「ヨシモト、貴様はよくも我とシンゲンの戦いを邪魔したなぁ?」  
「んんん〜!んぐ!ふぅんん〜!」  
 
 暗い……暗く虚ろな意識の中、シンゲンは誰かの話し声を聞いていた。  
 
「せっかく戦いを楽しんでおったというのに……この、馬鹿者がぁ!」  
「ふぐぅ!んぐふぅぅ〜!ん、んんんんん〜!」  
 
 熱く、体を焦がすような衝撃を受け、シンゲンの意識は闇に落ちた。  
……熱い衝撃?あれ?私は確か……何をしてたんだっけ?  
 
「はぁ〜っはっはっはぁ!また達しおったか!貴様は罰を受け、達するのか?とんだお嬢様もいたものじゃなぁ?」  
「はがぁ……もっほぉ、のふははふぁまぁ、もっほふははひまへぇ」  
 
 今日は確か……誰かと戦ってたような?ケンシンか?いや、ケンシンとは違う、別の誰かだったはずだ。  
 
「ほぅ?まだ欲しがるのか?貴様はまだ榛名を欲しがるのか?はぁ〜っはっはっはぁ!ヨシモト、貴様は淫乱なお嬢様よなぁ。  
猿轡をされ、自由を奪われたまま好き放題に犯され、まだ快楽を求めるか?」   
 
 ……ヨシモト?そうだ、ヨシモトが攻めてきたんだった。  
ヨシモトの旗が軍勢にまぎれていると伝令が報告してきたんだった。  
……軍勢?ヨシモトは誰の軍勢にまぎれてたんだっけ?  
徐々に明るくなるシンゲンの意識。体中に受けたダメージから徐々に回復をしてくる。  
ぼんやりとだが回復してきた頭で、自身の身に何が起きたのかを思い出そうとする。  
 
「……いいだろう。欲しいのならくれてやろう、榛名の快楽を。  
このノブナガが慈悲深き主でよかったなぁ、ヨシモトよ。ほれ、存分に味わうがいい!」  
「ふぁぁ……ひ、ひがぁぁぁぁぁ〜〜!ひぐぅ!ひぐぅ!ひぐ、ひぎぃぃぃぃぃ〜!」  
 
 ……ノブナガ?そうだ、私はノブナガと一騎打ちをしてたんだった!  
ケンシンをバカにしたノブナガをぶったおさなきゃいけないんだ!  
ノブナガなんかにてこずってたら、ケンシンにバカにされちまう!  
……私と互角に戦えるのはケンシンだけなんだ、ケンシンだけでいいんだ!  
ケンシンが戦うのは私だけで十分だ!ノブナガなんかを、ケンシンと戦わせてたまるか!   
ケンシンは……ケンシンは私の物なんだ!誰にも渡さねぇ!  
ケンシンの名前が頭に浮かんだ瞬間、シンゲンは意識を取り戻した。  
取り戻した瞬間……目の前の光景に絶句し、また混乱してしまう。  
 
「な……んだ?これはいったい……なんなんだ?」  
 
 目の前に広がる光景……それは、宙吊りにされた全裸のヨシモトが、喘ぎ苦しんでいる様子だった。  
全裸でつるし上げられ、猿轡で口を塞がれて、まるで拷問を受け、苦しみもがいているかのようだった。  
否、苦しんでいるのであろうか?ヨシモトは自身を攻めている人物に、懇願するかのように悲痛な声を上げ、訴えている。  
シンゲンにはヨシモトが何を訴えているのか分からない。  
しかしその人物が奇怪な光を放つ何かをヨシモトの股間に押し当てた瞬間、ヨシモトの全身が激しく痙攣し、叫び声を上げる。  
その叫び声は、シンゲンの耳には苦痛の叫びではなく、何か別の……そう、喜びに似た叫びのように聞こえた。  
狂ったかのように叫び声を上げ、全身を振るわせるヨシモトに見入っていたシンゲンは、  
いつしか自身の身に変化が現れたことに気が付いた。  
 
(なん……だ?お腹が、熱い?いや、お腹だけじゃねぇ、股間も熱くなってきた。これはいったいなんなんだ?)  
 
 熱くなった股間に何が起こっているのかを確かめようと手を伸ばそうとする。  
手を伸ばそうとしたその時、シンゲンは初めて気が付いた。  
自分が両手両足を広げるような形で縛りつけられていることに。  
そして、ヨシモトを攻めている人物が、憎き敵、織田ノブナガであることに。  
 
「くっそぉ、解けねぇ!くそ!くそぉぉ〜!」  
 
 目の前にいる憎き敵、ノブナガに襲いかかろうとするも、両手足が縛られており、いくらもがいても身動きが取れないでいた。  
そんな暴れまくるシンゲンに気が付いたノブナガ。  
手にした榛名の動きを止め、ヨシモトの元を離れ、シンゲンに近づく。  
 
「ほぉ?死ななかったようじゃなぁ。さすがはシンゲン。あっぱれじゃな」  
「誰が死ぬか!お前のあんなへなちょこな技、痛くもなんともねぇよ!」  
「はぁ〜っはっはっはぁ!3日間も意識を失っておった者の言葉とは思えぬなぁ。  
なぁ、ヨシモトよ。貴様もそう思うであろう?」  
 
 ノブナガが向けた視線の先には、吊るされたままぐったりとし、猿轡をされた口からは、大量の唾液を零すヨシモトの姿が。  
そんな見たこともないヨシモトの姿に唖然とするシンゲン。  
シンゲンにとってヨシモトは、自分にない物を持っている、一目をおいていた人物であった。  
いつも優雅な振る舞いで、穏やかな表情で話しかけてくるヨシモト。  
琴の腕前もかなりのもので、がさつな自分とは違い色々な教養も持ち、可憐なヨシモト。  
そのヨシモトが、今目の前で何かに狂った瞳でノブナガを見つめている。  
 
「お前、ヨシモトになにをしたんだ?何をしたらこんなに狂っちまうんだ!」  
 
 そう、今のヨシモトは狂っている。  
シンゲンの知っているヨシモトじゃない。何かに狂っているヨシモトが今目の前にいる。  
シンゲンの言葉にニヤリと笑みを浮かべるノブナガ。その笑みに背筋にゾクリと寒気が走るシンゲン。  
 
「何をしたか、か……言葉で語るよりも、その身をもって教えてやろう。  
ヨシモト!貴様もいつまでも感じておらずに、シンゲンを攻めるのを手伝え!」  
 
 ヨシモトを吊るしている荒縄を大剣で切り、ヨシモトを自由にする。  
自身を縛っていた縄が解け、自由になったヨシモトは、そのまま床を這うようにしてノブナガの足元にすがりつく。  
 
「ノブナガさまぁ……お尻で、次はお尻を攻めてくださいませ。お尻にも榛名をくださいませ!」  
「貴様は我の言葉を聞いておらないんだか?……シンゲンを攻めるのを手伝えと申し付けたのじゃ!」  
 
 足にすがりつくヨシモトを蹴り飛ばすノブナガ。蹴り飛ばされてもまたすがり付こうとするヨシモト。  
その様子を見たシンゲンは、自分の体全身に鳥肌が立つのが分かった。  
その全身の鳥肌がシンゲンに訴える。『今すぐここから逃げなきゃヤバイ!早く逃げなきゃやば過ぎる!』と。  
 
「くそ!離せ!縄を解きやがれ!くっそぉぉぉ〜!」  
 
 全身を使い、逃げ出そうと暴れるシンゲン。しかし暴れるたびに縄は彼女の体をきつき締め上げ、さらに逃げづらくする。  
そんなシンゲンを見て笑みを浮かべるノブナガ。その笑みのまま、足にすがりつくヨシモトに話しかける。  
 
「くっくっく……いいじゃろう、もう一度、榛名の快楽を与えてやろう。筆を持って来るがいい」  
 
 ノブナガの言葉に目を輝かせ、走って筆を取りに行くヨシモト。  
そして、筆を持ってきた彼女は、四つんばいになり、両手で自らお尻を広げる。  
 
「シンゲンよ、どうじゃ?ヨシモトの尻の穴はなかなか綺麗な色をしておるじゃろう?」  
「な、なんてもん見せやがる!ヨシモト!お前も何をしてるんだ!お前は清楚なお嬢様じゃなかったのかよ!しっかりしろ!」  
「はぁ〜っはっはっはぁ!見てるがいい!その清楚なお嬢様が尻に筆を突っ込まれ、喘ぎ悶える姿を!」  
 
 ヨシモトから渡された筆を、ヨシモト自らの手で広げられている肛門にゆっくりと差し込んでいく。  
ゆっくりと、まるで焦らすかのように徐々に肛門の中へと消えていく筆。  
自身のお尻の中に筆が沈んでいくたびに体を震わせ、まるで泣き声のような声を上げるヨシモト。  
 
「ノ、ブナガ、さまぁ……あ、んん!き、もちいい、ですぅ……はう!あ、あはぁぁ……お、お尻が熱いですぅぅ」  
「くっくっく……入れただけで満足か?では榛名はもういらぬなぁ」  
 
 ゆっくりと筆を沈めていたノブナガは、その筆を引き出し、さらに沈める。  
出して入れる。入れては出す。その単純な作業でも、ヨシモトは全身を振るわせ、涙声を上げる。  
しかし、ノブナガの言葉に首を振り、その綺麗な黒髪を振り乱しながら更なる快楽を求めた。  
 
「お、お願いでございますわ!ヨシモトに、お慈悲を!榛名を……榛名をお与えくださいませ!」  
「はぁ〜っはっはっはぁ!いいだろう。憎き敵、シンゲンの眼前で、尻に筆を差し込まれたまま喘ぎ達するがいいわ!」  
 
 ヨシモトの懇願に、その手にした勾玉……榛名をお尻に刺さったままの筆に当てる。   
そして、笑みを浮かべてその榛名に命令を下す。『榛名よ、貴様の力、解放せよ』と。  
命令が下された瞬間、榛名は青い光を放ちだし、『ブブブブ……』と振動を開始した。  
その振動が筆を伝い、ヨシモトのお尻に伝わる。  
お尻に榛名の振動が伝わった瞬間、ヨシモトは崩壊した。  
 
「ひぎぃぃぃぃ〜!あ、あああああ!イ、イイ゛!ノブナガざま!きもぢいい゛〜!じぬ!じぬぅぅ〜!」  
 
 四つんばいのまま、その綺麗な黒髪を振り乱し、床を掻き毟る様に喘ぎ叫ぶヨシモト。  
その姿を見て、シンゲンは呆然とし、ゴクリと唾を飲み込む。  
ヨシモトが奇声を上げながら倒れこみ、全身を痙攣させ、動かなくなるまでその狂気に満ちた宴は続いた。  
その間、シンゲンは逃げることすら忘れ、その圧倒的な光景に見入ってしまっていた。  
シンゲンが我に返ったときにはヨシモトは床に倒れこみ、ビクビクと痙攣をしていた。  
そして、ヨシモトを狂わせた人物、織田ノブナガは、その手に青く光る榛名を持ち、  
縛られたままのシンゲンを見下ろし、ニヤリと笑みを浮かべていた。  
 
「な、なにをしたんだ?ノブナガ、貴様ヨシモトになにをしたぁ!」  
 
 お尻に筆を挿したまま床に倒れこみ、ビクビクと痙攣し、時折意味不明の声を上げるヨシモト。  
そんなヨシモトを見て、その瞳に怯えの色が見えるシンゲン。  
 
「何をしたか、じゃと?う〜む、言葉では言い表せぬなぁ……言葉では伝えにくいのでな、貴様の体に直接教えてやろう」  
 
 ニヤリと笑みを浮かべ、青く光ったままの榛名を手に、シンゲンへと近寄るノブナガ。  
そのノブナガの不気味な笑みにゾクリと寒気が走り、必死に逃げ出そうとするシンゲン。  
しかしきつく縛られた縄が、彼女の自由を奪っている。  
 
「や、やめろ、来るな!近づくんじゃねぇ!それ以上近づくと、ぶっころすぞてめぇ!」  
「ほう?この我を殺すとな?その縛られた体でか?はぁ〜っはっはっはぁ!それは怖い怖い」  
 
 シンゲンの言葉に大声で笑い、怖い怖いとバカにするノブナガ。  
そして、笑いながら床に倒れたままのヨシモトに近づき、その体を蹴り飛ばす。  
 
「いつまで快楽に浸っておる!起きよ!起きてシンゲンを攻めるのじゃ!」  
「はぐ!……い、痛いですわぁ。もう少し優しく起こしてくださってもよろしいんじゃありません?  
優しく髪を撫でながら口付けなどして下さったら、ヨシモトは張り切ってお仕事しますのに……」  
「いいから早くシンゲンを攻めぬか!」  
「分かりましたわ。その命令、確かに承りましたわ」  
 
 ノブナガの命令に、ニッコリとほほ笑み、立ち上がるヨシモト。  
しかしその瞳は普段の物静かで知的な彼女の瞳ではなく、狂気に満ちた、何かに狂っているかのような色をしている。  
 
「よ、よせ、止めろ!正気を取り戻せ!お前はノブナガに操られているんだ!」  
 
 狂気に満ちた瞳で近づくヨシモトに、恐怖を覚えるシンゲン。  
しかしヨシモトはシンゲンの言葉など無視し、そのシンゲンの綺麗な足に指を這わせる。  
 
「操られている?うふふふふ、それがどうかしまして?  
ノブナガ様に操られるのであれば、このヨシモト、喜んで操られますわ」   
 
 足首からふくろはぎ。ふくろはぎから太もも。太ももから内ももへと指を這わせるヨシモト。  
ヨシモトの指が足を這うたびに体をゾクゾクとした何かが走る。  
 
「よ、せぇ、やめ、ろぉ」  
「わたくしも、ミツヒデさんも、ヒデヨシちゃんも。全員ノブナガ様に操られることが喜びですわ。  
ノブナガ様の為になら死んでも構いませんの。……あなたも、きっとそうなるはず。そうしてさし上げますわね」  
 
 ニッコリとほほ笑むヨシモト。  
普段のヨシモトの笑みを知っているシンゲンは、その笑みに恐怖を覚える。  
普段見せていた、見ているものを幸せにするような、彼女の人柄が出た笑みではなく、狂気に満ちた、何に狂っているほほ笑み。  
ヨシモトはその微笑を浮かべたまま、シンゲンの足に口付けをし、そのまま舌を這わせ出した。  
 
 シンゲンの引き締まった足をぬめぬめとした感触が這い、徐々に股間へ近づく。  
内ももをなぞるように這っていたかと思うと、再び足首へ向け降りていく。  
太ももから膝頭。膝裏を伝い、ふくろはぎへと続く。  
ふくろはぎについばむように口付けをしたかと思うと、そのまま足の指まで唇を進め、一本ずつ丁寧に口に含み、  
まるで赤子が母親の乳房を吸うようにちゅうちゅうと音を立てながら愛撫する。  
そして、指への愛撫がすんだかと思うと、再度ふくろはぎへの口付けを開始し、それが終わると膝頭、膝裏への愛撫へと続く。  
そして太ももに顔をすり寄せ、時折強く口付けをし、赤い印をつける。  
ヨシモトの執拗なまでの足への愛撫。  
何度も何度も繰り返されるうち、シンゲン口から、声が漏れてくる。  
 
「あ、く、はぁ……ん、も、う、やめろぉ」  
 
 先ほどまでの威勢のよさは消え去り、弱弱しくも声を上げるシンゲンがそこにいた。  
その弱弱しい声を聞いたヨシモトは満足げな笑みを浮かべ、太ももに顔をすり寄せた。  
その時、シンゲンの体に起こっている異変に気づく。  
 
「あぁん……シンゲンさんのここから女の子の匂いがしてきましたわぁ。  
服の上からでもいい匂いがしますわぁ……感じてらっしゃいますわね?うふふふ、口では強がりを言ってても、体は正直ですわ」  
「お、んなの子の、匂い?……お、おわ!や、やめろ!お前バカか!そんなところの匂いを嗅ぐな!」  
 
 太ももに顔をすり寄せていたヨシモトは、股間に顔を埋め、クンクンと匂いを嗅ぎだした。  
ヨシモトの突然の行為に慌てふためくシンゲン。  
しかしヨシモトは慌てるシンゲンを無視し、クンクンと匂いを嗅ぎ続ける。  
クンクンと匂いをかぐヨシモトの整った鼻が、時折暴れるシンゲンの股間に当たる。  
当たる度に背中を逸らし、自身が意図をしていない声が出る。  
 
「あ、はぁん!や、やめ、やめろ!そこ、やめて!」  
 
 突然体を走る電流のような衝撃。  
その電流は体中を駆け巡り、シンゲンの隅々にまで広がる。  
股間にヨシモトの鼻が当たる度にその電流が走り、そのたびに頭の中が白くなり、何も考えられなくなる。  
シンゲンは今、自分の身に何が起きているのか理解できないでいた。  
考えようとするも、ヨシモトの鼻が当たる度にその考えは消え去り、ただ、頭が真っ白に染まる。  
いつしかシンゲンは、考えること自体を思いつけなくなり、  
ただひたすらに、ヨシモトがもたらす謎の電流に翻弄されるだけとなった。  
 
「あ、あ、ん、ひゃ!ふぁ!あ、んん!や、はぁん!」  
「クンクン……あぁ、すごいですわぁ。ものすごく濃い匂いになってきましたわぁ」  
 
 ニコニコとほほ笑み、その細い指で弾くようにシンゲンの股間を触るヨシモト。  
指が触れるたび背中を逸らし、撫でるたびに声をあげるシンゲン。  
シンゲンは自分がどうなっているのか、何をされているのかまったく分からなくなっており、堕ちるのも時間の問題かと思われた。  
ヨシモトの愛撫に反応し喘ぐシンゲンを見て満足げに笑みを浮かべるノブナガ。  
 
「……そろそろ頃合じゃな。ようやった、ヨシモト。あとで褒美を取らせようぞ」  
「ありがとうございます、ノブナガ様。では、今宵の夜伽の相手はこのヨシモトを」  
「くっくっく、先ほどあれだけ乱れおったのにまだ足りぬか?まぁよい。シンゲンと一緒に相手をしてくれるわ」  
 
 ヨシモトの頭をグシャグシャと撫でながら、手にした榛名をシンゲンの股間へと当てる。  
そして、はぁはぁと肩で息をするほど感じているシンゲンの耳元で囁く。  
 
「さぁ、準備運動は終わったぞ?貴様は我をぶっ殺してくれるのであろう?  
どう殺してくれるのであろうなぁ?楽しみじゃ。……榛名よ、力を解放せよ」  
 
 股間に当てられた青く光る榛名が振動を開始した瞬間、シンゲンは全身を痙攣させ、絶叫した。  
 
「ひぃ!な、なんだ、これ!これ、なんなんだぁぁ〜!いやぁぁぁぁ〜!」  
 
 先ほどまでのヨシモトの手による、まるで琴を奏でるかのような優しい愛撫。  
その愛撫とはまったく違う、まるで暴力のような激しい動きをみせる榛名。  
その動きにシンゲンは抵抗も出来ずに、ただ体を震わせて喘ぎ叫ぶことしか出来ない。  
 
「あああ〜!い、うあああああ〜!」  
 
 カグカグと全身を痙攣させ、暴れるシンゲン。  
その縛られた手首はあまりにも暴れるために縄が食い込み、血が滲んでいる。  
そんな暴れるシンゲンを見て、笑みを浮かべるノブナガ。  
喘ぎ暴れるシンゲンを見て、これで甲斐の虎、武田シンゲンも我が軍門に下った、そう考えていた。  
そして、天下統一のために戦う次の相手を考える。その考えを意識せず、つい口に出してしまった。  
 
「次なる相手は引きこもっておる徳川イエヤスか、ミツヒデが探っておる伊達マサムネか。  
それとも、当初の予定通りに越後の龍、軍神上杉ケンシンにするか……どれにするかじゃな」  
 
 ノブナガがつい口に出した言葉……上杉ケンシン。  
その言葉が出た瞬間、喘ぎ叫ぶだけだったシンゲンの様子が一変した。  
 
「ケン、シン?おま、え、ケンシンにも……こんなことを、する、つもり……か?」  
「んん?まだ意識を保っておるのか、さすがは武田シンゲンじゃな。褒めてやろう」  
「ケン、シンは、わ、たしが、倒す……んだ。ん、くぅ!き、さまのよ、うな、ひ、きょう者は、んん!  
ケンシンの、名前、を……出すんじゃねぇ!」  
 
 榛名の力で喘いでいたシンゲンが見せた、最後の抵抗。  
ケンシンの名前を出すなと大声で叫び、その勢いで、右手を縛っていた縄を引きちぎり、ノブナガを殴りつける。  
まさか縄を引きちぎり、殴られるとは思いもしなかったノブナガは、吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。  
体は縛られたままの体制で、右手一本でノブナガを吹き飛ばしたシンゲン。  
ヨシモトはそのあまりの攻撃力にゴクリと唾を飲み込み考える。  
もし縛られていなければ、ノブナガ様はどうなっていたのかしら?と。  
そして、最後の抵抗にしては派手でしたけど、これでノブナガ様も本気になっちゃいますわ、と。  
ヨシモトの思いの通りにノブナガは立ち上がり、嬉しそうに口の端を持ち上げ、シンゲンを睨みつける。  
殴られたために口の中を切ったのか、時折血を吐き捨てながら笑みを浮かべ、シンゲンへと近づく。  
そんなノブナガを睨みつけるシンゲン。その眼差しには、お前の思い通りにはならないと強い意志を見ることが出来る。  
 
「ヨシモト!縛りが甘かったようしゃなぁ。もう一度縛りなおせ!」  
「も、申し訳ありません!今すぐ縛りなおしますわ!」  
 
 怒りに震えるノブナガの声に恐怖を感じながらも、慌ててシンゲンの右手を縛るヨシモト。  
抵抗しようとするも、まだ完全に力が戻っておらず、再度縛られてしまう。  
しかしその瞳には強い意志の力が見えており、先ほどまでとは違い、そう簡単に堕とせそうにない。  
しかしノブナガは知っていた。榛名の力は強い意思でも抵抗できるものではない。  
睨みつけるシンゲンを見下ろし、ノブナガは考える。  
まぁ抵抗すればするほど楽しめるか。武田シンゲン……一度は榛名の力を振り払い、抵抗するとは噂にたがわぬ武将よ。  
だが……無駄な抵抗であったと思い知るがいい!と。  
 
「さぁ榛名よ。そろそろ本気になって攻めるとしようぞ!  
ミツヒデを、ヒデヨシを、ヨシモトを堕としたその力、存分に味合わせてやれぃ!」  
 
 ノブナガの叫びと共に赤く光り、一段と激しく動き出した榛名。  
その榛名を前にしてもシンゲンの瞳から強い意志は消え去らなかった。  
 
「ノブナガ様……ヒデヨシちゃんから書状が届いておりますわ」  
「あぁん?ヨシモト、見て分からぬか!今は忙しいのだ!後にせよ、後に!」  
「は、はい!申し訳ありません!では後ほど、シンゲンが堕ちしだいお持ちいたしますわ」  
 
 ノブナガは苛立っていた。  
シンゲンを捕らえてから早一週間。榛名で攻めだしてから4日も経つ。  
それなのにいまだシンゲンを堕とせないでいる。  
ノブナガがシンゲンを榛名で攻めている間、軍勢を率いたヨシモトが、甲斐を攻め落とし、駿河も取り戻した。  
しかし肝心要のシンゲンを攻め落とせないでいた。  
何故こうまでも抵抗できるのだ?こやつは化け物なのか?  
ノブナガは、シンゲンのあまりにも強い意志に恐怖すら覚え始めた。  
もはやシンゲンを配下に加えることは諦め、首を刎ねるしかないのか?  
ノブナガがそう考え始めたその時、シンゲンの呟きが聞こえた。  
 
「ケ……シン。ケン……シ……ン」  
 
 虚ろな瞳でブツブツと呟くシンゲン。  
連日深夜まで及ぶ榛名での激しい攻めで、シンゲンの精神は崩壊寸前まで追い込まれている。  
しかし、いくら攻めても決してノブナガに許しを請うことはなく、快楽に堕ちることもない。  
榛名でイキすぎて疲れ果てた虚ろな眼差しで『誰がお前なんかに降るか』と、吐き捨てるのだ。  
 
「ふぅ〜……こやつ、何故ここまで耐えられるのじゃ?  
いくら攻めても、達しても、ケンシンケンシンと呟いてばかりじゃ。  
よほどケンシンと戦うことばかり考えておるようじゃな。……こやつ、本当に戦うことばかりを考えておるのか?」  
 
 ノブナガは、ふと疑問に思い、今までのシンゲンの言動を思い出す。  
 
(シンゲンは、ケンシンの事を特別な存在と考えているようじゃ。  
このノブナガを殴りつけた時も、確かケンシンの名を出し、お前のような卑怯者が名前を出すなと激怒をした。  
榛名で攻めている時も、ケンシンの名前をよく呟いている。……呟いている?いつ呟いていた?  
今では常に呟いておるが、攻め初めの頃は……そうじゃ、達する時に叫んでおったわ!  
まるで攻めておるのがこのノブナガではなく、ケンシンであるかのように叫び、達しておった。  
我に榛名で攻められておるミツヒデ達が、我の名を叫び達する時のように……まさかこやつ、ケンシンの事を?)  
 
 ふと思いついた小さな疑問。その小さな疑問は考えれば考えるほどに大きな疑問になり、ある考えを確信へと変えていった。  
その考えを確かめるために、もはや狂う寸前のシンゲンの耳元で囁く。  
 
「あ〜あ、お主のこんな乱れた姿をケンシンが見れば、お主はケンシンに嫌われるであろうなぁ」  
 
 ちょっとした疑問から浮かんだ確信的な考え。その考えが正しかったと目の前のシンゲンが示している。  
耳元で囁かれた『ケンシンに嫌われる』という言葉。その言葉でシンゲンはボロボロと涙を零し始めたのだ。  
 
(やはりそうか……こやつ、ケンシンを敵だと言っておったが、好いておるんじゃな。  
そうかそうか、シンゲンはケンシンを好いておるのか。ケンシンに何度も戦いを挑んだは、好いた相手に会いたいがためか!  
……なら、今までのような攻めでは逆効果じゃな。ミツヒデ達とも扱いを変えねばならんな)  
 
 何かを思いついたノブナガは、シンゲンを縛っている縄を解く。解いた後に優しく抱きしめ耳元で囁きだした。  
 
「シンゲンよ、我に降れ」  
 
 口を半開きにし、その口からは涎をたらし、しかしシンゲンは虚ろな眼差しのまま首を振る。  
ノブナガは今まで気が付かなかったが、シンゲンのその様子は、必死に何かを守っているかのようだ。  
その姿を見て、自分の考えが正しかったとさらに確信し、ノブナガは囁き続ける。  
 
「我に降れ、シンゲン。我の配下になれば、褒美も思いのままじゃぞ?」  
 
 それでも首を振るシンゲン。もはや逃げ出す力も気力もなく、ただ首を振る事しか出来ないようだ。  
 
「次の攻める敵は、上杉ケンシンじゃ。……我に降ればそのケンシンを生け捕りにし、お主に与えようぞ」  
 
 フルフルと力なく振られていたシンゲンの首が、止まる。  
ケンシンという言葉に止まったのか、それとも、お主に与えるという言葉に止まったのか。  
それを確かめるために再び耳元で囁く。  
 
「どうじゃ?我に降ればケンシンに好き放題にできるぞ?口付けをするもよし、我がそなたにしたように、体を求めるもよし。  
ん?どうじゃ?我に降らぬか?」  
 
 ノブナガの囁きに、シンゲンの意識が少ずつ戻ってくる。  
もはや涎を垂らすだけだった口が、言葉を発する。  
 
「……ケ、ンシ……ン、好き……に、なって……くれる……の、か?」  
「んん?ケンシンがお主を好きになるかじゃと?そうじゃなぁ……ケンシンのためにこうまで榛名の攻めに耐えておるのじゃ。  
このことを知ればケンシンはお主を好いてしまうじゃろうなぁ。  
お主が耐えておったのは、ケンシンのためじゃな?我がケンシンを攻めるのを遅らせるために耐えておったのじゃな?」  
 
 コクリと頷くシンゲン。  
抱きしめられたまま頷くその様子は、まるで母親の胸に抱かれた子供のようだ。  
 
「すまなんだなぁ、もっと早くに気が付いておれば、ここまで攻めはしなかったのじゃがな。  
……我の配下になり、共にケンシンを打ち倒した暁には、褒美としてケンシンをお主にやろう。  
自分のものになれば好き放題できるぞ?たとえば……このように口付けも」  
 
 ちゅ、ちゅちゅ……虚ろな眼差しで見つめるシンゲンに、優しいキスをするノブナガ。  
そのキスをうっとりと受けるシンゲン。まるで愛する人にキスをされる一人の乙女のようにキスを受けている。  
   
「口付けの後は愛し合うのじゃ。……このようにな」  
 
 そう囁いたノブナガは、シンゲンの首筋に唇を這わせ、赤い印をつけていく。  
印が付く度に体を震わせ、その口からは『ケンシン……あぁ!ケンシン』と呟きが漏れる。  
 
「もちろん胸も愛したい放題じゃ。……このようにな」  
 
 すでに大きくたっている桃色の胸の先端に唇を付け、軽くキスをする。  
その軽いキスで全身を震わせ、『ああ!ケンシン!』と声を上げながら達するシンゲン。  
もはやシンゲンの頭の中では、ケンシンが抱いてくれているんだと思い込んでいるようだ。  
 
「ケンシンのここを触りたいであろう?ケンシンにお主のここを触って欲しいであろう?」  
 
 胸の先端を唇ではさみ、舌で嬲りながら手を下半身へと持っていく。  
そして、次々と溢れてくる愛液を指につけ、そのまま愛液があふれ出ている源泉へと指を這わせる。  
 
「はぁん!い、いい!ケンシン、気持ちいい!」  
「くっくっく、だいぶ意識が戻ってきたようじゃなぁ?気持ちよかろう?  
じゃがな、ケンシンとすればもっと気持ちいいはずじゃぞ?」  
「あ、あ、ああ!ケ、ンシ……っくぅ、も、わた、し、わたしぃ!イグ!イックゥゥゥ〜!んぁぁぁぁぁ〜〜!」  
 
 ノブナガの指の動きに、絶頂に達するシンゲン。初めてイクと口に出し、ノブナガにもたらされた快楽を受け入れた。  
軽く弄っただけの、簡単な愛撫で激しく達したシンゲン。  
全身を痙攣させ、ノブナガに強く抱きつき絶頂し続ける。  
 
「どうじゃ、シンゲン?我に降らぬか?どうせ気持ちよくなるなら、このノブナガでなく、ケンシンと達したいであろう?」  
「あ、あぁぁ……あ、うあぁ……ケン、シン、と、気持ちよく……あふぅぅ、なり、たいぃぃ」  
 
 ノブナガの胸にぐったりと倒れこむシンゲン。  
そんなシンゲンを優しく寝かし、足を開かせその中心に榛名を当てる。  
 
「シンゲンよ、この榛名でケンシンと共に気持ちよくなりたいであろう?」  
「はぁはぁはぁ……ケンシンと……気持ちよく、なれる、のか?」  
「あぁ、なれるとも。このノブナガに降ればそうさせてやろう。ケンシンにはこのノブナガは手をださぬ、約束しよう」  
 
 シンゲンは力なく寝そべりながらも首を起こし、ノブナガを見る。  
 
「……はぁはぁはぁ、ケンシンに酷いことしたら、お前のその首、叩き切るからな」  
「うむ、切り落とせばいい。ケンシンはお主に任せよう。ただ……この榛名で少し、手伝いをしてやるがなぁ」  
「はぁはぁはぁ、て、手伝い、だと?」  
「そうじゃ、お主とケンシン。ともに達することが出来るようにこの榛名を使い、手伝ってやろうと申しておるのじゃ。  
……このようにして、な。榛名よ、その力、シンゲンに教えてやれ」  
 
 ノブナガの命令に呼応するかのように青く輝きだし、振動を開始する。  
ここ数日、榛名の力を身を持って知っているシンゲンは慌て、榛名を止めるように声を上げる。  
 
「んな!ば、バカ止めろ!私は知って……んあああ〜!」  
「どうじゃ、シンゲン?この快楽をケンシンと共に味わいたいであろう?  
快楽を共にしながら口付けをし、抱き合いたいであろう?」  
「あああああ!ケ、ケンシン!いぐ!わ、だじ、イグゥゥ〜!」  
 
 ここ数日の榛名での執拗な攻めで体が感じやすくなっているシンゲンは、  
榛名の振動に抵抗することなどできずに、ビクビクと痙攣し、声を上げる。  
そんなイキ続けるシンゲンの耳元で囁くノブナガ。  
 
「ケンシンと快楽を共にすればさらに気持ちがいいであろうなぁ?どうじゃ?このノブナガに仕えんか?」  
「あがあああ〜!あ、あ゛あ゛あああ゛〜!つ、仕える、づかえまず!わた、しはぁ、おだ、のぶな、がにぃ……  
あ、ああああああ〜!」  
 
 一度快楽を受け入れてしまったシンゲンは、榛名のもたらす振動に抵抗することが出来ず、達し続けた。  
涎を撒き散らし、白目をむいてケンシンの名を叫び、達し続けるシンゲンを見て、ノブナガは呟く。  
 
『武田シンゲン、堕としたり』と。  
 
 ……戦国の世を争う8人の乙女、戦国乙女の1人武田シンゲン。  
彼女は同じく戦国乙女の1人、織田ノブナガの手に落ち、上杉ケンシンへの愛を叫びながら、  
明智ミツヒデ、豊臣ヒデヨシ、今川ヨシモトと同じく快楽の底へと沈んでいった。  
 
「んぐんぐんぐ……っかぁぁぁ〜!うめえ!おかわり!」  
「……はしたない事。それでも貴女は女の子なんですの?ねぇノブナガ様、そう思いませんこと?」  
 
 一人でおひつを一つ空にしたシンゲンだが、まだまだ食べ足りないようで、大きな丼を差し出しおかわりと声を上げる。  
その様子を面白そうに見物するノブナガに、まるでけだものを見るような視線を向けるヨシモト。  
榛名での拷問に近い攻めを受けていたシンゲンは、体が衰弱し、まともに動けない状態になっていた。  
ノブナガに降ってから3日後、全快したシンゲンは待ちに待った食事を楽しんでいる。  
 
「やっぱお粥は腹に溜まらないからダメだな!喰い応えがないとやっぱ喰った気がしねぇな!」  
 
 大きな口をあけ、わはははと豪快に笑うシンゲン。  
そのシンゲンの食欲をはじめて見たノブナガの兵士はアングリと口をあけ、次々と食事を追加するしか出来なかった。  
 
「食え食え、好きなだけ喰らうがいいわ!……で、ヨシモトよ。確かお主、ヒデヨシから書状が届いたと言っておったな?」  
「あ、そうでしたわ。ヒデヨシちゃんから緊急の要件と届きましたの」  
「緊急?どこぞの輩が攻め込んできたのか?」  
「いえ、そのような情報は入っておりませんわ。……いったいなんなんでしょうね、ノブナガ様?」  
「っっかぁぁぁぁ〜〜!うめぇ!美味すぎる!やっぱ朝飯は腹いっぱい喰わねぇとな!おかわり!」  
 
 山盛りの丼をあっという間に空にするシンゲンをよそに、ヨシモトからヒデヨシよりの書状を受け取るノブナガ。  
その書状に目を通し、一瞬驚きの表情を見せ、そして笑みを浮かべた。  
 
「く、っくっくっく、はぁ〜っはっはっはぁ!なるほどのぉ、奥州の独眼竜は、なかなか策士じゃな」  
 
 ノブナガの笑いに意味が分からず首を傾げるヨシモト。  
一瞬箸が止まったシンゲンであったが、我関せずといった表情で、再びご飯を口にかきこむ。  
 
「これを見よ。ヒデヨシの困った顔が目に浮かぶわ。はぁ〜っはっはっはぁ!」  
「では拝見いたしますわ。……ふむふむ、伊達マサムネが、ノブナガ様の配下に加わりたいと言ってきた……ええええ?  
マ、マサムネが降ってきた?これは一体どういうことなんですの?」  
 
 予想だにしない出来事に、慌てるヨシモト。さすがのシンゲンも箸が止まり、考え込む。  
 
「う〜ん、そのまんまじゃねぇのか?  
榛名を手に入れたノブナガ様に勝ち目ナシと思って、配下になるために降ってきたんじゃねぇのか?」  
「ですが、何もせずに降ってくるというのは考えにくいですわ!」  
「……くっくっく、何かをしながら降ってきおったのやもしれんなぁ。  
まぁよい、労せずとも奥州を手に入れることが出来るのじゃ。断る理由もなかろう、伊達マサムネを配下といたす!」  
「おう、よかったじゃねぇか!天下統一まで残すはケンシンとイエヤスか!ケンシンは私に任せな!  
この武田シンゲンが決着をつけてやらぁ!おし!そうと決まれば前祝いだ!がっつり喰うぞぉ!おかわり!」  
 
 笑いながら丼を空にするシンゲンを横目に、ノブナガはヨシモトに小声で話しかける。  
 
(ミツヒデからの連絡はないのか?)  
(えぇ、ありませんわ。書状の文面から察するに、ヒデヨシちゃんにも連絡は入ってないみたいですわね)  
(……ふん、ミツヒデめ、下手をこいたか?もしくは……マサムネの何か大きな尻尾を掴んでまだ探っておるのか?)  
(どう、なさいますの?このままマサムネを受け入れるおつもりですの?)  
 
 話し合う二人の横で、ガツガツとご飯を口の中にかきいれ、次々と丼を空にするシンゲン。  
そんなシンゲンをチラリと見て、ノブナガは囁く。  
 
(シンゲンに知られては怒られるであろうが、マサムネをケンシンに差し向けてやれ。  
マサムネが打ち倒せば儲け物じゃ。……ま、マサムネごときに負けるようなケンシンではないであろうがな)  
(分かりましたわ。手柄が欲しくて先走ったマサムネの独断として、話を進めるようにヒデヨシちゃんへ書状を送りますわ)  
(ふむ、万が一にもマサムネがケンシンを倒したとしても言い訳ができるな)  
 
 ノブナガはさっそくヒデヨシへの書状を出し、伊達マサムネに対し、上杉ケンシン討伐命令を下した。  
 
「ヒデヨシさま、書状が届きました」  
「ありがとー。……あ、ノブナガさまからだ!やっと返事が届いたよ。  
だいぶてこずったみたいだね、やっぱり武田シンゲンは強かったのかな?」  
 
 書状を受け取ったヒデヨシは、その書状をフムフムと読み進め、伊達マサムネを呼び出した。  
しばらくしてヒデヨシの前に現れた人物は、その美しい顔に似つかない眼帯で、片目を隠している。  
そして、彼女の細い腰には、吊り下げられている2本の剣が。  
その剣を自在に操り、近隣諸国を制覇して、今や奥州をその手におさめる戦国乙女の一人。  
この人物こそ奥州の独眼竜、伊達マサムネその人である。  
 
「お呼びでしょうか、ヒデヨシ殿。ノブナガ様からよい返答があったのでしょうか?」  
 
 ノブナガがシンゲン討伐に発ってからすぐに奥州から伊達マサムネ自身が尋ねてきた。  
想像すらしていなかった出来事に、ヒデヨシは驚き戸惑ったが、マサムネはヒデヨシの前に跪き、こう切り出した。  
 
『伝説の勾玉、榛名を手に入れた織田ノブナガ様こそ、この乱世を治めるのに相応しいお方です。  
この伊達マサムネ、ノブナガ様の手となり足となるために参上しました。ノブナガ様へのお目通りをお願いしたい』  
 
 突然のマサムネの来訪、そして、ノブナガへの降伏宣言。  
まさかの出来事の連続のため、ヒデヨシは判断が付かず、指示を仰ぐためにノブナガに書状を出した。  
その返事がやっと届き、マサムネにノブナガの意思を継げる。   
 
「うん、それがね、マサムネの忠誠心を見てみたいんだって」  
「私の……忠誠心、ですか?」  
「うん、忠誠心。でね、上杉ケンシンを、マサムネだけで倒して来いって書いてあるの」  
 
 すまなさそうにノブナガからの書状をマサムネに見せるヒデヨシ。  
そこには確かにマサムネに対して、ケンシン討伐の命令が記されていた。  
 
「……承知しました。伊達マサムネ、織田ノブナガ様の命令に従い、越後の龍、上杉ケンシンを打ち倒します」  
「頑張ってね!ケンシンなんかやっちゃって、ノブナガさまを一緒に守り立てようね!」  
「はは!ありがたきお言葉。では、さっそく領地に戻り、上杉ケンシン討伐のための準備に取り掛かります」  
 
 ヒデヨシに頭を下げ、足早に領地へと引き上げるマサムネ。  
無表情なその顔は、何を考えているのかよく分からない。  
その何を考えているのか分からないマサムネを不気味に思っていたヒデヨシは、厄介払いが出来たとホッとしている。  
安心してホッとため息を吐き、ぼそりと呟く。  
 
「マサムネかぁ、なんか企んでるような気がするけど……ま、いっか。それより早くノブナガさま帰ってこないかなぁ?  
頑張ってお留守番してたんだから、いっぱいかわいがってもらうんだもんね!  
あ……帰ってくるといえば、ミツヒデは何やってるんだろ?  
マサムネがノブナガさまにお仕えするんだったら、もう偵察する必要はないんじゃないかな?  
……ま、いっか。帰ってこないほうが色々と都合がいいしね」  
 
 口を押さえ、にひひと笑みを浮かべるヒデヨシ。  
その表情は、ミツヒデが帰ってこないほうがノブナガを独り占めできるかも?と、邪な思いが表れているようだった。  
 
 そして、そのミツヒデに自らの行動を探られているとは知らないマサムネは、  
ノブナガの領地を出たところで、腹心の部下に小声で話しかける。  
 
「……予定通りだ。我らでケンシンを討てとの命令が下った。……分かっているな?」  
 
 その短い言葉だけで全てを理解した腹心は頷き、マサムネに答える。  
 
「は、では早速出陣の準備を……出来るだけゆっくりと、のんびりと行うように指示を出します」  
 
 腹心の答えに、表情を変えずに頷くマサムネ。  
はたから見れば、2人が会話をしているとは思えないであろう。  
よほどこの会話を他人に聞かれたくないのか、さらに小声になり話し続ける。  
 
「……時間は稼げれば稼げるほどいい。まだ使者を出して一週間も経っていない、出来るだけ時間を稼ぐのだ。  
時間を稼ぎ……援軍が到着次第、ノブナガの隙を突き、討ち滅ぼしてくれる」  
「しかし、マサムネ様、異国の軍勢を信用してもよろしいのでしょうか?」  
「ふん、信用などしておらぬわ。この国を手に入れたら用済みだ。このマサムネ自ら討ち滅ぼしてくれる」  
「さすがはマサムネ様。まさかノブナガも、いすぱにあ軍の連中も、マサムネ様がそこまでお考えとは思いもしますまい」  
 
 あまり感情の出ないマサムネの横顔を見て、部下は背筋に寒気が走るのを感じる。  
このお方に一度味方だと思っていただければ、とてもお優しいお方だ。  
しかし、敵と認識されると決して容赦はされない。……ノブナガも可哀想に。  
敵と認識されたからには、どんな手を使ってでも討ち滅ぼされるであろう。  
それが例え……異国の軍勢を使うとしても、だ。  
 
 マサムネが領地に戻り、一ヵ月後。伊達マサムネ軍が上杉ケンシンの領地、越後へと進軍を開始した。  
それはゆっくりとした進軍であり、そのあまりにも遅い進軍速度のため、ケンシン軍は万全の迎撃体制をとり、待ち構えていた。  
 
 

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