「やっぱり少し遠出しようよ〜」  
「折角のお花見だしなぁ」  
 
「景色がいい所となると、隣の県まで行ったほうがいいかしら」  
「どうせなら泊りがけで行こうぜ!」  
「あら、たまには関も良いこと言うわね。良いじゃないそれ。」  
「よし、みんな異論は無いか?」  
「俺は末武となら、天国でも地獄でもどこでも行くぞ!」  
「アハハハ、地獄は嫌だなぁオレ」  
 
春休み直前、桜が早く咲き始めたので、春休み中にお花見をしようということになった  
いつものメンバーが行き先について相談している  
 
「ねぇ、みかせんせも一緒に行きましょ?」  
「えぇ〜、春休みはゆっくり家で寝ていたいなぁ・・・・」  
「みかせんせ。お花見に行けば旅館の温泉とご馳走が待ってますよ?」  
 
「温泉・・・・ご馳走・・・・・」  
「ま、まぁ、生徒だけで行くのもね、何か問題が起きた時に大変だから  
    付き添いとして行きましょう・・・・」  
「せんせぃ、よだれたらした顔で言われても、説得力無いですよ。」  
 
「あう〜。」  
「まぁ、これで決定ね。」  
 
結局、行き先、日程等も決まり、出発の日がやってきた  
 
ここは集合場所の興津駅前  
「よ〜し、全員揃ったな?」  
「あれ?関、まだ富永とおやじが来てないわよ。」  
「あぁ、あの二人は家の用事で2時間位遅れて来るって」  
 
「二人とも大丈夫かな?道に迷ったりしないかな?」  
「大丈夫だよ!みかせんせ!」  
「あの二人はしっかりしてますから。」  
「そう!みかせんせよりもな!」  
 
「あう〜、ひどいよ末武君(泣)」  
「いじけるみかせんせ、可愛い〜」  
「もう、抱きしめてもイイですかぁ?」  
 
「あわ〜、ダメだよ北川さ〜ん。」  
「じゃぁ、私たちは先に行きましょ」  
「そうね、委員長の言う通りね」  
 
みかを抱き上げる北川を置いて小林と委員長は先へ行ってしまった  
 
「あう〜、待ってぇぇぇぇぇぇ。」  
「あぁん、逃げないでみかせんせぇ」  
 
「いいか、中山。美しい景色を見て、感じたことを素直に真っ白なキャンバスに書きとめろ!」  
「ハイ!中山、美しい景色を全身で感じマス!」  
「いや、違う、感じるだけじゃない!書き留めるんだ!中山!」  
「ハイ!中山書き留めマス! きゃはっ!」  
 
いつもの感じで各メンバーが電車に乗り込んでいたそのころ、富永も家の用事を終わらせ、出発の準備をしていた  
「よしっと。今からなら、中央線で行った方が早いわね  
 少し混んでる時間だけど、都心部を抜ければ空くでしょ」  
「今回も変な事件が起きなければいいけど・・・・」  
いつものメンバーで出かければ、必ずと言っていいほど事件が起きる  
「あら、もうこんな時間。少し急いだ方がいいわね。」  
 
ただでさえ他のメンバーから2時間弱遅れての出発なのだから、急ぐ必要がある  
 
一方おやじは・・・・  
「おぉ、もう2時間も経ってたのか、急がないと。」  
「まぁ、これで半年は大丈夫だろぅ。」  
2時間かけて直した家の物置の、戸の閉まり具合を確かめておやじは立ち上がった  
出来栄えは、見事だった・・・・・  
職人も驚く仕上がり具合だった  
 
「荷物はこれで良し。さて、行って来るか。  
 この時間なら、混んでいるが中央線の方がいいな」  
大きなリュックを背負うその後姿は、頼れるお父さんを彷彿させる  
 
 
「やっぱり混んでるわね。」  
混雑している電車の中で富永は愚痴った  
時間的には丁度出勤ラッシュなのだ。  
学生は春休みだが、世間一般は平日の普段の日なのだから当然である  
 
「みんなは朝6時頃の電車だから空いていたでしょうぉっ。い、痛い!」  
「誰よ足を踏んだの!?」  
「あぁ〜もう!」  
 
そんな満員列車に苦戦する人間が同じ車両にもう一人居た  おやじだ  
「あ、すいません。」  
「い、いいえ、こちらこそ・・・」  
多くの会社員に囲まれているおやじの姿は、富永のすぐそばに居たのだが、お互い気付いていなかった  
しかし・・・・おやじの姿は会社員に見事に溶け込んでいた・・・  
 
そんな満員地獄も次の駅で終わりかと思っていた富永に、予想していなかった感触が身体に感じられた  
「え、?う・・・、こ、これって・・・・・痴漢?」  
時々、富永の太ももに人の手のようなものが当たっているのだった  
「 (まぁ、この混雑じゃ、不可抗力ってこともあるわよね・・・) 」  
最初は冷静にそう思っていたのだが、明らかに不自然な当たり方をしている事に気付いた  
 
「この!」  
相手が痴漢だと判断した瞬間、富永のかかとが、後ろに立っている男のつま先を強烈に踏みつける  
 
「ぐお!」  
小さいうめき声が聞こえ、これで諦めるだろうと思っていた富永だったが、大きな誤算だった  
 
「おとなしくしな」  
富永のふとももに冷たく、鋭いなにかが押し付けられた  
「ひゃっ!」  
突然の冷たい感触と男の低い脅しの効いた声  
 
―――――――-ナイフ――――――――  
富永の脳裏に一瞬にして浮かんだ単語  
それが自分の太ももに当たっていると理解した瞬間、富永の動きは封じられていた  
 
「触らせてくれるだけで良いんだよ」  
耳元で男が呟く  
「い、いや、お願い・・・やめて・・・」  
「へへへ、たまんねぇなぁ、ちょっと強気な女子高生ってのは」  
 
「あ、だ、ダメ、・・・そんなこと・・・」  
「柔らかくていい形の尻だな」  
男の手が乱暴に、富永のヒップ全体を揉む  
「さて、じかに触らせてもらうよ」  
いきなり男の手は富永のショーツの中に手を入れてきた  
「あぁ、・・・・いやぁ・・・お願い・・・もうやめてぇ・・・」  
「すべすべで良いさわり心地だぜ。  
おいおい、感じたのかぁ?」  
そんなわけない、ただ恐怖によって縛られた富永はこれしか言えなかった  
 
「へへぇ、胸もいい大きさだなぁ」  
あいている男の片方の手が胸に伸びてくる  
シャツの下に手を入れ、ブラジャー越しに胸を揉まれる  
全体の形を確かめるような揉み方から、乳首をはじくようにまさぐってくる  
 
「あ、あん。う・・・ううん・・・・んふぅ・・・」  
しつこく胸とお尻を愛撫され続けているため、富永の反応が少し変わってきた  
「おお。いい声出てんじゃん」  
「そ、そんなこ・・・と・・ない・・・」  
「無理するなって、んじゃぁ、直接大事なところを触らせてもらうか」  
「そ、それだけはいや! お願いだか・・・・・ら・・」  
その間も胸は揉まれつづけ、お尻はいやらしく撫でられつづけている  
 
なんとか、女の子として一番大切な部分だけは守ろうと懇願する富永だったが、痴漢には効果は無い  
「そんじゃ、触るぜ」  
「い、いやぁ!」  
 
痴漢の汚い手が富永の秘部に触れようとした瞬間  
ドゴッ!!  
鈍く、重い音が車内に響いた  
 
「ぐわぁ!」  
「富永!大丈夫か!」  
 
痴漢は頭部を押さえて、崩れる  
おやじの鉄拳が痴漢の頭部にめり込んだのだった  
 
「え、え、あ、お、・・・おや・・じ・・・」  
「大丈夫か!気付くのが遅れてすまん!」  
「くそ、オレが近くにいたのに、こんなことになるなんて・・・・」  
「ほんとにすまん」  
 
まさに間一髪だった、おやじが富永の存在に気付いた時は痴漢が富永の胸を触り始めた頃だった  
富永の様子がおかしい事にすぐに気付いたおやじは、人垣を掻き分けながら必死になって富永救出に向かったのだった  
 
結局痴漢は、おやじにボコボコにされてから鉄道警察へと連行されていった  
 
 
「少し、落ち着いたか?」  
「うん。ありがとう。・・・・情けないところを見せちゃったわね。」  
結局、警察への事情説明等の為、途中下車をした二人は、喫茶店に入っていた  
 
他のメンバーへは、北川の携帯におやじが電話をして、集合に遅れる事を伝えた  
(もちろん、全ては話していないが・・・)  
 
「やっぱり、今回は家に帰った方がいいんじゃないか?」  
「おやじったら、心配しすぎよ。もう大丈夫だから。」  
 
「そうか・・・。  
 富永がそう言うならオレも無理には言わないが・・・・・・。」  
「さぁ!もう行きましょ?  
  みんなが待ってるわよ。」  
「あ、あぁ。」  
 
少し戸惑うおやじを置いて、富永は立ち上がりレジへ向かう  
「 (そうよ、大丈夫・・・・。  
       あたしは負けない・・・) 」  
 
 
一方、先に目的地へ着いている一行は・・・・・  
「おーい!みんな見ろ見ろぉぉぉぉ!」  
「あれ?関の声が聞こえるのに、姿が見えない・・・・・・って、あんたなにしてんのよ!?」  
 
満開の桜の木の枝にぶら下がっている関が、メンバーを呼んでいた。  
ただ、格好が・・・・・・・・・・・・  
 
「おぉ!委員長!オレの美しさにメロメロか!?」  
「そんなわけないでしょ・・・・」  
 
関の格好は、薄い桃色の全身タイツに、桜の花びらを貼り付けているというなんとも見苦しい格好だった・・・  
 
「テーマは、桜の木の精さ!」  
「木の精というより、木の栄養を吸い尽くす害虫ね」  
「ぐはっ!こ、小林!オレのこの美しさがわからないのか?」  
「解かるわけないでしょ!」  
 
「キャハッ!渡部先輩、中山美しい景色を書きとめマス!」  
「い、いや、あれは書かなくていい・・・・」  
「何故デスか?美しい景色じゃないデスか!?」  
「あれを美しいと感じるお前が凄いと思うぞ・・・」  
「キャハ!中山、渡部先輩に誉められまシタ!」  
「い、いや、誉めてない・・・・」  
 
「あぁ、この桜の木の下で、末武と熱い思い出を!」  
「おーい、工藤〜!」  
「末武!どこだ?どこに居るんだ!」  
「ここだ〜。」  
 
桜の木の枝に登った末武が、かき集めた花びらを工藤に頭にふりかけていた  
「あぁ!末武とオレの桜舞い散る愛のスキンシップがぁぁぁぁぁぁ!!」  
その瞬間、鼻血を大量に噴出しながら工藤は倒れた  
 
「桜が・・・・赤く染まってる・・・」  
「さしづめ、殺人現場みたいですね・・・・・・みかせんせ」  
「委員長、その表現はちょっと・・・・・・・」  
 
「それにしても、おやじ達遅いわね?」  
「そうねぇ、そろそろ着いてもいい頃なんだけど・・・」  
「あら?委員長はおやじ達が心配?」  
「し、心配ってわけでもないけれど・・・・ねぇ?ちょっと遅すぎるかなって・・・」  
 
「委員長の心配事は、おやじ達が無事かどうかってことじゃないんじゃない?」  
「こ、小林!な、なに言ってるのよ!・・・・もう・・・」  
「なるほどねぇ・・・・・富永と二人っきりか・・・・・。」  
「関までなによぉ、なにが言いたいのよ?」  
「言っていいのか?委員長」  
「キャハッ。渡部先輩は何か知ってるんですか?さすがデス!!」  
「もう、やめてよぉ!」  
 
この様子を遠くから眺める影が二つ  
「あいつら・・・・・こんな遠くからでも解かり易いなぁ・・・」  
「ホントね はぁ・・・(軽く息を吐く)ほんっといつも騒がしくて目立つわね」  
「まぁ、見つけやすくて楽できるけどな」  
 
「富永・・・」  
「ん、何?おやじ?」  
「辛くなったら、言ってくれよ?相談くらいなら聞くから」  
「うん。・・・・・・ありがとう、おやじ」  
 (このおやじの優しさって、結構嬉しいものだったのね・・・・)  
 
「おまたせー!」  
「おまたせー!」  
 
二人声を揃えてメンバーの元へ歩いていく  
 
「おぉ!やっときたか!」  
「待たせたな、関」  
「二人揃って遅いなんて、ナニしてたのよぉ?」  
「ナニもないわよ、小林」  
「二人とも心配したよ〜。道に迷ったりしてるんじゃないかって・・・・」  
「そんな、みかせんせじゃあるまいし」  
「はうっ!ひどいよ富永さぁん(泣)」  
「カウンターを喰らうみかせんせ、可愛いわぁ(富永、グッジョブよ!)」  
 
「ねぇ、おやじ。随分時間かかったみたいでけど、何かあったの?」  
「いや、電車が混んでる時間をずらしたんだ。それまで待ってたからさ。」  
「そう。みんな心配したのよ?もちろん、あたしだって・・・・」  
「委員長・・・・・・」  
 
少し離れた場所から二人を見つめる視線  
「あらあら、二人の世界を作っちゃってるわねぇ〜」  
「おっ!ほんとだ、あの二人は見てるこっちがもどかしくなるな。」  
「関くん、小林さん。邪魔しちゃだめだよ〜。」  
「だってさぁ、みかせんせ。せんせもそう思わない?」  
 
「みかせんせには私が居ますから大丈夫ですよ〜」  
後ろから突然みかを抱きしめる北川  
「あわわわわっ、き、北川さん離して〜」  
「末武!末武にはオレが居るから安心しろ!」  
「あははは!安心していいのか?」  
 
「渡部センパイ!渡部センパイには私が居ます!キャハッ!」  
「あ、あぁ。そ、そうか・・・・・」  
少し頬を赤くする渡部  
 
「そうか・・・・、おやじは委員長と・・・・そうだったわね」  
「富永?どうしたの?」  
「な、何でもないわよ。小林」  
 
「おぉ〜い、みんなぁ!花見しようぜぇ!」  
末武の声にみんなが反応する  
 
「よし!全員揃ったことだし、宴会だ!」  
「えぇ〜、お酒はだめだよ〜」  
「みかせんせ、安心して下さい。お酒は飲みませんよ」  
「えっ、そ、そうだよね〜、よかった。」  
 
桜の木の下で、どこの宴会場よりも賑やかなグループの宴会は3時間におよんだ  
 
 
「あ〜、もう飲めないわぁ・・・・・・・・・」  
「末武〜、お前はオレと・・・・・・ムフっ・・・・」  
「し、締め切りが・・・・にゅ、入稿が・・・・・」  
場所は旅館へと移っても宴会は続いていた  
小林・工藤・渡部の三人はすでに酔いつぶれてしまった  
 
「だからねぇ〜、ここのア行5段活用は〜、ヒ、ヒック」  
「みかせんせ〜、もう勘弁してくれよぉ」  
「酔って絡むみかせんせ、さいっこう〜、ウフフフフフフフフ」  
酔ったみかは関に説教を始め、ほろ酔いの北川はそれを眺め楽しんでいた  
 
「キャハハハハハハハハッ!中山、今なら大作が書けるような気がします〜!」  
「おぉ〜い、みんな起きろよぉ。この刺身めっちゃ美味いぜ!」  
「おお、このヒラメの刺身も美味いな。酒に良く合う・・・」  
「さすがおやじね、通だわ。はい、どうぞ」  
委員長が熱燗を持っておやじに差し出す  
「おお、すまんな、委員長」  
お猪口を傾け、受けるおやじは正に威風堂々としたおやじだった  
 
結局まともに残っているのは、委員長・末武・おやじ・富永だけだ  
「さてと、私はもう一度お風呂に入ってくるわ」  
「あ、待って委員長。私も一緒に行くわ」  
「オレはもう少し末武と飲んでるよ」  
「そう、じゃぁ行ってくるわ。」  
 
普段なら富永が誰かと一緒に風呂に行くというのは珍しい  
委員長はそんな富永に一瞬疑問を感じつつも、二人で大浴場へと向かった  
 
「(委員長はおやじのことどう思ってるのかしら)」  
脱衣所で浴衣を脱ぎながら、委員長に聞けない想いを考え込む富永  
 
「・・・が、 ・・なが、 ・みなが!」  
「えっ、な、なに、委員長・・・。そんな大きな声で」  
「なにじゃないでしょ、そんな格好でぼーっとしちゃって、風邪引くわよ」  
「あ、あぁ、そうね、ごめんなさい・・・・」  
「?」  
 
明らかに普段と違う富永に、委員長は戸惑ってしまう  
「ねぇ、富永。何かあったでしょ?  
さっきから、ううん。今日はずっとおかしいわよ。」  
「えっ!そ、そんなこと無いわよ。ちょっと酔っただけよ。  
    さぁ、早く湯船につかりましょ?風邪引くわ」  
 
身体をかるく流し、二人並んで露天風呂に入る  
 
「星が綺麗ね〜、やっぱり来て良かったわぁ、この旅行」  
「そ、そうね。」  
 
富永は委員長の身体を見ながら、色々考え込んでいた  
「(胸は、私より大きいかな?やっぱり男って、大きいほうが好きなのかしら?)」  
 
「な、なに、富永、じろじろ私の身体みちゃって・・・・」  
「ま、まさか、北川に触発されて富永もそっちの道に目覚めたの・・・・?」  
「な、何言ってるのよ!そんなわけないでしょ!もう・・・」  
 
二人の間に軽い沈黙が流れる  
1分ほど経った頃だろうか、富永が口を開いた  
 
「ねぇ、委員長。」  
「ん、何?」  
「委員長は、・・・・・おやじのこと、・・・・・・・・どう思ってるの?」  
 
 
言った後に、自分が発した言葉にハッとなる富永  
 
 
「え、えっと、い、今のは、その・・・」  
「と、富永・・・・?」  
自分が言った言葉に反応したのか、それとものぼせたのか、顔が真っ赤になりながら富永は委員長になにかを伝えようとする  
 
「つ、つまり・・・、どう思うかっていうのは、その、友達としてというか、・・・」  
「富永・・・・私は、おやじの事を、本当に大切な・・・・」  
「た、大切な・・・・・?」  
 
 
その先の言葉が聞きたくて、富永は委員長に迫るような勢いを見せる  
 
 
「大切な人だと思ってる・・・・」  
 
「たいせつな・・・・ひと・・・」  
 
「そ、それは、友達・・・・として?」  
「いいえ、違うわ」  
 
ハッキリと、富永の耳に聞こえるように言い切る委員長の瞳は力強く、それでいて慈愛に満ちているように感じられた  
 
「そ、そう・・・・  
  わ、私もう出るね、のぼせちゃったみたいだから・・・」  
 
なにかに急かされるように湯船から出て行く富永  
そんな富永の目には見間違いだろうか、涙のような光の筋が見えた  
 
 
 
「(解かってたはずだった・・・、  
  委員長の気持ちなんて、とっくに解かってた・・・・・)」  
「(でも、この溢れてくる気持ちはどうしたらいいの?)」  
 
着替えながら、あふれ出る涙を止めることはできなかった  
 
まだ潤んだ瞳のまま大浴場ののれんをくぐり出た、すると  
 
「おっっと、富永、今出たのか?って、どうしたんだ?」  
 
これから風呂に入ろうとするおやじと、偶然はち合わせた  
「あっ・・・・・お、おやじ・・」  
 
まだ涙の乾かない内に出会ったために、おやじは富永の涙を見つけてしまった  
 
「な、なんでもないわよ、・・・・・」  
「なんでもないって・・・・・・泣きながら言われても・・・」  
 
「ほ、ホントに何でもないわよ」  
「そ、そうか・・・・・・・・」  
 
 
「あ、ね、ねぇ、おやじ・・・・少し外を散歩しない?」  
 
富永は頬を赤く染めながらおやじに話し掛けた  
 
「う〜ん、少し外は冷えるけど、まぁ、いいか」  
「じゃぁ、行きましょ・・・・」  
 
 
 
旅館を出て右に曲がると、小さな小道が丘の方へと続いている  
この道の左側には小川が流れ、せせらぎを聞きながら丘へと続く道には数本の桜の木が誇らしげに咲き誇っている  
「夜桜も風流ねぇ」  
「あぁ、そうだな・・・・」  
 
 
 
二人が散歩にでているその頃、部屋に戻った委員長は部屋の状況を見て愕然としていた  
「な、なに・・・これは・・・」  
 
「うぉぉぉぉ!創作意欲が湧いてきたぁぁぁぁ!」  
「関!もっと踊ってくれぇ! 工藤!気合入れて鼻血噴けぇぇぇぇ!」  
 
泥酔した渡部がスケッチブックに訳のわからない絵を書きなぐっていた  
「キャハハハハハハハハハハッ!渡部センパイすごいっす! 中山もまけられないっす!」  
 
中山ももう、手に負えないレベルの壊れっぷりだった  
他のメンバーは完全に爆睡で、おやじと富永が居ないことなど気付きもしない  
「今日は、この中で寝るの?・・・・・・・・」  
うなだれる委員長さえも、二人のことは考えられない状況になってしまった  
 
 
 
一方、散歩中の二人は丘の上から温泉街の夜景を眺めていた  
「綺麗・・・・・」  
「あぁ・・・・・・・」  
 
「ねぇ、おやじ・・・・」  
「ん、なんだ?」  
「おやじはさ、委員長のことどう思ってる?」  
 
 
突然の富永の言葉は、いつも冷静なおやじでも、どうゆう言い方をすればいいのかわからないくらいの動揺を与えた  
 
 
「どうって・・・・・・・」  
「正直に答えてよ。おやじの正直な気持ちを・・・・」  
 
 
長い沈黙が二人を包む  
夜風が桜を揺らす音  
眼下の町から聞こえる微かな物音  
虫の鳴き声  
 
その全てが時間をゆっくりと流しているようにすら感じる  
 
 
「オレは・・・・・委員長が・・・・好きだ」  
 
 
「そう、やっぱりそうだったんだ・・・・」  
「富永?どうしたんだ??」  
 
「おやじ、・・・・・お願いがあるの・・・・・」  
「オレにか? オレに出来ることなら協力するが。」  
 
 
「うん。おやじにしか出来ないことよ・・・」  
「なんだ?」  
 
 
おやじが聞き終わる前に、富永は自分の浴衣を脱ぎだした  
「と!・・・・」  
 
おやじは富永に止めるように言おうとした、しかし月明かりに照らされた富永の肌の美しさ、舞散る桜の花びらによって隠された富永の表情が、妖艶な雰囲気を作り出し、おやじは富永から目が離せなかった  
 
「おやじ・・・・私を抱いて・・・・」  
「っ・・・・・・・!」  
 
「な、何を言ってるんだ、富永・・・」  
「一度でいいの、今だけでいいから、私を愛して欲しい・・・・」  
 
 
自分の胸を隠すように、両手で自分の肩を抱く富永は微かに震えていた  
「富永・・・・・ホントにいいんだな?」  
「うん。 今だけでいいの・・・・」  
 
震える富永を抱きしめ、富永の唇に軽くキスをする  
最初は触れる程度のキスから、段々と長い時間を掛けてお互いの唇を味わっていく  
 
ぴちゃ ぴちゃ と水滴が二人の口から響き、息が漏れる  
「ふう、あはぁ、はぁ」  
「あ、んふぅ、はぁはぁ」  
 
「あ、お、おやじの、か、固くなってる」  
抱き合っているのだから、おやじのモノがちょうど富永のお腹に当たっている  
「あ、あぁ。富永の身体が気持ちよかったから、つい・・」  
 
「み、見てもいい?」  
「えっ、あ、あぁ・・・いいよ」  
 
「うわぁ、す、すごい・・・」  
はちきれんばかりに怒張したモノに手を添えながら、富永は顔を真っ赤にしている  
 
「と、富永の手、気持ちいいな・・・」  
「えっ、そ、そう? それじゃこうしたら気持ちいい?」  
 
富永は恐る恐るモノに舌を這わせる  
根元の周辺をなぞるように舐め、徐々に舌をカリ、亀頭へと這わせる  
 
「うぁ、凄い、い・・・いい」  
 
富永はモノを口に含み、舌先でモノを転がしている  
「凄い、気持ちいいよ、富永、どこでこんなやり方おぼえてるんだよ」  
「ふふ、色々よ」  
 
「お、オレにも富永を触らせてくれ」  
おやじは自分の浴衣を地面に敷き、富永を寝かせた  
 
「キスして・・・」  
「うん・・・・」  
キスから始まった愛撫  
おやじの舌は首へとうつり、鎖骨、肩、脇へと続く  
「あ。はぁ、んふぅ・・・はぁ」  
富永の口から漏れる声がますますおやじの興奮を高める  
 
「気持ちいいのか?富永」  
「うん、あ、あはぁ・・き、気持ちいいよ・・・」  
 
右手は胸全体を包むように揉み、左手で富永の右胸の乳首を転がすように攻める  
 
そのまま舌は富永の薄い茂みを通り、しっとりと湿った秘部へとたどり着いた  
始めて見る富永のソコは、薄い桃色をしていた  
 
「濡れてる・・・・・」  
「いやぁ、言わないでぇ」  
「ごめん、でも・・・・・・綺麗だ」  
 
「そ、そんな、あはぁ!ひ、ひゃ・・・・あ・・・あぁ・・」  
「お、おやじ、そんなとこ、は、激しすぎる・・・・あ、あん!」  
おやじの舌が秘部全体から細かいところまで舐めつづける  
 
「もう、入れたい・・・・いいか?」  
「う、うん。月並みだけど・・・・優しくしてね」  
「あぁ、優しくする」  
 
おやじは自分のものを富永のソコにあてがい、腰を押し込んでいく  
「あ、あぁ、い、痛い・・・痛いよ・・・」  
「う、も、もう少しだから、ああ、」  
 
「ぜ、全部入ったぞ、大丈夫か・・・富永」  
「う、、うん。ちょっと痛いけど、おやじの熱いわね」  
 
「う、富永の中凄い暖かくて、気持ち良すぎるぞ」  
「動いて、・・・・おやじ・・」  
 
「あ、ああ。」  
腰の動きを徐々に早めつつも、富永の変化に集中するおやじ  
「あ、あ、あぁ!ああん!はっはっ!い、いい!」  
「ふうふうふう、うあぁぁ、」  
「あん!あああん!も、もっと!」  
 
富永の甲高い喘ぎ声に理性を失いそうになりながらおやじは限界が近づいてきていた  
「あぁ!お、オレ、も、もうイキそうだ・・・」  
「ひゃん!あん!きゃう!あん!もっともっとぉ!」  
「も、もうダメだ!あぁ!」  
「あん!あ、あた、し、もい、・・・・いイク!あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」  
 
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ・・・・」  
「あ、はぁ、あふぅ、はぁ・・・・・・・・」  
 
「お、おやじ、あ、ありがとう・・・・」  
「うあ、ああ。」  
 
 
 
服をきて、旅館に戻った二人はもう一度、露天風呂へと入っていた  
男性風呂と女性風呂の敷居越しに話をしていた  
「なぁ、富永・・・・そ、その、大丈夫か?」  
 
 
「え、な、なにが?」  
「い、いや、富永も初めてだったんだろ?  
   その、痛いんじゃないかと思って・・・・・・・」  
「あ、う・・うん。ちょっと・・・・痛い・・・」  
 
「す、すまん・・・」  
「べ、別におやじのせいじゃないわ。私が望んだことだから・・・」  
「でも、どうしてだ?なんで、突然あんなことを・・・・」  
「わたしなりのケジメ・・・・よ」  
「ケジメ?  一体なんの・・・・?」  
「それは・・・・言えないわ・・・」  
「そうか、解かった。もうこれ以上は聞かないよ。」  
 
「(そう、これで終わり。おやじへの想いも・・・・・)」  
「おやじ・・・・・」  
「ん?なんだ?」  
 
「・・・・・・・・・・・ありがとう」  
 
「??あ、あぁ、良く解からんが・・・・?」  
「いいの、これは一人言だから」  
 
「さぁ、もう出ましょ。 みんな心配してるわ」  
「あぁ、そうだな」  
 
そんな二人はこの後部屋に戻って、メンバー全員から尋問の嵐に遭うことになる  
 
「さよなら、私の初恋・・・・」  
 
Fin,  
 

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