「く…ぁっ…!!やめ…な…さ…」
部屋にいきなり呼び出されたと思えば、壁際に押しやられ、首筋を這う舌に翻弄される。
「でも感じてるみたいだけど?」
クスクスと笑い、そこに跡が付くほど強く吸いつく。
濃姫にとって、夫以外に攻められるほど屈辱的なものは無い。
ましてや、それで自分が感じているなどと認めたくも無かった。
「この…うつけが…!!ぁ…んっ!」
大きく開いた胸元に掌が侵入し、胸の飾りを弄ぶ。
そもそも何故敵味方の二人がこんな関係になったのか。
信長亡き後、実家も滅び身寄りのない彼女を孫市が連れて帰ることにした。
当然、信長への恨みもあったがそれも大いなる目的で。
必死に抵抗したが、さきの戦で体力が消耗しており泣く泣く、従わざるを得なかったのだ。
「用が無いのなら…部屋に戻らせていただくわ。」
相手を突き飛ばし、元から着崩してはいるものの乱れた着物を整え
踵を返す。
「そんなに怒らないでくれ。折角美人なんだから。」
腕を掴み、壁にダンッと手を付いて身動きを封じる。言葉こそ飄々としているが、逃がすまいという意思がしっかりと伝わってくる。
「女なら他に沢山いるでしょうに。」
溜息を吐き、ありったけの軽蔑を込めた目で見つめる。
「…無理だ。」
「え?」
しまった、という風に孫市は目を見開く。
「何が?」
「いや、なんでもない。それより今は…姫を抱きたい。」
頬を撫で、彼女の蝶の簪を頭から引き抜き、解かれた長く艶やかな髪に口づける。
「最低ね。」
諦めたように目を閉じる。逃げた所で行くあてもない。さっさと終わらせてしまおう。
「愛してるよ。」
言葉どおり、愛おしげに囁き、抱き寄せて唇を奪う。
「んっ…」
舌は口壁、歯列をなぞりねっとりと絡まる。
その間に胸への愛撫が再開され、豊かな乳房を揉みしだく。
「んぅ…!ふ…ぁ…」
唇が離れ、それがするすると下に下っていき胸の飾りに吸いつく。
「やぁ…っは…ん!」
「凄い固くなってるぜ?」
転がすように舌で弄び、掌を腿に這わせればビクン、と濃姫の身体が震える。
「感度良すぎ。…もうこんなになってるじゃないか。」
下着の上からでも認識できるほど濡れそぼった秘部を優しく撫で上げる。
陰核を指の腹で擦れば腰を跳ねさせて反応する。
「や、あ!お黙り…ひゃうっ…あん…」
首を反らし、天井を見つめる。
ふと、名案が思い付く。
「は…はぁ…ねぇ…じっとしてて?」
妖艶に笑み、服の上から彼自身に触れる。絶頂に達してしまえば、満足してその先までは行かないだろうと考えた。
「仰せの通り…濃姫サマ。」
知ってか知らずか、陰核で遊んでいた指を止めて大人しくなった。
自身を取り出し、彼女の白魚のような指が包み込み、上下に扱く。
「っ…」
小さく呻き、眉をピクリと動かす。
「ふふ、一気にイかせてあげる。」
焦らすこともせず、其れを咥え蛇のごとく舌が這い回る。
唇を少しきつく閉め、顔を動かす。
「んぅ…む…ふ…」
夫に勝るとも劣らぬ質量に咽返りそうになりながらもひたすらに続ける。
ちらりと上目づかいで彼を見れば濃姫の髪を撫で、微笑さえ浮かべている。
「っ…!!」
憎たらしい噛みちぎってやろうか、と思ったとき、喉奥を軽く突かれ、ちゅぽっと音を立てて勢いよく離れる。
「げほっ…ごほ!!ぅえっ…けほ、ごほっ!!」
胸を押さえ苦しげに咽せ、恨めしげに彼を睨む。
「ごめん。ほんの悪戯心って奴さ。大丈夫か?」
濃姫の背中を摩り謝るが、荒く呼吸を整えている彼女が許すはずもない。
「死ねばいいのに。」
忌々しげに吐き捨て、唇を拭う。
「まぁそう言わないで。…たくさんイかせてあげるからさ?」
あの低く甘い、渋みのある声で囁かれ、濃姫の腰は今にも抜けそうだった。
「あはは、可愛い。」
下着を脱がせ、脚を後ろから開かせる。
露になった秘部の周りを撫で、指を一本ずつ挿入していく。
「う…るさい…や、あっ…」
三本バラバラに抜き差しをしながら、陰核も親指で刺激を与える。
「あーあ。ぐちゃぐちゃ。随分やらしいお姫様だ。」
耳を甘噛みし、わざと音を立てて掻き回す。
「あっ、ひぅ…!黙れと言っているのが…っわからな…あぁん!」
鏡を見れば、頬を真っ赤に染めて喘ぐ、まるで別人のような自分がいた。
支配するはずが、こんなにも支配されているなどと。
「ん、あっあぁ…はぅ…ひあぁっ!!」
ビクビク、と身体を震わせて達し、秘部から愛液が溢れ出る。
すると孫市は濃姫を仰向けに押し倒した。
「挿れるぜ?」
自身を宛がい、その熱に彼女の秘部がひくつく。
「いやぁっ…!!はぁん…」
ゆっくりと焦らすように滑り込ませ、やがて奥まで到達する。
このまま溶け合って、満たされたまま眠ってしまうのも悪くないと思ったが、そこからまた腰を引いて、律動を始めた。
「あ…あはぁっ…やんっ!あう…」
再び悩ましげに嬌声を上げ、快楽の波に飲まれていく。
ずんっ、ずんと奥を突かれる度、鼓動が高鳴り、泣きたいような、苦しいような胸が爛れる思いだった。
「姫…」
片腕で強く抱き締めながら、孫市は彼女の脚を抱え、より深く繋がろうと打ち付ける。
「ひぁん!あ、あぁっ…や!だめぇっ!!」
壊れてしまう、と髪を振り乱す濃姫の姿はなんとも艶めかしいものであった。
「何がダメなんだ?こんなに感じてるじゃないか。」
今にも果てそうな濃姫を、言葉でも追い詰めていく。
「だ…め…あぁん!やめな…さ…はっ…ぁ、あ!じゃなきゃ…もうっ!!」
首を反らせて、孫市の背にしがみ付く。
「イきそう?」
クス、と笑って更に突き上げを激しく、容赦のないものにしていく。
「ん、あっああ!!いやぁっ…ひあ!はぁん…!!も…無理だわ…イくっ…イッちゃ…!!」
身体を波打たせて、大きく仰け反る。
「ひ、あ!!んぁっ…ふぇっ…ん…はぁ…やっ…やぁあぁっ!!」
せめてもの抵抗に孫市の背にギリギリと爪を立て、白い喉を震わせて果てる。
「っ…」
中に白濁を注ぎ込めば、ふっと濃姫の意識が飛んだ。
「…ちょっとやり過ぎた、かねぇ。」
ずるりと引き抜き出しながら、彼女の乱れた髪を手櫛で直してやる。
最初に抱いた時にも思ったが、受け身だと案外可愛いらしい。
「おやすみ、姫。」
額にくちづけをした後、濃姫を抱き締め眠りについた。
自分を抱くのは、後にも先にも信長だけ。
そう決めていたのに。
「父上…申し訳、ございません。」
道三から受け取った懐刀を見つめる。
夫を撃ち殺した男に抱かれ、喘ぎ乱れるなどと。
もう終わりにしたい
首の動脈に刃を宛がう。
ふと、何気なしに孫市が視界に入った。
そうだ
こいつだ
手を止め、憎悪に込もった瞳を向ける。
孫市さえいなければ
私はこんな目に逢わなかった
殺してやる
殺してやるころしてやるコロシテヤル…!!
彼に馬乗り、刀を頭上まで振り上げる。
死んでしまえ!!
次の瞬間、勢いよくそれを振り下ろした。
「な…んで…避けないのよ!!」
「なんで外すんだ?」
刃は孫市の喉元のすぐ側に突き刺さっていた。
「あ、あ…うぁっ…」
何故殺せなかったのか。
答えなどとうに出ていて、彼女がそれに嘘を吐き続けていただけ。
どこかで、惹かれていた。
愛して憎んでの堂々巡り
「そんな、私っ…」
「おいで。」
泣きじゃくる彼女の頭を抱き寄せ、髪を撫でる。暫くそうしていると、濃姫は刃を抜き捨て、同じように孫市の髪を撫でた。
情の込もった艶然とした微笑み。そこには嘘のように先ほどの憎悪が消えていた。
「…愛しているわ。」
やっと、愛しい者が手に入った。
孫市の口元が三日月型に歪む。
「殺したいほど…!」
二人の唇が、重なる。
END