立場を考えた方がよろしい。お市様、今の貴女様は捕虜に過ぎんのです」
言うや、孫市と二人がかりでとんでもない勢いでお市の衣を引き剥がす。白く華奢な裸身が羽柴軍本陣に転がされた。
「見ないで!この体は夫にしか許しては…」
孫市が爆笑した。
「長政のドクロ酒を飲んだ勝家を新しい婿に迎えた女が良妻を気取んなよ」
痛かった。自らの存在を否定された気がして、気付かぬ内に落涙していた。
「さて、長政と勝家のをくわえ込んだ市のアソコはどんなかな」
股を開かれ、その部位をしげしげと孫市に観察される。恥辱と憤怒で体温が上がり、そのために「その部位」にも赤みが増す。
「ふう、市は汗の匂いも芳しいねえ」
「見てみい孫市。綺麗な桃色じゃ。毎晩勝家のアレが入ってたとは思えんのお」
別に毎晩という訳ではない。孫市は尚も股座を観察するが、秀吉はその興味を上半身に移す。
「きゃっ!」
状況に似合わない可愛らしい声が響いた。秀吉が市の胸を揉みしだき始めたためだ。
「小さい乳もこれはこれでええのお。何せねねがデカいから…」
「女性を比較しないで!この猿…あん!」
秀吉の指が乳頭に至る。市の体つきは年齢に比して幼い。また長政も勝家もこうした秘め事には不慣れであったため、お市自身も秀吉らのような手練れは初めて。
(…上手い…)
孫市の舌も秀吉の指も、的確にお市の急所を責めてくる。彼らなどに恥態を見せたくない。
「ん…んんっ…駄目…」
秀吉は小さな乳房にしゃぶり付き、孫市は舌と指で執拗に秘所を責め立てる。彼らから顔を逸らし、目を瞑り、お市は彼らの責めから生じる快感を極限まで我慢する。だがその我慢が逆に快感を増幅させる。
その上、責めに耐えるお市の面構えは二人の情欲を加速させた。
「ひゃう!そんな所に指など…」
孫市が片手を尻に回し、菊門に指を差し込んできた。挙げ句、中を指で掻き回す。
「嫌…そこは不潔な…」
「市の不浄?全然問題ねえ。何だい尻も好きなのか?」
遊び人とは聞いていたが、こうも変態だったとは。二人の指や舌が乳房、秘所、菊門と計四ヶ所を一気に責める。
「嫌…駄目!もう止めてぇ!」
声が出てしまった。このままでは、この猿共のために絶頂を迎えてしまう。
「見せたくない…お前達にそんな姿…あっ!」
下腹部に異変を覚えた。常日頃から馴染んだ感覚。しかし他人には言えない感覚。このまま絶頂に達せば。
「出る…出ちゃう、おしっこ出ちゃう!放しなさい、見ないでぇ!」
その哀願を聞いた秀吉と孫市が笑った。
「お市様の…か。興味ねえか孫市?」
「あるに決まってんだろ!さあイカせるぜ」
二人の責めがいよいよ激しさを増した。市は感触を堪えようと首を幾度も振り、地団駄を踏むなど子供じみた抵抗を見せる。無駄だったが。
「い…イッてしま…駄目イく!出ちゃうぅ!」
全身が大きく痙攣する。華奢な彼女の体が折れるのではと言うほど。そして股から、水分が勢い良く垂れ始めた。潮ではない。明らかに小便だ。
「み…見ないで…」
小便を垂らし、口からも涎を垂らし、絶頂の余韻でそれらを止める事も出来ない。ただ不浄な水分を垂らす様を二人に見せている。
「おいおい市。ちょっとかかっちまったぞ」
お市の漏らした尿に濡れた右手を少し拭う孫市。先程肛門に指を入れていたのは誰だ。
その孫市を見て、秀吉も笑う。
「あれまあ。殿方を小便で汚すとは随分無礼な姫様じゃの。おまけに乳首も立たせよって…」
虚脱から戻ってきたお市。自分の胸を見て驚く。その小さい胸にて、確かに乳首が屹立している。
「違います…こ、これはただ…」
「お漏らし見られて感じてんのか?呆れた姫だな」
孫市が指先でその屹立した乳首を弾く。思わず声をあげるお市。
「やっぱ欲しがってるみてえだな。秀吉、お楽しみだぜ」
両者が下半身を露出した。既に破裂しそうな程に充血している「それ」。以前より欲情していたお市が手の内にいるのだから当然かも知れない。
だがお市にとっては、「それ」は恐怖の象徴でしかない。彼らに殺される事と彼らの子を産む事、どちらが苦痛だろう。
「っかー!前からこのお可愛らしいお口でくわえて欲しかったんじゃー!」
お市の顔を自分に向け、秀吉はその口へ「それ」を向けるが。
「おっと秀吉そいつはやめときな。噛み切られるぜ」
孫市の忠告に慌てて逸物を引っ込める秀吉。舌を打つお市。お市は既に生への執着を失っている。この場で殺されようが構わない。ただその前に一矢報いてやれれば、と思ったのだが。
「ほんじゃどうする?孫市」
「決まってる。最初からブチ込んでやるのさ」
お市の背筋が凍った。分かっていた筈なのに、いざ入れられるとなると恐怖と嫌悪で震えを隠せない。
「お市様。これも詮無き事じゃ。入れるぞ?」
「待って、それは…あうっ!」
毎晩の様に使用しているにもかかわらず、秀吉の逸物は随分な巨体だった。
「あ〜、昔から憧れとったんじゃお市様〜!」
「そんな、身勝手な…突かないでぇ!奥…感じてしまう…」
秀吉の顔を掻きむしろうとするが、後ろ手に縛られている以上それも出来ない。お市の爪は本陣の土を虚しく掻いた。
両者を見守っていた孫市が近付いてくる。
「来ないで!もう嫌…いっそ殺しなさい!」
市の言を無視し、秀吉の肩を叩く。
「なあ、待ってらんねえ。俺も我慢できねえよ」
「ほんじゃ、あれやるか?」
何処まで息が合っているのか。秀吉はお市を抱くと寝転がり、自分をお市の下に置いた。所謂騎乗位という体勢だ。
「猿…一体何を…きゃっ!」
お市の背後を孫市が取る。そして先刻同様、指で菊門を掻き回す。
「歯を立てられちゃ笑えねえ。だが、穴はもう一つある」
意味を理解した。同時にお市は尻に強い圧力を感じる。
「そこは…痛っ!んおぉあっ!」
孫市の逸物は、見事お市の肛門に入り込んだ。下から秀吉が、背後から孫市が同時に胎内を責めてくる。
「嫌あ!痛いのぉ!お尻…お尻凄いぃっ!」
中で二つの逸物が擦れ合っている。猿共の体温が伝達される。悶絶するお市を孫市が嘲笑した。
「なあ市。君のケツは随分と良く締まるが…俺を気持ち良くさせるためか?」
己を責めるお市。無意識の内に、尻は逸物に馴染んでいたようだ。そして自分は肛門で…感じている。
「嫌!両方なんて嫌あ!私はそんな変態では…」
不浄の菊門に男根を刺されて何故快感を覚えるのか。お市は必死に自らの快感に抵抗する。
だがそれも、無駄な足掻きと言えた。
「何故…お尻…気持ち良い…」
夫の死にもかかわらず、放尿を見られて感じ、尻で感じ。これでは色狂いの変態女。
「違う…違う!」
だが順序だてて反論する材料はお市には無かった。その上、またもあの感触が全身を走る。それは秀吉も敏感に感じとったようだ。
「おい孫市。お市様はどうやらイッてしまう御様子じゃ」
「了解。んじゃ尻ん中にぶちまけてやろうかね」
孫市の腰の動きがいよいよ激化した。
「そんな、お尻突いたら…痛い!痛くて…か…感じます…」
「おら食らえっ!」
腸に何かを撃ち込まれるのは初めてだった。腹の中に孫市の不浄な精が流れた。
「熱いいっ!見ないで…お前達などに…ダメ、イッちゃうぅ!」
孫市の吐精が火種になり、お市もまた絶頂に達した。直後、秀吉はお市の顔に逸物を近付ける。
「飲んで下され」
「ひゃあっ!く…臭い…」
顔に浴びせられる秀吉の精。更に彼は、自分の精を染み込ませるようにお市の顔に塗りたくる。
「あ〜あ秀吉、顔にかけてどうすんだよ。妊娠しねえぞ」
「心配すんな。城に連れ帰って本格的に子作りじゃ。それに一度このお美しい顔がわしの子種で汚れてる様を見たかったんでな」
猿共は笑い、息も絶え絶えのお市は口に流れ込んでくる精を虚無感と共にすすっていた。これが自分の運命なのだ。
―運命に抗おうと、詮無き事―
刹那、背後より轟く兵士らの断末魔。本陣めがけ一匹の鬼が迫る。
「お市…様あっ!」
「勝家!」
あの包囲網を一人で突破してきたのか。出血する足で猿共を蹴り、お市から引き剥がす。
「バカな!俺は確かにあんたを撃ったはず…」
「わぬしら、お市様に何たる…叩っ斬ってくれる!」
槍を幾度もX字に振るい秀吉と孫市を吹き飛ばす。
「く…やべえな」
「撤退!全軍撤退じゃー!」
敵大将を直接狙われ、羽柴軍は賤ヶ岳より撤退。勝家は辛うじて勝利した。
逃亡する秀吉の追撃を試みるも、既に勝家の体力は限界。秀吉の姿が見えなくなったところで遂に膝をつく。
「勝家!こんな…私のために…」
先刻より傷も出血の量も増している。幾つかの銃弾が貫通している。それでも彼はお市のために敵を撃退した。
勝家は倒れ、天を仰ぎつつ吐露する。
「わしも大殿と共に、長政のドクロ酒を飲んだ一人。故に、お市様にはどれ程頭を垂れようとも垂らし切らん。せめて…お市様のお命程度はわしがお守りせねばと…」
それだけ言って咳き込む。血の混じった。
「勝家!貴方は長政様に劣らず誠実な御方…市とて理解しています。ですから、もう…」
瀕死の勝家を必死に抱くお市。勝家は笑むが、お市を抱きかえすだけの力は既に無い。
「わしにも軍自体も力は残っておらぬ。如何なさる?」
勝家の問いに答えられない。戸惑った隙に、勝家の意識が途切れた。
数日後、既に兵力が無に等しい柴田軍は徳川軍の侵攻を受けた。お市の命により、全兵士は何ら抵抗する事無く降伏していった。
もう柴田から血は流させない。そう決意したから。
家康の前に立つお市。迷いは無い。
「どうぞ。市の首なら差し上げます。代わりに、兵士らの解放を要請します」
家康は笑った。嘲笑には見えなかった。
「では…首の代わりに力を頂きましょうか」
かくして柴田軍は徳川に吸収され、近畿方面を防衛する役割を与えられた。
結局、夫らは天下人にはなり得なかった。だが、無為な血は流させずに済んだ。これがお市の運命なのか、或いは死の運命を変えてみせたのか。
ともかく、お市は徳川軍において新たな生を歩む道を選んだ。
しかし、勝家は。
「家康殿!臨時徴税&お市様の兵力全回復!如何でございますか!」
「勝家殿、もう少し控え目な提案が欲しいんじゃが」
「ははーっ!」
あ、生きてた。
終わり