じゃき、っと銃を両手に構える。  
この時代に置いて拳銃というものはかなりの珍しい代物だったが、  
彼にとっては既に自分の身の一部のようなものになっていた。  
自分の意識を研ぎ澄ませて狙いを定める。──これも慣れたものだ。  
目標に目掛けて、銃を携えた両手は脱力させながら走ってゆく。  
そしてぶつかる寸前でくるりと回転しながら相手を飛び越え、  
背後から振り向きざまにびしびしと弾丸を撃ち込む。  
 
ガン!ガガン!  
──硝煙の匂いが、爽やかな早朝には不似合いなくらい辺りに立ち込める。  
目標となっている人の形を模した木の板には無数の弾が打ち込まれ、しゅうと煙を立てていた。  
 
「ふん、こんなものだな」  
木の板を無残にした張本人は、偉そうに鼻を鳴らしてそれを一瞥した。  
 
奥州の王、独眼竜。まだ幼さが残る青年を人はそう呼んでいる。──伊達政宗。  
かなり横柄な態度とは裏腹に、彼は学び事にしても武術にしてもひたすら勤勉だった。  
今日もまたいつものように早朝の鍛錬といったところである。  
「撃った後に剣撃を入れ込むのも一手か?」  
精進の姿勢を崩さない彼は考え、実際に試してみようと銃を再び構える。  
 
──と、目標の木の板の少々後ろのしげみからがさがさと足音が聞こえてきた。  
危険を察知しようにも、余りに物音が立ちすぎるので彼は眉をしかめる事しか出来ない。  
何事かと見ていると、やがてそこから一人の少女が文字通りぴょこんと飛び出してきた。  
そこらのしげみと保護色のような若菜色の変わった服を纏って、少女はまるで兎の様に駆けてくる。  
 
「朝から物騒な音がすると思って来てみたら政宗だったのか!早起きじゃのう」  
にこにこと笑いながら、その兎のような少女は言った。  
政宗は舌打ちしてそれに答える。  
「馬鹿め、儂にはやる事が多すぎて時間が足りん。故に早起きなんぞは当たり前じゃ!」  
朝だというのにとても元気そう且つ横柄に政宗が言う。  
 
しかしそんな彼の態度に気を悪くすることもなく、彼女は素直に感心の目で政宗を見た。  
「政宗は偉いのう!・・・しかしたくさんやる事があるというのは大変そうじゃな〜」  
余りにも素直な彼女の反応に、政宗はなにやら気が削がれてしまう。  
「・・・別にそうでもないが」  
「そうでもないのか?どっちなのじゃ??」  
きょとんと見返される視線を逸らしながら、政宗は嘆息して呟いた。  
「・・・もういい」  
「えぇ〜?どっちなのじゃ〜?」  
手を胸元でぶんぶんとさせる彼女に呆れながら、政宗は銃をしまい小浜城へと歩みをむける。  
そんな政宗の様子をみて、彼女はつまらなさそうに声を上げた。  
「もう帰るのか?折角そなたの銃捌きを見ようと思ったのに・・・」  
 
(ここまで気が削がれて鍛錬なぞ出来るか!)  
 
胸中で毒づきながら、政宗はあえて何も言わずに歩を進めた。  
ぶつぶつと不満を言いながらも、彼女は大人しく自分についてきているようだ。  
「全く孫市はこのじゃじゃ馬をいつ迎えにくるのじゃ・・・」  
自然と、ため息と共にそんな言葉が彼の口を突く。  
何か言ったか?と聞いてくる少女をやはり無視して、  
政宗は今日が始まったばかりだというのに疲れたように空を見上げた。  
 
 
奥州王独眼竜伊達政宗。彼の目下の悩み事は、親友雑賀孫市から預けられたこの少女、  
ガラシャの相手をすることだった。  
 
そもそも預かったというより、言い包められて押し付けられたのだと政宗は思っていた。  
 
 
傭兵仕事が一段落したらしく、珍しくこちらに来るという孫市の知らせを聞いたとき彼は正直嬉しかった。  
性格上中々気の置けない友人をつくることが難しい政宗である。唯一無二と言っても良い存在だ。  
しかし実際彼を出迎えた途端に政宗は驚く。孫市の傍らにいるその少女に。  
 
「・・・なんじゃ孫市、情人か?」  
まさかこんなに年端もいかない少女を好む癖があったとはと驚く政宗。  
「あのなぁ、こいつは・・・」  
政宗の驚愕の表情を見て誤解を解こうと口を開く孫市の横から、見知らぬ少女はいきなり口を挟んできた。  
 
「んなんじゃねぇのじゃ!ダチなのじゃ!」  
 
 
ぽかんとする政宗に孫市は改めてガラシャと言う少女との経歴を説明し始める。  
相も変わらずお人好しだと呆れる政宗に、孫市はガラシャに見つからぬよう小声で言ってきたのだ。  
少しばかりこの娘を預かってほしいと。  
当然最初、政宗はそれを受け入れなかった。親友の連れとはいえ得体が知れぬ者に変わりはないし、  
なにより政宗は直感的にこの少女に苦手意識を持ってしまった。  
しかし───  
 
「頼むってマジで!俺だってたまには昔みたいに遊郭いったりなんたりしたいんだよ!」  
「拾った責任は自分で取るのが筋であろうが!儂には関係ない!」  
断固として拒否する政宗をなんとか丸め込もうとする孫市。  
「お前だって男ならわかるだろ?たまにはこう、ねぇ?」  
「わ、分からん分からん馬鹿め!」  
顔を赤くして首を振る政宗に苦笑して、孫市は提案してきたのだ。  
しばらく彼女を預かってくれたら次の戦の傭兵代は無しにすると。  
 
これは政宗の心を揺らした。鉄砲を扱う雑賀衆はかなり強力なのだが、やはり強い分金がかかる。  
それを一度でも浮かせることが出来るのなら、余った金で道でも舗装できそうだと政宗は考えた。  
そんな彼の考えを察したのか、孫市はそこから口八丁で政宗に付け込み、見事ガラシャを押し付ける、  
──もとい預けて、北の遊里へと意気揚々に降りていったのだった。  
 
 
(しかしこのじゃじゃ馬を預かってもう一週間は過ぎるぞ・・・。孫市め、まさか謀ったのではなかろうな!?)  
一人では嫌だという彼女のために一緒に朝食を取りながら、政宗は心底恐ろしい不安を感じてしまう。  
当の不安の種は、柴漬けを美味しい美味しいといいながらご飯と一緒にかき込んでいる。  
こいつに置いてけぼりにされるという不安はないのかなどと思いながら、  
政宗は無邪気そうな、実際無邪気に日々を暮らす彼女を恨めしそうに見つめる。  
──と、視線を感じたのか、ガラシャがふと政宗を見やった。  
 
「?」  
 
にっこりと笑いながら視線で疑問符を投げてくるガラシャに政宗はまた頭を抱える。  
まさか笑い返すことなどは絶対にできるはずがなくて、政宗は無愛想に目を逸らした。  
 
(孫市・・・!雑賀衆無料貸し出しくらいでは済まされんぞこれは・・・!)  
唯一無二の親友を心底憎々しく思いながら、政宗は朝飯を一気に腹に収めた。  
 
 
侍女たちに相手をするように言っているのに、ガラシャは何故か政宗の後をちょこまかとついてきた。  
奥州は彼女にとって未踏の地だったらしくあれこれなにやかにやとしつこく聞かれた。  
 
最近は領土の情勢がよいので大した仕事がない政宗は、  
言い訳をつけて逃げることも出来ずにひたすら彼女の相手をしていた。  
彼自身は、それをお守りだと思っているようだったが。  
 
政宗にとって何かと煩わしい存在のガラシャだったが、教養はあるらしく作法をわきまえ、  
無礼を働かない所は感心した。意外と良く気がつくところもある。  
存外良家の娘なのかもしれないとは思ったが、さほど興味は湧かない。  
むしろそれならばこんなところまで放任している親の顔が知れないと思った。  
 
 
そんなある日、ガラシャが一日一人で近隣を回りたいと言って来た。  
「馬一頭貸してもらえると有難いのじゃ。  
・・・世話になっているのに頼み事など、無礼だとは思ってはいるのじゃが・・・」  
「それは構わんがお供はつけさせてもらうぞ。おぬしは大事な客人じゃ。何かあっては困る」  
そう言うと悪いのうといいつつ、嬉しそうにガラシャは微笑んだ。  
考えてみればここ数日彼女は城からほとんど出ていない。外の空気も恋しいのかもしれないと思った。  
 
「夕刻には戻るのじゃ!行って参る!」  
何度も手を振りながら馬に乗って出て行くガラシャを見送ったあと、政宗は少し申し訳ない気分になった。  
(時間も取れなくはなかったのだし、物見くらいには連れて行ってやれば良かったかのう・・・)  
そう思った瞬間、慌てて頭を振る。  
 
(何を考えておるのじゃ儂は!ただの客人にそこまでする必要もないわ馬鹿め!)  
そこからぐちゃぐちゃと頭の中で葛藤した結果。  
 
 
「・・・ま、久々に儂もお守りから開放されるのは良いことじゃな」  
ぽつりと独りごちて、政宗は足取り軽く自室へと戻った。  
 
 
しかし気楽に過ごせたのは数時間だった。業務をきっちりこなし、自分の時間に浸るも何か物足りない。  
ガラシャがいなくなって普段通りの筈なのに、何故か暇を持て余している様な気がした。  
仕方がないので側近の小十郎に将棋の相手でもしてもらうことにする政宗だった。  
 
 
「しかし最近の殿は楽しそうですな」  
玉露をすすりながらぱちりと盤上の駒を進め、小十郎が言う。  
「はあ?」  
側近の唐突な言葉に、政宗は間の抜けた返事をすることしかできない。  
「いやはや、あの娘が来てからの殿は自室に篭ることもなく色々とお遊びに精力的ではございませんか」  
「・・・それは儂をけなしておるのか」  
 
不服そうに零す政宗に、とんでもないと小十郎は笑った。  
「誰とでも時間を共有するのは良いことですぞ。遊び事にも、学ぶことはございます」  
言われてこの間無理やりガラシャに付き合わされた蹴鞠から何を学べと言うのだと思いつつ、  
政宗は黙って自分の駒を進める。  
 
「・・・じゃじゃ馬娘のお守りなんぞはもうこりごりじゃ」  
 
不躾に言う政宗に、小十郎は笑いながらそうですかと言って流した。  
2、3局程うってそろそろガラシャが戻る頃かというときに、  
それまでゆるやかに和んでいた城内に緊張が走った。  
 
「政宗様!客人の方を同行していた者達が見失ったと言って戻って参りました・・・!」  
「なにい!?」  
声を荒げて政宗が供に付けた者達から事情を聞く。  
「それが、帰りの山道の入り組んだところではぐれてしまったようで・・・。申し訳ございません!!」  
平に謝る彼らに嘆息し、どこら辺ではぐれたのかを細かに聞いて下がらせる。  
あの娘のことだ、何かに気を取られてふらふらと他の道に迷い込んでしまったのかもしれないと政宗は思った。  
そしてもう一度大きくため息をつく。  
 
「全く・・・。独眼竜がここまで振り回されるとは・・・。小十郎、捜索隊を出せ。後儂も出る。馬の仕度を」  
「殿自ら出られるのですか?」  
予想外の政宗の言葉に小十郎は驚いた。  
「親友からの預かりものじゃ。・・・不服じゃが儂がいかんと立つ瀬がないわ」  
言って心底不愉快そうに政宗は顔を顰める。  
幼少の頃から戦場に乱入しては自分の肝を冷やしてくれた主のそんな言葉に  
今更反論する気もない小十郎は、言われたとおりに手はずを整えた。  
 
 
「あの娘が迷い込んだ山には幾つか狼煙台がある。発見次第それをあげよ!」  
こうして日の暮れた薄ら暗い山道に、伊達捜索隊とその主は足を運ぶことになったのだった。  
 
 
「馬鹿め馬鹿め・・・!なにをやっているのじゃあのじゃじゃ馬は・・・!」  
捜索隊と別行動になってからの政宗は、それまで冷静にしていた素振りはどこへやら  
必死の形相になって馬を走らせていた。  
 
ここらで山賊の噂を聞いたことはないが万が一ということも十分にあり得る。  
それに野犬などに襲われる心配もしなければならない。  
言い包められたとは言えども、親友の信頼を裏切るような事だけは絶対にしたくない。  
そしてそれ以上に、ガラシャの身の安全が恐ろしいほどに心配な政宗だった。  
 
──戦場ででさえ、ここまで不安になるようなことはそうそうなかったのに。  
 
城を発つ時に何度も嬉しそうに手を振っていたガラシャが脳裏に蘇る。  
もしあれが彼女を見る最後になってしまったらと思うと、止めなかった自分が嫌になって仕方なかった。  
(こんなことなら物見だろうが蹴鞠だろうが素直に付き合ってやれば良かった・・・!)  
それまでかなり彼女をぞんざいに扱っていたことを後悔しながら、  
政宗は既に日が落ち、暗くなった山道の中必死で目を凝らしながら捜索を続けた。  
 
部分部分で馬から降りお供の松明で丁寧に辺りを見回してみるものの、それらしい痕跡は中々見つからない。  
狼煙台から火があがらぬものかと夜空を見上げても、視界に入るのは暗い闇とそれに映える月のみ。  
遅々として進展のない状況に反比例して、政宗の焦燥は募る一方だった。  
そろそろ夜更けといってもいい時間帯に差し掛かった頃、政宗と供に来ていた兵士の一人が声を上げる。  
「政宗様!これは・・・!!」  
 
彼の方へと近寄ってみる。指差され、松明に照らされた地面には生々しい血痕があった。  
しかもかなりの出血だ。──ひたりと、政宗の頬から顎へと冷たい汗が流れる。  
「どうやら私たちが下ってきた道ではなく、斜面をそのまま下ってきたようですね・・・。  
──!血痕がここから続いているようです」  
兵士が言ったとおり、その血痕から山奥の方へ、点々と、というよりぼたぼたと血の跡が続いていた。  
 
「・・・参るぞ」  
予想出来うる限りの惨事に覚悟を決めながら政宗は馬を進める。  
どうやら血痕の持ち主は山のふもとに流れる川の方へと向かっているようだった。  
次第にざわざわと流れる水の音が聞こえ、やがて闇夜に流れのみを光らせる川が見えてきた。  
そして川の近くに一頭の馬が見える。更にその馬の近くに、──人が倒れているのを政宗は見た。  
 
「──っの馬鹿めがっ!!」  
兵士が発見の声を上げる間もなく、政宗がそこに向かう。案の定、それはガラシャだった。  
気を失って倒れている少女に駆け寄り、急いで抱き起こす。  
「おいっ!大丈夫か!?返事をしろ!!」  
必死にその細い体に何度も何度も声を張り上げると、閉じられていた瞳はうっすらと開いた。  
「う・・・なんじゃ・・・?」  
 
その瞬間政宗は泣きそうなくらいに安堵し、思わずその体をぎゅっと抱き寄せた。  
「う"・・・、ま、政宗、痛い・・・」  
抱きしめられた本人は苦しそうに声を上げる。  
その言葉に先ほどの血痕を思い出した政宗は体を離してガラシャの全身を見つめた。  
「おぬしあれ程の血を流して、一体どこを怪我したのじゃ・・・!?」  
その言葉を聞いて一瞬ガラシャは怪訝そうな顔をし、そして思い出したかのように微笑む。  
「ああ、あの血はわらわのではなくて・・・、あの馬のじゃ」  
言いながらガラシャの指差す方向に目を向けると、  
確かにその馬は額から顔にかけての毛並みが他の部分よりは黒く見えた。  
闇夜で見えないが、血が流れた後なのだということがわかる。  
彼女が無傷であるということに改めて安心した政宗は、大きく息を吐いて肩の力を抜いた。  
 
「・・・来てくれたのじゃな、政宗・・・」  
弱々しくも嬉しそうに微笑むガラシャに胸を突かれた様な気がして、  
政宗は当たり前だとだけ言って目を逸らした。  
 
 
結局視界の利かない中で本道まで戻るのは危険だということになり、近くの狼煙台へと政宗たちは向かった。  
狼煙台の傍には小屋もあるので、そこで夜を越そうと言う事になったのだ。  
 
「全く・・・、とんでもない一日だったわ・・・」  
二人きりの小屋で政宗は嘆息する。ガラシャは済まなそうに身を縮めた。  
「外に見張りを置いておる。儂も出るから用があるときは言え」  
流石に同じ部屋に居ることは出来なくて、政宗は言って引き戸を開けようとする。  
 
「ま、待て、おぬしが行ってしまっては心細いのじゃ!」  
それを聞いて慌ててガラシャは政宗のマントを引っ張った。  
急に後ろから引かれたので一瞬倒れそうになり、慌てて体勢を立て直す。  
「きゅ、急に後ろから引っ張るでない!危ないではないか!」  
「あ・・・す、済まぬ・・・」  
怒鳴られ、しょんぼりと項垂れるガラシャ。  
 
「今日はおぬしを怒らせてばかりじゃな・・・」  
自嘲気味に眼を伏せるガラシャに、政宗は再び嘆息して腰を下ろした。  
「もうよい。・・・おぬしが寝るまでならここに居るから安心せい」  
不貞腐れたように眼を逸らして言う政宗を見て、ガラシャはやっと少しだけ微笑んだ。  
それを見て政宗も安堵する。不安そうにしている彼女を見るのは何故か心が軋んだ。  
 
 
ガラシャの話によると、道が分からなかったのでお供を先に走らせついていっていたら、  
急に馬の頭部に落ちてきた木片が当たり、馬が暴走してしまったらしい。  
宥めることも出来ずに馬にひたすらしがみ付き、落ち着いた所で川に向かい、頭部の治療を施したようだ。  
正にとんだ災難としかいいようがなかった。  
 
 
狼煙台に火を灯し終わった兵士が桶に水を汲んで来た。  
それと手ぬぐいを政宗はガラシャに渡す。  
「埃まみれでは気持ち悪いだろうが。これで体でも拭いておけ。儂は一旦出るぞ」  
「・・・・・・。」  
渡された手拭と、政宗を交互にガラシャが見つめる。  
なんじゃ、と聞く前にガラシャが政宗に近寄り、その兜を脱がせた。  
 
「な、なにをする・・・」  
「政宗、おぬしも汗びしょびしょではないか」  
無造作に切られた短い髪の毛と額が少し湿っているのを見て、ガラシャは笑いながらそれを拭いた。  
「んな・・・!」  
日頃その様な事に免疫がない政宗は顔を真っ赤にしながらも、  
どうしたらいいかわからずされるがままになるだけだった。  
 
お互い無言のまま、しばらく時間が流れる。  
 
彼女が何を考えているのか分かりかねつつも、汗の冷えた自分の顔に彼女の柔らかい手が時々当たって、  
政宗は緊張やら何やらで身を硬くするばかりだった。  
 
「のう、政宗。そちはわらわの事が嫌いか?」  
彼の顔を拭いながらガラシャは突然そんなことを聞いてきた。  
 
何故そんなことをと驚く政宗を見て、ガラシャはあたふたと身を揺らす。  
「いや、別に、嫌われておるのなら、いいのじゃ別に!ただなんとなく、その・・・」  
声をたまに裏返しながら言うそんな彼女が可愛らしくて、思わず政宗は笑った。  
「小煩い小娘だとは思っていた。・・・しかしまあ、おぬしがおらぬと、・・・今日は暇だった」  
こほんと咳払いをして敢えてつまらなそうに言ってみせる。  
 
するとガラシャは政宗を必死の様相で見つめてきた。  
「つまりどっちじゃ!?好きなのか嫌いなのか!?」  
その気迫に気圧されつつ、政宗は訳が分からんと思いながら応える。  
「べ、別に、・・・嫌ってはおらん」  
意地っ張りな彼の、それが精一杯の答えだった。それでもガラシャは納得してはくれない。  
 
「じゃあ好いておるか?」  
「それは・・・」  
 
「わらわは好いておる!」  
 
勢いなのかなんのなのかは分からないが、びしりと言い切るガラシャを政宗は驚いて見つめた。  
「い、いきなり何を・・・」  
「そちと居るとわらわは楽しかった!孫市と居る時とは違う、・・・嬉しくて、切なくて、  
でもずっと一緒にいたいと思っておったのじゃ・・・」  
泣きそうな顔で訴えてくる彼女を政宗はただ見つめることしかできない。  
こんなときにどうしたらいいのか、政宗には全く分からなかった。  
 
「政宗・・・」  
言いながら両手を胸元にやり、困ったように眼を伏せていたガラシャが、  
やがて意を決したように着物をするすると脱いでゆく。  
「なっ・・・!や、やめぬか・・・!」  
慌てて顔の前に両手をかざし、それを見ないようにして政宗は顔を背けた。  
「政宗!わらわを見るのじゃ!」  
その手をぐいとどけて、政宗に顔を近づけるガラシャ。  
「お願いじゃ政宗・・・。わらわの事、・・・見て・・・」  
 
その顔はいつもの無邪気に微笑むそれとは全く違う、幼いながらも女の顔。  
あどけなくも艶やかなそれに怯んでいる内に強引に唇を塞がれてしまう。  
 
(甘い・・・)  
唇を押し付けながら飛び込んでくる細い肢体に押し倒されながら、  
政宗は力なくそれを受け止めるだけだった。  
 
「ふ・・・ん、む・・・」  
懸命に口吸いをしながら政宗の服を脱がしてゆくガラシャ。  
小屋に到着したときに甲冑を脱いでおいたのは良かったのか悪かったのかと  
政宗は柔らかい唇を感じながらそんなことを考えていた。  
 
やがて口内に舌が入り、歯筋をちろちろと舐められるとぴくりと体が震える。  
「政宗、接吻は初めてか?」  
されるがままの彼を見てガラシャはふとそんな事を聞いてくる。  
「ば、馬鹿め当たり前のことを聞くな・・・!」  
顔を赤くして言う政宗を見て、ガラシャは嬉しそうに笑う。  
「政宗の初めて、わらわがもらえるのは嬉しい事なのじゃ」  
そう言ってもう一度ちゅ、と唇を吸う。そんな彼女のしぐさを政宗は心底可愛らしいと思った。  
 
が、態度に出すと負けてしまったように思われ、どうにも素直になれない。  
ふんとそっぽを向いて濡れた唇を拭うだけだった。それを見て、ガラシャが寂しそうに見つめてくる。  
「・・・わらわとの接吻は、嫌じゃったか?」  
「そんなことは言っておらぬ!・・・別に嫌では、ない・・・」  
「それなら、今度は政宗からするのじゃ」  
 
正座をして手を膝に置き、唇を突き出して眼を閉じる彼女のそんなしぐさをいじらしく思うも、  
どうにも本能のままに彼女を貪る自分が情けないように思えてしまって、政宗はなかなか踏ん切りがつかない。  
だから政宗は、彼女の桜色の唇に自分のそれを押し付けるだけが精一杯だった。  
それでも、ガラシャは嬉しそうに笑う。  
 
(孫市・・・。こういう時は一体どうすれば良いのじゃ・・・)  
 
自分のプライドとガラシャを愛でたいという気持ちの葛藤に政宗は苦しみながら親友を想う。  
そんな政宗の胸中など露知らず、ガラシャは半裸になった政宗の胸に身を埋め、その首筋をつうと舌先でなぞった。  
 
「う・・・ぁ」  
ぞわりとするような快感が波立って、思わず声をあげてしまう。  
「政宗、そちの気持ちの良い所、わらわに教えてたもれ・・・」  
火照った顔で言いながら、ガラシャは政宗の少し日に焼けた体を丁寧に舐め上げる。  
 
「ちょっと、しょっぱい、な」  
「あ、汗をかいたから、・・・済まぬ」  
何故か素直に謝る政宗に一瞬目をぱちくりさせ、それから優しくガラシャは笑った。  
「謝ることはない。わらわも汗をかいておるのだし、それに、どんな政宗でも全部、わらわは欲しいのじゃ」  
その台詞に堪え切れなくなって、思わず彼女をぎゅうっと抱きしめてしまう。  
 
「貴様は・・・馬鹿だ・・・」  
 
えへへ、と胸の中でガラシャの困ったような笑い声が聞こえた。  
 
「政宗、政宗、ここは?」  
「わ、悪くはない・・・」  
積極的に政宗の体を指や舌で探ってくるガラシャにどうも反撃の機会を見つけられぬまま、  
政宗はされるがままに快楽を感じるだけであった。  
 
大体可愛らしい少女がその白い肢体を曝け出して、自分の体に触れているのだ、  
どこを触られても気持ち良くない訳がなかった。  
それでもぶっきらぼうに言い続ける政宗にガラシャは不満を感じてしまう。  
「それじゃあ、・・・ここは?」  
細い手でとうとう衣服の上からとは言え、下半身に触れられ、政宗は思わず大きく後ずさった。  
 
「ここは・・・駄目だ」  
「どうしてなのじゃ??」  
「ど、どうしても駄目なものは駄目じゃ!」  
必死に抵抗する政宗に、ガラシャは再び口づけをする。  
「!ふ、んむ・・・、ん・・・!」  
そうして力の抜けた彼の手をどけて、ガラシャは下半身の衣類に手を突っ込んでそれに触れた。  
 
「こ、こら・・・!」  
「これは・・・、硬くて、あったかいのう」  
初めて感じる感触にガラシャは興味津々といった様子でそれを弄る。  
どくどくと脈打つそれは、表面を上下に擦ると薄い皮が前後するようになっており、  
ガラシャはそれが不思議で手で握り締めてゆっくりと動かした。  
「うあ・・・、や、やめぬか・・・!」  
今までとは明らかに反応が違う彼の様子に驚きながら、ガラシャは衣類と下穿きを脱がせ、改めてそれを見る。  
「うわあ・・・」  
 
初めて見るそれは薄桃色で、血管を浮き立たせながらそそり立っていた。  
触るとぴくりと動くのが興味深い。不思議と、気持ち悪いとは思わなかった。  
見られている本人は悔しそうに俯きながら、黙ってその羞恥に耐え忍ぶばかりである。  
「こうすると、良いと聞いたことがあるぞ・・・」  
そう言ってガラシャは、政宗の一物をぱくりと自分の口に咥え込む。  
「なっ、何を・・・!ん、ああっ・・・!」  
そのままじゅるじゅると唾液を絡ませながら自分の一物を舌でぬるりと絡めこまれ、政宗は堪らず声を上げる。  
 
「ふ、んむ、む、ふぅ・・・」  
少しでも気持ちよくなってもらおうと、ガラシャは拙い技量ながら懸命に一物を咥える。  
裏にぴんと張る筋を舐めながら吸い付くようにして口を前後に動かすと、先からしょっぱい液が出るのが分かった。  
一方顔を赤くし、涙を滲ませながら自分に奉仕するガラシャの姿と、  
初めての口内の感覚に興奮して、政宗はあっという間に達してしまいそうになる。  
必死に我慢するものの、彼女が喉の奥で締め付けるように亀頭を包み込むと堪えることができなくなってしまった。  
「く、口を離せ・・・!う、あ、いかん・・・!」  
言うことを聞かないガラシャの口の中で、結局政宗は果ててしまった。  
 
「ひあっ!?けほけほっ・・・!」  
いきなり勢い良く飛び出してくる白い液に、ガラシャは驚いてやっと口を離す。  
ぴぴっとその液が、ガラシャの顔に飛んだ。  
「だ、だから離せと言っただろうが馬鹿め・・・!」  
内心済まなく思いながらも憎まれ口を叩いて、慌てて政宗は彼女の顔に飛んだ自分の白濁液を手拭で拭った。  
「・・・苦いのじゃ」  
口に入ったそれを、顔を顰めて飲み込むガラシャ。  
「飲まんでいい飲まんで・・・」  
顔を赤くして政宗がそれに突っ込む。  
 
ほうとため息をついてガラシャが顔を赤くして身をくねらせた。  
「ま、政宗、あの・・・」  
困ったように眉を寄せながら、彼に抱きついて耳元で囁く。  
「わらわにも、・・・触ってくれぬかの」  
 
甘く耳にかかる吐息に、政宗は再び自分が高ぶるのを感じた。  
 
ガラシャのそこは、既にしとどに濡れそぼっていた。  
薄い下毛を掻き分け割れた秘部を指でなぞると、ガラシャが嬉しそうに声を上げた。  
「ふぁ・・・!」  
 
座っている政宗に抱きつき頬を摺り寄せてくるので、  
彼は気持ちよいのだろうと確信しながら、繊細に入り組んでいるそこを恐る恐る指で撫で回す。  
「ん、やっ、あ・・・!ふぅ、こ、こんなの、初めて・・・!」  
「・・・気持ち良いのか?」  
「は、んぅ・・・う、うん、お腹が・・・溶けそうなのじゃ・・・」  
頬を朱に染め、切なそうに訴えるガラシャが可愛らしくて、ついつい政宗も我を忘れて抱き寄せてしまう。  
 
ぐちゅぐちゅと音を立てながら指を潜らせてゆくと、やがてこりこりと硬い小さなものに当たった。  
そこを押さえつけると腕の中でガラシャの体がびくりと跳ねた。  
「ぃああっ・・・!は、な、なに、・・・ん・・・!」  
「ここ、・・・か?」  
「や・・・だ、だめ、・・・っ、は、こ、こわい・・・!」  
爪で弾き、指で擦ると彼女は涙を滲ませて一層体を震えさせる。  
にちにちとその肉芽に蜜を絡ませながら虐めると、ガラシャは喉をひくつかせて鳴いた。  
 
「あぁ・・・っ・・・!まさむ、ね・・・!や・・・、怖いのじゃ・・・!」  
「怖くなぞない、儂がおる。・・・遠慮せずに飛ぶが良い」  
今にもいきそうな彼女に興奮しながらも、冷静を保ったまま彼は指をぐりぐりと押し付けた。  
「ふぁ・・・!ん・・・、ぁ、ああっ・・・!」  
潤んだ瞳を大きく見開いて、ガラシャの体がびくりびくりと跳ね上がる。  
「は、ぁ、・・・こ、こんな・・・、ん・・・」  
皆まで言う気力もなく、がくりと頭を政宗の胸に埋めて、ガラシャが力なく彼を抱きしめる。  
子供のようにへばりつく彼女の頭を撫でて、政宗は苦笑した。  
 
 
「下らん意地など、・・・返って情けなかったのかもしれぬな」  
乱れた息を整えようとしながら、ガラシャはその言葉に頭をもたげて彼を見つめる。  
汗で額に張り付いた彼女の髪の毛を優しく除けながら、政宗は笑った。  
 
「儂もおぬしを好いておる。・・・おぬしくらいのじゃじゃ馬、儂でないと乗りこなせんわ。  
だから、ずっと儂の元に居ろ。・・・ガラシャ」  
 
それを聞いてガラシャは、心底嬉しそうに、安堵したように微笑んだ。  
「政宗、政宗!いっぱい、いっぱい大好きなのじゃ!」  
子犬のように頭を摺り寄せて甘えてくる彼女に、再び苦笑して宥める様に抱きしめる。  
「ふん・・・、おぬしはそうやって、儂のところに居れば良いわ」  
その言葉にガラシャは何度も頷いて、満面の笑みを浮かべた。  
そして改めて彼に告げる。  
 
「わらわは、政宗をいっぱい好いておる。だから、  
・・・政宗。今宵はわらわの中で、天に昇ってくれはせぬか?」  
つまりは一つになろうということを先に言われてしまったので、  
政宗はなんだか男として情けない様な気がして思わず声を荒げてしまった。  
「あ、当たり前じゃ!大体女子がその様な事を恥ずかしげもなく言うでない馬鹿め!」  
「す、済まぬ・・・。・・・なんで怒るのじゃ???」  
「怒ってなどおらぬわ馬鹿め・・・!」  
 
ますます立つ瀬がなくなったような気がして、彼は拗ねた様にそっぽを向くしかなかった。  
 
彼女の髪色と同じ色の下毛は、彼女自身の蜜によってじっとりと濡れていた。  
まだ成長しきっていない秘部は政宗のそれを受け入れるには少々小さいように見えるが、  
中を指で開いてみると桜色の花弁は物欲しそうにひくひくと蠢いている。  
 
初めて見る女性の秘部の淫靡な光景に胸を高鳴らせながら、政宗は自身をそこにあてがった。  
しかし表面が余りにもぬめっていて、蜜壷に入れようにもにちにちと滑らせてしまうだけである。  
それを焦らしと取ったのか、ガラシャは細い腰を困ったようにくねらせて喘いだ。  
 
「や・・・、政宗、意地悪なのじゃ・・・」  
「いや、そんなつもりでは・・・」  
慌てて指で花弁をまさぐりながら一物を蜜壷に収めようとするが、慌てれば慌てるほど、  
そこは逃げるかのようにぬるりとした粘膜でかわされてしまう。  
「んやっ、も、もぅ・・・、な、はぁ・・・ん!」  
早く、と言いたいのを堪え、顔を真っ赤にして呻くガラシャ。  
 
それでも表面を擦るたびに柔らかな花弁と硬くなった肉芽の感触が一物にぞわぞわと快感を与えるので、  
政宗はこれはこれでと思いながらしばらくそうやって己自身を割れ目に這わせることに夢中になってしまう。  
赤くなった裂け目が熱と粘膜を帯び、にちゃにちゃと音を立てて彼自身を包み込む。  
堪らなくなったガラシャはがばりと起きて行為に夢中になっていた政宗を押し倒した。  
 
「もう!・・・わらわにこのような所業、許さぬぞ、政宗!」  
ぷうと頬を膨らませて政宗に馬乗りになり、そそり立つ一物の根元を握って自分の蜜壷へと亀頭を向けた。  
 
「そ、そういうことは儂から先に・・・!」  
まるで自分が襲われているような体勢になって男としての面目が立たないと思った政宗は、  
慌てて起き上がろうとする。しかしその前にガラシャが彼を自分の中に収める方が早かった。  
 
「ひ、ああぁあっ!?」  
「うぁ・・・!!」  
 
既にたっぷりと体液に溢れかえっていたガラシャの中は、  
少し先を収めただけであっという間に政宗の肉棒をその中へと押しやってしまった。  
少しずつ挿れていこうと思っていたガラシャも、  
突然一気に押し寄せてきた衝撃に顔を朱に染めて口をぱくぱくとさせるしかなかった。  
 
対する政宗もまた、急に己を包み込む肉壁の蠢きにただただ戦慄くしかない。  
温かくとろりとした柔らかい粘膜が自分をひくりひくりと擦り付けるので、  
とにかく達さないようにと意識を保つことに必死だった。  
 
「ふにゃ・・・、な、なんなのじゃ、これ・・・、すごい・・・!」  
既に充血して物欲しさで一杯だったそこに、貫くように一気に入ってきた肉棒は、  
ガラシャにかつてない快楽を存分に与えていた。  
それがもっともっと欲しくなって、彼女は嬌声を上げて腰を振る。  
 
「ちょ、ちょっと待て、う・・・はぁ・・・!」  
ざわざわと波のように蠢く蜜壷の中で堪えるだけでも精一杯なのに、  
もっと奥へと誘われるように動かれてしまっては我慢が出来そうにもない。  
必死で待てとガラシャに訴えるが、既に快楽を貪るガラシャに彼の声など聞こえる由もなかった。  
 
「ぁ、あっ、ふ・・・、んっ、きもち、いぃ・・・!」  
快感の僕と化したガラシャは政宗の上で嬉しそうに頬を染めて腰を打ちつけている。  
白い肢体のあちこちが上気して赤く熟れ、交わっている秘部からは溢れるように蜜が滴る。  
 
「こんの・・・っ、じゃじゃ馬め・・・っ!」  
一方的に快楽を与え続けられ、自分から動くと直ぐに達してしまいそうな政宗は、  
結局何もできぬまま必死に己の意識を堪えることしかできない。  
予想外のガラシャの中の気持ちよさと、彼女の性への貪欲さに舌を巻きながら、  
彼は自分の上で踊るように跳ねる幼い体をただただ見つめていた。  
 
憎らしげに言葉を吐く政宗を見てガラシャは彼に顔を近づけて囁いた。無論腰は動かしたままだ。  
「政宗、ん・・・、そちは気持ちようないのか・・・?」  
汗ばんだ頬を撫でながら切なく聞いてくる彼女に、政宗は胸を熱くする。  
「き、気持ち良過ぎるから困っておるのだ!」  
「そんなの・・・、困ることなどなかろうに」  
ふふ、と妖しげに笑うガラシャ。  
 
普段のあの子供っぽい彼女のどこにこんな妖艶さが潜んでいたのかと思い、  
政宗はくらくらしながら快楽に飲まれてゆく。  
 
汗ばんだ白い肌は彼の少し褐色目の肌にしっとりと吸い付いてくる。  
ぎゅうと体を離さぬように押し付けてくる彼女の上半身にある幼い乳房は、先端を硬くして政宗の胸に摺り寄せられた。  
それが偶然にも政宗のやはり幾分固くなったそれに当たると、ガラシャはひんと声を上げた。  
それを見た政宗はせめてもの反撃にと両手で多少乱暴にぐにぐにと彼女の乳房を揉みしだく。  
 
「ああっ・・・!だ、だめ・・・!」  
先端を摘む度に蜜壷をきゅうんと締め付けながら、ガラシャは困ったように身を捩った。  
何らかの刺激を与えるたびに素直な反応を見せる彼女が、どうしようもなく可愛らしい。  
 
「ま、政宗、これは・・・?」  
言いながらまだ肉の薄い臀部を精一杯ぐるりと回し、そのまま先端だけにちにちと咥え込む。  
初めてとは思えぬその技量に、政宗は堪らず呻いた。  
 
「政宗・・・!可愛いのう・・・!」  
「う、煩いっ!」  
 
奥州王としてプライドの高い政宗がそんな事を言われて嬉しいはずもなく。  
ただただ顔を真っ赤にして視線を外す事しか出来ない。  
そんな仕草さえもガラシャには可愛いとしか思えなく、  
またそんな彼を見ることが出来るのが自分だけだと思うと嬉しくなって精一杯の力で抱きしめる。  
互いの心音と熱が交わるのが感じられた。  
 
「政宗、わらわは、もう・・・」  
必死に腰を揺らしながら、ガラシャが切なく声を上げて鳴く。  
正直早々に達してしまいそうだった政宗にとって、それはなんだか嫌味に聞こえて仕方がなかった。  
「全く・・・、おぬしには振り回されてばかりじゃ」  
それでもやっぱり、今の政宗にとって彼女は愛らしいとしか思えなかった。  
 
漸く上り詰めたガラシャに、政宗はやっと自ら律動を与える事が出来た。  
それまで自分で動いていたよりも激しく、強い動きにガラシャは涙を滲ませて震える。  
「ん、あぁっ、んっ、あっ・・・!政宗、気持ち良いのじゃ・・・!」  
その内にぞくぞくとした快感が背筋から駆け上がり、  
ガラシャはやはり怖くなって必死に政宗を抱きしめた。  
どうやら達することにはまだ慣れていないようである。  
 
そんな彼女を抱き寄せながら、彼は今まで堪えていた分とでも言うように必死に下から腰を突き上げる。  
すっかり熱で火照った肉壁を壊すくらいに貫き、もっと欲しくなって乱暴に腰を振る。  
細い腰を押さえつけるようにして両手で押さえ込み、ぐちゅぐちゅと激しく攻め立てた。  
結合部分から溢れ出る体液は、しとどに二人の股を濡らしもはやどちらのものかも分からない。  
 
「政宗、政宗・・・!怖いから・・・、離れるのは嫌じゃ・・・!」  
快楽に白む頭に怯えながら、ガラシャはぎゅうと政宗の背に腕を回す。  
「怯えるな、儂がついておる・・・!ずっと、ついておる・・・!」  
 
もはや声が届いていないかもしれないガラシャを前にして思わず想いの丈をぶつけながら、  
政宗は桃色に上気した幼くも女の肢体を腕に抱いて、政宗は高みへと一層腰を強く突き動かした。  
歳若いためにまだ細めではあるが、日頃の鍛錬で鍛えられた彼の下半身は、  
一気にガラシャを快感の海へと放り出してしまう。  
 
「あ、あっ!はぁ・・・っ!ひ・・・、ああああっ───!!!!」  
涙を零しながら大きく目を見開いて、ガラシャは政宗の腕の中でがくがくと体を震わせた。  
達した反動で彼女の膣内もきゅうと締まり、それで政宗も己の精を吐き出してしまう。  
「ぅ・・・ん、・・・っ!」  
ふるりと身を震わせると、白く濁った温かい液がどろりとガラシャの胎内に零れていく。  
 
「ふ・・・、熱いのじゃ・・・」  
どくどくと自分の中に注がれる子種の熱を感じながら、ガラシャは子猫のように政宗に擦り寄った。  
自分の胸に顔を埋める彼女を見ながら、政宗は放心したようにぼんやりと湿った赤毛を指で玩ぶ。  
そんな彼の仕草に何故か堪らなくなって、ガラシャは無邪気にぐりぐりと頭を擦り付けた。  
 
「痛っ、な、なんじゃいきなり・・・!」  
半ば惚けていた政宗は我に返ってガラシャの頭を引き剥がすように片手で掴む。  
「政宗、政宗っ!」  
胸いっぱいに幸せを感じながら、政宗のそんな無愛想な態度にも気を悪くせず、  
ガラシャは勢い良く政宗の胸に飛び込んでいく。  
その反動で、体を弛緩させていた政宗の頭ががつんと壁に打ち付けられた。  
「あだっ!」  
 
一瞬怒鳴ろうとして、──気が削がれる。  
腕の中の少女は、それはもう本当に幸せそうに笑いながら、自分をしっかり抱きしめていたからだ。  
今度ばかりは優しく笑うことが出来て、政宗はそんな彼女に応えるように頭をそっと撫でるのだった。  
 
 
 
「な、なにい!?孫市、話が違うではないか!!」  
後日再び城を訪れて来た友人の発言に、政宗は声を荒げた。  
雑賀衆の無償での貸し出しの取引を取り止めにすると言って来たからである。  
が、孫市はどこ吹く風とでも言うように肩を竦めながらそれに反論する。  
「んなこと言ったってよぉ、俺は嬢ちゃんに手ぇだして良いとは言ってないんだけどねぇ」  
 
そこでぴたりと政宗の動きが止まる。さっと青ざめる彼の耳元で、孫市は面白そうに囁いた。  
「拾った責任は自分で取れ・・・、だったっけ?おまえやっちゃった責任はどーすんのさ」  
 
勿論、そのつもりはあった。大体一夜限りの睦み事では終わらず、  
結局孫市が来るまでの数日の間に幾度も体を重ねてしまったのである。  
更に、これは責任以前の問題で、政宗はとうの昔にガラシャを手放す事が惜しくなっていた。  
しかしやはり彼のプライドが邪魔して、今日まで彼女に孫市と発つのかどうか、聞くことができないでいたのだ。  
 
「で、どーすんの?」  
わしわしと政宗の髪を乱しながら、孫市。  
「ど、どうするもなにも・・・」  
もうどうにでもなれと言った風に、政宗が声を上げた。  
 
「責任どうこう以前に儂はとっくの昔にあやつに惚れておる!  
・・・わかった孫市。雑賀衆の件はなしにしてやるから、あの娘は大人しく儂に渡すがよい!」  
なにがなんだかわからないがとにかく変わらず偉そうに言いきる彼に、孫市は腹を抱えて笑い転げた。  
「わ、笑うな!馬鹿め!」  
顔を真っ赤にして政宗が怒鳴る。  
「と、とにかく、おまえの気持ちは良く分かった・・・。あーおかし・・・。  
ま、こんだけ言ってくれりゃ良いんじゃないの嬢ちゃん」  
どこともなしに視線を向けながら孫市が言うと、城の物陰からガラシャがぴょこんと飛び出してきた。  
 
「満足じゃ!政宗・・・、そちはわらわをちゃんと慕ってくれておったのだな!」  
頬を染めて言う彼女とは裏腹に、政宗はふるふると拳を握って呻く。  
「き、貴様ら・・・!謀ったな・・・!!」  
「まぁーまーま。女心ってのは複雑なもんさ。おまえきちんと言ってやんないと伝わらないもんだぜ?」  
ぽんぽん、と政宗の頭を叩いて孫市が笑った。  
 
「こんだけ仲取り持ってやったんだから、貸し出し帳消しくらい安いもんだろ。  
・・・嬢ちゃん。こいつは意地っ張りだが悪い奴じゃない。仲良くしてやんな」  
「うむ!孫市も、何かあったらすぐわらわを呼ぶのじゃぞ!ダチの約束、忘れはせぬからな!」  
そして互いに拳をぽんと合わせた後に、孫市が片手を挙げて去っていく。  
 
ただただそれを呆然としながら見送る政宗の手を、ガラシャはくっと引いた。  
どうかしたの?とでも言いたげなその瞳に、それまで罵詈雑言を胸中で唱えていた政宗の気は削がれ、  
大きくため息をつくことしか出来なかった。  
 
「・・・もういい」  
そう言って踵を返し城に戻ろうとして、──立ち止まって、ガラシャを見やる。  
「さっさとついて来ぬか、・・・馬鹿め」  
ガラシャは嬉しそうに大きく頷いて、彼に走りよりその手を握り締めた。  
 
 
 
 
ガラシャの出身が明智家だと聞いて政宗が悲鳴をあげるのは、また別のお話。  
 

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