『ベストパートナーコンテスト!?』  
興津高校2年A組の教室の片隅でいつもの面々が声を上げる。  
「うん、興津商店街主催の『梅雨を吹き飛ばせ!興津あじさい祭』のメインイベントだって」  
その中心にいる1人の少女…もとい、27歳の教師、みか先生が手にしたチラシを机に広げながら話していた。  
「って去年もそういう話があったよーな気が…」  
末武が頭をぽりぽり掻く。  
「そういえばその時は日付が去年になってたのよね…誰かさんの勘違いのせいでね」  
そう言ってちらりとみか先生のほうを見る富永。  
「う〜、あの時はごめんなさい〜。でも今回はちゃんと日程もあってるよ!」  
みか先生はチラシに指を差す。  
確かに日付は今年の6月、開催まで2週間前になっている。  
「ほんとだ、あってる。しかも優勝賞金は興津商店街で使える商品券30万円分だって!」  
「微妙に凄いのか凄くないのか…。でも30万円は魅力ね」  
小林と北川のやり取りが続く。  
「30万円あったらー、あの店でバッグ買ってー、この店でキャミワンピ買ってー…うふふ」  
「あー…はいはい、あいつは放っておいて、先生、審査方法はどんな感じですか?」  
「え〜と、1次は書類審査、2次で舞台での発表となります…だってさ」  
チラシを読み上げる彼女。  
「しかし、こんな情報どこで仕入れたんだ?」  
「去年は滅多にしない机の整理中だったよな」  
おやじと関の発言に涙目で抗議するみか先生。  
「はう〜、昨日商店街のケーキ屋でケーキ10個買い物したときにもらったんだよ〜」  
「10個!?食い意地張るにも程があるだろ」  
「先生、また太りますよ」  
渡部と委員長の言葉に打ちひしがれる彼女。  
「そこまで言わなくても〜」  
「取りあえず、今回も全員参加で異存ないな?」  
だばだば涙を流すみか先生を尻目に、工藤がそう言うと全員が頷いた。  
 
 
「さて、今回はどういう組み合わせで行くんだ?」  
「俺はもちろん末武とっ!そう、身も心も信頼しあった正にベスト・パートナー!」  
おやじの言葉に即座に反応する工藤。  
「でも普通そういうのは男と女じゃないのか?まぁそれも面白そうだけどな」  
末武の言葉にさらに興奮する工藤。  
「そうだ末武、さあ、今こそ性別の差を乗り越えた…ぐぶっ!」  
「やみれっ!」  
小林の裏拳が工藤のみぞおちに命中し、あっさりと沈黙する彼。  
「私は、やっぱり…」  
「あの〜、とてーも熱っぽい視線を感じるのは気のせいでしょうか〜…」  
北川の視線がみか先生を刺す。  
「相変わらずだよねー、北川も」  
その様子に思わず苦笑する富永だった。  
「委員長、今回はあのソフトは使わないのか?」  
渡部がそう言いながらノートパソコンを机の上に出す。  
彼が言っているソフトとは古くから鎌倉時代から伝わる幻のパソコン相性診断ソフト『ラブラブ静御前ちゃん』の事である。  
「ああ、あれね。もちろん使うけど、今回はさらバージョンアップして『ラブラブ静御前ちゃんXP』になったわ。渡部、早速パソコン立ち上げて」  
「了解」  
慣れた手つきでソフトを立ち上げる彼。  
「前も同じ事したよ〜な気が…。しかもやっぱりネーミングセンス悪い…」  
みか先生のか細い抗議の声はあっさりと消され。  
「今回は前のデータに加え、ネットから取り込んだコンテスト参加者のデータを加えて…」  
そしてEnterキーを押す。  
(今度こそ、末武と一緒になりますように…!)  
(今度こそ、みか先生と一緒になりますように…!)  
思うところは人それぞれというわけで。  
 
「出たーっ!」  
渡部が画面を見ながら声をあげる。  
「それじゃあ発表するぞー!」  
一瞬教室の空気が緊張する。  
「まずは若さと熟練さを兼ね揃えたパートナー、富永と松本先生!」  
「はい?」  
思わず首を傾げる富永。  
「続いて、暴走シンクロ率No1、関と小林っ!」  
「それどー言う意味よっ!」  
「言葉のまんまじゃない…」  
小林の叫びはあっさりと否定される。  
「すでに熟年の深みを見せるおやじと委員長っ!」  
「まぁ、去年の関よりはましね」  
そっけなく言い放つ委員長。  
「活発少年と純情少年、末武と工藤」  
「どう見ても教師と生徒には見えない、みか先生と北川」  
「んで、2次元繋がりで僕と中山、以上!」  
「なんつーか、予想通りといえば身もふたも無いな…」  
おやじがぽそりと呟く。  
「やったな、末武!これで優勝間違いなしだっ!」  
「こらっ、工藤、くっつくなよー」  
「やったわ、みか先生!これで優勝間違いなしよっ!」  
「北川さ〜ん、お願いだから抱きしめながらお腹ぷにぷにするのはやめて〜」  
「えっへん、この中山がいれば優勝は間違いなしです、渡部先輩!」  
「こら、中山、べたべたするなっ…しかしいつの間にここに来たんだ?」  
各パートナーの当たり前といえば当たり前の行動に富永が肩をすくめた。  
「ねぇ、本当にこの面子で優勝できるの?とても不安なんだけど…」  
「大丈夫、『ラブラブ静御前ちゃんXP』は絶対です」  
委員長は言葉を出しながら自らの眼鏡をくいっと上げたのであった。  
 
「何故に、私はこんなところにいるんでしょ〜か〜…」  
今の状況にぽかんとしているみか先生。  
場所は興津一豪華なホテル、ザ・ニューオキツインペリアルグランドコンチネンタルステーションホテルの特別室。  
そこにみか先生と北川2人が佇んでいた。  
「こんなところって、衣装合わせのためでしょ、先生?」  
目の前にはハンガーに掛けられた大量の衣装。  
「せっかくおやじが手配してくれたんですから、じ〜っくり、ゆ〜っくりと選びましょうねー、み〜か先生♪」  
「でも、これだけあるとどれが良いのか分からないよ〜」  
「大丈夫ですって、この北川、みか先生の為にばっちり選ばせて頂きますっ!」  
そう言って拳をぎゅっ、と握り締める北川。  
次の瞬間、彼女は大量の衣装に突っ込んでいった。  
「き、北川さ〜ん?」  
唖然とするみか先生をよそに戦利品を持って帰ってくる。  
「さあ先生!みか先生に似合う服を一杯持ってきましたっ!」  
そこには幼児用スモック、半纏、ぶかぶかのフリースなど、子供向けの衣装を取り出す。  
「あう〜…やっぱりこういう服装なのね〜…」  
「先生、どれにしまちゅか〜?」  
嬉々とした表情で服を無理やり着せようとする北川。  
その時、みか先生はある衣装に気づいてそちらの方向に歩み始めた。  
「先生…?」  
不思議そうな目で彼女を見る北川。  
 
しかしその答えはすぐに分かった。  
みか先生の視線の先にあったのは純白のウエディングドレス。  
彼女の目はその1点をじっと見ていた。  
「みか先生…ドレス着てみたいんですか?」  
その様子をじっと見ていた北川が彼女に話しかける。  
ゆっくりと頷くみか先生。  
「ふふふ…先生もこういう格好に憧れるんですね」  
そこまで言うと北川は優しい笑顔を浮かべ、  
「じゃあ、私がお手伝いさせていただきますね♪」  
「え、そんな悪いよ〜。…でも、お願いしても、いいかな?」  
「ええ、もちろん!」  
そう言ってみか先生の服を脱がしていくのであった。  
 
コンテスト前日。  
みか先生の自宅では夕食を終え、居間でのんびりくつろいでいる親子の姿があった。  
「みか、明日興津商店街のコンテストに参加するんだって?」  
「うん、北川さんと一緒に出るの」  
夕食後のプリンをぱくつきながら父親の問いかけに答える彼女。  
「へー、北川さんと一緒にか。お父さん、明日は頑張ってみかの晴れ姿をばっちりビデオに撮るからな」  
「いいよいいよ!恥ずかしいじゃない〜」  
「それよりも明日は北川さんの足を引っ張るんじゃないよ、みか。あんたは本番に弱いからねぇ…」  
「はうっ!実の娘に手厳しいお言葉…」  
母親の言葉に肩を落とすみか先生。  
「みかは明日はどんな衣装で出場するんだ?」  
父親の言葉にみか先生は軽く微笑んで、  
「それは明日のお楽しみ♪」  
そう言って再びプリンを一口頬張る彼女だった。  
 
 
そしてコンテスト当日。  
書類審査を通過した2年A組の面々が興津商店街の会場に集結していた。  
「さあ、ここからが本番よっ!泣いても笑っても絶対優勝!そんな気持ちで挑むのよ、いい、分かった!?」  
「そうよっ!そして商品券30万円は私たちのものっ!頑張るわよ!」  
「何か、すげー気合入ってるな先生たち…」  
「優勝商品があれでも金額で惑わされているし…」  
気合が入りまくっているみか先生と松本先生に聞こえないように小声で囁く渡部と富永。  
「ああ、欲望にまみれて我を忘れてるみか先生…ラブリー?」  
北川は両方の手を組みながら熱い視線でみか先生のほうを見る。  
「申し込みは済ませたぞー」  
「係りの人いわく『順番が来たら控え室に来てください』との事よ。みんな、準備しといてね」  
受付から戻ってきたおやじと委員長が皆に話す。  
「頑張ろうな、工藤!」  
がっしりと工藤の手を握り締める末武。  
(ああ、末武の手が俺の手を…もう死んでもいいっ!)  
工藤の顔がのぼせたかのように真っ赤になる。  
「バカは放っといてとっとと行くわよ」  
毒舌を吐く富永を先頭に未だシュプレヒコールを揚げ続けるみか先生たちと妄想の世界に浸っている工藤を残し会場の中に入っていくのであった。  
 
「ただ今より、第1回、『梅雨を吹き飛ばせ!興津あじさい祭ベストパートナーコンテスト』を開催いたしますっ!」  
司会者の声がホールに響き渡る。  
会場はたくさんの観客によって熱気に包まれていた。  
「さて、1次審査を通過した15組のパートナーが商品券30万円を目指して熱い戦いを繰り広げられます!」  
そこで一旦話を区切り、  
「今回、優勝者には副賞としてザ・ニューオキツインペリアルグランドコンチネンタルステーションホテルのスイートルームのペア招待券をプレゼントさせていただきます!」  
司会者の言葉に会場の熱気がいっそう激しくなる。  
「え!?そんな話聞いてないよ〜っ!」  
客席で出番を待っていた小林が思わず驚きの声をあげる。  
「まぁ、本番に吃驚させようとする考えみえみえだしね。考えが浅いというか何と言うか…」  
相変わらずの様子で富永が腕を組みながら喋る。  
「続きましては、大会本部長の…」  
司会者の話はまだまだ続いている。  
そしておもむろに席を立つ富永。  
「じゃあ、私そろそろ順番だから行ってくるわね〜」  
手をひらひらさせて彼女と松本先生はそのまま袖へと消えていった。  
 
「エントリーナンバー1番っ!富永美奈子・松本リンダペアの入場ですっ!」  
会場のボルテージが最高潮の中、まず富永と松本先生が舞台に上がってきた。  
その2人に対して会場から大きな拍手が上がる。  
「しかもご丁寧にバックミュージックまで…」  
「あれ富永の十八番の曲よ」  
「しかも衣装見ろよ…」  
各人舞台の2人組に目線をやる。  
 
富永は白を基調とした清楚な感じを受けるドレス。  
「まるでいいとこのお嬢さまみたいだ…って事実その通りなんだが」  
おやじがぼそっと呟く。  
一方松本先生は逆に黒のドレス。ただし胸部分は大きく開かれており扇情的な事この上ない。  
「うわっ、松本先生すげぇセクシー!」  
末武が身を乗り出す。  
「やめろ末武、お前はこんなものを見ちゃいけない!」  
工藤が身を挺して止めようとする。  
「あー動かないでよ、工藤!見えないじゃない〜!」  
小林が声をあげる。  
(一瞬富永にときめいちゃった…ごめんなさい、みか先生)  
心の中でとんでもない事を呟く北川。  
「次、俺達の出番だぜ、小林」  
「オッケー、あの衣装で出演するわよ〜」  
次は関と小林の番だ。  
 
「エントリーNo3番、関譲治・小林あかねペアです!」  
今度は会場から拍手とともにどよめきの声が上がる。  
「何であいつら学校の制服着てるの…?」  
北川が言葉を発する。  
彼らは興津高校の制服を着ていたのだ。  
「しかも関の奴、ミニスカとルーズ…おいおい、すね毛も剃ってるぞ」  
双眼鏡から舞台を覗く渡部が驚きの声をあげる。  
関も小林もミニスカートにルーズソックスという格好である。  
「ポーズもとってるし…悪ノリするにしても程があるわね」  
舞台から戻ってきた富永が悪態をつく。  
流石に会場も困惑の雰囲気が醸し出された。  
 
「エントリーNo4番、末武健太・工藤雄一ペアです!」  
2人が入ってくるなり、観客席から黄色い声援が飛び出す。  
「おー、工藤顔がゆでだこ」  
「多分末武と一緒に肩組んでるからじゃない?」  
おやじの言葉に冷静に突っ込む委員長。  
末武と工藤はサッカー少年の格好をして登場していた。  
はたから見れば爽やかな好青年のペアに見える。  
「黙ってりゃ、まあまあイケメンなのに…」  
「だって工藤だもん」  
富永の言葉にきししっ、と笑う小林。  
舞台の工藤は顔を真っ赤にさせながら幸せに浸っていた。  
何とか暴走せずに済んだようだ。  
 
「さあコンテストも中盤に差し掛かりました、エントリーナンバー8番、渡部匠・中山千夏ペアです!」  
舞台に上がる2人。会場からはこれもどよめきの声が上がる。  
それぞれ人気アニメ番組のヒーロー・ヒロインの衣装を着用していたのだ。  
「へー、ぼんくらちゃん結構似合ってるじゃん」  
関が感心の声をあげる。  
ちなみに『ぼんくらちゃん』とは関がいつも呼んでる中山の愛称?である。  
「ある意味ベストパートナーよねぇ」  
北川も相槌を打つ。  
「あ、中山ちゃん転んだ」  
ポーズを取ろうとする中山がバランスを崩して派手に転ぶ。  
その拍子に衣装のスカートが肌蹴け、純白の下着が見えてしまう。  
会場から上がる軽い悲鳴と爆笑の声。  
「相変わらずぼんくらちゃんだなー…」  
関は生ぬるい笑みを浮かべるのであった。  
 
「続きましてエントリーナンバー11番!中村元・流静ペアです!」  
舞台に上がったのはおやじと委員長。  
「すげー、2人とも着物姿だぜ」  
末武が驚きの声をあげる。  
そう、おやじは袴姿で、委員長は振袖の着物姿で登場していた。  
「ほんと、おしどり夫婦って感じがするね〜」  
「まだ学生なのに妙に落ち着きあるもんね」  
みか先生の問いに松本先生がうんうん、と頷く。  
(まぁ、お互い身も心も許しあった仲になってるからね)  
北川が微笑を浮かべる。  
あの温泉旅行以来他の面々は知らないが、彼らはそれなりに深い仲になっていたのだ。  
「ひょっとして優勝するのはおやじ達かもねー」  
小林が背もたれに寄りながらやや不服そうに呟く。  
「あんた、まさか自分らが優勝すると思ってたんじゃないでしょーね…?」  
じと目で彼女を見る富永だった。  
 
場所は出演者控え室。  
コンテストも佳境に迫り、北川とみか先生は衣装合わせを終え待機していた。  
予想通りカチコチに固まっているみか先生。  
「先生、もっとリラックスしてくださいよ?」  
北川の言葉にも彼女はぎぎぎ、と擬音を発するかのごとく首を北川に向け、  
「だって〜、たくさんの人の前に出るんだよ?緊張するに決まってるじゃない〜」  
まるでぐずる子どものように半泣きになるみか先生。  
 
そんな彼女の背中越しに北川がそっと抱きしめる。  
「先生ぇ…、大丈夫ですよ。私が傍にいますし、ずっと手を握ってますから心配しなくていいんですよ」  
そして彼女の正面に回りこみ、そっと唇を触れさせる。  
「きたが…んっ…ちゅ…」  
お互いの唇が触れ、舌がゆっくり入り込む。  
北川の腕がまるで羽毛を触るようにみか先生の身体を包み込む。  
ほんの10秒ほどのキスだったが、みか先生には何分にも感じられた甘く、優しいキス。  
唇が離れ、ぽおっとした表情になる彼女。  
「先生、緊張は取れましたか?」  
いつもと変わらない笑顔を見せる北川。  
こういったことに慣れていないのか、真っ赤な顔でこくこくと頷くだけのみか先生。  
「鈴木みかさん、北川理央さん、舞台袖までお越しください」  
係りの人の声が扉の外から聞こえてきた。  
それでもやや緊張が取れたのだろうか、ゆっくり北川の手をとるみか先生。  
北川はその手をきゅっ、と握り締めながら一緒に歩み始めるのであった。  
 
「さて、いよいよ最後の1組となりました!鈴木みか・北川理央ペアですっ!どうぞっ!」  
司会者の声に他のメンバーの顔が引き締まる。  
「とうとうみか先生の出番だねー」  
「先生が舞台上で失敗しないか心配だわ…」  
「そうです、中山のように華麗に登場してほしいです、えっへん♪」  
「いや、お前はすでに大失敗しているだろうが…」  
各人の呟きもそこそこに、いよいよ舞台中央から2人の姿が現れ始めた。  
そして鳴り響くバックミュージック。  
 
「って、何で結婚行進曲なの?」  
そう、流れ始めた曲はメンデルスゾーンの『結婚行進曲』であった。  
「みか先生…!北川もっ…!」  
驚きの声をあげる委員長。  
そう、2人の格好は何と結婚式の新郎新婦の姿だった。  
みか先生は純白のウエディングドレスに同じく純白のベールを纏っている。  
ドレスはシルクを基調とした細かいレース仕上げ、まるで小さな妖精といった雰囲気だった。  
そして北川はタキシード姿。まさに男装の美少女という言葉がしっくり来る。  
女性同士でありながらここまでお似合いな者はなかなかいないだろう。  
そんな2人に思わず大きな拍手と歓喜の声が上がる。  
「まさかそんな格好で来るとは…」  
「しかも妙な取り合わせなのにすごく似合っているし」  
多分自分達が優勝候補と確信していたであろう、おやじと委員長が感嘆の言葉を放った。  
「みかーっ!よく似合うぞー!でもなんだかお父さん悲しいぞーっ!」  
後ろのほうでビデオカメラを回している父親の声が聞こえる。  
 
「もう、お父さんったら恥ずかしいよ…」  
少し赤ら顔で俯くみか先生。  
「でも、本当に似合ってますよ。今度は本当の…」  
北川の言葉の最後は自ら呟くのであった。  
 
全ての出演者の紹介が終わり、それぞれのペアが結果を聞くため舞台に上がっていた。  
司会者の言葉が会場に響き渡る。  
「さて、15組のペアの方々に舞台に上がってもらいました!いよいよ審査発表ですっ!」  
その途端、舞台の照明が落ち、真っ暗になる。  
「では第3位っ…!」  
司会者の声とともにドラムロールが響き渡る。  
スポットライトが右に左に動く。  
「1番、富永・松本ペアですっ!」  
会場から沸く歓声と拍手。  
しかし当の本人達は不服そうな顔をする。  
「この私の美しさを理解できないなんて、所詮商店街の審査員ね」  
「ほんとほんと、何で3位なのよ?」  
とんでもない毒舌を吐きまくる2人。  
「続きまして第2位…!」  
同じようにドラムロールが響き、ライトが一点に映し出す。  
「11番、中村・流ペアです!」  
さらに大きな拍手が2人に注がれる。  
賞の受け取りもまさに堂々とした態度で受け取る。  
「さあ、ベストパートナーコンテスト、第1位の発表です!」  
いつもより長めのロール。  
「北川さん、心臓が破裂しそうだよっ…!」  
「大丈夫、何とかなりますって♪」  
動揺するみか先生を優しく諭す北川。  
そしてロールが止まる。  
「15番、鈴木・北川ペアです!」  
ライトが当たると同時に2人に観客からの大歓声が包まれる。  
「え、嘘!?やった〜っ!やったよ、北川さんっ!」  
喜びのあまり北川の身体に飛びつく彼女。  
北川はたたらを踏みながら彼女を軽く抱きしめ返した。  
その様子にさらに大きな拍手が沸き起こるのであった。  
 
「おめでとうございます、みか先生♪」  
北川がシャンメリーをワゴンから取り出す。  
場所は変わってホテルのスイートルーム。  
あの後、皆で商品券を分配し、みか先生と北川は次の日が日曜だからという事で泊まることになったのだ。  
ウエディングドレス姿のみか先生とタキシード姿の北川がホテルをチェックインした時の周りの客の目が少し痛かったが。  
「ありがとう〜。北川さんのおかげで優勝できたんだよ」  
北川の手にしたボトルの中身がみか先生の目の前に置かれたグラスに注がれる。  
乾杯の音が鳴り、甘い液体が2人の喉を潤す。  
「先生、そのドレスとってもお似合いですよ」  
北川がにっこりと笑顔を見せる。  
「えへ、そうかな?嬉しいな〜。北川さんもそのタキシード姿、格好良いよ。何かタカラヅカとかに出演してそうな感じがするんだもん」  
そう言ってグラスの中のシャンメリーをもう一口。  
「私達、まるで新婚さんみたいだね」  
彼女の言葉に北川の表情が崩れる。  
「うふふ…みか先生ったら、もう…」  
もう彼女の心は爆発寸前であった。  
おもむろにみか先生の手を取り、ベッドに腰掛けさせる。  
「先生♪新婚1日目にする事って何だと思います?」  
そう言う北川の顔はやや赤い。  
「ん〜?何〜?」  
のほほんと答えるみか先生。  
「それはですね…」  
言うなり彼女の唇を塞ぐ。  
「んんっ…!?」  
いきなりの事に驚くみか先生。  
「ふふ…先生の『初めて』、頂きます♪」  
 
そして優しく彼女をベッドに押し倒す北川。  
「北川、さん…」  
みか先生の目もまるで熱にうなされるかのようにトロンとしている。  
北川は何も言わず肌が露出している首筋の部分にキスをし始める。  
「あんっ…」  
声を上げるみか先生。  
その唇は優しく啄み、温かい舌が彼女の首筋を這い始める。  
「はぁん、あん!そこ、弱いのっ…」  
彼女の弱弱しい声がさらに北川の情欲を駆り立てる。  
「もっと可愛い声で鳴いて下さい、みか先生♪」  
器用な手つきでドレスの上部分を外していく北川。  
ドレスと同じ純白のブラジャーが現れる。  
「やだっ…恥ずかしいよぅ…」  
赤ら顔を浮かべるみか先生。  
「コルセットもスカートも脱がせちゃいますね♪」  
それらも北川の手によって同じように素早く脱がせられていく。  
あっという間に下着と白のガーターベルトのみの姿になってしまう。  
「それでは…いただきます♪」  
そう言うと彼女はみか先生の両方の丘陵を優しく揉み始めた。  
それと同時に彼女のブラジャーを外す。  
「先生、胸ちょっと大きくなってませんか?」  
「本当…?あはっ、嬉しいな〜」  
北川の言葉に蕩けるような笑顔を浮かべるみか先生。  
「じゃあ、もっと大きくしてあげますよ〜」  
彼女の手はみか先生の胸を大きな輪を描くように揉んでいた。  
同時にみか先生の耳に息を吹きかける。  
「ああんっ、くすぐったい…」  
全身をぞくぞくする感覚がみか先生を襲う。  
 
北川は自らの舌を彼女の耳に近づける。  
「きゃん!何か…変な感じ…」  
胸の揉む力は徐々に強くなっていく。  
「胸…気持ちいいよ…もっとしてぇ…」  
甘く切ない声にますます興奮する北川。  
「先生ぇ…もっと気持ちよくさせてあげます」  
耳元でそっと囁くと今度はちゅぷちゅぷと音を立てて彼女の耳を舐めにかかる。  
「きゃうんっ!」  
まるで仔犬のような声を上げるみか先生。  
さらに胸から乳首へと北川の手が移っていく。  
そのぷっくり膨らんだ乳頭部分を軽くつねり上げる。  
「ああっ!」  
微かな痛みがみか先生の快感を増幅させる。  
北川は舐め続けていた耳からそのまま首筋に舌を這わせる。  
「はぁ、あふんっ!もうおかしくなっちゃうよぉ…」  
涙目になりながら甘美な声を発するみか先生。  
それでも北川の手は胸を弄るのを全くやめようとしない。  
わざとぴちゃぴちゃ音を立て、首の周りを舐める彼女。  
その度にみか先生の身体がぴくんと跳ねる。  
「きた…がわさん、私、もう…」  
「もう、何です?」  
意地悪く答える北川。  
「いきそう…」  
「もういっちゃうんですか?」  
首を傾げる北川にみか先生が頷く。  
「先生ったら、すぐ感じていっちゃうんですね?いやらしいですよ」  
「そんな事言わないで…ああっ…!」  
 
北川の言葉に再び身体が震える。  
どうやら軽くいってしまったみたいだ。  
「じゃあ…私も気持ちよくさせて下さい」  
そう言うと北川も着ていたタキシードを脱ぎ、さらに下着も脱ぐ。  
パンティを脱ぐとそこから透明な糸が引いていた。  
そしてゆっくり下半身を開いて彼女に自分の秘所を見えるようにする。  
「先生…私のここ…舐めていただけますか?」  
すでにぐっしょりになっていた北川の秘所。  
みか先生は軽く頷くとその舌を彼女の大事なところに当て始めた。  
堪らず淫靡な嬌声をあげる北川。  
「ああんっ!」  
生暖かい舌が北川の中を暴れ回る。  
そのたびに彼女の秘所からは蜜がどんどん滴り落ちる。  
「ぷあっ…北川さんのここ、ぬるぬるがいっぱい溢れてくるよ…」  
口元を北川の蜜まみれにしながら彼女が話しかける。  
「いやっ…でももっと弄って下さい…」  
みか先生の右手は花弁を触り、左手と彼女の口が北川の胸を襲う。  
「せん、せっ…胸は…駄目っ…」  
先ほど北川がしていたようにみか先生も小さな手を一杯に使ってその豊満な胸を揉み始める。  
そのたどたどしい動きの度に北川もまたあえぎ声を上げる。  
「すご〜い…北川さんのここ、いっぱい溢れてる…」  
「そんな事言わないで、下さ…あんっ!」  
もう目元から涙が溢れそうになる北川。  
「先生…一緒に…いこ?」  
もう堪えられないといった表情の北川にみか先生は自分の下着を脱ぎ捨て、ゆっくり身体を寄り合わせる。  
そしてお互いの花弁と花弁を合わせる。  
「んんっ…」  
すでに2人の秘所は大量の蜜が出て一帯ぬるぬるになっていた。  
 
先生…愛してます…」  
「北川さん、私もよ…」  
2人の唇が重なった瞬間、花弁同士もこすり合わせ始めた。  
「あん!ああんっ!」  
「きゃんっ!」  
ぐちゅっ、ぐちゅっと水音を立てながらお互いの身体同士をすり合わせ、全身でその快感を味わおうとする。  
彼女らの出る言葉はもう嬌声のみ。  
「ああっ、やあっ!ああん、きゃあんっ!」  
「くぅんっ!あっ、はぁんっ!」  
そしてこの愛し合いに終焉のときがやってくる。  
「みか、先生!もう、いっちゃう、いくっ!」  
「私も、北川さんっ!駄目、もう…何か出る、出ちゃうっ!」  
「いっぱい出して、ああ、もう…もうだめぇっっ!!」  
「ああああっっ!!!」  
そして絶頂を迎える。2人の身体が大きく波打ち、秘所からはとめどなく蜜が溢れ、彼女達を濡らす。  
がくがく身体を揺らし、そして力なく倒れこんだ。  
「みか先生…もうこのまま離したくない…」  
「私もよ、北川さん…」  
そして2人は再び激しいキスを交わすのであった。  
 
後日。  
みか先生の自宅ではコンテストの時撮影したビデオ鑑賞が開かれていた。  
「ほんと、みかのドレス姿よく似合うなぁ」  
「いや〜、それほどでも…」  
照れながら頭をぽりぽりと掻く彼女。  
「本当、『馬子にも衣装』って言うからね」  
「はうっ!」  
母親のきつ〜い一言にやっぱり涙するみか先生の姿があった…。  
 

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