「こんにちは、健太くん。」  
休日の晴れた日だった。堀先生は末武の家の玄関を訪ねていた。  
「お約束のケーキ、持ってきたわよ。」  
そう言いニッコリと微笑み、手に提げていた箱を末武へ手渡す。  
「わわっ、本当に作ってきてくれたのか?ありがとう!鳩子姉ちゃん!!」  
そんな堀先生の笑顔に答えるように末武もまたありったけの笑顔を見せる。  
「ささっ、上がって。」  
今、オレしかいないから・・お湯沸かさないと・・  
そう呟きながら末武は堀先生を家の中へと促した。  
 
「健太くん・・お茶入れられるようになったんだ。」  
テーブルに両肘をつき、頬に手をあて堀先生はそう言った。  
「ひどいなぁ。オレのこと、いくつだと思ってるのさ〜。」  
「そっか、そうだよね。」  
そう言い堀先生は苦笑する。  
小学生以来の親戚との再会。  
その大きくなった姿に初めこそ驚いたものの、心はあの頃となんら変わりなかった、  
そんな末武に堀先生は安堵感を覚えていた。  
―よかった。―  
そんな思いで末武の横顔を見る。  
―でも・・大きくなったな・・本当にー  
ふと堀先生の見た末武の横顔はいつになくりりしく見えていた。  
「・・鳩子姉ちゃん?」  
そんな視線に気がついたのか末武は不思議そうな顔をして堀先生を見つめる。  
「オレの顔に何かついてる?」  
「うんん、そんなことないわよ。」  
そんな言動とは裏腹に堀先生の顔はほんのり赤くなっていた。  
そんなことなど全く気にせず末武は茶を堀先生の前に差し出す。  
それに反応して堀先生もまた、皿を取ろうと棚の方へ足を向けていた。  
しかし、椅子の足に躓き、バランスを崩してしまう。  
と、次の瞬間末武の腕が堀先生を支えていた。  
「・・大丈夫か?鳩子姉ちゃんはじっとしていればいいから。」  
お客さんなんだしな。そう付け足してニッコリと微笑む。  
「ごっ・・ごめんなさい・・」  
「何言ってるんだよ。気を使わせちゃったオレも悪いし。」  
そう言い持ち場に戻る末武。  
 
ケーキを互いのテーブルに差し出し腰掛けると末武は早速そのケーキをほおばってみせる。  
「オレ、鳩子姉ちゃんをお嫁さんに貰いたいな・・。」  
「え・・?」  
先ほどのこともあり、堀先生の胸がドキッと鳴る。  
「料理は美味いし優しいし・・本当、いいお嫁さんになれる!!オレが保障する!!」  
「健太くんったら・・」  
冗談でよかった。そう思い胸をなで下ろす堀先生であった。  
 
 
「おっかしいなぁ・・兄貴・・もう少しで帰ってくるはずなのにな・・」  
末武は自分の部屋でベッドにもたれかかるようにして座り込んでいた。時は夕刻。堀先生が家に来てからもそれなりの時間が経っていた。  
「電話しても通じないし・・まったく、せっかく鳩子姉ちゃんが来てくれてるのに。」  
「いいよ、健太くん。私、待ってるから。」  
そう言いつつもどことなく落ち着かない様子である。と、外を見ると先程まで晴れていた空に暗雲がたちこめ始めていた。  
―嫌な天気ねー  
雷の轟く音が遠方より聞こえる。その音は徐々に大きくなってゆき、それと同時に明るさをも奪っていった。  
 
―怖い・・−  
雷の理屈なんて分かっている。だけど。  
「・・鳩子姉ちゃん・・?」  
その音がピークに達した時、堀先生は思わず末武の腕を掴んでいた。  
「ごめんね・・ごめんね・・健太くん・・でも・・私・・怖いの・・カミナリ・・。」  
雷の光ですら怖いのかその顔を末武の肩に目一杯押し付け、その腕を掴む手にはますます力がこもる。  
そんなことを全く知らないかのように雷は鳴り続ける。  
「大丈夫だよ・・。」  
そう言う末武の声はいつになく優しかった。  
ドクン・・ドクン・・  
心臓の鳴る音は聞こえていた。だがそれが何の為に鳴っているのかが分からなくなっていた。  
と、堀先生の頭の上を撫でる感触が伝わる。  
「雷なんて・・すぐにどこかにいなくなるからさ・・。」  
その声と、感触が恐怖から徐々に快楽へと変わってゆくことに気がつく。  
「けん・・た・・くん・・」  
末武を掴むその手は徐々にゆるくなり、顔は彼を見つめていた。  
怯えた眼と愛情を乞う眼・・今の堀先生の眼にはそれが共存していた。  
その眼に吸い込まれるように末武は堀先生の口に自らの口を重ねた。  
 
外では雷が鳴り続けていた。  
「はうんっ・・んっ・・」  
末武の重ねた口づけは徐々に深くなり堀先生の口の中をも犯していた。  
一旦それは離れるものの軽く息継ぎだけすると再び口をつける。それを繰り返していた。  
やがて息使いも荒くなり互いの身体も火照ってきていた。  
「はぁっ・・はぁっ・・」  
顔を、手を足を全てを赤く染め、座る堀先生を末武は切なげな眼で見つめていた。  
「・・ゴメン・・姉ちゃん・・」  
その反面、身体の中から何か熱いものがこみ上げる。  
抑えようにも抑えられない身体の、心の反応に末武は戸惑っているようにも見えた。  
「いいの・・健太くんの・・分かっているから・・」  
そんな末武を堀先生は両手で優しく抱きかかえてやる。  
雷の音など耳に入っていなかった。  
「はと・・こ・・ねえちゃん・・?」  
「優しくしてくれるなら・・いいよ・・。」  
そんな末武の耳元で堀先生は囁く。そして末武の手を掴み自らの腰にあてる。  
末武もまたその手を優しく・・愛撫として動かし始める。  
そしてその動きのまま堀先生の身体をベッドへと沈めていった。  
「んっ・・んっ・・」  
末武の手は胸元を愛撫し、その顔をそこに埋めてゆく。埋めきったところで舌での愛撫を始める。それの先は尖り、そこにキスをすると堀先生の身体がピクリと動く。  
「柔らかくて・・気持ちいいや・・」  
そんな純粋な台詞とは異なり次から次へと刺激となる愛撫を繰り返す末武。  
「けんた・・くん・・出ちゃう・・」  
「何でだよ・・まだ始めたばかりなのに・・?」  
 
と、部屋の片隅から電話の着信音がする。その音は濁っておりカバンの中から聞こえているようであった。  
―そうだ・・今日、みか先生と明日の教育の打ち合わせのことで電話するんだった・・−  
頭の中にふと思い出される日常。慌てて携帯電話へと手を伸ばす堀先生。  
「ダメだよ・・鳩子姉ちゃん・・」  
その手を止める末武。  
トゥルルルル・・  
トゥルルルル・・  
ルッ・・  
電話の音が止まる。堀先生の顔には焦りと不安が表れていた。  
「今は・・オレだけを・・見て・・」  
そう言うと末武は軽く堀先生の口にキスをする。  
そしてその身体をずらし彼女の膝と膝の間に埋める。  
ショーツの上から、濡れてきたところでずらしながら舌で花弁をなぞってゆく。刺激を与えれば与えるほどにそこは潤滑されていく。  
「あっ・・やっ・・」  
そして顔をそこから引き離すと再度堀先生の身体を抱え腰のほうからショーツを引き離してゆく。  
「綺麗だよ・・姉ちゃん・・」  
丁度、堀先生に対して馬乗りになるような形で・・彼女を・・彼女だけを見つめ、末武はそう言った。  
 
そして次の瞬間彼は彼のものを取り出す。それは女性に入るには余りにも大きすぎるようであった。  
「やっ・・ムリ・・よ・・」  
愛撫により潤滑が効いているとはいえ、案の定人並み以上のそれは確実に彼女を犯し・・傷つけていった。  
「痛っ・・」  
それでも堀先生はそれ以降この言葉を口にすることは無かった。それの浸潤にただ、唇を噛み、耐えしのいでいるようだった。  
―鳩子姉ちゃん・・−  
末武もまたそのことを分かっているようだった。だがここで止めてしまうことで彼女の気持ちを受け止められなくなってしまうのではないか・・そう思うと止められることができなかった。  
「声・・出していいからさ・・」  
「あ・・んっ・・はぅん・・」  
その声は何処と無く快楽を求めようとする声であった。  
自分の言ったこととはいえその声に誘われ思わず腰の動きが早くなる。  
「はっ・・けんた・・くんっ・・!!」  
「はとこ・・ねえちゃん・・好き・・だよ・・」  
そう言う彼らの顔からは苦痛の文字が消えていた。  
ただ、ただ、快楽の峠を待つのみだった。  
「んんんっ・・いっ・・いっちゃう・・!!」  
「んっ・・」  
快楽に達した彼らからは『精』が溢れ出ていた。  
 
「ゴメン・・オレ・・嘘ついちゃったな。」  
「ううん、気にしなくていいわよ。」  
元々私が誘ったんだから。  
堀先生は切なげな顔でそう言った。  
雷どころか雨は上がり日差しが射していた。  
鮮やかなほどの夕焼けが雨雫を美しく照らしだす。  
とうとう末武の兄が帰ってくることは無かった。  
これは後ほど分かったことなのだが本日が友人とのコンパの日であったことを末武に伝えるのを忘れていたらしい。  
末武は前者した侘びのこともあり堀先生を送る為に玄関先へと足を向けていた。  
「それに・・」  
と、堀先生は顔を赤く染める。  
「十分・・優しかったよ。」  
と、今度は末武の頬が赤く染まる。  
「じゃぁね、健太くん、またね。」  
末武が視線を反らしているうちに堀先生は帰り路へと足を向けていた。  
 
                    <END>  
 

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