夜半、躑躅ヶ崎館――豪快にいびきをかく武田信玄の寝姿を、天井から見つめる眼があった。
(よおく寝てるわよね、ふふ。・・・・・・うんしょっと。)
その眼の持ち主は音も立てずに天井から降りたった。
小さい影。刺客、というには不似合いな幼い子供であった。
だがその身のこなし方は普通の子供とは明らかに違う、ある種の訓練をされたものである。
(抜き足・・・差し足・・・忍び足・・・・・・・・・)
(ふーん、御館様ってこんな顔してたのねー・・・っと、それはさておき。)
侵入者は部屋の主人を脇目に部屋の中を物色しはじめる。
(えーっと、どこかなどこかなぁと。)
(あったあった。これだぁ〜。)
目当ての物を見つけたらしい。
(これをこっちに取り替えて、と・・・よし!うううぅ〜明日が楽しみだにゃあ〜。)
作戦の成功に酔いしれた瞬間――
「・・・・・・!」
「いかんのう。子供は寝る時間じゃよ。」
固い刃が背中にあたり、部屋の主の低く抑えた声が聞こえた。
しばしの沈黙の後、侵入者は両手を上げて振り返った。
「・・・にゃは〜ん。ばれちった。作戦失敗〜」
「おことは千代女の所にいる娘じゃな。」
「うん。」
刀をしまい、信玄が優しく話しかけると、こっくりと侵入者は頷いた。幼い少女であった。
『甲斐信濃巫女道修練道場』 そんな看板を掲げた屋敷が武田領にはある。
表向きは一見何の変哲もない巫女を育てるための道場であるが、裏では長引く戦乱で孤児になった娘、
あるいは諸国から買い集められた娘達を皆、武田家の忍びとして訓練し、育てあげていた。
千代女とは、信玄からその密命を受けた女頭領の名である。
さて、信玄の目の前の少女。
そこにいる娘となれば、要は忍者の卵に他ならない。
年の頃は十、十一というところであろうか。いやもっと幼いのかもしれない。
信玄の半分しかなさそうな小柄な躰に、キラキラと大きな瞳が輝いているのが印象的である。
いや、それよりも強烈なのは――
「うー、さては御館様。ホントは気づいてた癖にタヌキ寝入りしてたにゃぁ?
それってずるいずるいずるいー」
国の主をつかまえてこの喋り方であるが。もちろん信玄はこの少女とは初対面である。
「ふぉっほっほ。まだまだ修行が足りぬようじゃのお。」
信玄も咎めずに、代わりに大笑いした。ずるいもへったくれもないだろう。
本来なら少女はここで信玄に斬り捨てられても文句を言えない立場である。
しかし子供ならではの無遠慮さ故か、それとも余程の怖い物知らずなのか。
少女の態度はむしろこの危機ともいえる状況を楽しんでいるようでもあった。
「で・・・・・・何故、わしの寝床に忍び込んだのかね?
この武田信玄の寝所に忍んだとあれば、たとえ子供とはいえ、許されるものではないぞ。」
「ええっとね・・・・・・」
もじもじしている少女の視線の先を見れば、いつも信玄のつけている面が奇妙な鬼の面に代わっている。
「これは・・・・・・」
「なまはげっていうんだって。ほら、いつも御館様お面つけてるからさ、
こっちに入れ替えてみたら面白そうだな〜・・・なんて。にゃは。」
「この悪戯め。」
「へへ、ごめんなさぁい。」
少女はぺろっと舌をだした。口ではしおらしく謝ってるものの、相変わらず顔に反省の色は無い。
「でも、きっと似合うよ〜・・・これ着けて戦争とかに行ったらさ、あの、名前何だっけ・・・
戦バカにもきっと大ウケすること間違いなし!」
「戦馬鹿・・・・・・・?がっはっは。謙信のことか。」
軍神もこの少女にかかっては形無しである。
信玄も信玄で、この風変わりな少女忍びを怒るどころか、すっかり気に入ってしまった。
「おことは面白い娘よのう。」
「にゃは〜。」
口癖までもが面白い。
「ねーえ、だからお・ね・が・い御館様。この場は見逃してぇ〜ん☆」
「くノ一よ。」
手を合わせ許しを乞う少女に、信玄は今までの優しい口調から一転、厳しい口調になった。
「"くのいち"?」
「おことのような女の忍びのことじゃよ。」
「ふーん、なんかカッコいー。その呼び方。」
「まあ、隠語じゃがの・・・。それはともかくとしてだ。ただ一人危険を省みず
この武田信玄の寝所に忍び込む、その度胸、その術、まことに天晴れなり。だがくノ一よ。」
再度少女をそう呼んだ。その呼び方にこの少女への信玄なりの揶揄と賛辞の意味を込めてある。
「おことはこれから先、忍びとして数多の修羅場を乗り越えていかねばならぬ。
例えばだ・・・おことはこの儂を暗殺に来た刺客だとする。
しかし、このようにあと一歩の所で捕らえられてしまった・・・この状況をおことは如何する?」
「ん〜とね・・・・・・・・・・・」
「敵は決しておことを見逃すようなことをせぬであろう。殺されるかもしれぬ。
恐ろしい拷問にかけられるかもしれぬ。厳しいようだがそれが任務を失敗した忍びの末路なのだ。」
信玄は説教を続ける。少女――以後くのいち――はまるで謎々合せでもしているかのように、
首をかしげ、腕組をしながら考えるような仕草をしていた。
キラリ。何かを思いつき、くのいちの眼がひときわ大きく輝いた。
「であるから今回の事は千代女によく叱ってもらわねば・・・・・・」
パサッ――
唐突に、信玄の頭に何かが降ってきた。
驚き払い落とすとそれは布――というよりもくのいちが身につけていた衣服であった。
何が起きたやらわけがわからず信玄が目をくのいちの方に向けると、
「色仕掛けで許してもらっちゃう♪」
そこには少女の幼い裸体が突如としてあらわれた。
「御館様、アタシ、いいことしてあげるから許してチョーダイ♪」
くのいちは平べったい躰全てを信玄にさらけ出し、クネクネとしなだれかかった。
「ほお・・・では、おことはわしを色で籠絡するというのかね?」
「うん☆」
少女の行動は素早い。胡坐をかく信玄の夜着の中にもぞもぞと潜りこむと陰茎を探り出す。
「そおれ、ヨイショっと。わあ・・・御館様のすっごい大っきい・・・!!」
頭を垂らすそれを目の前に、くのいちは感嘆の声をあげた。
「これこれ。」
「にゃは〜御館様だってこういう事、ホントは好きなくせに。ほぉら、すりすりすり〜。」
ぷりぷりとした頬に刺激に、盛り上がりはさらに大きくなる。
「ああ、とっても大好きじゃがのう。」
「んー、なあんかにゃ〜・・・せっかくご奉仕してあげるんだから、もうちょっと嬉しそうな顔してよ。
それとも何、御館様ってシュードー?女はダメで男にしか興味がないとか?」
「そんな事はない。儂は可愛い女子も大好きじゃよ。」
しかしいくら精力旺盛な信玄でも、乳房が膨らんでないような童を相手するのは気が引ける。
下腹部に眼をやれば恥毛が生えておらず、秘すべき部分がまったく隠されてない。
秘丘の割れている部分がよく見え、さすがの信玄も目のやり場に少々困った。
おそらく月すら満ちてないであろう。
(はて、どうしたものかのう。)
信玄はポリポリと自分の頬を掻いた。さすがにこのような展開は予想だにしていなかったのである。
だがくのいちは女も好きと聞いて安心したのか、そんな事は気にせずに事を進めていた。
「あたしね〜え、お口でするの結構得意なんだよ。」
小さい口はそう言うと、まるで棒飴でも舐めるかのように、はむ、と先端を丸呑みした。
くのいちがざらついた舌を押し付け、チュチュッと吸い上げると勃起は跳ねるように立ち上がる。
「ふふふ〜♪それっ。」
反応を楽しげに観察するとそのまま喉の奥深く根元までぐっと咥え込み、唇をすぼませ亀頭にまた戻る。
それを二、三度繰り返せばたちまちその太さは少女の口一杯に膨張した。
「ん、ぷ・・・ダメ。大きすぎて口ん中入んない。」
呑み込み続けるのが困難になったくのいちは口から出して、外側を舐め始めた。
脈打つ逞しい肉棒を小さな手で押さえ、垂れた唾液を裏筋にそって子猫のような舌がすくいとる。
「ぺろ〜ん・・・と。ね、ね、御館様、気持ちいい?」
舐めながら上目使いでくのいちは問う。これには信玄も頷くしかない。
この男も好色である。信玄は童が相手とはいえ沸き上がる男の欲望を止めることはできず、
くのいちの躰に手を伸ばした。
少女の肌には修行途中についたであろう傷が所々にあるが、それを補って余りあるほどみずみずしい。
少女の未熟な全身を信玄はさまざま女を熟知した掌で撫でまわす。
指が薄べったい胸の小さな桜色の円をなぞった。
中心の蕾が触れてくれとばかりにぷっくりと膨れあがっていたので信玄は摘み、コリコリと弄んだ。
「あん、おっぱい気持ちいい・・・」
「ほほ、膨らんでもないくせに生意気な。」
「んもうー。これから、大っきくなるもん!」
胸のかわりにくのいちはぷう、と頬を膨らます。
くのいちは唇のかわりに、輪にさせた指を陰茎の根元から首元に盛んに行き来させている。
先端から出てくる液を舐めとる、口づけ音が時折聞こえてきた。
信玄は息を荒げ、無骨な掌を形のいい臍よりさらに下へとすすめた。
少女が小柄なため、うずくまって奉仕されたままでも十分に手がとどく。
恥骨を境に少女の躰で一番柔らかい部分に触れれば、既にそこは幼い体つきに似合わず
驚くほど濡れており、じっとりとした蜜が指に絡み付いた。
「きゃっ、んっ・・・」
あがる高い声。指は秘丘の間を割り、隠れた小さな肉芽を剥き出して刺激している。
連なる花弁を押し開き、濡れそぼってる芯を突つけば、太指は何の抵抗もなしにズブリと入った。
「ぁん・・・!」
温かいうねりに指を締め付けられながら、そのまま奥まで侵入する。
「あ、んっ・・・。・・・ゃん・・・。」
小さく乱れる呼吸に合わせ、くぐもった水音が聞こえてくる。信玄は指の本数を二本に増やした。
太指を苦もなく受け入れるそこは、やはり、というべきか未通娘のものではない。
指を入れたまま、そこを中心に掌で無毛の秘所を存分に撫で回せば、
水音はさらに大きくなり、快感を享受する少女の動きもそれに比例をした。
「・・・んっ、・・・や・・、あん、やん、はぁん・・・」
少女はもう奉仕するどころではない。喘ぐ声よりも大きな音が足の間から鳴らされている。
「すご・・・っ、グチョグチョ、いってるぅ・・・・ふぁっ・・・・・・ああっ!」
信玄の右手から溢れる液がしたたり落ちた。
果てたくのいちは前のめりに倒れこみ、しばらく呼吸を整えるのが精一杯であったが、
やがて信玄自身をぎゅうと握り締めて懇願をした。
「御館様ぁ、ねえ、ほしいよ・・・いれて。」
「仕様が無いのう。」
信玄は胡坐をかいたまま、くのいちの腋を掴み軽々と抱きあげた。
奉仕をした唇に、唇でもって感謝する。
「ん・・・」
そして己が自身を濡れそぼった陰門にあてがい、そのまま少女の躰をゆっくりと降ろした。
「あはあっ・・・!」
ぐぐっ――しなやかな襞を目一杯軋ませ、くのいちは指よりも太い信玄を受け入れる。
「ん、ぁっ、御館様の・・・はあっ、アタシん中、入って来てるよ・・・」
「痛いかね?」
そう尋ねながら信玄は少し赤く染まった耳をその形に沿って甘噛みした。
息をかけられ、くのいちはくすぐったげな素振りを見せながら首を横に振る。
その間にも熱い塊は蜜壷に少しづつ呑み込まれていく。
「ううん・・・!・・ぅくっ・・・・・」
子袋の入り口に突き当たる。全てが入った。
成長しきれてない蜜壷のきつい締め付けに、ともすれば信玄といえどすぐに果ててしまいそうで
無理には動かさず、その代わりにくのいちの躰を愛撫することに専念する。
耳を舐めた舌を細い首筋に移動させれば、少女は半分眼を閉じて甘い声をだした。
「っくふぅん・・・・・くすぐったい・・・あん。」
少女の反応はそのまま下半身の繋がりに振動する。
巨躯に見合った肉棒は少し身じろぎをするだけでも、くのいちに愉悦の声をあげさせた。
「アタシ、動いちゃうよ?」
しかし愛撫するだけの信玄に業をにやしたのか、くのいちの方からは信玄の肩をつかみ、腰をすり寄せる。
「そんなにそこがいいのかの?」
信玄がその様子を眺めていると、結合部の手前部分を盛んに信玄の躰に擦りつけているようであった。
動いている最中にその事を指摘されて、くのいちは決まり悪そうな、少し恥ずかしげな表情をして頷いた。
「うん、ここんとこってこう、ぐりぐりするとさ、なんかイイんだよね。」
「ほれ、ならこうしてやろう。」
「・・・っや・・・!?」
信玄はくのいちの小さな尻を後ろからぐっと掴み、前後に動かした。
「・・・きゃん・・・!ん、いぃっ・・・そんな感じ、好き・・・!」
擦れていた部分が信玄の手によりさらに強い摩擦がかかる。くのいちは声をあげ、信玄にしがみついた。
動きも初めは緩慢だったがだんだんと速くなり、それにかかる力も強くなる。
深奥で絡まりあう肉もそれに連動をした。
「ああっ・・・ダメェ!、やっ・・・!、んっ・・・!、・・・激し・・・すぎぃ。」
しかし動きはとまらない。擦られ、えぐられ、痺れるような快感は下腹部から脳天へ。
他人が与える刺激は自分でするそれよりも容赦なしに快楽の高みにのぼらせられた。
くのいち手の動きによって弾みをつけるかのように、
しがみついたまま今度は腰を激しく上下に動かし始めた。
信玄は今度はその動きも手伝ってやる。
繋がりがはずれてしまいそうな程に勢いよく持ち上げ、そしてその勢いのまま落下させた。
「ひゃあっ!」
少女の内部は、ゴリゴリとしたもので一気に擦りあげられ、着地をすればまた
陰核を溢れる愛液ごと恥骨にぶつけさせられ刺激された。
信玄は持ち上げる。
「ほおれ、高い高い。」
そして、落とす。
「きゃんっ・・・!」
その繰り返しが四度五度。最後は少し角度を変え思い切り深くえぐりこむ。
くのいちはたまらず後ろにのけぞり、そのまま仰向けに倒れた。
上になった信玄はくのいちの膝を持ち上げ手で押さえると、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「はぁ・・・ん、ぅぐっ・・・!」
少女をつぶさぬよう気遣いながら、信玄は突く。これでも信玄は手加減をしているのだが
奥をうがつ度に、壊れるではないかと思うほどの嬌声をくのいちは発した。
「あはぁっ・・・やんっ!・・・いぃ・・・っ・・・」
今度は奥だけではなく、手前の内壁も円を描くかのようにゆるやかに穿ち、かき回した。
自身が貫く様子が信玄からはよく見える。
少女の淡い色彩の秘部はよくぞここまでと思うほどにばっくりと割れ拡がり、
いまだ女の血が流れてないのにもかかわらず、愛液はたっぷりと満ち溢れ、
下に敷かれた寝具を濡らしている。
抜き差しされる黒肉の固まりとそれに合わせて収縮する秘肉。
信玄はくのいちの腰を高々とかつぎあげてそれを見せつけた。
「・・・やっ・・・ぁは、御館様の、こんなにイッパイ・・・・・!!ここが広がっちゃうよお・・・!」
「じゃあ、抜いてやろうかの?」
「イヤッ、そんなの・・・御館様のイジワルぅ・・・」
冗談で抜きかけた信玄を嫌だとばかりにくのいちは信玄の身体を宙に浮いた足でバタバタ蹴る。
「冗談じゃよ、ほれっ。」
「あ・・・っく・・・!・・っや・・・ああ!・・・あん・・・はぁん!」
またくのいちの細い全身は奔流に大きく流された。
絶頂に向け動きは激しくなる。
「ああっ!・・・んっ、すご・・・いよ、おやかたさまぁ・・・!こんなの、初めて・・・・・・ああんっ・・・!」
唇の端から涎をダラダラと垂らしながら喘ぐ。
少女の手が虚空に伸ばされた。
信玄はその手を握り締めると自分の首に廻してやる。垂れてくる涎も唇ごと吸ってやった。
聞こえてきた、喉から絞り出されるかすかな掠れ声。
「ねえ・・・きて・・・この・・・まま・・・」
後は言葉になってない。信玄もそろそろ限界であった。
「ん、むぅ・・・いくぞ・・・!!」
「んっ、あ、ひぃあっ、あぁぁぁ・・・!!」
濃厚な精が、勢いよく、少女の体内に送り込まれた――
「御館様・・・。」
「ん、なんだね?」
「重い。」
「おう、すまんすまん。」
信玄は巨体をくのいちから離した。真白な精と共に陰茎がドプと抜け落ちる。
「ふぅー、つぶされちゃうかと思った。」
くのいちは小柄な躰を大の字にすると、大きく全身で息をついた。
信玄も横になり、一緒になって息をついた。
「はにゃあ〜」
「ふう・・・」
息をつきながら、信玄は隣りの今しがた抱いた相手の姿をぼんやりと眺めてた。
信玄とは対照的にくのいちの平っべたく薄い上半身は、呼吸する度にあばらぼねが浮き上がる。
痩せっぽちだな、そう思った。しかし乳房が無いのは痩せているばかりが理由ではない。
「んー。そうなのよね〜もっとここらへん、ボーンとさ、欲しいよね。」
胸元の辺りを見ていた信玄の、その表情の奥にある意味をくのいちは勘違いした。
信玄は手ぬぐいを取り出すと、少女の全身を丁寧に拭った。
上気して玉の汗を浮かべている幼い顔。淫液にまみれているあらわな下腹部。
そして問う。
「今時のくノ一はその年で床の作法を教わるのかね?」
「ううん。別に〜。だって千代女さまのトコ来るまではさ、いつもこんな事ばっかりやらされてたし。」
なんのことはない、少女はそんな調子で答えた。そしてニコリと笑う。
「でもこんなに楽しかったのは初めてだったな。御館様って、上手だね。」
「――こういう事は楽しまなくてはの。」
「気持ちよくしてもらったし、アタシもお掃除してあげちゃおっかな♪」
くのいちはピョコンと起き上がると、汚れた陰茎をまた喜々として口に含んだ。
股間に顔を埋め、再びせっせと動き始めた小さな頭を信玄は眺めていた。
「こういう事は好きかね?」
しゃぶるのに夢中なくのいちには当然信玄の、自分の行為を見つめている表情など見えていない。
この十になるかならぬかの少女は、こうすれば男は皆喜ぶと信じて疑っていなかった。
「うん、好き。だって気持ちいいもん。」
問いに悪びれず答えるくのいちにそうか、ならば良かった、信玄はそう言って少し癖のある髪を撫でた。
「おことはこれからどんどん奇麗になっていくぞ。皆に存分に見せびらかしてやるがよかろう。」
信玄の言葉にくのいちは顔をあげて明るく笑い、うん、じゃあそうするね、と言葉を返した。
その無邪気な返答を聞いて信玄も破顔した。
「と・こ・ろ・で〜」
突然くのいちは言った。
「いいことしたんだから悪戯したことは千代女さまにはナーイショ。ね。いいでしょ?」
軍神さえも恐れぬ少女もさすがに頭領だけは怖いらしい。
陰嚢を揉みながら上目使いで信玄の顔色を伺い、言葉を続ける。
「それにさ、千代女さまがもしもこの事知ったら怒るだろうな〜
『いい大人が年端もいかぬ嫁入り前の娘に手をつけるとは何事ですかあっ!!!』って、
そーゆうとこ、頭すっごくカタイのよねー、千代女さまって。」
「うむ・・・。」
信玄はぽりぽりと頬を掻いた。
少女の言う通りであった。たとえ信玄といえどもあの鬼女からどんなカミナリが落ちるかわからない。
「まあ・・・仕方ないのう。」
「にゃは〜、あんがと。やあったねー!色仕掛け作戦大成功☆」
くのいちは両手を上げてしてやったりと喜ぶ。
その姿は先程までの幼い売春婦ではなく、いかにも年相応の小憎らしい悪餓鬼である。
「この悪知恵のはたらく小童め・・・・・・」
信玄は後ろに振り返ると、くのいちが持ってきた例の奇妙な鬼面を手に取った。
北の国にこの鬼面を使用した、一風変わった民族行事があることを信玄は知っている。
「悪い子はいねがああ!!」
鬼面をつけた信玄は大仰に頭を振って脅すと、くのいちは大はしゃぎに手を叩いて喜んだ。
「キャハハハハハ、似合う似合う。」
「さあて、悪戯好きの悪い子供がこんな所におったわい。」
「わーい。逃げろ〜、逃げろ〜♪」
くのいちは笑いながら逃げる。信玄はそれを追いかける。
二人で部屋の中、寝具を中心にしてぐるぐると追いかけっこを始めだした。
「むむむむ、全くすばしっこいのう。」
「つかまんないもんねぇ〜と、ヒョイッ。・・・つう〜、イタタ、転んだ・・・」
「そおら、つぅがぁまえだどお。」
「きゃあ、捕まっちゃった〜にゃははは。」
「さてとだ。」
おどけた口調から、いつもの信玄にもどった。
「千代女には黙っておいてやるが、やはり悪戯にはうんときついお灸をすえてやらんとのう。」
「えー、何だかんだいって御館様、実は結構それ気にいったんでしょ?ならいいじゃない。」
「うむ・・・・・・じゃが、それとこれとは別じゃよ。」
「・・・・・・お仕置きするの?」
「ほれ、観念して尻をだせ。」
「えーーーそっちでお仕置きするのぉ?・・・・・・うん、わかったにゃ・・・・・・」
そう言って少女は後ろ向きになると今度は尻を高々とあげた。
御丁寧にも自分の尻の割れ目を両手で広げている。
「いや、そうじゃないんだがのお・・・まったく。」
やれやれと信玄はまたぽりぽりと顔を掻いた。そして少女を持ち上げるとその尻を――
ペシンッ――
叩いた。
「きゃはあっ!」
「悪い子にはこうやってお仕置きせねばならん。」
ペシンペシンペシンペシンペシンペシン――
「痛い、痛い、いたい、いったあ〜い・・・・・・御館様、ごめんなさいいぃぃ。」
「あー、痛かった。」
真っ赤になった自分の尻をくのいちはさすっている。
「これに懲りて悪戯はもうするでないぞ。よいな?」
「うー・・・うん。」
「よいな?」
「はぁ〜い・・・・・・。」
「よし、では今晩のところは見逃してやろう。明日も修行があるだろうから早く千代女の所に帰・・・」
「うわー、お布団ふっかふかー。今晩ここで寝てもい〜い?」
くのいちはそう聞きながら、もう既に我が物顔で布団の中に入りこんでいる。
「・・・まあ、かまわんよ。」
「やったーにゃは♪」
「忍びの修行は辛いかの?」
信玄は腕を少女の枕にして、話しかける。
「うん、ラクじゃないよ〜。でも楽しいんだよね、これが。アタシには合ってるって感じ。
ヤッパシこんな時代なんだもの。自分の力で生きていかないとね〜」
少女の言葉に信玄は相槌をうつ。これまでこの少女は――信玄は思いを巡らす。
戦乱の世、大人ですら力無き者は明日の我が身ままならず、戦場で、あるいは飢えで死にゆき、
生きるに困り果てて血をわけた我が子すら売るような時代に、
身寄りもなく、何の力も持たなかったこの少女は今まで生きていくためにどんなことをしてきたのか。
容易に想像がついた。弱き者共は鬱憤を晴らすためさらに弱き者を探した。少女はその一番下にいた。
「『態度が悪い』ってよく千代女さまには叱られちゃうけどさ。
でもアタシ、こう見えて実は成績優秀なんだよ。走るのだって誰にも負けないし〜
八双跳びだってもうできちゃうんだから。すごいでしょー。アタシくらい背低いとさ、
結構抜け道とかも見つけやすいんだよね〜今日だってここまで忍んでこれたしさ。にゃは♪」
くのいちの話は続く。話し好きなのだろう。その表情は陽の光りのごとく明るい。
だが、明るすぎる光りは同時に暗すぎる影を伴っていく。逆もまた、然り。
生きる力を手に入れた少女は、これから忍びとしてどんな生き方をしていくのか――
「敵だってそのうちバッタバッタ・・・・・・ね〜えってば、聞いてる?御館様?」
真っすぐのぞきこむ視線に、信玄は考えを振り払った。
「ああ、聞いておるよ。それはすごいのお。」
そう言いながら、信玄はくのいちの頭を撫でた。
「おことはきっと日本一の忍びになれるぞ。」
「えへへ。」
くのいちは素直に嬉しそうな顔をして、信玄の胸に顔を埋める。
体温とかかる息でそこだけが暖かい。少女の髪の毛が、愛撫されサラサラと揺れている。
ポツリ、と少女が呟いた。
「・・・頭撫でられるのって気持ちいいにゃ・・・」
「そうかね?」
「うん、もっと撫でて。」
信玄はくのいちを折れんばかりに強く抱き寄せた。そして、頭をくしゃくしゃになるほど撫でてやった。
やがて少女の寝息が聞こえ、ようやく部屋に元の夜の静けさが戻った。
信玄はこの少女の寝顔を見つめていた。
枕にしている腕がいい加減痺れていたが、小さい手が信玄の夜着の端を強く掴んで離さない。
信玄にある種の情が沸いてきている。
抱いた人間は全て愛しいというのが人並外れた精力家であるこの男であるが、
この少女に対しては、また別の種類の情を持ち始めている。
不幸な境遇を思っての同情ではない。それならば劣情の方がこの少女にとっては遥かにましであろう。
それに信玄の情報組織とて、このような娘達を集め利用することで成り立っていった。
刹那、くのいちのあどけない寝顔が信玄は自分の娘達のそれと重なった。
――あれらにもこのくらいの逞しさがあれば、の。
信玄には娘が何人かいたが、今はほとんど手元にいない。
戦国の世のならいである。家のため、この少女と同じ年頃に早々に嫁に出してしまった。
中には隣国に嫁ぎ、もう何年も会ってない娘もいる。
「はは・・・」
信玄は苦笑した。抱いた相手に対してそんな風に考えた自分が、信玄は我ながら可笑しかった。
眠る少女の鼻先に一つ、口づけを落とす。そして抱き締めたまま、眠りに入る。
信玄は久しぶりにひどく愉快な気分であった。
武田家にしたたかでずるがしこい、そして可憐なくノ一が誕生していることに。
流石に歴戦の名将も自分の腕の中で眠る名も知らぬこの少女が、後に
天下を大きく動かす事になろうとは夢にも思わない。
このくのいちが真田幸村に仕え、苦無と己が肉体でもって天下を縦横無尽に駆け巡るのは
これよりも数年も後の話である。