漆黒の闇を、大軍団が駆け抜けて行く。
「急げ! 大返しじゃあ!!」
先頭で馬に鞭打つ秀吉の視線の先には、信長の
敵討ちのさらに先まで見えているようだった。
その後方に続く重臣、加藤清正、福島正則、石田三成。
そこに、さらに続く人馬があった。
「お、おねね様、なんでここに!?」
ねね。
同じ長屋で暮らす頃よりの秀吉の妻で、彼の
出世の影には彼女の姿がいつも見え隠れしていた。
「清正、正則。うちの人…秀吉のため、戦、ガンバってね!」
「はっ、おねね様!」
主君の妻というよりも、母親に返事するかの様に二人は返事する。
「三成もガンバってね!」
「…言われなくても頑張ってますよ。」
そう言い残し、三成は群を抜きん出た。
「損な子だね。」
とは言っても、三成の態度も母親と話すのが恥ずかしい少年の様にも見える。
ドドドドドドド……
そして、さらにさらに続く人馬。
「うちも。」
「…………。」
「なぁて、うちもぉ。」
「あのねぇ……。」
阿国。
いつぞやに握り飯を馳走した以来、ねねの傍から離れない謎の舞い手。
馬の動きに合わせて豊かな乳房を踊らせながら、阿国は
自分もねねに言葉を貰いたくて、瞳をキラキラと光らせていた。
「はぁ…。……あなたもガンバってね…。」
「あぁん、おおきに〜。」
「やれやれ、変わった子になつかれたモンだよ…。」
戦地的には明智軍有利に始まった山崎の戦だったが、秀吉軍の電撃的な
戦法により、戦局は膠着状態から秀吉軍有利になりつつあった。
「…やれやれ、それじゃあ俺も始めますかね。あいつのために。」
崖の上から敵兵を狙撃しようと構える男、雑賀孫市も山崎の地にあった。
「…………」
銃口の先には、男ばかり。力士の様な男までいる。
「あーっ、やっぱやってらんねぇ。なんでここには女がいねぇんだ!
こう…こんな感じでさ、細い腕で薙刀とかもってさぁ。」
空に理想の体形を銃でなぞり、孫市は完全にやる気を無くしていた。
「へぇ、お前さん。便利なモン持ってるじゃないか。」
「うおッ!?」
邪念の最中とはいえ背後をとられ、孫市は銃を向けた。
「ちょっとちょっと。そんな物騒なモン向けないでおくれよ。」
そう言うねねは両手を腰に添え、言葉ほどに動じてはいなかった。
「ああ…貴女は確か、秀吉のこれだったか。」
握りこぶしからピッと小指が出る。
「やだよ、この子は。照れるじゃないか。」
照れ笑いしてあどけるねねだったが、彼女は軽く肩で息をし、
露出の多い肌には、うっすらと汗を浮かばせていた。
それは天王山奪取に彼女が大いに貢献した事を意味している。
「へぇ…淑やかな女性も良いが、貴女の様な健康的な女性もかなり素敵だな。」
孫市の軽口を聞いてか聞かずか、ねねがポンと両手を合わせる。
「そうだ。ねぇ、お前さんに頼みがあるんだよ。」
「おやおや、何でしょう?」
「戦なんて早く終わるに越した事は無いしねぇ。
そいつでパッと敵の大将をやっつけておくれよ。」
「…それは難題をおっしゃる。」
「ね? お願いだよ。」
「そうですねぇ…。」
不精髭を擦り、思案する。
だがそれは、決して気付かれないようにねねの姿態を眺めるためのものだった。
「だ、駄目なんだ!」
嗚呼っ、とばかりに孫市が急に頭を抱えた。
「どうしてさ?……っていうか急だね…。」
「俺…いつも肝心な時に限って雑念が浮かんで……」
「雑念?」
「その……興奮しちまって、上手く当てられねぇんだ。」
「こ、興奮かい?」
孫市の説明によると、狙撃時に起こる不安が通常の興奮から性的興奮に
変化していくというもので、それは極めてしどろもどろなものだった。
「…だから、興奮しないよう、前もって誰かが鎮めていてくれれば俺だって…。」
ジー…と孫市の目を見つめ、ねねが歩み寄る。
「…お…れだって……」
孫市の目が忙しく宙を泳ぐ。
(やべぇ……普通にあからさま過ぎたか…?)
「…………。」
「…………。」
「……はぁ。しょうがない子だねぇ。」
ねねは口から溜め息を漏らし、ガクッと顔を俯けた。
「おっ! それじゃあ…?」
「あたしが鎮めなきゃ誰がやるんだよ…。まったく。」
面を上げたねねの頬は、ほんのり桃色に染まっていた。
(ぃよっしゃああぁーーー!!)
心の中で、孫市は両手を握り締めた。
「ほら、こっちおいで。」
ねねは孫市の手を引っ張り、茂みに連れて行く。
「お願いするぜ。」
「なんかついさっきと態度が違わないかい?」
「あ…その……お、俺、中途半端に格好付けなんだよなぁ。」
「…なーんかアヤシイんだよね。」
「は、ははは……」
「う〜ん…。い、いいかい? 旦那様には内緒だからね!?」
「ええ、もう。当然ですよ。」
人影も見えない茂みの奥。
途端に孫市はねねを抱き締めた。
「ちょ、ちょっと!」
汗と女の色香が混ざった甘酸っぱいねねの芳香を楽しみ、
「嗚呼……これだから女はいいんだ。女は。」
孫市は本当に目尻に涙を溜めた。もちろんねねの尻を撫でつつ。
「こ、こら!」
「さてと。」
唇を奪わんがため、孫市が顔を急速に接近させる。
「あ…だ、ダメ!」
「どうしてさ。」
孫市の鼻をギュッと摘まみ、ねねは顔を背けた。
「そこは…とにかくダメなんだよ!」
「やれやれ、残念だ。」
「いいからおとなしくしてな。」
そう言ってねねはくたくたと孫市の正面に膝付いた。
衣服をずり下げるねねの頭を撫でながら、孫市はすでに感無量に近かった。
(あー、やべぇ。俺、この瞬間のために生きてるのかも……)
孫市の陰茎をぼろん、と露わにしたというのに、ねねは苦笑いで見上げる。
「や、やっぱり止めとかないかい?」
「そっ、そんな!! 俺、滅茶苦茶頑張るから!!」
「う〜…。」
桃色から朱色に火照るねねの唇が、陰茎に近づく。
チュッ……
「ぅおッ…!」
鈴口におずおずとくちづけしていた唇が、徐々に開いていく。
張り詰めていく亀頭を徐々に飲み込み、とうとう根元まで咥え込んだ。
「おおっ!!」
「ぷぁ…あ、あんまり変な声出すんじゃないの!」
「気持ち良いんですよ。ほら。」
「んぶぅっ…」
口内に無理矢理気味に突っ込む。
孫市の表情には、先程の『へたれ』的な面影はゼロだった。
諦めたのか、吹っ切れたのか、ねねも次第に奉仕が積極的になっていく。
鼻から色気のある吐息を漏らしながら、唇を前後に送る。
「ふ…ん……んっ……ふ…ふぶ……」
「あー…良い……良いっ…。ほら……」
「んぷぅ…」
ぬめる唇から勃起を引き抜き、亀頭を支えて裏筋を見せ付けると
ねねの頭を掴んで唇を押し当て、唇全体で裏筋を上下させた。
「おお……舌も使って…な…。」
言われたままにねねは舌を絡ませ、唾液で裏筋を光らせる。
さらに薄皮を唇で引っ張り、時には甘く亀頭を噛んだ。
「いい子だ。さぁ、次は玉だぜ。」
ねねはさらに腰をかがめて沈み込み、孫市の陰嚢を片方咥え込んだ。
「うおっ!」
ポコンッと唇から離し、もう片方に唇を付ける。
「お…!?」
唇からの吸引が徐々に強くなっていく。
「おおっ、うおぉッ!?」
ボコッと丸々飲み込み、捕えた口内で舌を踊らせる。
いつの間にか伸びたねねの指が、亀頭の先端をくすぐっていた。
まったりとした陰嚢の奉仕をたっぷりと楽しむと、
孫市は再び陰茎をねねの口に導いた。
自然と出たねねの舌先に擦り付け、ペチペチと軽く叩き落とす。
「んあ…ぷぁ……」
「くそっ、た…たまんねぇ!!」
「え!?…あっ、や! こっ、こらぁ!」
強引にねねの胸元をはだけさせ、乳房を晒す。
「た、頼むよ! 触るだけ! な!?」
「……さ、触るだけ……ね?」
孫市は近くの岩に腰掛け、ねねも続いて股間にうずくまる。
早速孫市の手が乳房に伸びた。
(嗚呼、お前さま…。あたし、なんてコトしてんだよ……)
「あ、やッ! やん!」
興奮した乳房を荒々しく掴まれ、ねねもたまらず声を挙げた。
「く、咥えてくれ…!」
「あ…ぶぁっ!」
恥ずかしさを誤魔化すため、ねねも奉仕を再開する。
「あむ……ん…ふー……んむぅ………ふぅっ……ふぶぅ……」
孫市の指の調子に合わせて、時折ねねの奉仕が止まった。
豊かな乳房を揉みくちゃにされる度、小さく震え、
目をギュッと瞑って快感をやり過ごす。
「はは、愛らしい声出すじゃねぇの。」
「…やあ……あ…だ…めぇ……」
「ほら、しゃぶれって。」
両手一杯に溢れる乳肉を、左右交互に揉み倒す。
「ん゛ーッ!…ん゛ーーーッ!!」
悲鳴に近い吐息を漏らしながらも懸命に口腔内愛撫を続けていたが、
屹立した乳首を巧みにこね回され、ねねは完全に止まってしまった。
「…はぁ…は…あぁ……も…もう……」
桜色の乳首は完全に勃起させられ、痛々しい程に張り詰めている。
「さぁ、そろそろ…だな……」
ぐったりとしたねねの脇を抱え、再び孫市は立ち上がった。
一言ねねに言伝した後、膝立ちさせて上から勃起を咥えさせる。
ねねが片方の乳房を掬い上げると、孫市はそこに陰嚢を押し付けた。
張りのある乳肉とコリコリとした乳首が陰嚢をくすぐり、
ねねの口腔内愛撫も速さと激しさをより一層増していく。
「す、すげぇッ! 普通に……や…べぇっ!」
孫市がガクガクと腰を震わせ、ねねの頭を掴む。
「い…くぜ?……いい…かい?」
「…ぅんっ……」
「飲…んでくれ……」
もう一度小さく頷いて、ねねは亀頭に舌を激しく絡めた。
自ら乳房を振って陰嚢や裏筋を可愛がり、陰茎の根元まで唇を送る。
「あッく……で…るッ……いくぜッ!!」
孫市の腰がガクッと跳ね、ねねの目が大きく見開く。
二人の動きが止まり、そこにはゴク…ゴクッ…と嚥下していく音のみが響いた。
「うあっ…すっげ……吸…われ……」
ねねの頬が窄まり、後から滲み出る精も吸引される。
「…ん…ぷは………良かったかい…?」
「ああ……最高だ…ぜ……」
身繕いを終え、孫市を送り出す。
「さて、これで鎮まったろ?」
「あぁ。見てな…。一発でキメてやるぜ。」
「期待してるからね。これからもずっとうちの秀吉のために働いてもらうよ。」
ニヤリと笑みを浮かべた孫市は、ねねの頬をそっと擦る。
「それとこれとは話が別だぜ。これからも戦の前は一発鎮めて……」
「そう言うと思ったよ。」
ニコッと笑みを浮かべたねねが、四人に分身した。
「オホン。じゃあ改めて。…期待してるよ。これからずっとね。」
「ふぁ…い……」
顔面ボコボコの孫市が泣く泣く返事をする。
「まったく。男ってのはほんとに馬鹿だねぇ。
気付いてなかったとでも思っているのかい?」
「…ふふぃふぁふぇん………」
「あんたの力は旦那様の力になる。これからも無理をさせる事に
なるだろうから、あたしもイイ思いさせてやったんじゃないか。」
説教が終わるやいなや、孫市は急ぎ光秀の本陣を目指した。
「ねねは〜ん。」
「ん?」
ブワッ、と阿国が文字通り空から降ってきた。
「わぁっ!!…あ、あんた何してんのよ!!」
「違いますねん。傘広げましてな、天王山からフワフワ降りていったら
そらもう皆さん喜びましてなぁ。天女や言うて視線釘付けどす。」
阿国の懐にはおひねりが満載だった。
「あんたは…。手伝ってんのか邪魔してんのか、分からない子だよ…。」
「戦は止まっとります。」
「…………。」
崖から見下ろせば、両軍が手を止めて阿国に期待の視線を注いでいる。
「うふふ。」
「参ったよ。…ってあんた、その格好で?」
「そらそうどす。」
「ちょ、ちょっと! 下着丸見えじゃないの!!」
「え?……あらぁ、いややわぁ。」
腰をくねらせた阿国に恥じらいの様子は全く無かった。
「ん? 何や、ねねはん……」
くん、と鼻を小さく鳴らし、阿国がねねを嗅ぐ。
「ちょっと生臭おまへん?」
「そ、そう!?」
「ん?…ん〜?」
「…あ、あー、そう! ちょっとお腹すいたから、猪捕まえて食べたんだよ!」
「あらぁ…。ねねはん、野生どすなぁ。うちちょっと引きますぇ?」
「あは、あはは……」
(とほほ……。)