「と!いうワケじゃ。今日も頼むで〜三成!!」  
「・・・お帰りは朝方ですか?」  
「わかっとるじゃないか!まぁ、そこんとこ上手く頼むで!!」  
そう言って、秀吉は意気揚々と出かけていった。今宵も花町に連れと赴くらしい。  
そして、毎度のこと自分はねねへ言い訳を述べる。どこぞの大名と大事な話をするとか、そんな見え透いた嘘を述べるのだ。  
「お前は機転が利くし口も巧い」「ねねなら三成の言う事を信じるだろう」  
そんな理由でこの役目に抜擢されたわけだが・・・複雑な気持ちに陥る。  
あのような美しい人を妻に娶りながら、何故まだ女を求めるのか。  
それならば・・・・・・この私に。  
 
あの方を下さい  
そんな事、口に出せるわけが無い。  
 
「いっその事、抱いちまったらどうですかい?」  
左近の言葉に、思わず口に含んだ酒を吹く。  
「だ、大丈夫か三成!?」  
隣にいた兼続があたふたしながら背中をさすった。  
「でもよぉ、一理ありだぜ?」  
くーっと酒を飲み干し、慶次も深く頷く。  
「考えてたって悶々とするだけだ。想いを胸に秘めるのは女だけでいいじゃねぇか」  
「慶次!三成の相手を誰か忘れたのか!?左近殿もそれを承知で申されたか!?」  
軽率な発言に、兼続は説教をする。  
「天下人、秀吉様の妻であるねね様であるぞ!更に秀吉様は三成が最も尊敬するお方。そのような方の妻を寝取るなど不義極まりない!!」  
「しかし・・・そこには、いつも兼続殿が唱えている愛があります」  
「むぐっ!?」  
幸村の冷静な突っ込みに思わず兼続は口ごもった。  
「それとも、殿の想いはただの行き過ぎた母への情愛か・・・」  
「違うッ!」  
皆の意見を静かに聞いていた三成が、左近の一言で声を張り上げる。  
「ねね様は・・・確かに俺の母御も同然だ。だが・・・」  
 
いつ頃だろうか。  
あの人を見る目が、知らぬ間に変わっていた。  
・・・次第に胸を支配していくこの感情。  
母としてでなく、女として。  
あの方を誰にも渡したくない。  
全てを自分だけのモノにしたい。  
もうあの人は・・・人のモノなのに。  
 
「・・・俺は、彼女を・・・一人の女性として見ている」  
三成の紡ぐ言葉を、四人は黙って聞いていた。  
「本気、なのですね」  
「愚かだと言ってくれ」  
真摯に見つめる幸村を、三成は自嘲も含めて笑う。  
「しっかし、ねね様も不憫だねぇ。旦那は毎晩女漁り。気付かぬ所で若い男が欲してる」  
そう呟き、慶次は再び酒を運んだ。  
「その男が、子供のように可愛がってる部下だとは思いもしませんでしょうなぁ」  
慶次に続き、左近もカッカと笑う。  
「不義・・・と一言で片付けられるようなものでは無いのか」  
「複雑ですねぇ。愛というのは」  
こちらは感慨深く、兼続と幸村が馳せていた。  
「・・・俺も愚かなら、こやつらも愚か、か」  
呑気なヤツらだと、微笑を浮かべる。  
だからこそ全て話せるのだな、と。  
 
・・・ねねの所へ向かう途中で、この間の飲み会を思い出した。  
「いっそのこと・・・か」  
何を馬鹿な、とすぐさま自制する。  
そして、ねねの寝所へと辿り着いた。  
待女に尋ねると、もう休まれたと言うのでここに来たのだ。  
初めて訪れる愛する人の寝所・・・。気持ちを鎮め、声をかけようとした。  
その時である。  
 
「あっ・・・んぅ・・・・」  
 
「・・・ッ!?」  
思わず飛びのいてしまった。何だ、今の声は・・・。  
無意識に息を潜め、耳を澄ましてしまう。  
「ふ・・・んん・・・ぁあ」  
くちゅり。  
・・・聞こえた。確かに。粘着質な音と、艶やかな声。  
他人の気配も感じられない。という事は・・・。  
(自らを慰めて・・・)  
「はぁ・・・はぁあ・・・・」  
 
彼女も寂しかったのだ。隣にいるはずの夫は留守が多く、一人で長い夜を過ごしてきたのだろう。  
火照る体を持て余し。誰もいない寝所で自慰にふけり・・・。  
 
その間にも、俺はこの感情を押し殺してきたのに。  
貴方の寂しさも、肉欲も。全て埋めてやれる男が。  
 
ここに、いるというのに。  
 
「おねね様」  
「ひっ・・・!?」  
突然、暗闇に響いた声。障子の向こうで肩をびくつかせる様子が見てとれた。  
「おや・・・お一人でしたか。邪魔してすみません」  
無造作に障子を開き、寝所に上がりこむ。  
「ち、ちがうの!これは・・・!!」  
必死で夜着をかきあわせ、足を閉じた。  
その奥に、露に濡れた花弁があると思うと・・・胸が焦がれる。  
「どう違うのですか?」  
乱暴に腕を掴んで押し倒した。か弱い悲鳴は、いつものように外へ通る声量では無い。  
「お願い・・・あの人には黙っててぇ・・・」  
涙を流し、不安に震えるその姿はまるで小鹿のようだった。  
「今の事・・・忘れて・・・お願いよ、三成」  
「・・・忘れろ?」  
口の端を吊り上げ、冷たく笑う。  
 
親のはぐれた小鹿を狼の前に野放しにする事。  
どういう事か・・・教えてさしあげましょう。  
 
「あんなもの見せられて忘れろ・・・ですか。無理な注文ですな」  
「見せられてなんて!そんな・・・そんな事・・・」  
ねねの言葉に耳も傾けず、その豊かな胸へ手を忍ばせた。  
「ひゃ・・・・」  
ゆっくりと、夜着の下でその胸を撫で回す。時折、硬直した果実が触れ、その度に体が仰け反った。  
「口の割りには、随分硬くなってますね」  
耳元で意地悪に囁くと、ふるふるとねねは頭を振る。その反応が気に入らなくて耳朶を口に含んだ。  
「や、やだぁ!三成ぃ・・・ダメぇ・・・」  
ねっとりと舌を絡ませ、ちゅっ、と音を立てて吸う。その間にも、片手は夜着を弄っている。  
抵抗する力も、段々と薄れていた。  
「はぁ・・・みつ・・なりぃ・・・だめ、よぅ」  
「何がですか?おねね様。はっきり言って頂かないと・・・」  
耳朶を解放し、ふっと耳に息を吹きかける。細い肩が跳ね上がった。  
「こんな・・・こんな、やらしい事・・・」  
「さっきまで貴方がしていた事ですよ?」  
「あぅ・・・」  
困った表情が見たくて顔を覗き込む。いつもの快活さは影も無く、瞳は涙に満ち、頬は羞恥に紅潮していた。  
「それに、ここは喜んでいるみたいですが」  
きゅっと赤く充血した果実を摘む。  
「きゃふっ!?い、いたぁ・・・!!」  
痛がる様子に興奮を覚え、さらに指で強く捏ねた。その度に真っ白な乳房が震え、果実は赤みを増す。  
「いたいよぉ・・・そんなにしないでぇ・・・」  
悲痛な叫びすら今は媚薬に過ぎなかった。瑞々しい唇を舐めとり、豊乳を揉みしだく。手の平には痛いくらい赤い果実が誇張していた。  
「そろそろ食べ頃ですか?」  
手をどけ、膨れ上がった乳頭を甘噛みする。  
「あふぅ・・・ッ!!」  
弄ばれたそこは、刺激を悦びとして受け入れるようになっていた。ねねは痛がる素振りも見せず、吐息を漏らすだけ。  
飴玉のように転がし、次は優しい愛撫をした。痛みが快感となっている時に、突然のねっとりとした舌使い。  
「はぁん・・・・んぁ・・・・・」  
ねねの声も、とろみを増していた。そして、ふと三成は気付く。  
 
ねねの腰が浮いている事に。  
 
「触ってほしいのですか?」  
感づかれたねねは、顔を真っ赤にして体を硬直させた。  
「あっ・・・!?そ、そんな・・・・」  
ふい、と顔を背ける。強情なねねの口を割ろうと、三成は秘所へ手を添えた。  
・・・っちゅ。  
「やぁ!?」  
手の平には柔らかな茂みがあり、指先には添えただけで蜜が触れる。  
「ただ添えただけですのに・・・大げさな人だ」  
そして、二本の指で割れ目をなぞった。そこは少し滑っており、自慰の跡が生々しく残っている。  
蕾のあたりで指を止め、またゆっくりと下降した。往復する度に、ねねの体はびくびくと波打つ。  
「ふぁ・・・んぅう・・・」  
すると、ねねが自分の襟元を掴みこちらを見上げた。何かを訴えかけるような視線で、じっと見つめる。  
「どういたしました?おねね様」  
「み・・・三成、私・・・・・・」  
そこまで言って、ねねは俯いた。体は小刻みに震え、秘所からはちゅくっと蜜が漏れる。  
「人に物を言う時は相手の目を見ろと・・・私に教えていましたね」  
空いている手でねねの顎をくいっと持ち上げた。耳まで紅く染めたその顔は、まるで少女のようである。  
「何かご所望が?特になければ、私はそろそろ・・・おいとましますが」  
「だ、だめぇ!」  
一声叫んで、バッと口に手をした。その仕草があまりにも愛らしくて、笑みが零れそうになる。  
「では、何か言いたい事があるのですね」  
そう言って、蕾を花弁の上からぎゅっと押し付けた。  
「ああんっ!」  
体が胸の奥から跳ね上がる。押し付けたまま、ぐりぐりとその部分を捏ね始める。  
「や・・・・それじゃ、それじゃやなのぉ・・・ひぅ・・・」  
月の光に照らされて、黒い瞳が淡く滲んだ。  
「では、どれがいいのです?」  
「あぁ・・・・さ、さわ・・・ってぇ・・・・・」  
懇願。まさにその言葉通りであった。腰は自然とくねり始め、指に秘所を押し付けてくる。  
「ここ・・・ここね、ちょくせつ・・・さわってほしいのぉ・・・」  
くいくい、とさらに腰を突き出す。不安に怯える様子は完璧に掻き消え、今では快楽を得ようと自らせがんでいた。  
 
想い焦がれた女性を性欲の淵に突き落とす優越感。そして、それと伴うように胸を突く背徳感。  
 
(ふっ・・・何を今更)  
その罪悪すら、今は蜜と溶けあっていた。  
 
「ひゃああんっ・・・!!」  
びくっ、と白い体が飛び上がる。花弁を押し広げると、そこはすでにしっとりと濡れそぼり、蕾は今にも花開こうと大きくなっていた。  
「どうです?一人でするのとは違いますか?」  
「あぅっ・・・ちがうぅ・・・きもち・・いぃ・・・」  
虚ろな瞳が、その快感を訴えている。蜜壷の周りをぐるりとなぞれば、くちゅりくちゅりと卑猥な水音が響いた。  
「いやらしい人だ・・・毎晩、ここをこんなに濡らしているのですね」  
指を離せば、蜜が糸を引く。その様を見せ付けられ、ねねは我に返り目を瞑った。  
「可愛らしい・・・」  
優しく額に唇を落とすと、愛液で濡れた指で蕾を押さえつける。  
「ふぁああッ!!」  
薄皮を剥き、こりこりと刺激してやった。待ちわびていたかのように、ねねは歓喜の声を上げる。  
「あっ、いい・・・!きもちぃいい・・・」  
「そんなに良いのですか?ここが」  
きゅむっと摘み、皮から実を出した。  
「ひゃああんっ!いいの、そこ・・・そこいいのぉ、好きぃ・・・・」  
悦楽に身を震わせ、蕾を愛でる速度を速めれば声も大きくなる。  
「あぁああん!すき、すきぃ!!いいのぉ・・・イッちゃうのぉ!」  
「駄目ですよ、まだイカれては」  
突然、動きを止めた。びくっとねねの体も脈打ち、そして甘える子猫のようにすがってくる。  
「やだぁ・・・とめないで、もっと・・・もっとして・・・・」  
「なら、ここに触れてくれませぬか?」  
ねねの手を掴み、己の下腹部へと導いた。張り詰めたそれに触れるやいなや、ねねは手を引っ込める。  
「お・・・大きい・・・・」  
「おねね様が触れて下さらないのなら、私も触れませぬ」  
「そんなっ・・・!」  
どんなに悲しい顔をしても、眉一つ動かさなかった。観念したのか、ねねが恐る恐る手を伸ばす。  
「こ、こんなに熱いのね・・・」  
布越しに触れられる柔らかい手。それだけでも、どくんと脈打ち大きくなった。  
そして、約束通りねねの秘所へ再度手を触れ・・・。  
ひくひくと待ちかねる蜜壷に、指を捻じ込んだ。  
「んぁあああう!!」  
襲いくる快感に首を反らせる。  
「こんなに絡み付いて・・・よっぽど欲しかったのですね、ここに」  
ぐちゅぐちゅと掻き回せば、きゅう、とすぼまり、指に喰らいついた。  
「あふぅ・・・あ・・・・あぁあ・・・・」  
ある程度広げ、今度は擦り上げるように指を引き抜き、沈める。  
 
その動きに合わせ、ねねは一際高い声を上げた。  
「あぁ!いい、いいよぉ、みつなりぃ・・・」  
いやらしい声で啼き、口からはだらしなく舌を出している。  
「は・・・ふぅん・・・・」  
その舌をすくい上げ、自分の舌と絡める。指の動きが激しくなると、ねねが腰紐を解き始めた。  
(一体何を・・・)  
すると、己自身がひんやりとした空気に触れる。次に触れたのは・・・温かい、ねねの手の平。  
(・・・おねね様)  
小柄な手が、懸命に自身をしごいている。その愛撫に応えようと、さらに指を動かす。  
「ちゅっ、くちゅ・・・ぷぁ・・・んん」  
濃厚な接吻を交わしながら、互いの秘所を愛し合った。次第にねねの中は狭くなり、わななき始める。  
(そろそろ・・・・・・か)  
一気に指を引き抜き、それをねねの眼前へと持っていった。  
「誰が汚したかわかりますね?貴方の口で綺麗にして下さい」  
とろんとした表情で、愛液で濡れた指に舌を這わせる。指先、根元。爪を軽く噛むと、ちゅるっと指を飲み込む。  
「ん、ん・・・・ふぁう・・・んぷ・・・・・むぐっ」  
細かい所まで丁寧に舐め取るその姿に、思わず熱い吐息が漏れた。  
指を離すと、ねねは恍惚の眼差しで見つめてくる。  
「みつなり・・・おねがい・・・・・」  
ねねの指はまだ、三成自身を包み込んでいた。優しく撫でられた鈴口は、すでにぬらぬらと光っている。  
「良いのですか・・・おねね様」  
「うん・・・・こんな所で、やめないで・・・」  
はにかんだ、愛しい笑顔。  
 
「私も・・・そうしたかった」  
 
夢で何度も見た光景が、目の前で、現実として起きようとしている。  
しかし、胸に刺さった棘は未だちくりと痛み。  
全てを忘れ、全てを手に入れるため。  
濡れたまま開いた花弁に、いきり立つ自身をあてがった。  
 
「くぅ・・・・あぁああああああっ!!」  
腰を進め、中を押し広げる。柔らかくて滑らかな感覚に眩暈がしそうだ。  
ねねは嬌声を上げてそれを受け入れる。水を奪われた魚のように跳ね上がっては、三成をきつく包み込んだ。  
「や・・・まだ動かないでぇ・・・こんなおっきぃの、初めて・・・」  
ぎゅう、と袖を掴む。こちらも、こんなにきつくされては動き辛いので、ねねの体をそっと抱きしめた。  
「ん・・・・」  
どちらとも無く相手の唇を貪る。粘着質な音を立て、なぞっては、吸い取る。  
しばらくすると、ねねも適度にほぐれてきた。  
「おねね様・・・・」  
低く呟き、腰を動かし始める。  
「んっ、あっ、あっ・・・・やん、すごいぃ・・・・」  
時に激しく、時に緩め。唇を重ねては乳房を揉みほぐし、律動を早めた。  
「あぁ!みつなりの、あつくって・・・すごく、きもちぃっ」  
その夜はとても静かであった。聞こえるのは二人の吐息と、打ち付ける音。  
そして、契りから溢れ出る蜜が絡まる音だけだった。  
「み・・・みつな、りぃ!みつなりぃ!!」  
首に腕を回し、何度も繰り返す。快楽に溺れた愛しい人が。淫らな恰好で自分の名を呼んでいた。  
じゅぷじゅぷ、と自身を咥え込み。今にも果てそうな声で。  
「おねね様・・・ねね・・・さまっ」  
根元を締め付ければ次は雁首を締め付け、奥まで挿れようものならとくん、と波を打つ。  
三成も、静かに押し寄せる絶頂に耐え切れなくなった。  
「ああっ!ああんっ!ああぁっ!!イク、イッちゃう!溶けちゃうぅ!!」  
「はぁ・・・くっ、俺も・・・」  
もう、本能のままであった。ただひたすら腰を打ちつけ、快楽の時を待つ。  
「きゃうぅう!らめぇ、らめぇえ・・・!!」  
「・・・・・ッ!!」  
 
どくん。  
 
「はぁぁあああああんっ・・・!!」  
熱い粘液が注ぎ込まれると同時に、ねねの意識も弾けた。  
夢へと落ちる浮遊感を味わいながら、三成の精を受け止め、瞳を閉じた。  
 
 
ねね・・・・ねね・・・・  
 
「おーい、ねね。もう昼に近いぞ〜。はよ起きろ」  
聞き覚えのある声が降ってくる。ゆさゆさと体を揺すられ、眼をこすって瞳を開く。  
「お前様・・・」  
「おお、やっと起きたか!ねねが寝坊するとは珍しいのう。よく眠れたか?」  
にこにこと微笑み、ねねの頭をぽんっと撫でた。  
昨日の情事を思い出し、はっと夜着を見たが・・・・乱れてはいない。  
「今日は久しぶりに、ねねの茶漬けが食いたいのう。よいか?」  
「うん・・・、今支度するからね、お前様」  
微笑を浮かべると、秀吉は満足そうに去っていった。着替えようと立ち上がり、夜着を脱ぐ。  
 
ふわっ・・・  
 
「あ・・・・・」  
夜着が風を孕んで舞い落ちる。そして、優しい香りが立ち上った。  
眠るまで抱かれていた、あの腕の中の香り。  
「・・・三成」  
 
ありがとう  
 
 
「でまぁ、最後には結局、甘ちゃんで終わるってとこですかね」  
「ガーッハッハッハ!らしいねぇ〜」  
まだ何も話していないというのに、大男が二人、酒を煽りながら勝手な推測をしている。  
「ふん・・・」  
冷たい一瞥をくれ、空を見上げる。透き通るような青空だ。  
そして、暖かい風がふっと通り抜ける。  
 
微かに漂う、甘い香り。  
 
「ねね・・・」  
小さな小さなその言葉は、大きな空へと吸い込まれていった。  
 
終  
 

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