赤い牙である。
蝋燭の頼りない灯火に照らされたそれは血塗られたような色味をしていた。
事実、幾人もの命を食らった刃だ。彼の拳の先端で、常に
獲物を待ちかまえている。
夜叉か般若か、その口は思わず言葉を飲み込むような、真の赤色に染まっていた。
小太郎は自分に従順なその凶器を、傍らへ据える。
「小太郎様」
気配はあった。側近のおなごの声が、襖越しに降る。
名を、りよといった。そのあたりの文官より賢く、湯女よりもずっと色気がある。
今のところ、唯一気に入っている女だった。
引き戸がゆっくりと開かれ、その前にりよは座り込んだ。小太郎が顎で招くと、
肘掛けのあたりに導く。
まずは抱き寄せた。小太郎が腰の辺りを撫でてやると、惑うように腰をよじる。
りよの体は柔らかかった。戦いに身を置いてはいるが、女性らしい肉付きは失っていない。
続けて気まぐれに耳をなぞると、瞼を硬く閉じ唇をかみ締めた。
小太郎は口角をつりあげ、沸き上がる情動を隠さない。
「……寒い、な」
歪めた唇から、ぽつりとこぼれたに過ぎなかった。が、炎とともに
りよの顔が揺らぐ。熱っぽい鳶色の瞳を、ちらちらとかすむ炎が飲んだ。
潤んだ眼差しは誘うように、許しを請うようにまっすぐである。
りよの白い手が、服の合わせ目にのびた。指先がするすると入り込むと、
僅かずつ肌がさらける。さらしはない。
普段おさえつけられている豊かな乳房は、小太郎が思っているより立派であった。
布を押し上げて作られる谷間はいつ見ても窮屈そうで、
一度は解き放ってみたかったものだ。
今ではその先端で、濃い象牙色のつぼみが膨らんでいるのすらも見える。
乳暈からぷっくりと浮きでたそれは、彼女の意思以外の何かを悟らせた。
香が焚かれていた。皿の上で焙った風魔の秘薬は、鼻や咽喉の粘膜から
りよを狂わせる。忍ならばまだ耐性でもあろうに、彼女は拷問の経験すらないのだ。
小太郎の視線に耐えるように、目をそらすりよ。自分から衣を滑らせたことに対し、
まだ恥じらいがあるらしい。
「震えているぞ」
りよの、小太郎からすればよほど軽い体を見据えた。火照っている。
この若巫女の肌を犯すのは三度目だ。
月夜に禊を行っていた彼女を、戯れにまず犯した。神に捧げた体はたしかに、
清らかなものであった。嬲るように弄んでやると、やがて体は本能に従った。
二度目は、戦中の言葉に反論してきた際にである。小太郎の放った
「犬」という単語に、哀れなまでに執着したからだ。
――私は、あなたの犬などではありませぬ
それまで、りよが強く意見を返したことなどなかった。どうにも愉快で、
つい手を伸ばしたまでだ。
唇を舌で抉り、まるで恋人同士がするように甘く撫でてやった。
あまりの屈辱に、ひどい睥睨を浮かべていたものだ。
いかに逆らおうとも、幾度であろうとも、必ずねじ伏せる。小太郎からすれば、
鍛えているとはいえ、若い女子を無力にすることはそう難しくない。
はじめに比べれば、なかなか素直になった。小太郎は恥辱に震える女に、
更なる命令を下す。
「目を開け。我を見よ」
りよは一瞬口を開きかけ、すぐに閉じた。奥歯をかみ締めているのだろう、
顎が震えている。
「聞こえぬか」
急かすよう、少しだけ脅かしてやる。小太郎はりよの変化を細部まで
楽しみながら、低く囁いた。
震えるばかりであった彼女の瞼が、少しずつ持ち上がっていく。
薄布をかぶせたような睫毛は長く、つんと上を向いていた。
肌が粟立ちはじめている。寒さのせいなのか、それとも違う何かが理由なのか、
それはわからなかった。
毅然とした視線、のように見える。きりりと引き締まった表情ではあるのだが、
なにかが溶けている。まるで心の芯が、焚かれている香の熱で蕩けてしまったようだ。
りよはそれから、操られるように小太郎へ近づいた。寒いという言葉に応えるように、
肌を近づける。帷子の隙間から、りよの温もりが伝わった。
小太郎は彼女の腰紐を捕らえると、目をまっすぐに合わせながら解いていく。
りよは既に、自分の意思ですら考えたようにならないらしかった。ただ少し、
抵抗するように掌が胸板を押し返している。弱々しいものだった。
小太郎が手首を片手にまとめあげると、あっさりと抗いが失せる。
何か言葉を発する前に、そのぽってりとした口唇を含んだ。逃げるように首が引く。
腕を引ききってしまうと、あとは貪りたいように貪った。
小太郎は舌の先端を尖らせ、くすぐるように口蓋を弄ぶ。柔らかな
彼女の唇は無礼な侵入者を遮ろうとするのだが、それがかえって舌を
やさしく迎え入れているようにあらわれてしまっていた。
つるつるとした歯列に時折はさまれながら、小太郎の舌はりよの唾液をねぶりとる。
大きな彼の手が、耳を塞いだ。りよの脳内に、直接響くように水音が訪れる。
ざわざわと背筋を這い上がる感覚に、身をよじった。
信じがたいほどの大きな力を感じ、りよは最後の抵抗を試みる。
離れた唇から逃れるように、顔を背けたのであった。
だが、あまりにも無駄だった。小太郎の唇は耳たぶをとらえ、頬を伝い、
目元へと進む。吐息がかかるたびに体の奥でりよの「女」がせつなく鳴いた。
そうしてじきにまた、小太郎に唇を奪われる。今度は決して離されぬよう、
両腕で掴みこまれた。おまえは無力なのだと刻み付けるかのように、
悪鬼に似た男の口付けは続く。
しかしその屈辱は、りよの何かをざわつかせた。唾液を一口飲み込まされるたび、
それが人生の全てであるかのような感覚が増えていく。ひどく甘美で、
蠱惑的なものだ。それが何であるのか、もう彼女は知っている。
認めるわけにはいかなかった。認めてしまえば、彼女は二度と
神に許されない畜生へと成り下がる。それだけは許してはならなかった。
だが、魔手はついに『恐れていたこと』に触れた。
小太郎の左右の手が、その大きな掌ですら少々余る乳肉を押し上げる。
はじめこそゆっくりと、なでまわすようであったその動きは、まだひどく緩慢だ。
手の中で揺れ踊る豊乳は熟れすぎた果実とでもいうべきか、しかし若さに
相応の弾力を持っている。やさしい、生娘に施すような愛撫。やがて、
その欠片も感じさせぬほど苛烈な責め苦へと、徐々に変えていった。
もみほぐし、こねまわし、手の中のしわに乳首をはさみこむ。
ふたつのつぼみを指先でつまみあげると、爪の先端で傷つけぬよう、
その小さな穴をなぞるように掻いた。あまい痺れに悶絶しながら、
りよは逃げ惑うように喘ぐ。
「風魔の犬は淫らよな」
指摘され、りよは目をすがめた。小太郎の一言にかあと頬を熱くさせ、
無言のまま首を振る。手の甲へ歯を立てながら、必死に拒否を繰り返した。
りよの乳首をきゅうとひねりあげた。そのまま上下に、左右に、引っ張りあげては動かす。
たぷんたぷんと、まるで水鞠のように乳は小太郎の手に従った。
呼吸を荒げながらも、りよは声を閉ざそうとしている。それでも漏れる
甘い悲鳴は、確実に理性が削り取られていることを示していた。
なかなか頑張っている、と小太郎は笑った。
だが小太郎にやめる素振りはなかった。乳房を奥から、引き出すようにしぼりあげる。
先程まで手にしていた瓢箪のようにくびれができ、乳首まで到達すると
勢いよく、ぶるんと垂れ下がった。
乳首を小刻みに、拍子よくつまんでは振ってやる。
同時に跨らせた太股を軽く揺すってやると、口角から一筋のよだれを垂らした。
「くうっ……ん」
歯列から押し出されたような声である。だがそれは紛れもなく、
本能が表面に現れ始めているということだ。
小太郎はついに、乳房を押し上げて食らいついた。とはいっても、
それは痛みを伴うようなことではない。まるで渦のように吸い上げ、
舌先で転がす。上下の歯で逃さぬようにとらえ、好き放題にいたぶりつくした。
小穴をつついてはほじり、吸い付いてはかりかりとくすぐる。
「ひっ……ひぐ……あ、ああ」
白い咽喉をさらしながら、りよは泣き声を上げた。堕ちてはならない、
埋没してはならないと思えば思うほど、香が心を刺す。もういいじゃないか、
初めてではないのだ、神ならば人の弱さもわかってくれようと、
弱音ばかりが溢れてくる。
りよはそれ以上の狼藉を防がんと、手を彼のそれに重ねた。しかし小太郎は
逆に、まるで力を吸い取っているかのように愛撫を加速させる。
「あっ、ああ、あん、あ」
蕩けた嬌声が空間を満たす。どれだけ泣き叫ぼうと、助けは来ない。
訪れるのはこの、凶つ風だけだ。
再び乳首をぎゅうとつままれ、力任せにひっぱられる。釣鐘型に
かたちどられた乳肉は、手を離したと同時に、赤い果実のごとくぶら下がった。
「お、ねが、おねが、い……」
途切れ途切れに、りよがいう。快楽に麻痺したような表情で、
小太郎にしがみついてきた。もしかすると、数度達しているかもしれない。
「もう、およしに、なっ……あひっ」
小太郎が彼女の股間へ手を伸ばし、小豆を軽くはじいたのだった。
続けざまにぐりりとつまみあげる。はじめこそ可憐な花びらは閉じていたものの、
無情な破壊者の前にはあまりに無力だった。
ひときわ高い声があがり、小太郎の手に熱いものがかかる。潮だろう。
小太郎はそのまま、ぐりぐりと小豆をこすり、はじき、弄んだ。
つまみあげては転がし、皮を剥いてなぞる。りよは背筋を限界までそらしながら、
その快感に耐えようともがいた。だが無意味この上ないことだった。
小太郎は尻を乱暴につかみあげ、畳に彼女を下ろす。力のこもった太股を
力任せに開かせると、付け根で開いた花に目をやった。陰毛は濃いほうのようで、
淫水がしっとりとぬらしていた。
じくじくと呼吸をするとろけた蜜園、ふくらみきって充血した小豆、
そちらもまるで男を欲しているようにうごめく、菊座。
じゅるるとわざと、激しい水音をたて、小豆を吸い上げた。
べろべろと激しく花弁をなめ、執拗に蜜壷を指でほじくりだす。
同時に菊座をいたぶってやった。病に罹らぬよう、清めさせてある。
無論洗浄に対する抵抗はあった。が、城主にこの関係を密告して構わぬと
そえてやると、りよは白い顔を青くして従った。
小太郎は酒の傍らに据えていた小箱を手に取りあげ、蓋をひらいた。
中には綿と、南蛮細工の小瓶が入っている。栓を抜き、手にとった。
粘性のあるそれは、風魔の秘薬をずっと濃縮したものである。
指先になじませるようにこすると、小太郎自身もじわじわと熱を感じ始めた。
彼だからこそさして影響のないように見えるが、先日まで生娘であったおなごには
あまりに残酷な代物である。
だが小太郎に躊躇いはなかった。秘薬によって得られる副作用は、
水分を摂取することで緩和される。水に触れる機会の多いりよのことだ、
日常に支障をきたすことはあるまい。
小太郎はまず、ぷっくりと膨らんだ恥丘を辿った。付け根をくすぐるように、
だが確実に馴染ませるように指を動かす。りよは腰骨を回すように
よじりながらもがいた。それは逃れようとしているようでもあり、
薬を欲しているようでもある。小太郎にとってはどちらでも良いことだった。
「ひっ」
りよの声が短くあがった。どうやら、唇にかけた錠は崩壊したようだ。
続けて指を尿道より少し上に引っ掛け、僅かに力をこめて陰核をむき出しにする。
真珠のようなそれは、はじめての外気に震えていた。
小太郎はまるで、それを慰めるように指の腹を這わせる。
圧力をかけるだけでなく、外気で痛まぬよう、薬で覆うような動きを与えた。
りよの咽喉からは断続的に苦鳴が発され続けている。先刻までは
どちらともつかなかった腰の動きが、小太郎を求めたものに変わっていた。
芯を駆け抜けていく快楽に、まさしく侵食されている。
すっかり薬が馴染むと、薄桃色の真珠はつるりと光を返した。
元々しとどに濡れていたためもあってか、指のすべりは快調である。
少し撫でてやるだけで、りよの膣口は蜜を垂れ流した。
あわれな肉芽を待たせ、続けて花びらを、わざとゆっくり押し引く。
力をこめてすぐには開かずとも、じきに水音を奏でて口をあけた。
さらさらとした流れと、粘り気のある不透明な液体が混ざっている。
幾度か達し、秘薬に狂った体はまたも次なる絶頂に備えているのだ。
しばらく女陰の痙攣する様を楽しんでいた。ひくひくと、小太郎を誘うように
うねっている。ふっと息を吹きかけてやると、おびえたように内壁が揺れた。
小太郎は花弁へもたっぷりと秘薬を塗りこめた。とめどなく溢れ続ける淫水と
混ぜながら、牝の芳香に目を細める。長い指がりよの、膣裏を掻いた。
びくりと一度跳ねる。あらかた、りよの弱いところは把握していた。
小太郎は丹念に、そこを愛撫した。薬は蜜とまざり、肌に馴染み、粘膜を侵す。
まるで訪れた男根を迎え入れるように、彼女の膣は蠕動を開始していた。
しかし小太郎に、まだ許すつもりなどない。彼自身を突き立てるのは、
「儀式」を終えてからだ。
指に半透明の液体が絡みついたころ、ようやく指を引き抜いた。
次は菊座であった。さすがにそちらを改められると、りよは抵抗の言葉を漏らした。
「も……やめ……」
色に染まりきった声である。歯の根が合わない様子で、かちかちと音を立てるばかりだ。
小太郎はそれを鼻で笑いながら、唾液と淫水と秘薬の混ざった液体を
押し込めていった。はじめこそ窮屈な抗いを感じたが、中は案外ひらけている。
膣側の壁をこすり、しっかりと浸透させた。
異物感があるのか、りよは不快そうに足首を伸ばしている。
数度指を行き来させてやると、蜜壷から愛液をふきこぼした。幾度目かの絶頂に、
りよの艶声が繰り返される。
だが達しても、りよがその快楽から逃れることはできなかった。彼女が感じ、
喘ぎ狂うたび、肉体もそれに応える。それによって溶け出した欲の水を
薬は好み、更に「宿主」を狂わせていく。
そしてその効果を打ち消すことができるのは、男の精だけだ。
悪魔の、禁忌の薬であった。
「りよ」
小太郎は、青く冷たい眼差しでりよを見た。眼の鳶色が濁ってみえる。快美の前に、秘薬の前に、肉欲の前に崩れ去った理性がのぞいた。
呼吸するたびに、豊かな乳房が揺れて震える。唇は熱っぽく開き、
真っ赤な舌がのぞいた。汗ばんだ肌は灯りを浴び、上気したそこを更に
燃え上がらせているようだ。
小太郎は半ば蕩けかけたりよを覚醒させるように、乳首をぐいとひねりあげた。
「ふあっ」
薬の効き具合は上々といったところだ。小太郎はりよの耳元へ口を近づけ、
息をかけるように囁く。
「りよ、答えよ。うぬは風魔の何だ」
崩れきったと思っていた牙城は、意外にもまだ残っていたらしい。
りよは目つきを尖らせ、小太郎の意図に逆らった。唇を内側へ巻き込み、
厳しくねめつけてくる。だがそれはまるで、情事に期待する淫売と
なんら変わらない表情であった。
「我に言わせたいのか」
口角を吊り上げる。小太郎の一言一言に、その吐息が触れるたびに、
りよの体が小刻みに跳ねるからだ。それは、最も敏感な粘膜からの
支配が広がっている証拠に違いない。小太郎はごつくもしなやかな指先で、
蜜にぬれた花弁をなぞりあげていく。肉襞の一枚一枚を確かめるような、
軽い刺激だった。だが、りよの背筋は畳から大きく離れる。
まだ足りぬか。小太郎は何の予告もなしに、やわらかく開いた蜜壷へと
指を突き立てた。
「あぐううっ」
口角から、攪拌された唾液が溢れる。きゅうと小太郎の指先を包み込む秘所は、
幾度目とも数えかねる絶頂を伝えていた。
小太郎は呆れたような笑みと溜息をこぼし、続ける。
「うぬはたしかに、潔白であった」
言葉とともに、もう一本指がめり込んでいった。膣全体を押し広げるように開く。
「だがそれは、他者について、だ」
小太郎が囁くたび、りよの意識はかすんで揺れる。桃色の幕をかぶせられたように、
思考能力が蝕まれていた。じわじわと食いつぶされる感覚は、
まさに侵食と呼んで構わないだろう。
小太郎は開いた隙間を埋めるように、更に指を差し入れた。
「では己の指ならば、どうなのだろうな」
それまでこそ肉体に与えられる快楽に流されていた、りよの表情が強張った。
はじめて捕らえて犯したときにも、この顔を見た。小太郎は歯列を片側だけ見せるように、
静かに口角を吊り上げる。それは高圧的というより、不気味の一言に尽きた。
「さあ」
外側にいた小太郎の指が、ぐいと過敏な豆を押す。
「うぬは……風魔の、何だ」
もう片方の指は、菊座の入り口をつつと辿っていく。そして彼の舌は、
耳の軟骨、首筋を流れて乳房へと到達した。
もはや、りよに逆らう余地などなかった。
「ああ……あっ、ああ」
惚けた眼差しが天井に照らされた、小太郎の影を見る。
ひたすら与えられ続ける快楽に苦悶しながら、媚態を見せ付けるように
体がくねった。
「り、りよは」
蝋燭のきらめきは残酷にたゆたい、性悦に弾む重そうな乳房を追うように照らす。
「りよは、小太郎様の……」
小太郎は乳房から顔を上げ、りよの眼差しを捕らえた。
二人の視線が重なる。ついに喜悦の波に爛れきったりよの口元が綻んだ。
それは、隷属の笑みであった。
「小太郎様の……飼い犬です」
はっきりと、その咽喉から言い放たれた言葉。先ほどまであった
理性や貞操観念は一気に消し飛ばされ、淫らで邪まな堕落の道だけが残る。
りよはそれを、己の手を股間へかざすことで示した。小太郎の手の甲に
やさしく重なり、もっと奥へと導くように力がこもる。
「犬は、己を慰めたことがあるか」
小太郎は褒美といわんばかりに、三本の指を纏め上げて押し込んだ。
菊座をなぶっていた指も同時に埋没し、親指はぐりぐりと秘豆を激しくこすりたてる。
「は、はい。申し訳ございません……ああっ」
さらさらとした流れに、粘性のあるなにかがまざる。それは雄を求めて
たびたび吐き出される、濁った性欲そのものだ。
「ど、どうかお願いです、後生、ですから……」
りよの手は震えながら、小太郎の肩口へと寄り添う。
「後生ですから、小太郎様の……小太郎様のもので、どうぞ犯してくださいまし」
それ以上の言い方は思いつかないのだろう、その辺りの語彙は明るくないと見える。
だが薬が回っているとはいえ、その理性が突き崩れたのは意外であった。
肉体には激しい影響を与えるが、脳にはあまり後遺症が残らないものであるからだ。小太郎はこの女が、天性の淫乱症なのかとも考えた。
しかしその瞳に宿っているごく僅かな光は、どれだけ悦楽に埋没しても変わらない。
それが、余計に気に入らなかったのだろうか。
小太郎は思考を振り払いながら、すっかり屹立した己へと手をかけた。
窮屈そうであった下帯を取り去ると、勢いよく力が鎌首を擡げる。
左右に主張しているえらは高く、彼女を威嚇するように滾っていた。
充血して光を返す亀頭、赤黒く染まった肉茎に血管がまとわるように絡み付いている。
長大で、女を狂わせるだけの魔力を秘めていた。りよはそれを見るや、
色に染まりきった声を上げた。
小太郎はわざと、じらすように先端を花びらへあてがう。
既に散らしてしまったはずのそこは、それでも小太郎のものをぎゅうぎゅうと
締め付けた。押し割るように腰を進める。一息に奥まで突き込むと、
呼吸もできないように口をぱくぱくと開閉するりよ。既に鳶色の眼には、
涙がとめどなく溢れかえっている。
周辺に生えた繊毛がりよの急所をくすぐり、苛むように責めた。小太郎は
自らも耐えていたように思い切り腰を叩きつけ、激しい抽挿でりよを追い詰めていく。
はじめの緩慢さなど忘れてしまったように、ただ、壊すための運動を
繰り返した。まだ吐き出しはしない。
射精欲をこらえて体を返し、うつぶせにさせた。人差し指で肉芽を巧みに
弄びながら、反対の手で乳房を支える。まさしく獣のようにりよは喘ぎ狂い、
何度も果てた。
「ふうっ」
小太郎が小さく呻いたと同時に、一度目の射精が行われる。まるで子宮口を
射ち貫くような吐精だ。両腕をがっちりと掴まれ、りよは万歳でもするように操られる。
そのまま浸かっていればふやけてしまいそうな秘所から、
まだ硬度の残る肉棒を抜き出した。無論、りよを休ませてやる気など毛頭ない。
小太郎は続けざまに、もう一方の花へ先端を押し当てた。
「あっ、そちらは」
いや、とはいわせないうちに、ゆっくりと挿入を開始した。裂けて
興が冷めても困る。あくまで、肉欲の奴隷にすることが目的であった。
小太郎は膣と違う狭さを楽しみながら、りよの耳を軽く食んだ。
「無様よな」
咽喉の奥で噛み潰した笑いとともに、囁きかける。りよはそれにすらも
体をおどらせ、涙で更に頬をぬらした。
太腿を、膣から溢れ出した白濁が幾条にも伝っていく。彼女を狂わせる剛直が
再びわななき、菊座からもその存在を重ねた。
まだりよの呪いは解けない。小太郎は仰向けになると、障子のほうを
見るよう彼女にいった。そのまま、まだ反り返り続けている肉棒へと
腰掛けさせる。りよが最も弱い箇所を、ごりごりとこそぐように叩いた。
大きく形のよい尻が上下するたび、淫裂と凶器が交わっているさまがよく見えた。
「あっ、ああ、あ、ああっ――」
りよの体を支えたまま、小太郎は体を起こした。彼女の片方の太腿は
肩にひっかけ、体重をかけて折りたたむ。横向きになったりよの頬を、
泡だった唾液が汚した。
「いい……っ、ああ、いいっ、いいです、こたろ、さ、ま」
それが最後の言葉だ。
小太郎が腰を深く沈め、三度目の射精を行ったところでりよの意識は途切れた。
どこかから声がする、と思った。
嗅覚をくすぐる、甘いにおいもある。そしてそれに混ざった、
たまらないものもある。
渇望してやまないそれを探るように、目を泳がせた。視界が歪む。
主人となった男の顔がようやく、目に留まった。男はその股間に生えた
一物を、二人の性交の痕が絡んだ力を、鼻先へと近づけてくる。
りよは小さく口を開き、亀頭へと口付けを落とした。白く濁り、
泡を作る液体が小さな穴から滲んでいる。まるで息を詰まらせたように見えるそれが
どうにもあわれに見えて、りよは楽にしてやろうとくわえ込んだ。
技術のあるくわえ方とはいえなかった。ただ、どうすれば楽になるのか、
痛みがないのか、尋ねるような奉仕である。とうにほどけてしまった髪を掴まれ、
彼はゆったりと腰を揺らし始めた。舌奥に時折あたる感覚が嘔気を呼んだが、
こらえる。吸い出すように呼吸すると、管にたまっていた液体が咽喉を流れた。
上目遣いに男を見ると、真っ青な虹彩がりよをとらえている。
りよは妙な安堵をおぼえて、口腔奉仕を続けた。
裏側でぶら下がる陰嚢を丁寧に掌でさすり、転がすようにしながら
彼女は解放を待つ。少しでも撫でれば、『それ』が楽になると思ったからだ。
掌の中で、袋が僅かに跳ねた。刹那、子種となる液体が迸る。飲みきれず、
頬や鼻、額をよごした。
「ああ……」
棒は、残滓までもを吐き出しながら彼女の輪郭をなぞった。
それが自分のものであると宣言するように、ねっとりと顔中を辿る。
通った鼻筋も、肉厚な唇も、整った頬も、すべてだ。
りよの白い頬は薄い膜を帯び、蝋燭にその様をさらした。乳房にまで、
欲望の液は垂れ流れている。濃度も、射精の回数にしては考えられないほど濃い。
雄と牝の、爛れた情香が空間を満たしていた。
「りよ」
女は導かれるように顔を上げた。この世で唯一の男に、目が留まる。
これで終わりのつもりか。その青い眼光は、そう告げているように見えた。
「はい、小太郎様」
体をあお向けながら、彼を見つめられるように股を広げる。膝をかかえ、
りよは淫靡に微笑んだ。
ひしゃげた女陰と菊座からは白濁の液が滴り、秘豆は無惨に湿った陰毛を
浴びている。乳房は彼の残した歯型と痣が赤く浮かび上がっていた。
小太郎は満足げに口角を吊り上げながら、深く頷く。
「どうぞ、りよをお好きになさってくださいまし……」
聖女は今宵、魔の贄となった。