「イタたたた……。こら!なんてことするんだい!」  
 部屋に入るなり後ろから襲われた。  
 腕をねじ上げられて後ろ手に縛られる。  
 さらに額のリボンで目隠しをされてしまった。  
 身構える隙もなければ相手を確認する事も出来なかった。  
 あっという間に畳の上に転がされてしまったのだ。  
「こんなことするなんて悪い子だね!早くほどきなさーい!」  
 だが“犯人”からの応答はない。  
 遮られた視界。  
 自由を奪われた身体。  
 ねねは急に心細くなる。  
「何とか言いなさい!――誰なの?!」  
 息苦しいほどの沈黙。  
 張り詰めた空気。  
 気配はある。感じる。  
 息を殺してねねを見詰める――視線。  
 根拠はない。直感だ。  
 この視線、この気配は……。  
「……?み……三成?」  
 刹那、張り詰めていた場が弾ける音が聞こえた気がした。  
 
 ねねを後ろから抱きしめた腕は肩の装具をはずすと、そのまま服を引きずり下ろした。  
「――きゃあ、何を……あ、んっ」  
 元もと露出の高い衣服だ。すぐに半裸姿にされてしまった。  
 細身に似合わぬ豊満な胸は乱暴にもみしだかれる。  
 首筋に口づけされ、そのまま耳元まで舐め上げられた。  
 耳たぶを優しく咬みそしてささやく。  
「おねね様。ひどいお人だ、俺を殿とを間違えるなんて」  
「そ、その声、左近?!」  
 ねねは左近の膝の上に抱え上げられた。  
 左近の大きな手が両の胸を弄び、乳首を摘み上げる。  
 ねねはうろたえたが、それは左近の愛撫に刺激されたからではない。  
 ――そんな、あたしが気配を読み間違うなんて……。  
 混乱するねねにはかまわず、左近の手は次第に下へと向かう。  
 わき腹をなで、そっと帯止めを外すと簡単に下着が露出する。  
「まったく……この助平好みの衣装は、亡き太閤殿下のご趣味ですか?」  
「あっ、やめなさい!こら、左近!」  
 あわてて膝をあわせ拒もうとするが、左近の手は止まらない。  
 秘所を守る最後の砦となった下着を細く握り、割れ目に食い込ませるように引いた。  
「ひやぁ……んん!」  
「こんな可愛らしい声で鳴くんですね、おねね様」  
「ああっ駄目ぇ!」  
 先ほどの刺激で出来た隙をついて左近の図太い指がねねの秘所に分け入った。  
 
 ――お、おまえさま、助けて!!  
 左近の指がねねの中をかきまわす。  
 夫亡き後、完全に閉ざされていた場所に火がともる。  
「いい加減にしなさい、左近!!イタズラはもう……」  
 ねねの意思に反して濡れていく蜜壷は二本目の指を受け入れてしまった。  
 クチュクチュという卑猥な水音が辺りに響く。  
「ん……」  
 せめて声を上げたりしないよう耐える。今のねねに出来る唯一の抵抗だ。  
 左近はしつこくねねの壷を刺激する。  
 優しくこね回す。そして時に強く引っかくように。  
「んン……ふ……あっ!あぁん!!」  
「やっと見つけましたよ、おねね様の一番敏感なところ」  
 左近は満足げにクスクスと笑うとねねがひと際大きな声を上げた箇所をさらに刺激する。  
「太閤殿下からも、ココ、ココの所をさぞかし弄ってもらたんでしょうね?」  
「いや……ぁん!違……う、そんな事は……な、い」  
 嘘ではない。こんな刺激は味わったことのないものだった。  
 夫からの愛撫でも、時折寂しさに耐えかねて一人寝の夜に行なう自慰でも。  
 ――あ、あたし、どうしよう。  
「おねね様、可愛いですよ」  
 上半身と首のみ向きを反されて口づけをされる。  
 すでに拒否も抵抗も出来ないまま、唇を奪われ舌を吸われる。  
 どちらのものとも分からぬ涎が口の端から伝いその雫がねねの胸に落ちた。  
 ――どうしよう、犯されてるってのに……イッちゃいそうだよ。  
 
 一度左近の腕を離れ、ねねは畳に倒れこんだ。  
「はぁ、はぁ」  
 肩で息をしながら、逃げる様子もなくただ呆然としている。  
 視界は閉ざされているが擦れの音で左近が着物を脱いでいるであろう事を感じた。  
「さて。それじゃぁ頂いちまいますが、いいんですね?」  
 両の足首をつかまれ股を広げられてようやくねねは気づく。  
 だめ。逃げなくちゃ……。こんなことはいけない!  
「やめなさい、左近!手を、離しなさい!!」  
 両足をばたつかせ、最後の抵抗を試みる。だが、左近の手は足首から離れなかった。  
 それどころか、ねねの抵抗を無視するかのようにもう一度問う。  
「本当に……いいんですね?」  
 口調が、違う。  
 先ほどまでねねをからかうようなふざけた口調ではない。  
 ねねが感じた違和感。先ほどからの気配。視線。  
「俺は別に、おねね様の許可が欲しいわけじゃないんですよ」  
 左近がねねを組み敷いたままその目隠しをそっと外す。  
 ねねは突然明かりが差した視界に目をしばたかせる。  
 そして、見つけた。その男の姿を。  
 氷の視線。  
「三成……どうして……?」  
 ねねの問いには答えず、顎で左近に合図する。  
 “許可”を得た左近はねねの秘所に己自身をあてがうと強引に腰を突き入れた。  
「きゃあ……いやぁ!や、め……」  
 すでにはちきれんばかりにいきり立っていた熱い楔がねねを貫く。  
 未亡人のものとは思えぬ締め付けと狭さで左近は拒まれた。  
 それでも無理やり押し広げ、最奥を目指して突き進む。  
 熱い塊をすべて飲み込んだとき、ねねの瞳から一筋の涙がこぼれた。  
 
「あっ、はぁん!……あぁん」  
 左近が激しく腰を打ち付けるたび、ねねは嬌声を上げる。  
 指攻めによって完全に火をつけられた体。  
 亡き夫への操を守れなかった背徳感。  
 そして三成に淫らな姿を見られているという羞恥。  
 それらすべてがねねの箍を外してしまった。  
 今はただ、与えられる快感に酔いしれているだけだ。  
「くぅ……おねね様、そんなに締め付けられると……も、う」  
 左近は寸前で引き抜こうとしたが、間に合わなかった。  
 熱い精をねねの中にぶちまけてしまった。  
「やっちまったな。殿、面目ない」  
「……かまわんよ」  
 三成は冷徹に言い放った。そして、呆然と横たわったねねを見下ろす。  
 普段からあまり感情を表わすことが得意でない三成。  
 そんな三成が今見せる冷徹な表情に、ねねは初めて恐怖を感じた。  
 それは、理解できないものを拒絶する人間の本能。  
「所詮、あなたもただの女だったっていうことですね」  
 左近と入れ替わりにねねに覆いかぶさり、その胸に吸い付く。  
 冷徹な表情、氷の視線。  
 そんな三成から受ける愛撫は甘く、優しく、熱い。  
「三成……駄目……」  
 ――こんな愛し方しか出来ないなんて、駄目。  
 ――本当に不器用な子だね。  
 ――おまえは、人の上に立つほどの孤独に耐えられる子じゃないんだね……。  
 自分の息子のように可愛がってきた三成。  
 その心の闇を今までちゃんと癒して上げられなかった。  
 理解しているつもりだったのに。  
「三成。駄目!駄目ぇ!!」  
 だが、ねねの懇願も涙も三成を止めることは、出来ない。  
   
 関が原まであとわずか――そんな一夜の出来事。  
 
 

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