「……何故だ。何故攻め込んでおきながら動きを見せぬ?……マサムネめ、いったい何を考えている?」  
 
 背後に軍勢を控えさせ、その手には朱槍を携えて凛とした姿勢で敵軍を睨みつける人物が一人。  
彼女こそが8人の戦国乙女の一人、軍神の異名を持つ越後の竜、上杉ケンシンその人である。  
ケンシンが睨む先には、彼女が治める所領に攻め込んできた伊達マサムネの軍勢が。  
しかし、マサムネが軍を率いて攻め込んできて早一週間。  
お互いに向かい合うだけで、小競り合いすら起こらず、ただ時を無駄に過ごしているだけだった。   
 
「……やはり妙だな。何故マサムネは攻めてきた?  
何故攻め込むぞと言わんばかりの、ゆっくりとした進軍速度で攻めてきた?」  
 
 部下に問いかけているのか、それとも自問しているのか。マサムネの怪しい動きに疑問の声を漏らすケンシン。  
 
「……どう考えても理に適わぬ。  
我が軍がシンゲンとの戦いで消耗している隙を突いての進軍なら、このように時間をかけるのは愚の骨張だ。  
ならやはり他に狙いがあるのか?……まぁいい。もはや考えるのは止めだ!」  
 
 ケンシンはそう呟くと、手にした朱槍を天を指すように高く掲げた。  
 
「我が屈強なる兵士達!今こそ我らに戦を挑んできた愚かなる伊達マサムネを打ち倒そうぞ!  
毘沙門天の加護は我らにあり!者ども……我に続け……」  
 
 手にした朱槍を振り下ろそうとした瞬間、大慌ての伝令兵がケンシンの目の前に駆け込んできた。  
 
「も、申し上げます!甲斐の、武田が!武田シンゲンが!」  
「なに?シンゲンが懲りずに攻めてきたのか!」  
「い、いえ、シンゲンが……あの甲斐の武田シンゲンが!……せ、攻め滅ぼされました!」  
 
 伝令兵の思いもしない報告に、振り下ろそうとしていた朱槍がその手から落ちる。  
ガランと音を立て、地面に落ちる朱槍。その顔は青ざめており、伝令兵がもたらした知らせが凶報だと物語っているようだ。  
 
「……戦場でのくだらぬ冗談はよせ。シンゲンが私以外に不覚を取るわけがなかろう」  
「い、いえ、最初に情報を掴んだ時わたしもそう思い、自ら甲斐に潜伏いたしました。  
……やはり、甲斐の国は攻め取られておりました」  
「……間違い、というわけではないのだな?」  
「は、この目でしっかりと見てまいりましたねで間違いございません!」  
「そなたがシンゲンが仕掛けた偽の情報に騙されたということは……」  
「それもございません。この目でしかと見てまいりました!まるで家臣のようにとある武将に付き添うシンゲンの姿を!」  
 
 フルフルと肩を震わせ伝令の知らせを聞くケンシン。  
唇はギュッとかみ締め、その知らせが凶報かのような態度を見せている。  
 
「シンゲンを打ち倒し、従わせたは……ノブナガです!  
榛名を手に入れた織田ノブナガに武田シンゲンは敗れ、配下に降ったのです!  
そして、今対峙している伊達マサムネも、自らノブナガに降ったとのことです」   
 
 伝来の知らせを聞き、ざわめく兵士達。  
それもそのはず、ケンシンと互角の戦いを繰り広げていたシンゲンが敗れ去り、ノブナガの配下に付いた。  
しかも、今対峙しているマサムネもノブナガに降っているとなると、もはやケンシンに勝ち目がないように思われた。  
そんな動揺する兵士達を尻目に、知らせを聞き終えたケンシンは、目を瞑り、ふぅ〜っと息を吐き出した。  
そして、その目を開けたとき、彼女の目には、何かの決意を秘めた光が宿っていた。  
 
「……そう、か。シンゲンはノブナガに降ったのか。……ならば目を覚まさせてやらねばいけないな」  
「……は?目を覚まさせる、ですか?」  
「そうだ、目を覚まさせるのだ。あの単純な性格のシンゲンのことだ。  
きっと榛名の怪しげな力を使われて、操られておるのだろう。……目を覚ませと横っ面を引っぱたいてくれるわ!」  
 
 知らせを聞き、動揺してその手から落とした朱槍を広い、再び高く掲げる。  
 
「皆のもの!……私はこれよりマサムネ軍を一蹴し、その足で甲斐に攻め込みシンゲンの顔を引っぱたく!  
……連戦になるであろうが、私の我儘に付いてきてくれるか?」  
 
 ケンシンの言葉を物音一つ立てずに聞いていた兵士達。  
一瞬の静寂の後、その静寂を破り、咆哮するかのように声を上げる。  
 
「ケンシン様やりましょう!シンゲンを引っぱたいてやりましょう!」  
「私たちはケンシン様の行くところ、どこまでも着いていきます!」  
「さっさとマサムネを倒してシンゲンの目を覚まさせましょう!」  
 
 まるで咆哮するかのような兵士達の声。  
その声に後押しされるかのように、ケンシンはマサムネ軍に向かい、手にした朱槍を下ろす。  
 
「……ありがとう。毘沙門天の加護は我らにあり!ノブナガに降ったマサムネなど我らの敵ではない!  
全軍……突撃!マサムネ軍など蹴散すのだ!」  
 
 まるで津波のような進軍で地鳴りを起こし、マサムネ軍に襲い掛かるケンシン軍。  
しかしマサムネはひるむ様子もなく、冷静に指示を出す。  
 
「ふん、やっと来たか。……では伝令を走らせよ。手筈通りにいたせ、とな」  
 
 配下に指示を出し、両手に刀を携えて立ち上がる。  
 
「しっかりと伝えよ。手筈通りに、とな」  
「はは!かしこまりました!」  
「では私は、餌となるか……ふ、軍神上杉ケンシン、いかほどの者か試させてもらおう!……ゆくぞ!」  
 
 両手に剣を携えて、ケンシンは先頭に立ちケンシン軍を迎え撃つ。  
そのケンシン軍の先頭には、朱槍を携え駆けてくる、ケンシンの姿があった。  
お互いに先陣を駆る者同士。ぶつかり合うには時間はかからなかった。  
 
「我はケンシン!名を名乗れ!」  
 
 次々と襲い掛かるマサムネ軍を蹴散らし、同じく自軍の兵士を難なく倒している双剣の武将に名を名乗る。  
それに答えるかのように、手にした剣を突き付け名を名乗るマサムネ。  
 
「……我はマサムネ。貴様がケンシンか?ノブナガ様の命により、その首貰い受ける!いくぞ!」  
 
 先手必勝とばかりに天高く飛び上がり、手にした双剣を振り下ろす。  
振り下ろされた双剣から発した衝撃波は、空気を切り裂きケンシン目がけ襲い掛かる!   
 
「……ふん、甘い!」  
 
 襲い掛かる衝撃波を手にした朱槍で難なく打ち消し、着地したマサムネに襲い掛かるケンシン。  
 
「ふ、さすがは軍神と言われるだけはある。……が、力だけではこのマサムネは倒せぬ。……今だ!合図を出せ!」  
    
 マサムネの支持を受け、側近兵が陣太鼓を打ち叩く。両軍入り乱れる戦場に響く陣太鼓の音。  
その音と共に、撤退を始めるマサムネ軍。  
 
「臆したか、マサムネ!追い討ちだ!追い討ちをかけよ!」  
 
 撤退するマサムネ軍に追い討ちをかけようとするケンシン軍。ケンシン自身もマサムネを追いかけ、追撃をする。  
しかしケンシンは気づいていなかった。  
撤退を開始したはずのマサムネ軍。しかし撤退を開始したのは中央のマサムネ本軍のみ。  
残る両翼の軍は進軍し、ケンシン軍を包むような形で取り囲んんだ。  
そして、2度目の陣太鼓が打ち叩かれた時、撤退をしていたマサムネ本軍が反転をし、反撃を開始した。  
その反撃に呼応するかのように、ケンシン軍を取り囲んでいた両翼の軍勢が、一斉に矢を射る。  
左右から降り注ぐ矢の雨に打たれ、反転してきたマサムネ軍から反撃を受けるケンシン軍。  
普通の軍勢なら、この一手で総崩れとなり、敗走を開始するであろう。  
この策が決まった瞬間、マサムネは勝利を確信した。  
取り囲み、矢の雨を浴びせ殲滅する。ここまで上手く決まれば逃れるすべはない。これで軍神上杉ケンシンも終わりだ、と。  
後はケンシンの首を挙げ、ノブナガに取り入ればいい。  
そして、従順していると思わせておき、いすぱにあ軍が到着すれば、いすぱにあ軍を利用し滅ぼしてくれる!  
勝利を確信したマサムネは、両翼からの矢を浴びているケンシン軍に襲い掛かる。混乱の中、ケンシンの首を取るために。  
……マサムネはまだ理解をしていなかった。何故ケンシンが軍神と呼ばれているのかを。  
その軍神に率いられた軍が、どれほどの強さを発揮するのかを。  
混乱しているはずのケンシン軍に襲い掛かったマサムネが見たものは、  
矢の雨を無視し、マサムネ本軍に襲い掛かるケンシン軍の勇姿であった。  
 
「ば……かな。そんな馬鹿な!何故混乱をしない?我が策の通りに事は進んだのだぞ!」  
 
 マサムネの目の前で、自軍の兵士に次々と襲い掛かるケンシン軍。  
軍を本体と両翼の3隊に分けたマサムネ軍は、一丸となって攻めてきたケンシン軍になすすべもなく次々と討ち取られていく。  
マサムネにとって、ケンシンとの戦いは予想外の戦いであった。  
だからこの戦いで損害は出さずに、来るノブナガとの決戦に備えたかったのだ。  
だからこそ彼女は、損害を少なくするために策を講じた。しかし、その策を破られ、マサムネ軍は甚大な損害を被ってしまった。  
例えこの戦いに勝てたとしても、軍を立て直すのには時間がかかるであろう。  
マサムネは、軍神と称えられるケンシンを甘く見てしまった己の愚かさに唇をかみ締め、肩を震わせた。  
 
「策士策に溺れる、とはこのことだ。……マサムネ、貴様の命運はこれまでのようだな!」  
 
 自らの策が簡単に敗れたことにより、呆然としていたマサムネ。  
その彼女の目の前に朱槍を手にした一人の武将が立ちはだかる。  
 
「ケンシン……おのれ、よくもやってくれたな!我が軍をこうまで叩いてくれるとは……その首叩き落してくれる!」  
 
 激情に駆られたマサムネが、ケンシンに襲いかかろうとした瞬間、突然戦場に炎の竜巻が舞い起こる。  
炎の竜巻に飲み込まれ、次々と吹き飛ばされる両軍の兵士達。  
 
「な、んだ?これはいったい……何が起こっている?」  
   
 一度はケンシンに襲い掛かろうと双剣を構えたマサムネであったが、突然の出来事に唖然とし、その双剣を下ろしてしまう。  
同じく炎の竜巻を見て、構えた朱槍を下ろしたケンシン。  
しかしその顔は唖然としているマサムネとは違い、笑みを浮かべていた。  
そして、笑みを浮かべたまま大声でこの竜巻を起こした人物の名前を叫ぶ。  
 
「どこにいる!ケンシンはここだ!貴様の探す上杉ケンシンはここにいる!出てくるがいい……武田シンゲン!」  
 
 大声でシンゲンと叫ぶ彼女の前に、現れた一人の人物。  
その手には巨大な軍配が握られており、その軍配を振るうたびに竜巻が舞い起こり、次々と両軍の兵を吹き飛ばす。  
両軍の兵を吹き飛ばしながら、ケンシンの目の前に現れたその人物。  
彼女こそ、軍神上杉ケンシンが唯一ライバルと認める、戦国乙女の一人。甲斐の虎、武田シンゲンである。  
 
「おう!待たせたな、ケンシン!今日こそ決着をつけようぜ!」  
 
 ケンシンの前に現れたシンゲンは、嬉しそうな笑みを浮かべ、軍配をケンシンに向ける。  
それに応じるかのように朱槍をシンゲンに向けるケンシン。  
2人が対峙したのを知ったケンシン軍は、逃げ惑うマサムネ軍に追い討ちをかけるのを止め、2人を取り囲む。  
 
「ケンシン様!今日こそ決着をつけちゃってください!」  
「そんな大食い女、倒しちゃってください!」  
「顔をひっぱたいて、目を覚まさせましょう!」  
 
 配下の兵の応援に、朱槍を掲げ答えるケンシン。  
シンゲンはそんなケンシンの前で屈伸をし、戦いに備えている。  
 
「よっと……おっし、準備運動完了っと!ケンシン、お前とも長い間戦ってきたが、そろそろ決着をつけようぜ!」  
「ふん!それはこっちの台詞だ!今日こそは貴様を打ち倒してみせるわ!」  
「おう!やれるもんならやってみろ!」  
「では行くぞ、シンゲン!」  
「……待て。貴様ら、この私を無視して戦うなどと……私をなめるなぁ〜!」  
 
 お互いに武器を構え、襲いかかろうとした瞬間、2人の間に割り込み戦いを止める人物が。  
その人物の手に握られた双剣は怒りで震え、その表情は、自分を無視している2人の武将への怒りに満ちている。  
それもそのはず。先ほどまでケンシンと刃を交えていたのに、今はケンシンの眼中には入っていない。  
奥州を統べる独眼竜マサムネの異名を持つ戦国乙女。伊達マサムネが、まったく相手にされていない。  
これほどまでの屈辱は生まれて初めてであり、マサムネにとっては我慢できることではなかった。  
 
「シンゲン……無様に敗れた貴様はノブナガに媚び諂っておればいいのだ!私の邪魔をするな!  
上杉ケンシンの首は……この伊達マサムネが取る!」  
 
 マサムネが双剣を構えた瞬間、戦場の空気が張り詰める。  
その空気を読み取ったケンシンが朱槍を構えた瞬間、気合一閃、マサムネの必殺技がケンシンに襲い掛かる。  
 
「喰らえ!……双竜連斬!」  
 
 マサムネの双剣が、残像を残しながらケンシンに襲い掛かる。  
残像が見えるほどの速度で打ち込まれる必殺の斬撃。  
その一刀一刀が必殺の威力を持ち、並の武将であれば、すぐに細切れになる……はずだった。  
マサムネの必殺の間合いから放たれた、彼女の必殺技。  
だがその技はケンシンを切り刻むどころか、彼女に触れることすら出来なかった。  
今まで無敵を誇ってきた必殺の斬撃。  
その必殺の双竜連斬が、軍神上杉ケンシンの前ではいとも簡単に弾かれ、いなされる。  
 
「そ、そんな馬鹿な!こんな馬鹿なぁ!」  
 
 残像が残るほどの速度で打ち込むマサムネの必殺技、双竜連斬。  
しかし、いくら打ち続けてもケンシンには届かず、マサムネの体力を削るだけだった。  
 
「いい加減に……諦めろ!」  
 
 打ち込まれ続ける双剣での斬撃を弾き飛ばし、槍の柄でマサムネの腹を突き、マサムネの動きを止めたケンシン。  
柄の部分とはいえ腹を突かれたマサムネは、お腹を押さえて蹲り、胃液を吐き出す。  
 
「ふん、さすがは独眼竜と言われるだけはある、なかなかの攻撃だった。……だが、まだまだだな」  
 
 涼しげな顔で、蹲り、胃液を吐き出すマサムネを見下ろすケンシン。  
同じ戦国乙女と謳われる伊達マサムネを手玉に取るこの強さこそが、彼女が軍神と言われる所以だ。  
 
「己の力不足を認識したのなら国に帰り、力をつけるがいい。このケンシン、いつでも相手になろうぞ!」  
 
 自分を見下ろし……否、見下しているケンシンに、マサムネは怒りで頭が真っ白になる。  
見下されている……この、奥州の覇者、伊達マサムネが!いずれはこの戦乱の世を統べるこの私が……見下されている!  
 
「がは!ごほ!ぐほぉ!こ、この私を、伊達マサムネを馬鹿にして……ふ、ふざけ、ふざけるなぁ〜!」  
 
 自身を見下ろすケンシンに、飛び掛るマサムネ。再び双剣を手に、ケンシンへと襲い掛かる!     
 
「……未練がましいぞ、独眼竜!その未練、断ち切ってくれる!」  
 
 朱槍を構え目を瞑り、ふぅ、と息を吐くケンシン。  
そして目を見開いた瞬間、彼女の持つ朱槍が輝きだした。  
 
「……勝負あり、だな。どれ、準備運動の続きでもすっかな?」  
 
 ケンシンの朱槍が輝きだしたのを見たシンゲンは、再び屈伸を開始し、ケンシンとの戦いに備える。  
その輝く朱槍は、ケンシンに襲い掛かるマサムネに向かい、構えられた。  
 
「喰らうがいい。我が必殺の……雷光連撃槍!」  
 
 ケンシンの手から放たれた、朱槍での連撃!  
その一撃一撃には強烈な電流が帯びており、双剣で受けようとしたマサムネの体を電流が駆け巡る。  
 
「かはぁ!ぐ、きゃあぁぁぁぁ〜!」  
「トドメだ!……ふん!」  
 
 気合一閃!ケンシンの放った渾身の一撃がマサムネの双剣を砕く!  
剣を砕かれ吹き飛ばされたマサムネは、地面に叩きつけられて意識を失った。  
 
「フッ、相手にならぬ」  
 
 地面に叩きつけられ意識を失ったマサムネを一瞥し、台詞を吐くケンシン。  
慌てて気絶しているマサムネを抱きかかえ、逃げ出すマサムネ軍の兵士達。  
ケンシンは追撃をしようともせず、そのままシンゲンと向かい合う。  
   
「さて、待たしたな。今日こそ私とそなたの因縁の決着をつけようぞ!」  
「おう!今日こそは勝って、ノブナガ様に褒めてもらうぜ!」  
 
 シンゲンの口からノブナガの名前が出て表情が曇るケンシン。その様子に気づいたシンゲンが戸惑いの声を上げる。  
 
「え?ど、どうしたんだ?何か変なこと言っちまったか?」   
「……シンゲン。ノブナガに負けて降ったというのは本当なのか?」  
 
 構えを解き、シンゲンに話しかけるケンシン。その顔は、まるで親友を心配するかのような顔をしている。  
 
「え?いや、まあその、なんだ……ま、負けたよ。確かに私はノブナガ様に負けた。負けてノブナガ様の配下となった」  
「……そう、か」  
 
 シンゲンの言葉に視線を逸らし、唇をかみ締めるケンシン。周りを囲むケンシン軍の兵士達も、黙ってしまう。  
そんなケンシンの様子に、シンゲンはどうすることも出来ずにオロオロと狼狽をしてしまう。  
しばらくの間、唇をかみ締めたまま俯いていたケンシンだったが、  
ふいに顔を上げ、何かを決意した表情で、シンゲンをまっすぐに見つめた。  
 
「……なら、目を覚まさせてやらねばいけないな。今のお前は自分を忘れている。  
ノブナガに破れ、自らを見失っているのだ。……引っぱたいて目を覚まさせてやろう!  
私が勝てば……ノブナガの元から去れ。そして天下統一の野望を捨て、甲斐で平穏に暮らすのだ」  
 
 元気のないケンシンの様子にオロオロと狼狽していたシンゲンだったが、ケンシンの言葉を聞き、明るく頷き軍配を構える。  
 
「おう!私が負けたらケンシンの言うとおりにしてやろうじゃねぇか!  
だからなぁ、お前が負けたら、その、なんだ……わ、私の言うことを聞けよな!」  
 
 何故か真っ赤な顔になるシンゲン。ケンシンは何故赤くなるのか訳が分からず首を傾げる。  
 
「何故赤くなる?……私が負けるなど、ありえない話だ。お前が勝てば何でも言うことを聞いてやろう。好きにすればいい」  
「好きにしていいのか?ホ、ホントだな?ホントにホントなんだな?」  
 
 目を輝かせ、ケンシンに詰め寄るシンゲン。  
 
「な、なんだ?今日の貴様は何か変だぞ?」  
「ウソじゃないだろうな?約束したからな!私が勝てば絶対に言うことを聞けよな!」  
 
 ケンシンの両手をギュッと掴み、目を輝かせ詰め寄るシンゲン。ケンシンは驚きのあまりに突き放すことが出来ない。  
 
「あ、ああ、分かった。だが、私が貴様に負けるなどありえないこと……」  
「おっし、お風呂に一緒に入るとか、背中を流しあうとかさせちゃうからな!」  
「……はぁ?シ、シンゲン、お前何を言っているのだ?」  
「ご飯を『あ〜ん』とか、食べさせあいっこもするからな!」  
「シ、シンゲン?」  
「もちろん寝る時は一緒の布団だぁ!」  
「ちょ、ちょっとシンゲン?」  
「もちろん枕は……ケンシンの腕だぁぁ〜!」  
「……は、早く引っぱたいて目を覚まさせないと!く、狂ってる!」  
 
 ギュッと握り締められた手を振り解き、間合いを取り朱槍を構えるケンシン。  
その顔は青ざめており、よほどシンゲンが恐ろしかったと見える。  
 
「シンゲン!やはり貴様は狂ってる!ノブナガに狂わされたのかは知らぬが……この私が目を覚まさせてやろう!」  
「おう!じゃあ私がお前を狂わしてやる!……私のように目覚めさせてやるぜ!」  
 
 噛み合っているようで、噛み合っていない両者の会話。  
いったい何に目覚めさせられるのか、シンゲンは何に目覚めたのか。  
何か得体の知れない恐怖に震えるケンシンは、その恐怖を振り払うかのように朱槍を振り回し、シンゲンを挑発する。  
 
「シンゲン!永きに渡る我らの戦い……決着をつけようぞ!」  
「……おう!行くぞケンシン!」  
 
 ケンシンの言葉に軍配を振りあげるシンゲン。そのシンゲン目がけ、突進するケンシン。  
 
「いっくぞ!喰らえ!炎竜軍配撃!」  
「その技は見飽きたわ!消し飛べ!雷光連撃槍!」  
 
 互いの手から放たれた、渾身の一撃!炎の竜巻と、電撃の連撃が交差する!  
……ケンシンは気がつけないでいた。いつもの彼女なら、気が付いていたであろう。  
しかし、今日の彼女は、シンゲンの言動に、言いようのない恐怖を感じていた。  
その恐怖が、彼女の感覚を鈍らせていたのかもしれない。  
普段の彼女であれば、自分の手足と言っても過言ではない、朱槍に入った僅かなヒビを見逃さなかったであろう。  
それを見逃してしまうほどに、シンゲンの言動に恐怖を感じてしまっていたのだ。  
幾多の戦いを、ケンシンと共に潜り抜けてきた彼女が手にする朱槍は、  
マサムネの必殺技、双竜連斬により、微かな傷跡を残した。  
……その微かな傷によって、ケンシンとシンゲンの、長年続いたライバルの戦いに終止符が打たれた。  
互いの必殺技が交差した瞬間、微かなヒビの入ったケンシンの朱槍は、その威力に耐え切れず、砕け散った。  
……ケンシンの天下統一の野望と共に。  
ケンシンは、己の武器である朱槍が砕け散るのを見ながら、炎の竜巻に巻き込まれ、吹き飛ばされた。  
こうして、武田シンゲンと上杉ケンシンの長年にわたる戦いは終止符を打った。……武田シンゲンの勝利によって。  
 
「ケ、ケンシン?だ、大丈夫か?しっかりしろ、ケンシン!」  
 
 自身の技により、吹き飛ばされ、地面に叩きつけられたケンシンに駆け寄るシンゲン。  
その表情は勝利の喜びよりも、何故か悲しみが見て取れる。  
ケンシンに駆け寄り、グッタリとして動かない彼女を抱きしめ涙を零す。  
 
「おい!しっかりしろ!死ぬな!死なないでくれ!医者、医者はどこだぁ〜!」  
 
 ケンシンを強く抱きしめ、医者はどこだと叫ぶシンゲン。  
その様子に、ケンシン軍の兵士達は動けずにいた。  
冷静に考えれば、兵士を一人も連れずに参戦してきたシンゲンと一騎打ちをする必要もなく、討ち取ればよかっただけのこと。  
しかしケンシンはあえて一騎打ちをし、そして敗れ去った。  
そんなケンシンだからこそ、兵士達は何も言わずについてきたのだ。  
そんなケンシンを打ち破ったシンゲン。  
普通なら、敵討ちだと一斉に襲い掛かるところだろうが、シンゲンの必死の叫びに誰もが動けないでいた。  
ケンシンのために医者はどこだと涙を流しながら叫ぶシンゲンの姿に、  
『シンゲンは私達の誰よりもケンシン様が好きなんだ』と悟ってしまったからだ。  
 
「……うる、さいな。煩くて気絶も出来ない」  
 
 医者はどこだと泣き叫ぶシンゲンの腕の中で、意識を取り戻したケンシン。  
しかしその体は所々が火傷を負っており、シンゲンの技の威力を物語っている。  
 
「ケ、ケンシン?大丈夫か?怪我は……怪我は大丈夫なのか?」  
「フ、フフフ……大丈夫、と言いたいところだが、さすがはシンゲンだな。気を抜くと意識を失いそうだ」  
「す、すまねぇ……」  
 
 意識を取り戻したといっても、声にはいつもの張りが無く、弱々しく感じる。  
いくら一騎打ちの結果とはいえ、ケンシンをこんな状態にしてしまったことを悔やむシンゲン。  
そんな落ち込むシンゲンを見て、ケンシンは笑みを浮かべた。  
 
「フフ、この私に勝ったというのに何を落ち込んでいる?貴様はおかしなヤツだな。  
……肩を貸して欲しい。兵達に……皆に、最後の命令を下さなければいけないからな」  
 
 シンゲンの方を借り、よろめきながらも立ち上がるケンシン。  
そんなケンシンの姿を兵士達は涙を流しながら見守っている。  
シンゲンの肩を借りて立ち上がったケンシンは、折れた朱槍を杖代わりにして、自らの足で立ち、  
兵士達一人一人の顔を見るように、ゆっくりと見回した。   
 
「……私の力不足のせいで、この戦、破れてしまった。皆、すまない」  
 
 よろめく身体を杖代わりの折れた朱槍で支え、今までケンシンを支えてきた兵士達に深々と頭を下げるケンシン。  
そんなケンシンの姿に兵士達は声も出せずにただ涙を流し続けるだけだった。  
 
「……私は、シンゲンに負けた。幾多の戦いを共に潜り抜けてきた朱槍を折られ、不様にも負けた」  
 
 その折られた朱槍で身体を支え、肩で息をしながら兵士達を見回す。  
まるで今生の別れを前に、皆の顔を覚えようとしているかのようだ。   
 
「……私はシンゲンに降る。一騎打ちで負けてしまったのだ、降るしかあるまい」  
 
 ケンシンの言葉にシンゲンは満面の笑みで喜びを表現し、兵士達は俯き涙を流し続ける。  
 
「皆、今まで共に戦ってくれて、本当にありがとう。皆が共に戦ってくれて、とても心強かった」  
 
 兵士達は、ケンシンの言葉に堪えきれずに声を上げて泣き出してしまう。  
そんな泣きじゃくる兵士達を優しい笑顔で見回し、ゆっくりと頷く。  
 
「だが……これが最後の命令だ。皆……私の分まで国を守って欲しい。  
国を、仲間を、家族を守って欲しい。これが……上杉ケンシン、最後の……めい……れ……い」  
 
 ゆっくりと、まるで大木が倒れるかのように崩れ落ちるケンシン。  
そんなケンシンを、抱きしめるように受け止めたシンゲン。  
その顔は、涙でグショグショになっており、ケンシンの言葉に感動をしていたのを物語っている。  
 
「ケンシン、立派だったぜ。……じゃ、行こうか。お前ら!ケンシンの命令、しっかりとこなせよ!」  
 
 気を失ったケンシンを担ぎ、歩き去るシンゲン。  
残された兵士達はそれを止めることも出来ず、見守るしかなかった。  
 
「はい、あ〜ん……あ〜ん!なんで食べてくれないんだ?……ぐすっ、私のこと、嫌いなのか?」  
 
 ケンシンとシンゲンとの戦いに終止符が打たれてから3日後。ノブナガの本拠地である尾張に2人の姿はあった。  
体中を包帯でぐるぐる巻きにされ、まるで縛り付けられているかのように布団に寝かされているケンシン。  
その傍らには、粥の入ったお椀を持ち、ケンシンに食べさせようとしているシンゲンの姿が。  
 
「……何度言えば分かる?もう傷は癒えた!食事も自分で食べられる!  
……心配してくれるのはありがたいが、私はもう大丈夫だ。だからいい加減、世話をしようとするのを止めてくれないか?」  
「……ぐすっ、やっぱり私のことが嫌いなんだな?ひっぐ、ケンシンに嫌われちまったぁ〜!」  
 
 上杉ケンシンは戸惑っていた。  
彼女が知る武田シンゲンは、大雑把な性格ではあるが、兵達からも尊敬され、なによりも互角に戦える数少ない武将だった。  
だから敵とはいえ、尊敬の念を抱いてもいた。  
戦場で会う度に、戦う度に、友と会うような感覚にもなっていた。心のどこかでは、敵とはいえ、友と認めてもいた。  
そのシンゲンが……まさか目の前で大きな口をあけ、ワンワンと泣くなんて想像もしたことがなかった。  
 
「わ、分かった、食べるから。食べるからそんなに泣かないでくれ」  
「ひっく、えぐ……ぐすっ、ホントだな?ホントに食ってくれるんだな?」  
「あぁ、食べる。だからそんなに大声で泣かないでくれないか」  
「へへへへ……はい、ケンシン。あ〜んして?あ〜ん」  
 
 先ほどまで大きな口をあけ、ワンワンと泣いていたシンゲンは、  
満面の笑みを浮かべながら粥をレンゲで掬い、ふぅ〜ふぅ〜と息で熱を冷ましてケンシンの口元へと運ぶ。  
そんなシンゲンの様子に戸惑いながらもレンゲを口に入れ、粥を食べるケンシン。  
 
「えへへへへ……どうだ?美味いか?」  
「うん、美味い」  
 
 粥を一口食べて美味いと頷くケンシン。そんな彼女を頬の緩んだ笑顔で見つめるシンゲン。  
そんなシンゲンに言いようのない恐怖を感じながらもケンシンは、  
『私を看病をしてくれているんだ。敵であった私の怪我を治そうとしてくれているんだ』と、言い聞かせている。  
 
「へっへへへへ……どんどん食ってくれよな!いっぱい食べて、汗を掻いたら怪我もすぐに治るさ!  
……汗を掻く?そ、そうだ!ケンシン、お前汗かいてるだろ?そ、そろそろ風呂に入ってもいい頃合じゃないか?」  
「ま、まぁ確かに湯船につかり、のんびりと体を休めたいという思いはあるが……シンゲン、何故鼻息が荒くなる?」  
 
 鼻息荒く血走った目で、ケンシンに詰め寄り、風呂に入らないかとしきりに勧めてくるシンゲン。  
ケンシンも戦いの後、尾張に運ばれてからは怪我のせいもあり、軽く体を拭く程度しかしていなかったので、  
湯船につかり、のんびりとしたいと思っていた。   
 
「おし!ならこんな包帯取っちまって早く風呂に入ろうぜ!」  
「元からこのような包帯、必要ないと言っていたではないか!それをお前が大げさに巻きつけて……いい迷惑だ!」  
「……ゴ、ゴメンな。良かれと思ってやったんだけど、迷惑だったんだな。……ぐすっ、ゴメンなぁ」  
 
 あっという間になみだ目になり、今にも泣き出しそうなシンゲン。  
俯いて肩を震わせ、膝の上においている両手はギュッと強く握り締められている。  
その両手にポタポタと涙が零れ、声も涙声に変わっていった。  
 
「だ、だっで、ケンジンが、火傷しで、いだぞうだったがら……でもわだじ、どうすればいいかわがんないがら……ひっく」  
「す、すまぬ、強く言い過ぎた。……お前は私にために一生懸命看病してくれたんだった。  
そんなお前に感謝の言葉も言わずに、貶してしまうとは……私は恩知らずだな。すまなかった、許してほしい」  
 
 泣きじゃくるシンゲンをそっと抱きしめ頭を撫でる。その様子はまるで姉妹のようで、妹を慰める姉のようだ。  
 
「ケ、ンシン……ケンシン〜!」  
「こ、こら、いい加減泣き止まないか……何故鼻息荒くなる?おい、シンゲン、お前ウソ泣きしてないか?」  
 
 泣きじゃくっていたシンゲンは、ケンシンの胸の顔を埋め、ギュッと抱きつき泣きじゃくっているように見えた。  
しかし、何故かハァハァと息荒く、顔をケンシンの胸に押し付けるようにグニグニと動かしている。  
ケンシンはおかしなヤツだと思いながらも、シンゲンを抱きしめ続けた。  
 
「……で、ケンシンはどうなっておるのじゃ?今だにシンゲンは手を出せぬのか?」  
 
 咥えた煙管を一息吸い込み、ふぅ〜っと白い煙を吐き出すノブナガ。  
ケンシンにマサムネを差し向けたことを知られ、怒り狂ったシンゲンが出て行ったかと思うと、  
傷だらけのケンシンを連れて戻ってきた。  
ケンシンを連れてきてからは、片時も側を離れず、献身的に看病を続けている。  
それをノブナガは苦々しく思っていた。  
ケンシンが動けない間に榛名で攻め抜き、さっさと堕として忠誠を誓わせた方がよかっただろうに……  
シンゲンはよほどケンシンを好いておると見える。我が手を出そうものなら、襲い掛かってきそうじゃな。  
そう考えながら、ノブナガは煙を吐き出した。  
 
「それが今日は一緒にお風呂に入るそうなんですの。嬉しそうな顔で、お風呂の準備をしていましたわ」  
「ほぉ〜、進展があったのか?好いておるのならさっさと犯してモノにすればよいのに……シンゲンは物好きじゃな」  
「えぇ、でもケンシンさんが羨ましくもありますわ。そこまで好いてもらえているのですからね。  
ヒデヨシちゃんもそうお思いになりますわよね?」  
 
 ノブナガの言葉に、ニッコリとほほ笑むヨシモト。ヒデヨシも同意するようにウンウンと頷く。  
 
「アタシもノブナガさまに優しくしてもらったら、すっごく嬉しいもんね。きっとケンシンも嬉しいはずだよ」   
「はん!貴様らも物好きじゃな。まぁよい……で、マサムネはどうなっておるのじゃ?」  
 
 本来、ここにいなければいけない、最近配下に加わったはずのもう一人の戦国乙女の名前を出すノブナガ。  
配下になったとはいえ、一度も会ったことはなく、ノブナガはマサムネの顔さえ知らないのだ。  
 
「それなのですが……ケンシンさんにやられた傷が思いのほか酷く、しばらくは国にて静養したいとの書状が届いておりますわ」   
 
 ヨシモトがマサムネから届いた書状をノブナガに見せる。  
その書状に書かれたことに疑問の声を上げるヒデヨシ。  
 
「う〜ん、それってホントなのかなぁ?アタシのカンはマサムネがウソを付いてるって言ってるね!」  
「ですが、ケンシンさんにやられちゃったのは確かなことですし……一概にウソとは言えませんわ」  
「でもアイツは何を考えてるのかよくわかんないんだよ?あれはきっとなんか企んでるね!」  
 
 直にマサムネと話したヒデヨシには、マサムネが何かを企んでいるように思えたのだろうか?  
しきりにマサムネは何かを企んでいると口に出し、信用できないと警戒をしている。  
 
「ヒデヨシちゃん、決め付けはいけませんわよ?もしかしたら、とてもいい人かもしれませんわ」  
「い〜や、マサムネはきっと陰険でいけずでイジワルなんだよ!」  
「あら?そんなことはありませんわ。きっと子犬が好きなとてもお優しいお方のはずですわ」  
 
 マサムネについて意見を言い合うヒデヨシとヨシモト。  
途中から何の話をしているのか、分からなくなっているが、2人は気づいていない。   
そんな2人を面倒くさそうに見ていたノブナガだったが、いい加減聞き飽きたのか、2人に命令を出す。  
 
「もうよい!……ヒデヨシ!マサムネに今すぐ挨拶に来いと書状を送れ!  
ヨシモト!お主も書状を書くのだ。……降伏せよとの書状をな」  
「降伏、ですの?……分かりましたわ。書状を送る相手は……イエヤスですわね?」    
   
 皮肉を感じさせる笑みを浮かべ頷くノブナガ。  
ケンシンがシンゲンの手によって降ってき、マサムネも配下になった。  
残る敵はすぐ近く、三河を統べる戦国乙女、徳川イエヤスのみである。  
ヒデヨシとヨシモトはついに戦乱の世が統一されるのかと身震いをし、  
やはり天下を統一されるのはノブナガ様だったんだと目を潤ませて感激をしている。  
ノブナガ自身ももはや誰もこのノブナガに抵抗は出来まいと考えていた。  
この時点では、誰もがノブナガによる天下統一は、もはや時間の問題だと考えていた。  
 

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