「ふむ」
大友家の一同に散々からかわれ、キレて暴れる立花ァ千代を観察しつつ細川忠興は呟く。
「いい素材だ」
「は?」
隣で小首を傾げる森蘭丸に、清々しい笑顔で応えた。
「かなり萌え萌えの新作があるのでね、彼女に試着させるのも面白いなと思ったんだよ」
「萌え萌えですか熊千代殿!」
やっぱりしつこく何度でも書くが、細川忠興が戦国屈指のファッションデザイナーだったのは史実たい。
数分後。
「・・・というわけで、立花殿にはこれを着用していただきたく!」
と、蘭丸がフンドシ一丁の半裸でハアハア言いながらァ千代に迫る。
その手には、猫を模した耳だとかシッポだとか諸々。
もし森蘭丸が美少年でなかったら、犯罪行為とみなされても決して文句は言えまい。
「ふざけるな! 貴様も立花を笑い物にしたいのか!!」
踏んではならない地雷だった。
大友家の一同ににゃーにゃー口調を散々からかわれた後だけに、萌え萌えニャンコ装備などは逆鱗に触れて当たり前である。
てゆーか、どんなタイミングだろうと「イタタタタ・・・」という感じではあるが。
「まさか! 蘭はただ、萌えを堪能してほわっと和みたいだけですよ!! 森乱丸長定17歳、花の独身ゆえに飢えています!!!!」
「す、少しは恥じろ! 真顔で何を堂々と主張しているのだ貴様は!!」
「ちなみにこちらの『冥土』という萌え衣もつけますよ! 千代様の発案による究極合体『猫冥土』ですよ!!」
それはまさにエールストライカー!
蘭丸の顔も大興奮のルージュ色に染まる、い・け・な・いストライクルージュマジック。
その熱意というか何というかに、元来猫好きなァ千代がちょっぴりその気になりかけた頃。
「あの〜、ですの」
と、野次馬の一人である小野お通が挙手した。
「ァ千代ちゃんは嫌がってるみたいだし、いっそ蘭丸さんが着たらそれはそれでかわいいと思いますの」
しばしの静寂、そして喧噪。
蘭丸同様に飢えた独身のムキムキマッチョな織田家臣達が、寄ってたかってワッショイワッショイワッショイワッショイ。
呆然とする大友家の一同の前で、嫌がる蘭丸を猫メイドに改造していく。