「下校の時間となりました、校舎に残っている人は…」
チャイムが鳴り、放送とともに生徒が次々と帰っていく。校舎には部活をしている者がちらほらと残るくらいで、外の夕焼けが閑散とした興津高校の様子をさらに醸し出していた。
「んっ…あっ…」
誰もいないはずの2−A。そこから微かに声が聞こえてくる。
教室の中にいたのは同じくA組の生徒、北川だった。
自分の席に座って前屈みになりながら机の上に上半身を乗せている。
遅くまで残って勉強をしているわけでもないようだ。いや、彼女はもともと成績優秀だからそんな必要もないのだが。
「みっ、か先生…んふっ…」
北川の左手には写真が握り締められていた。潤んだ目でそれを見つめる彼女。
そして右手は彼女のスカートの中に伸びていた。
微かに聞こえるくぐもった水の音。
写真に写るその姿は何時だっただろうか、クラスの友人と海に遊びに行ったときに撮った興津高校の国語教師でここのクラスの担任でもある、鈴木みかの水着姿の写真だった。
「こんな事しちゃ駄目なのに…でも止まらないよぉ…あっ!」
右手の動きが少しずつだが速くなる。
「みか先生…。こんなに愛しているのに…」
その小さい愛くるしい姿、27歳なのにどう見ても子供っぽい性格、その一つ一つが北川にとっては愛しかった。
「どうして、振り向いてくれないんっ、ですかっ…」
唇を軽くかみ締めながら右手の動きは彼女の秘部を攻め続ける。
もともと小さい頃から外見が幼い年上の女の子を好きになっていた。でもそれはあくまでも遠くから見るだけの存在だった。
しかし高校に入って、入学式でみか先生を見た瞬間彼女の心は震えた。それは一目惚れといっても良かった。
そして彼女に振り向いてもらいたくて、勇気を出していろいろ行動に出た。
先生も恥ずかしがっても嫌な顔ひとつせず自分のある意味暴挙だろう、そういう事も受け入れてくれた。
でも自分のしている事がいつ嫌われるのだろう、愛想をつかされるのだろうと思うと夜も眠れなかった。
それなのに身体はみか先生のことを思うとこんなにも受け入れている。
さまざまな想いが交差する中で彼女の愛撫はどんどん激しくなっていく。
くちゅくちゅという音がぐちゃぐちゃとさらに濡れた音に変わる。
「だめっ、もうっ…いっちゃう…」
北川がもう耐えられないといった感じで机に爪を立てる。
そして絶頂に達しようとしたときだった。
がらっ!
教室の扉が不意に開く。
「もうみんな帰ったかなぁ〜?」
のんびりした、間の抜けた声。
そう、そこに入ってきたのはみか先生だった。
「誰もいない、って…北川さん!?」
「先生っ…!?あ、嫌っ、見ないでくださいっ!」
北川の半ば悲鳴にもにた声を上げた瞬間、彼女のスカートの中から先程の愛液が噴き出す。
「駄目っ…止まって!」
その液体はスカートを濡らし、椅子を通って床に落ちていく。
「え〜っ、と…と、取りあえず、何か拭くものを…」
あまりの状況にわたわたしているみか先生。
「先生、ごめんなさいっ!」
北川はそう叫ぶと彼女の横を通り抜け、脱兎の如く駆け出していった。
「わわわっ、北川さん!」
辛うじて転倒を免れたみか先生の足元には1枚の写真が落ちていた。
「ぐすっ…えぐっ…」
階段の踊り場でひざを抱えて肩を震わせている姿があった。
自分の醜い所を大切な人に見られた。
不潔に思われたかもしれない…!
愛想をつかされたかもしれない…!
自分自身がとても恥ずかしい…!
いろいろな考えが頭の中をぐるぐる回っていて、出てくるのは涙と嗚咽だけ。
「みか先生、ごめんなさい、ごめんなさい…」
まるで小さい子どもが泣くようにただ、泣いていた。
ふと、足元が暗くなる。
「あ〜、北川さんこんな所にいたんだ〜」
毎日聞いている声が目の前から聞こえてきた。
「みか先生…」
鼻をすすりながら顔を上げる北川。
「いきなり外に出て行くんだもん、吃驚しちゃったよ〜」
そう言って北川にポケットティッシュを渡す。
「取りあえず涙拭いて、ね?北川さんらしくないよ?」
北川はやや俯き加減になりながらそれを受け取り、涙と鼻水を拭い取った。
「それと、これ…落としてたでしょ?はい」
「先生…」
彼女の手にあったのは先程自分が使用していたみか先生の写真だった。
「大切な、ものなんでしょ?無くしたら駄目だよ?」
そう言って笑顔で差し出すみか先生。
「先生、あれを見て何も思わないんですか!?私を見て汚らわしいって思わないんですか!?」
いつもと変わらないみか先生に彼女は信じられないといった表情を浮かべる。
しかしみか先生はいつもの微笑みを浮かべて、
「そりゃ、教室でああいう事してたのは吃驚したけどそれだけ先生の事を想ってたってことでしょ?その事に対して嫌とかそんな気持ちにならないよ〜」
「でも、女性同士なんですよ!? 普通の人なら変に思うじゃないですか!?」
北川の声が誰もいない校舎に響く。
「…例え相手が誰であっても大切な人を一途に想うことは素晴らしい事じゃないかなぁ?ほら、工藤君も末武君の事が好きだけどいつも玉砕してるじゃない?でも諦めずに前を向いて頑張っているし、北川さんも先生に対していつもまっすぐに想ってくれているじゃない?」
「先生…」
「それから〜、これが先生の答え」
そう言うと一歩前に歩き出し、優しく北川の身体を抱きしめた。
「北川さんの想いはね〜、ずーっと前から痛いくらいに分かっていたよ。まぁ、たまーに暴走もしてたけど…。でも、それだけ先生に対して想いが強かったっていう事だからそれも受け止める事ができたんだよ〜」
「先生、先生…」
北川の目から大粒の涙がこぼれる。
嬉しさが溢れているのに。
幸福感が感じる事が出来るのに。
何で涙が止まらないのだろう。
「先生…。お願いを聞いていいですか?」
流れる涙もそのままに、北川が言葉を発する。
「何かな?何でも先生に聞いてごらん?」
いつもの笑みで答えるみか先生。
「私を…北川理央を先生に捧げていいですか?」
みか先生は少々顔が赤くなったが、ゆっくり頷き、そしてお互いの唇が重なった。
「んんっ…。先生、もっと胸を触ってもいいですよ…」
みか先生は彼女のブレザーのボタンをゆっくり外し、中のブラウスのボタンも外す。
「ふふっ、北川さんって本当に胸大きいね…。羨ましいなぁ〜」
そう言いながらゆっくり、彼女の豊満な胸を触り始める。
当然みか先生も経験は無いため、動きはぎこちない。だが、たどたどしいながらも一生懸命になっている彼女の手が動くたびに北川の身体はまるで電流が走るかのように反応する。
「んあぅっ!先生…気持ちいいです…」
潤んだ目で叫ぶ北川。
「北川さん、とても可愛らしいよ〜。いつもとは違う声も聞けるし」
そう言ってさらに胸を触りまくるみか先生。
「あっ、ああんっ!」
触られるたびに身体が震える。
「せ、んせいっ…。ここも…舐めて?」
北川が差し出したのは左手の指。
「ここを舐められたら多分いっちゃいそうっ…」
「へー、北川さんは指が弱いんだ〜。それはいい事聞いたな〜」
みか先生の表情が不適な笑みに変わる。
「いつも北川さんには苛められているもんね〜。たまにはお返ししなきゃね〜」
そして彼女は北川の指に自分の小さい口を当てた。
「ん、ちゅっ…」
「あっ、気持ち、いいっ…!」
みか先生の舌が北川の指を愛撫する。まるで直接秘部に触られたかのような感覚に陥る。
北川も無意識のうちに自分の胸を揉みしだいていた。こうしないとあまりの気持ちよさに直ぐおかしくなってしまいそうだからだ。
ちゅぷちゅぷ、と唾液と舌の絡まる淫靡な音が響く。
「ひたがわはん、ひもちひひ〜?」
その状態で問いかけるみか先生。しかし北川の身体はもう限界に近づいていた。
「はいっ、気持ちいいで…ふぁ…あっ、もう、もう駄目ぇっ!」
突然北川の身体が仰け反る。ぷしゅっと言う微かな音がしたかと思うと液体の流れる音が聞こえてきた。
「あ、あ、あ…」
声にならない声をあげてみか先生の姿を目に焼け付けながら北川の意識は闇に沈んでいった…。
「…さん、北川さん!」
誰か呼んでる…誰かしら?
あー、身体がいう事きかないなー…。
あれー、どこかで見たような…
突然がばっと起き上がる北川。
「北川さ〜ん、大丈夫?」
「みか先生?」
「心配したよ〜、いきなり気を失っちゃったんだもん」
目の前には心配そうな顔をするみか先生。
「それとスカートが大変な事になっちゃったから保健室に行って代えのスカート持ってきたよ〜。サイズが合うといいんだけど…」
「へ…?あああっ!」
自分の下半身を見て思わず驚きの声を上げる北川。
その狼狽ぶりにみか先生の表情が緩くなっていることに全く彼女は気づかなかった。
もうすでに運動場にも人の姿はなく、北川とみか先生の2人が歩いているだけであった。
「先生…ありがとうございます。嬉しかった」
北川の表情が夕焼け色に染まる。
「ふふふ、困った事があったら先生に言ってね〜」
こちらも笑顔で答える。
北川は歩みを止め、笑みを浮かべながら、
「じゃあ…私の想い、受け取ってくれました?」
そして北川の言葉にみか先生は1歩前に歩み寄り―
校庭に佇む2つの影が1つに交わった―