山崎の戦いは、秀吉軍の勝利に終わった。
信長の仇討ちを遂げた秀吉は、その後継者たる実質的な資格を得た。
台頭してゆく秀吉と、それを認められぬ柴田勝家は、賤々岳にて決戦を開く。
秀吉を勝利に導くため、動き出すねね。
謎の行動に勤しむ阿国。
賤々岳は、混沌とした様相を醸し出そうとしていた。
ね「みんな、ガンバろうね!」
阿「コオオォォ……」
ね「……何してんの?」
『 第二話 賤々岳の戦い 前編 』
刻一刻と激突の迫るねねの陣も、慌しさの頂点を極めていた。
「あれ、あの子は?」
寡黙な部下が指差す先に、何事かに勤しむ阿国の後姿があった。
「あぁ、あんなトコ…に……」
「コオオォォ……」
鬼。まさにその後姿には鬼神が宿り、驚天動地の覇気はまさに阿鼻叫喚――
ポカ。
「あいたぁ。」
「こらっ! あんた、この忙しい時に何やってんの?」
「何て。ほらぁ。」
自慢気に見せ付ける両手には無数の米粒。並ぶ皿の上には大量の握り飯。
「いや、それは見りゃ分かるんだけど。」
「うふふ。二十分以内に二百人分のおにぎり作りましたら、何と…」
余程嬉しいのか、阿国は笑みを堪えながら指を二本出した。
しなやかで美しい指も流石に米粒まみれでは汚く見える。
「ニ両どす。うふふ。」
「…………。」
「こないおいしい話、他にはありまへんぇ?」
「こっちおいで!…っていうか、誰がそんな命令したのよ! まったく!!」
「あぁん、いやゃ! 堪忍ー!」
くどいようだが、暴れる阿国の指には米粒。
「あっ、服に付いた! もう、お馬鹿!」
ズルズルと引きずられながら、阿国はねねに連れて行かれた。
「感心しないねぇ……正面からぶつかり合おうぜ!!
少なくとも、俺はそうさせてもらうぜ!!」
前田慶次の出撃により、優勢だった戦局が一気に五分へと返された。
その情報をくの一から聞かされたねねは、早速行動に出る。
ガサ…。
茂みから顔だけ覗かせる二人。
ただ、阿国は頬を若干膨らませて不満たらたらである。
「いたいた。あいつだね。」
「…………」
「あ〜、確かに厄介そうだねぇ…。どう思う? 何とかできるかねぇ?」
「どうも思いまへん。何ともできまへん。」
目を閉じ、そっぽ向く阿国。
地面に書いた『でんぷん』の軌跡を何度もなぞっている。
「あんたねぇ。…よし、分かった。」
真剣な目で、ねねはビシィッと指を二本突き出した。
「あいつを何とかしたら、これだけ出そうじゃないか。」
そろりと阿国の目が開き、真珠の様な瞳がゆっくりとねねの指を確かめる。
「そ、そないな事言うたかて――」
「いや。二百出そう。」
「ニヒャー!?」
黙って頷くねね。立場と性格もあってか、懐も軽くて深い。
それに豪傑・前田慶次をなんとかできるのなら、安いものだった。
「…………」
開いた口を隠すのも忘れ、阿国は目を点にしたままである。
「やってくれる?」
「うち…うち!」
言葉もままならず、もう衣服を脱ぎ出そうとする。
「ちょっ、ちょっと待って! まだ早いから!」
「でもぉ……」
ねねは子供をあやす様にして胸元を直しながら説得する。
「いや、でもね!? ほら、流れってモンもあるだろ?」
「そうゆうもんどすか?」
「そういうモンなの。…さ、ガンバって!!」
「はいな。」
ペチンと尻を叩くと、いつ見ても独特な走り方で阿国は突撃していった。
「…………」
走っていく阿国を見送りながら、ねねは思った。
この子はものすごく扱い易いのかも知れない、と。
そんなこんなで、向かい合う二人。
「あんたは?」
「出雲の阿国どす。あんたはんは?」
「俺かい? 俺は見ての通りさ。天下一の傾奇者、前田慶次!」
「かぶき…もの?」
辺りを見回せば、慶次に倒されて呻く兵士達。
「用があるのは男だけだ。」
「かぶきもの…。」
「ここはあんたの様な人がいるべき場所じゃねぇ。帰ぇんな。」
見れば阿国は口元を手で覆い、慶次を悲しげな瞳で見つめていた。
その肩は小さく震え、いつからか視線が慶次の目と下半身を行き来している。
「可哀想…。」
「はぁ?」
「そうでっしゃろなぁ…。誰かを傷つけるしか無いんでっしゃろ?」
「…話が見えねぇ。」
「せやからあんさん、被飢者でっしゃろ?」
ポッと頬を染め、阿国の視線が慶次の股間に注がれる。
「被ってはるのが恥ずかしくて。でも飢えてて。」
「お、おい!」
「せやから腹いせに弱いものいぢめしはるんでっしゃろ?」
「違ぇ!!」
「ええんどすぇ? うちの心は琵琶湖よりも広いんどす。」
「……乗んな。」
愛馬・松風を口笛で呼び、阿国に手を伸ばす。
「あらぁ、何処に行きはるんどす?」
「…ま、あそこでいいだろ。」
遠くに見えるは、賤々岳の要所の一つ、北砦。
駆け出した松風の上。
普段と同じように微笑を浮かべる阿国の口元は、さらに笑みを強めていた。
守備頭達を早々に叩き出し、北砦は二人を残して固く閉ざされた。
「さて…と。」
「うふふ。」
ゆっくりと阿国は腰を落とすと、女性らしい座り方で慶次を見上げた。
そっと傘を手元に置く。
「誰が被飢者だって?」
「うふふ。そないに自信がおありどすか?」
「それは見てのお楽しみだ。」
豪快に袴を脱ぎ捨てると、見せつける様にして下半身を露わにした。
ボロンッ、と音のしそうな巨大な陰茎が阿国の鼻先をかすめる。
「…あ…らぁ……」
呆然としたせいか、阿国の唇がうっすらと開いていた。
「さぁ、あれだけ大口叩いたんだ。どうすればいいか…分かるよな?」
微笑を作りながら唇が閉ざされ、その代わりに瞳が閉じられていく。
雀が囀る音色。
慶次の巨体がほんの少し揺れた。
くちづけるままに奥までねっとりと咥えこみ、そのまま口内で蠢かす。
頬を窄めながら、阿国は一度唇から引き抜いた。
「んぷ…。おっき……」
指先で丁寧に擦りながら、うっとりとした瞳で呟く。
「おいおい…こんなもんじゃねえぜ?」
「んぅ…ぷ……」
グイと阿国の頭を掴み、その口元に押し付けた。
裏筋と淫嚢との付け根をネロネロと舌の腹で丹念に舐り、裏筋を上っていく。
裏筋の頂を舌先で転がす頃には、垂れる唾液が淫嚢を濡れそぼらせていた。
「んふ。」
ほんの少し唇を尖らせると、今度は一滴も
残さぬよう吸いつきながら下っていく。
「おおッ…!」
麺を啜るような卑猥な音を立てながら、阿国は淫嚢を舐り尽くし始めた。
チュッ、チュッと啄ばんだり、舌先で転がして左右に振る。
「……ぇ?」
再び陰茎に目をやった阿国は驚きを隠せなかった。
自慢するだけの事はある、勃起しきったものがそそり立っていた。
ビクビクと脈打つその様子は、阿国の愛撫をせがんでいるようである。
「…っぐ…ぅ……ふ……」
どれだけ頬張っても、亀頭を飲み込むので精一杯であった。
グポグポと亀頭を往復しつつ、残りの部分は指で補う。
「さぁ、満足させてくれよ…?」
「あっ!?」
阿国は細い手首を慶次の手で上に向けて拘束された。
ズッ、ズンッと腰を振れば、阿国はたちまち眉をしかめた。
「…んンッ!?…ご…ォ……ぶ!…ふぶぅ!!」
徐々に雫を目尻に溜め、鈴のような声も呻きによりその音色は紡がれない。
口端からはだらしなく唾液を溢れさせ、いつぞやの余裕は欠片すら無い。
今まで見せなかった苦悶の表情。
それは慶次をさらに興奮させた。
「ぷあぁッ!!」
ようやく解放された阿国は、喉元を押さえて嗚咽をもらす。
「…ん…もう。乱暴なお人どす。」
「ははっ、悪ぃ悪ぃ。」
「こないな暴れん棒はんは…」
「おお?」
はだけさせた胸元から、溢れんばかりの乳房を掬い出す。
ねねと比較すれば張りには劣るが、その大きさと柔らかさはそれを凌駕し、
乳輪も控え目なねねに比べれば、相応した膨らみを桃色に咲かせていた。
「こうどす♪」
「お…ほぉ。おつなもんだ。」
強制的な口腔内蹂躙により、潤滑液は不要だった。
みっしりと包まれた勃起は一部の隙も無く包み込まれ、
阿国の動きに合わせてヌコヌコと柔肉の狭間で踊る。
「…どう…どす?…うちのおっぱい……」
「す…げぇ。最高だ。」
硬くしこる桃色の乳首が、慶次の太ももを激しく擦る。
「んふぅ、嬉しおす…」
無意識に慶次が腰を振りだすと、阿国は
それに合わせて乳房ごと上半身を上下させた。
慶次が揺れる度に乳肉に魅力的な波が走る。
阿国が一旦動きを止めると、力一杯乳肉で勃起を圧迫した。
そのまま亀頭に溢れる雫を舌先で舐め取り、鈴口に接吻を連続で送る。
全体への柔らかな圧迫感と、先端への心地良い衝撃が一気に慶次を加速させた。
慶次は阿国の頭をグイと押し込んで亀頭を咥えさせると、
「よ…し。出す…ぞ……」
再び腰を突き出し始めた。
北砦に、性交しているような濡れた音が調子良く響く。
肉茎が乳肉を弾けさせ、亀頭が阿国の唇を好き勝手に蹂躙する度に。
…ヌコッ、ヌコッ…ニュコ…ヌコ……
「…あっあっ……んぁ……ん……やッ、やん!……」
……プジュッ…グポッ…クポッ、クポッ、プシュッ!!……
「…んッ!……んぷッ、ぷぅッ!!…ぷぁっ、ぶぁッ!!……」
「くッ…う!!」
幾度もしごいてきた乳房が根元に下りた丁度その時、慶次が大きく震えた。
「んッ!…あぶァ!!」
最大に膨らんだ勃起から阿国の口元へと、壮絶に飛沫を注ぎ出した。
あまりの勢いに阿国を外した精液は髪に、一部は虚空へと飛び散っていく。
無論直撃軌道は唇周辺から口内へと、美しい肌をさらに白く汚していく。
「…んふふ、熱ぅて濃くて…。美味しいどす…。」
いまだ乳房でしごき続ける阿国に合わせ、出し惜しみ無く射精が続いた。
ギュムギュムと豪快にしごかれる勃起は、まだ出るのか、
それとも次を望んでいるのか、なかなか萎えてはいかない。
「い…やぁ…。凄ぉ…。」
亀頭から根元へと乳肉が降りる度に、鈴口から精が源泉の様に溢れ出る。
「そぉ…れ。」
最後に一層丁寧に乳房を下ろすと、プックリと鈴口が雫を溜めた。
チュッ…
「うおッ…」
その鈴口との最後の接吻からしばしの間があった。
心地良い余韻が慶次を包む。
「どろどろやぁ…。」
「ははっ、すまねぇ。」
いまだ陰茎を挟んだままの谷間には、精液が溜りを作っていた。
白濁する胸を解放すると、精が糸を引いて地に落ちていく。
「さてとぉ。」
「さて――」
若干早く、阿国が切り出した。
その言い方に、慶次は自分とは微妙に違う意図を感じた。
手元に置いた傘を取り、阿国が立ち上がる。
「んふふ。」
瞳の奥に灯る、妖しい光。
その別人のような視線は股間めがけて集中している。
「なん…だ?」
視線は股間めがけて――
「んふふぅ。」
「おい…?」
股間めがけて――
「堪忍♪」
ねねの元に、二人の様子を一部始終探っていたくの一が戻ってきた。
「あぁ、お疲れ様。首尾はどう?」
「上々。前田慶次沈黙。」
「あのコは?」
「帰陣中。」
「ん、ありがと。お疲れ様。下がっていいよ。」
書簡を渡すと、くの一は影を残して消えた。
「どれどれ。ふむふむ…あはは。」
書簡の最後に目を通すと、ねねはそこで首を傾げた。
「ん?」
『 □→□→△→□→△→□→□→□→△→△→△ →○』
「…最後のこれ、なんだろねぇ?」