「何よ・・コレ・・。」  
下駄箱を開けるとそこには封筒が入っていた。  
表・裏と見てみるが名前どころか差し当て人の名前ですらない。  
不審に思いつつも富永はその封筒を開けてやる。  
−富永〜今日の放課後、家庭科室にて待つ−  
とだけ書いてあった。  
−失礼な奴−  
そう思い上を向きため息をつくと、富永はその手紙を丁寧にたたみ封筒へと戻し目的の場所へと足を向けた。  
 
木曜日は部活も休みの日であった。  
いつもは部活動で賑わう部室であったがその華やかさもなく、ただ夕日の茜色だけが差し込んでいた。  
その奥で窓を見つめる人影があった。  
「どういう所為であたしを呼んだのかしら。」  
あくまで威厳のある態度で富永はそう言った。  
「待たせすぎだ、お前。」  
「くっ・・工藤!?」  
先ほどの威厳のある態度はどこへやら富永は驚愕の表情を見せる。  
「工藤なら工藤だって書きなさいよね!まったく・・紛らわしい・・」  
内心不安だったのだろう、富永は急に口を割り始める。  
「うっ・・うるさいっ!名前を書くのは嫌だったんだ・・女を誘っているようで・・」  
「いくじなし。」  
富永に正論を指摘されると工藤は富永から視線を逸らし、自分のしたことへの恥ずかしさから頬を赤く染めてしまう。  
「そっ・・それはそうと・・」  
その雰囲気を紛らわすかのように工藤はカバンから数枚の髪を取り出した。  
「何よ、コレ。」  
「お前をここに呼んだ理由だ。人目についたら何かとまずいからな。」  
 
−ボクは富永先輩の大ファンです。  
毎日華麗な立ち振る舞いをする先輩・・  
且つ、才色兼備な先輩は憧れの的です。−  
途中までその紙に目を通すと富永は工藤の顔を見つめる。  
「これに何の問題があるわけ?」  
そして淡白な口調でそう言った。  
「最後まで読めよ。」  
−しかしその富永先輩はいつもある人間の背中を見ているのです。  
ボクの心は密かに傷ついています。−  
すると富永は2枚目へと目を移す。  
−富永の心は皆のものだ!!早くあいつを何とかしてくれ!!−  
顔をひきつらせつつ富永は3枚目へと目を移した。  
−工藤、あいつだけは絶対に許せん。オレの富永を・・オレの富永を・・−  
「何よ・・コレ・・」  
富永は拳を作り俯き静かに震えていた。  
「新聞部のアンケートでな『憧れの生徒』特集ということでとったらしい。  
封を切ってみたらこんな結果だ。  
よかったな・・富永。男にモテて!!」  
そう言う工藤の表情は打って変わってひきつっていた。  
−言いたかったのはそれか・・−  
工藤の歪んだ顔を見たことで富永は意気消沈してしまっていた。  
「そんなことでオレはこの投書が全くの虚実であることを、オレが潔白であることを証明したいんだ。  
で、富永どうなんだ?」  
「は?そんなわけないじゃない!」  
売り言葉に買い言葉、反射のように言葉を切り返す。  
「そうか、それはよかった。じゃあな、富永。手間を取らせたな♪」  
そう言う工藤の顔は酷く輝いていた。と、ドアの方へ足を向ける。  
そんな工藤を富永は呆れた顔で見送る・・  
筈だった。  
 
ドアを目の前にして工藤は足を止める。そんな彼を富永は不審そうな顔で見つめていた。  
「何よ・・早く行きなさいよ。」  
「なぁ、富永。」  
先ほどとは声音が異なっていた。  
「さっきの台詞・・本当なのか?」  
あくまで後ろは振り返らずに前を向いてそう言った。  
「あっ・・当たり前じゃない。何言ってるのよ。」  
富永もまた、工藤から目を逸らし床を見つめそう言った。  
と、前方から気配を感じる。  
−なっ・・何・・?−  
気がついた時には口が塞がれていた。不必要に心臓の音が高鳴る。ほんの一瞬のことだったのに、心臓の音だけが脳を支配していた。  
「顔が少し赤いが・・やはりシロか。」  
工藤はあっけらかんとした顔でそう言った。  
「なっ・・なっ・・」  
声ですら出なかった。出す意志はあるのだが心臓の高鳴りが動悸となりそれが邪魔をする。  
「待てよ・・ポーカーフェイスということも考えられる。何せ富永だしな。」  
そう言うと富永の頬を持ち片手を肩に回し再度口を重ねる。  
「あっ・・ふ・・んっ・・」  
その重なりは徐々に深くなり肩に回した手は愛撫へと変わっていた。  
「ひっ・・」  
身体が火照ってゆくのが分かる。そして下方にも温かいものを感じていた。  
「へぇ・・感じるんだ・・お前でも。」  
口をひき離して言った工藤の第一声だった。  
−卑怯者−  
富永は目の前にいる人間をありったけ睨んでやる。  
しかし感情が高ぶった為かその眼は潤っており色香をも漂わせていた。  
「説得力ないぜ、その顔。」  
オレがノーマルだったらすぐにでも逝っちまうだろうけどな。そうつけたし工藤は悪戯に微笑む。  
「あんた・・女は・・ダメなんじゃなかったの・・?」  
だからこそ、心を許していた。  
「苦手とも言った、萎えるとも言っただけど『できない』とは言ってないぜ。」  
そう言い工藤はあたしのブラウスに手をかけた。  
 
「はっ・・うん・・はっ・・やぁっ・・」  
上半身はブラ一枚、下半身はまだスカートをはいたまま、調理台に上半身を横たわらせ富永は工藤に弄ばれていた。執拗に繰り返される愛撫の快楽に富永は呑まれているようだった。  
当初の目的など既に見失っていた。  
「女は柔らかすぎる・・いまいち・・」  
と、横目で富永の溺れる姿が視界に入る。  
その姿に軽い興奮のような感情を覚える。  
−とりあえず・・萎えはしないか・・−  
「だったら・・抱かなければ・・」  
工藤の愚痴に富永はいつもの癖なのか切り返す。  
「まぁ・・そう言うな。キライじゃないんだからさ・・お前のこと・・」  
「それって・・?」  
不意に「快楽」とは別の鼓動が富永の中を巡る。  
「最後に教えてやるよ・・」  
「何・・よ・・はぁんっ・・やっ・・何・・??」  
そう言うと工藤は富永のショーツに手をかける。  
「・・順番が・・逆よ・・」  
「見えたら恥ずかしいだろう。」  
そしてその先にある『ヒダ』に手をかける。  
「やっ・・だっ・・そんなトコ・・触らない・・でっ・・」  
工藤の手にネットリと粘液が絡みつく。  
「欲しくなる・・から・・ダメ・・」  
ふ・・ん・・と工藤は鼻を鳴らすと濡れた指のままでブラに手をかける。  
と、そのまま手を背中に回し自然な動きでそれを外してゆく。  
そしてあらわになった突起を指で舌で撫でてやる。  
「はぅ・・んっ・・苦しい・・よ・・」  
その勢いで下方にスカートの中に顔を埋める。手は大腿を擦り、口にはヒダを含む。それを軽く噛む度に富永の声が聞こえる。  
「・・か。」  
その中で工藤は何かを呟く。そのノイズがまた刺激となり富永は身体を反らせる。  
「な・・に・・?」  
工藤は顔をあげると自らの下方に手をかける。  
 
「そろそろ・・やろうか・・」  
「・・?」  
富永は普段は見せることのないくらいに愛くるしい顔をする。  
「さっき欲しい、って言っただろう。」  
そう言うと富永の手を自分のそこにあてがう。  
「たってるんだよ、不思議だろう?」  
条件反射のように富永はそれを擦っていた。  
「ダメ・・よ・・気がおかしくなりそう・・」  
「何言ってるんだ、今更。」  
仕方無しに富永は工藤のブラウスに手をかける。  
「こんなこと・・したら・・ダメ・・」  
と、その手を止め、眼を潤ませる。  
そんな富永の頭を工藤は優しく撫でてやる。  
「くどう・・?」  
いつになく優しい笑顔、思わず吸い込まれそうになる。  
騙されそう・・でも・・  
それでも・・いい・・  
いつしかそんな気持ちに変わっていた。  
「好き・・好きだよ・・くどう・・」  
色々言いたかった。でも出たのはこの台詞だけ。  
 
「んっ・・やっ・・痛いっ・・痛いよっ!!」  
愛撫の時間が長かったこともあり工藤自身は酷く膨張していた。  
当然抑制も効くはずもなく『棒』となったそれは富永の下部を貫く。  
「富永・・ゴメン・・オレがじらした・・から・・」  
「大丈夫・・よ・・気にしないで・・」  
そろそろ気持ちよくなってきたから、と切ないくらいの笑顔で言う。  
と、それの動きが早まってゆく。  
「やっ・・やだっ・・あぁぁぁ・・っ・・いかせて・・」  
その動きに合わせテーブルがギシギシと動く。  
「あっ・・あっ・・やっ・・やぁぁぁっ・・」  
「とみなが・・好きだよ・・  
お前は・・誰にも・・渡さない・・から・・」  
「あっ・・んっ・・」  
快楽は峠へと達していた。  
工藤は配慮したのだろう、その『精』を富永の大腿へと放出する。  
「ありがとう・・」  
そして富永の優しくもはかない声が広い部屋の中で工藤の耳だけに届いていた。  
 
 
「・・工藤先輩?この間のアンケート用紙・・何処にやりました?」  
「悪い・・なくした。」  
翌日、新聞部の1年生が2Aを訊ねていた。  
おそるおそる言う1年生。  
無理もない、待ちきれずサッカー部特集目当てで行った新聞部でたまたま目に入ったアンケートに業を煮やしあげくの果てに大声で叫びアンケート用紙を強奪していったのだ。  
そしていうまでもなくそのアンケートは現在焼却炉にある。  
工藤の顔にも冷汗らしきものが見える。  
「先輩!酷いですよっ!!」  
「本当に済まないと思っている。」  
「さ〜あ、どうだか。」  
後ろから現れたのは富永。工藤の心臓が爆発しそうになる。  
「とっ・・富永。」  
「あのね。」  
と、富永は後輩の顔を覗きこみこう言った。  
「埋め合わせに工藤先輩が甘〜い甘〜い恋愛ポエム書いてくれるから大丈夫よ。  
ねぇ・・工藤先輩v」  
そして富永は軽くウインクしてみせた。  
 
                         <END>  
 

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