どこまでも澄み渡った空に鮮血が降り注ぐ。  
丁度敵兵の動脈を切ったらしく、首がかぱりと開きそこから血飛沫が辺りを真っ赤に染めている。  
返り血を浴びながら佇むのは、既に黄泉の国の住人であるかのような顔色だ。  
唯、それは別段無残な光景に立ち会っているからというわけでもない。それが普段通りなのである。  
更に言えば、彼は黄泉の国の住人というよりも、そこへの水先案内人、といった方が正しいのかもしれない。  
 
血に染まった愛刀をひらりと一振りし、鞘にしまう。  
「つまらないなぁ、最近こんな事ばかりで全くつまらない・・・」  
心底悲しそうな顔をして、男は独りごちた。  
「やっぱり・・・、僕を満たしてくれるのは君だけだよ、武蔵・・・!」  
邂逅しているのか目を閉じてひとしきり黙し、後に嬉々として声を上げる。  
剣豪宮本武蔵。彼と剣を交える事が、今の男にとって唯一の生きがいだった。  
 
男の名は佐々木小次郎。言わずもがな、武蔵と張り合うことの出来る無二の剣豪である。  
現在は徳川家に身を寄せ、いつかまた武蔵と会い見えんとしているのだが、  
願いも空しく、最近は江戸の見回りや海賊山賊討伐に出向くばかりであった。  
 
「一体いつになるのかなぁ、また武蔵と会えるのは・・・」  
そこらじゅうに転がる残骸から流れ、真っ赤に染まった一面で独り呟く。  
歩く度に少し乾いた血液がにちにちと自分の靴に引っかかる感覚が、小次郎は余り好きではなかった。  
 
彼とは、暫く会えそうにない。  
そう小次郎は感じていた。  
 
「仕方ないなぁ・・・。もう少しだけ、あれで遊ぶのも悪くないかな」  
うん、と軽く頷いて彼の口の端が上げられる。  
最近強者と戦えない不満の憂さ晴らしとして、彼は剣以外の別の手段を見つけていた。  
 
(今日はどうしているかな?)  
そう考えると鬱屈していた気分も少し、晴れる。  
現場の余りの凄惨さに呆然としている味方の兵士たちに、小次郎はにこやかに声をかけた。  
「僕このまままっすぐ帰るからさ、上の人たちに報告頼んどくよ」  
 
その声で各々我に返ったのか、兵士たちは慌てて了承の返事を返す。  
彼らの眼に怯えの色が混じっているのが分かったが、小次郎は何も思わなかった。  
慣れたものだ、今更だと嘆息する。  
 
(さて、そろそろあげた方がいいのかな?ううん、迷うなあ・・・)  
人の苦しみ悶えながら死に逝く様も、自分を見る他人の恐れの瞳など意にも介さず  
既に帰宅した後のことを考えながら、彼は足取り軽く帰路に着くのだった。  
 
 
自室の奥にある小さな小部屋は、書斎として使っていた場所だ。  
あるのは学問の書ではなく、専ら剣術のものだが。  
部屋の位置のせいでそこは中々日が入りにくい。何時も薄ら暗い。  
だから良いと彼は思ったのだ。  
 
「ただいま」  
言ってしゃっと襖を開ける。そこには一人の女がいたのだが、返事はなかった。  
何故なら口は手拭で猿轡をされているからだ。  
手は後ろで一つにまとめて縛られており、片足は部屋の柱に括りつけられていた。  
 
「あれ?もしかして眠ってるのかな」  
身動きもしない彼女を見て、小次郎は少し不安になり慌てて近寄った。  
抱き起こすと彼女の長い髪がはらりと畳に零れる。  
苦しそうに眉を顰めた彼女は、涙を滲ませながら彼を見上げた。  
「ああ、起きてたのかい。だったら返事が出来なくても反応見せてくれなくちゃ分からないよ」  
そんな彼女を見てほっとしたのか、小次郎が嬉しそうに囁く。  
 
彼の反応とは正反対に、捕われの女は恨めしそうに涙を零した。  
真珠の様に女の頬に伝うそれを蛇の様な舌でぺろりと舐めて、小次郎は無邪気に微笑んだ。  
「もしかして、これ、すごく良かった?」  
これ、と言うそれを指先で少しだけ揺らすと、彼女は悲鳴にならない声を上げてびくりと体を震わせた。  
「あれ?もしかして今のだけでイッちゃったの?・・・そんなに良かったんだ」  
既に激しく乱れきっている彼女の様子を見て、彼は心底嬉しそうに笑う。  
女は彼の様子など見る余裕もなく、涙溢れる瞳を見開いて虚空に喘いでいた。  
 
小次郎が指先で触れたものは、彼女の敏感な肉芽にぎちりと噛み付いているイアリング状の攻め具だ。  
南蛮製の珍品であるそれは、彼女を見つけたときに小次郎が予め買い付けておいたものである。  
彼女になら似合うと、小次郎は確信していた。  
そして今まさにそれを付けた彼女は、香ばしい女子独特の芳香を漂わせながら  
彼の腕の中でいやらしく体をくねらせている。  
 
「やっぱり僕の眼に狂いはなかったってことだよね、稲姫様」  
満足気に頷きながら、彼女の轡と口の中に含ませておいた詰め物を一気に引き出す。  
でろりと涎を垂らしながら、開放されたその口を大きく開けて、彼女は必死に酸素を胸に入れる。  
そして息を整えようと苦心しながら、火照った顔を歪めてぽてりと小次郎の胸に倒れた。  
「も、・・・やだぁ・・・」  
やっとそれだけ言って、ぼろぼろと涙を零して泣く稲姫。  
 
「そう?嫌なの?何が嫌なの?少なくともやめてほしいってわけじゃないよね?」  
嘲る様に言いながら、小次郎はぬるぬるにぬめった彼女の入り口を指でくぱぁと広げる。  
急に膣内に冷たい外気が入り、熱に抵抗するような快感を覚えて稲姫が堪らず呻いた。  
 
「ふゎ、あん・・・!」  
「感じてるの?嬉しいよ」  
 
びりびりに破いた小袖の胸元をはだけさせると、彼女のたわわな乳房がぷるりと飛び出る。  
「暫くは楽しめそうだね。でもやっぱり、・・・武蔵との斬り合いが楽しみかな?」  
汗で湿ったその乳房をぐにぐにと揉みし抱きながら、小次郎が独りごちる。  
 
彼の玩具の甘い悲鳴は、途切れることなくいつまでも続くのだった───。  
 

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