輿入れしてから約一年が経った。
嫁いだ先の近江での生活も十分に慣れ、また浅井長政様もとても
お優しく、私は穏やかで幸せな日々を過ごしていた。ただひとつ、
今でもお兄様への想いをすっかり捨てることが出来ていないのが、
辛いといえばそうかもしれない。長政様に強く抱きしめられる度に
あの夕暮れを思い出すのだ。
「市、市・・・!」
「ああぁっ・・・はぁ、・・・ん・・・長政さま・・・・」
薄暗い部屋の中には、長政様と私の声と肌がぶつかる音が響いて
いる。私は四つんばいになり腰を長政様に持ち上げられ、強く打ち
つけられる度に強い快感が背筋を走り、高い声を上げてしまう。
「あっ、ああっ!あ、んぅっ、あっ・・・」
「は、く・・・市、良い、か?」
長政様の声が耳元でする。その声と吐息にまた背筋がぞくりとし
て、私は頭を振った。
「・・・っ!や、そんな、聞か、ないで、あ・・・っ!」
すると長政様は私の乳房に手を伸ばし、腰は打ちつけながらも頂
をくりくりと摘んで弄り始めた。時折きゅっと強く摘まれ声を上げ
ると、長政様は嬉しそうに
「これが好きなのだな」
と言った。恥ずかしさと気持ちよさで何も分からなくなってきた頃、
長政様が今までよりも強く、短い間隔で腰を打ちつけ始めた。
「あああっ、あ、や、はあっ・・・!」
「・・・ふ、市、もうそろそろ・・・っ」
「は、はい、ああっ、市も、は、あ、あああああっ・・・・・・!」
快感に意識が飛ばされるような気がして真っ白な敷布を掴んでいる
と、ひたひたと押し寄せていた絶頂が訪れ、一際高く声を上げた。
そのすぐ後に長政様も達したようで、私のなかに子だねをたくさん
くだされているのが感じられた。入りきらず溢れ出てくるそれが秘
所のすじを伝ってきているのを、ぼんやりとした頭のままで感じて
いた。
事が終わっても長政様は楔を繋げたままで、抜こうとはしない。
それを中に感じているのは、なんとなく不思議な感じもしたけれど、
決して嫌ではなかったのでそのまま長政様に抱きしめられているこ
とにした。
しばらくして楔が引き抜かれ、枕元にあった水盥で手拭を湿らせ、
お互いの体を拭き清める。汗をかき火照った体に濡れた手拭は心地
よく、体を清めた後は同じ布団にもぐり休むこととなった。
長政様がすうすうと寝息をたてはじめる。私は隣にいる長政様の
寝顔を見て、なんて幸せなのだろうと思いながらも、同時にお兄様
のことを思い出した。
お兄様はどうしているだろうか。私がこうして幸せに暮らしてい
るということを、知ってくれているだろうか。何度か文を送りこち
らのことを書いたが、お兄様からのお返事は素っ気無いものばかり。
お兄様らしいといえばそうなのだが、それでも寂しかった。
ふと、あの一度きりの夕暮れを思い出した。肌に直に感じたお兄
様の温かさ、すぐ近くに聞こえた吐息、交わっているときの切なげ
な声、そしてお兄様自身・・・。
嫁いでからすっかり長政様に尽くし、長政様のことを慕うように
はなったが、それでもお兄様への想いは私の心の奥で燻り続けてい
る。こうして少しの隙間、ふとした瞬間にそれがちろちろと燃え上
がってしまう。気がつけば私の指は、ゆっくりと自分の秘所へと伸
ばされていた。
「・・・あ」
そっと秘所をなぞると、柔らかな快感が背筋を走る。そう、あの
夕暮れで、お兄様は確かに私のここを撫ぜていてくれた。お兄様の
吐息が私の耳にかかり、低い声で色々と問い・・・
『気持ちいいのか?』
「ああっ」
お兄様の声が脳裏によみがえり、それだけで私は快感を感じてし
まった。そう、あの時お兄様はそうやって私に聞いてきて、でも恥
ずかしくて答えられなくて・・・。今ならどうだろう、答えられるか
もしれない。はしたないとは思うのだけれど、きっと耳まで赤く染
まってしまうだろうけど、それでも答えてしまう気がする。
「・・・っ、はあっ、お兄様、気持ちいいです・・・」
秘所を何度も何度もなぞりつつ、指をそっと中に入れる。これが
お兄様の指だったら、少しふしくれだった大きなその指は、どんな
風にここを弄るだろうか。最初はそっと入れて、その後に強く掻き
まわしたり、強弱をつけて何度も私に声を上げさせたり・・・
「あ、は、うぅんっ・・・!っは、ん・・・」
私の指は勝手に動いていく。何度も内側を擦りあげると、気持ち
よさに声が上がる。お兄様のことを考えるだけで背筋が痺れるよう
になり、ひとりでしていることなのにまるでお兄様がすぐ傍で私を
抱いていてくれているように思えてきた。もう既にこの指はお兄様
のもので、素裸のお兄様は私にぴったりとくっつき、今晩も抱いて
くれるのだ。
片手がそろりと乳房に這わせられ、揉みしだかれる。あの夕暮れ
の時よりも少し大きくなった乳房は掌に少し余る程度で、強く握り
しめるようにすると指と指の隙間から肉が盛り上がった。やわやわ
と揉みしだかれていると、頂がむくりときれいに立ち上がる。
『こんなに、ここをピンと立てて・・・気持ちいいんだな?』
「あっ、やああっ・・・はぁ、あ・・・」
『そんな風に悶えて、嫌ではないくせに』
意地悪くお兄様が笑う。私はその意地悪そうな声にぞくぞくして、
秘所が濡れてくるのが感じられた。片手で乳房を弄りながらも、も
う片方の秘所を弄り続ける手も止まらない。強弱をつけて中を擦る
指は、だんだんと刺激を強くするようになってきた。
『ほれ、こんなになっているぞ』
「は、あああっ・・・!いや、お兄様、お兄様・・・っ」
『嫌ならばやめてあげよう』
そう言うと差し込まれていた指が引き抜かれる。ぬるりと濡れた
指が腹をさわさわと撫ぜ、それがまた茂みへとゆっくり降りていく。
もどかしい気持ちよさを感じていると、その指は小さな突起をとら
えた。ちょん、と触られる刺激で声が上がった。
「きゃっ・・・!」
『上だけでなく、下もこんなに尖らせているのか』
「やだ、言わないで、お兄様・・・ああっ、あ、やああっ」
くりくりと、下と上の頂を同時に弄くりまわされる。特に下の突
起への刺激は強く、きゅ、とつままれる度に高い声が上がり秘所が
しとどに濡れそぼっていく。そうして何度もつつかれるごとに、は
したなくも、中に入れて欲しいと思うようになって、そこを自分か
らすり寄せてしまう。お兄様はそんな私の行動を笑って、けど私の
意図したことを理解してくれて、秘所にそっと宛がってくれる。
『市はいやらしいな』
「いやっ、そんな、私・・・」
恥ずかしさで頬を染めるけれど、もうどうしようもない。腰をす
り寄せることを止めるなんて出来なくて、つんつんと秘所を突かれ
る度に声を上げる。早く、早くと思ってしまう。けれどお兄様はま
だ入れてくれない。私はじれったくて、涙がじわりと目尻に溢れて
きた。
『どうして欲しい?可愛い市の言うことだから、聞いてあげよう』
「・・・っ、あ、お願い、入れて、入れてください・・・」
欲しくて欲しくて、でも恥ずかしくて、小さな声でお願いした。
するとお兄様はそれを思い切り打ちつけ、私を貫いた。
「あっ!ひゃう、あ、はぁん・・・!」
くちくちとそこを指が出入りする音が響く。お兄様のそれの感触
を思い出して、自分の指とそれの違いにもどかしくなる。もっと奥
まで欲しいのに。お兄様なら、もっと強く、激しく、奥までくれる
のに。頭のどこかでそう冷静に思いながら、残りの部分で私はお兄
様に抱かれることを最後まで夢想していた。
お兄様は何度も私の中を擦りあげ、同時に突起を弄る。耳元には
苦しく切なげなお兄様の吐息がかかり、それにますます興奮してし
まう。
「あ、はっ、ん、いい、お兄様、お兄様ぁ・・・」
段々と絶頂が近くなり、中はより強く早く擦られ、目尻にたまっ
ていた涙がつうっと頬を伝う感覚ですら快感となる。秘所はしとど
に濡れて、びくびくと痙攣し始める。
『市、市・・・!』
「いい、いく、いく・・・っ、は、あああぁっ・・・!」
最後に一際強く突起を刺激され、意識が真っ白になった。中はび
くびくと痙攣していて、指をきゅうと締め付ける。はあ、はあと息
を整えるうちに、真っ白になった頭はゆっくり霧が晴れるように覚
めていく。締め付けられた指を引き抜くと、露に濡れたそれは灯り
で光っていた。
横に眠る長政様が起きてしまわないよう、そっと手拭を取り、指
を拭う。これは、長政様への裏切りなのだろうか。私が長政様に嫁
いだ日から、長政様の事を慕っているのも抱かれて子を成すことを
望んでいるのは本当だ。だけど、こうしてお兄様のことを忘れるこ
ともできない。なまじあの日、一度お兄様と肌を合わせてしまった
から、忘れられないのかもしれない。
だけど、これは私の背負った業。あの夕暮れに、長政様に嫁ぐこ
とを知りながらお兄様と肌を合わせたいと願った私が、自分で背負
ったものなのだ。いつかお兄様を忘れる日が来るかもしれない。忘
れない限りはこうして幾夜も、お兄様に抱かれる夢を見るのだろう。
「・・・長政様」
隣で眠る、大切なひと。安らかな寝顔を見ると、胸がきゅうと締
め付けられた。それは愛おしさと、裏切っているのだろうという事
への申し訳なさのせい。
何も知らずに眠り続ける長政様の頬にそっと口づけ、私は布団に
もぐりこんだ。