ある日くのいちは野を駆けていた。
かの怨敵、徳川の草の者が武田領内の偵察に来ていると言う情報が入ったのだ。
くのいちは武田勝頼に、その草の者を排除するように命令されていたのである。
しかし情報の出所は、あやしい物だった。ましてや敵の人数さえも明らかではない。
しかし武田勝頼は家臣たちの反対を押しきり、くのいちを派遣させたのだった。
「にゃは〜 新しい御館様は血の気が多くて困るにゃあ。
こんなの完っ璧に罠だってのに〜」
そんな事をボヤキながらも、くのいちは全速力で目的地に到着したのであった。
すると木の影から、ガサッっという音が聞こえたのと同時に、
徳川方の草の者が十数名、飛び出して来たのであった。
「ほ〜らヤッパリ」
くのいちは少しウンザリした声で呟いた。
「ひい ふう みい… 十八人ですかぁ。ま、罠だったとは言え
御役目は御役目。敵さんを排除しておきますかぁ。」
そう呟き、くないを構えたその時、一回り大きな影が姿を現した。
その姿を見てくのいちは絶句した。
「げ… な、何で稲ちんの父上がここにいるの〜!?」
そう、一回り大きな影の正体は本多忠勝であった。
これではさすがのくのいちも勝ち目は無い。
そう判断したくのいちは一目散に逃げ出した。
「半蔵!追え!逃がすでないぞ!」
忠勝が声を挙げると、もう一人、文字通り影の男が飛び出した。
「承知…」
「あのおじさんがいるのは予想外だったにゃあ
ま、どんなに強くてもアタシに追い付けるはずないもんね〜」
そんな独り事を呟きながら逃走を続けるくのいちであった。
そのスピードは凄まじく、忠勝の姿はもう黙認する事は出来ないほどであった。
「お役目だったけど、罠だったんだからこのまま帰ってもいいよね〜」
とその時、くのいちにかかっていたはずの日の光が遮られた。
何事かと思い顔を上に向けると、そこにはまさに今、
鎌で自分に飛びかかってくる半蔵の姿が写った。
「滅・・・」
「な!?にゃんとぉ!!?」
半蔵の鎌が素早く振り下ろされた。
が、捕えたのはくのいちではなく変わり身用の丸太であった。
くのいちは間一髪、己の機転で事なきを得たのであった。
だが本当に間一髪だったようで、服の胸元が切り裂かれ、鎖かたびらが露出していた。
「おお〜 これはこれは、半蔵の旦那様じゃごぜーませんかぁ。
アタシの足に追い付ける奴なんて、そうはいないと思ってたんだけど、
アンタだったのね…納得…」
楽観的に振る舞うくのいちではあったが、
その頭の中はこの窮地をどうやって逃れるかを必死に考えていた。
だがいい案は思い付かず、その内に草の者にまで追い付かれ完全に包囲されてしまった。
そして
「殺・・・」
包囲が完了したとみた半蔵が、くのいちに再び飛びかかった。
必死に応戦するくのいちだが、周りの草の者からの攻撃もあり、
徐々に追い詰められていった。
(こ、これは本格的にヤバイかも…早く逃げなきゃ)
そんな事を考えていた時だった。
「うがつ!!」
凄まじい声と共に、木々を押し退けながら、巨大な衝撃波が飛んで来たのであった。
半蔵に応戦する事に気をとられていたくのいちは、
あっさりとその衝撃波を喰らってしまった。
「うぅん… や、やっぱり、あのオジサン…反則過ぎ… ガクッ」
くのいちの意識が、まどろみの中に落ちていった。
それから程なくして、林の向こうから衝撃波を放った主が現れた。
「捕えよ半蔵。そして武田の事について、何か情報を吐かせよ。」
「承知…」
半蔵はくのいちが意識を失っているのを、今一度確認すると、
肩に担ぎ、徳川領へと帰還して行った…
「うぅ…ん、 ・・・ここは?」
くのいちは目を覚ました。どうやらここは
徳川領の城、岡崎城の地下牢らしい。
幽閉され壁に手足をくくられ、
万歳をするような格好を強要されている。
なんとか外せないものかと色々試してみるが、
先程受けた攻撃のダメージがまだ抜けていないのか
思うように体が言うことを聞いてくれない。
また、気絶して随分たっていたのか、お腹も空いてきている。
「ふにゃ〜 お腹へったにゃあ。
お団子でも持ってきとけばよかった。」
そんな事を呟いていると、牢の入り口がゆっくりと開き、
男が一人入ってきた。半蔵である。手には簡単な膳が持たれていた。
「またアンタな訳ね…」
「食え…」
そう言って半蔵は、持っていた膳をくのいちの前に置き、
拘束を片手だけ外してやり、食事をとれるようにした。
が、くのいちは一向に食べようとしない。
「食わないのか…?」
「う〜ん、お腹は空いてるけど、媚薬の入ったおにぎりは、
流石に食べられないにゃあ。」
「・・・」
「こんなの食べさせてアタシに何するつもりなの?
にゃは〜 アンタもやっぱり男なんだね〜 ムッツリスケベってやつ?」
「・・・」
「まあ、どうせ家康から武田の情報でも
聞き出すように言われたんだろうけど、
こんなやり方で来るなんてね〜。
鬼の半蔵が聞いてあきれるよね〜。」
「・・・」
「そもそも忍相手に毒盛りなんて、馬鹿でもしな、ッッ」
それまで滑らかだったくのいちの口が急に止まった。
「・・・効いてきたか…」
「な、なんで?アタシ食べて無いのに!?」
「気絶している時に、既に盛らせてもらった…」
「そんな〜、じゃあ何でわざわざ媚薬入り
おにぎり何て持ってきたの?」
「あれは忠勝の指示…」
「なるほど〜あの石頭が考えた策な訳ね。
どうりで忍相手に毒盛りなんて^^」
すると突然半蔵がくのいちの胸ぐらを掴んだ。
「勝頼の居場所を言え…」
「知らな〜い」
楽観的に構えているくのいちだが、
媚薬のせいか、既にズボンにシミが広がっていた。
「そうか…」
半蔵はそう言うと、自分の手袋を外し始めた。
そしておもむろに服の上から胸への愛撫を始めたのだった。
「あ…やだ、ちょっとやめてよ…」
急な展開に少し慌てた様子で抗議するくのいち。
とは言ってみるが、媚薬の効果で、明らかに声が上擦っている。
乳首も、その起ち上がりが服の上からでも
簡単に確認出来る程、固くなっていた。
「感じているか…淫乱だな…女狐…」
「うう〜」
図星である。くのいちは赤くなりうつ向いてしまった。
元来、くのいちは房中術にたけていた。
そのため、行為の主導権を相手に取られたのは、今回が初めてである。
くのいちは、今初めて受けの屈辱を痛感しているのであった。
―――
「あぁっ、はぁ」
半蔵が、くのいちの胸を責め初めてどのくらい経っただろうか。
くのいちの口から、可愛らしい声が漏れる様になっていた。
既にくのいちのズボンは、愛液でぐしょぐしょである。
そのような胸だけへの愛撫がさらに続いた後、
ついに半蔵の手が、くのいちの一番敏感な部分に伸びていった。
「うっあぁんっ! はうぅんっ…」
くのいちの口から、いつもとは違う「女」としての声が聞こえた。
その様子を見た半蔵は、満足そうにマスクの中でくのいちの恥態を嘲笑った。
その顔が、くのいちの羞恥心を一層あおる結果となった。
(あぁ、ヤバイよ〜、ホンキで感じてるきてる。
こ、このままじゃアタシ…)
くのいちは、初めて強制的に与えられる快感から、軽くパニックになっていた。
しかしその時、半蔵の手がピタリと止まった。
そして
「今一度問う… 勝頼の居場所は…?」
半蔵は先程と同じトーンで、同じ質問を繰り返した。
「し、知らない」
一方、くのいちの方は、明らかに先程よりも怯えた様子で答えた。
このあとに待ち受ける「女」としての地獄、
その片鱗を見せられたのであるから当然である。
「そうか…」
そう呟くと半蔵は愛液に溢れ、
だらしなく開いたくのいちの股を、いきなり蹴りあげたのだった。
「あぎいぃっ!!?」
うって変わって、今度は色気の欠片もない
声をあげて悶絶するくのいち。
例え女の身であろうとも、骨盤を蹴りあげられては
たまったものでは無かった。
蹴られた部分を擦りたいのか、必死に内股になっている。
しかし、足を開いた状態で、壁に拘束されているので、
それすらもままならなかった。
「勝頼の居場所は…?」
目の前の男が、また同じ質問を繰り返した。
こんな状況にも関わらず、
相変わらず声には感情1つ込もってはいなかった。
いつもは頭にくるだけのその声が、
今のくのいちにとっては、恐怖以外の何物でもなかった。
「し、知らないっ!!…っあぎいいぃっ!!!」
くのいちの拒絶の言葉を聞いた瞬間、
またしても半蔵がくのいちの股を蹴りあげたのだった。
しかも、今度は1度では無く、連続で蹴りあげていた。
そのたびにくのいちの悲鳴があがる。
バチンッ! バチンッ!
鈍い音というより、乾いた音が響いていた。
それは、半蔵の足がくのいちの股間に当たる前に、
先ず、びしょ濡れのズボンに当たるためであった。
そして半蔵は、蹴りを打ち続けながら、また同じ尋問をした。
「勝頼の居場所は…?」
しかし、くのいちは股間に走る激痛に絶叫している。
「ぎぃっ!! ひぎぃっ!!」
まともに口が聞ける状態ではなかった。
それにもかかわらず、答えなかった(正確には答えられなかった)
くのいちに、いらだちを覚えたのか、
半蔵は更に強く蹴りあげた。
その瞬間、
「ああっ!うううっダメぇぇッ〜〜!」
くのいちがこれまでとは違う声をあげた。
そして
「ああっ! やだ もうダメ! いやあぁぁぁぁーーーっ!!!」
プシャ〜〜〜…
くのいちが絶叫する中、部屋の床に水溜まりが出来上がっていった。
股間の痛みと、半蔵に対する恐怖のあまり、
くのいちは失禁してしまったのである。
それは、くのいちの「忍」である誇りを、
半蔵が完全にへし折った瞬間であった。
「う うぅ… ひっく…」
そうなってしまうと、くのいちはただの「女」である。
その証拠に、本来、忍が決して見せることのない涙を流し、
しゃくりあげて泣いていた。
そんなくのいちの様子をしり目に、
半蔵は先程よりも僅かに感情の込もった声で、ポツリと呟いた。
「やはり、この程度では…まだ、甘い…」