あの日のことをどれくらい覚えているというのだろう。  
 
桜舞い散る季節だった。  
その年の桜は早咲きで世間はまさに卒業式のシーズンであった。  
流れるように散ってゆく桜の花弁をそしてその向こうで・・  
高校生だろうか学生服を着て感涙に浸る生徒の姿を工藤は眺めるように歩いていた。  
―俺にもあんな時があったな・・  
卒業後はただ学業に追われ周りなど見る暇はなかった。  
ただ自分を追いつめて真っ直ぐ前をむいて生きてきた。  
そうでないと目標・・医者になることなど到底達成できなかったからだ。  
―大志を抱くのもどうかと思うぜ  
 そう思い思わず頭をかきむしる。  
と、春一番だろうか、突風が吹きつけ目の前が桜吹雪に埋め尽くされてしまう。  
思わず目を細める工藤。  
ようやく吹雪がおさまると目の前にはどこかで見たことのあるような人間が立っていた。  
彼女もまた先刻の工藤のように花束をもつ生徒を見つめていた。  
―北川・・?  
 長身、かつストレートの長い栗色の髪を特徴とするその女性は何処となく切なく微笑むと  
前を・・工藤の方を見ると再び歩き出そうとする。と、彼女は前に立つ工藤の顔を見るとはっ、としたような顔をする。  
「くっ・・工藤なの?」  
 北川の過剰なリアクションに一瞬工藤はたじろぐがすぐに何事もなかったように北川に手を振っていた。  
 
北川は昔と何一つ変わらなかった。  
スタイルの良さも美しいまでのその顔立ちもそして・・  
「工藤も変わらないわね。」  
 威厳のあるその態度も当時のそのものだった。  
 全てが変わってしまったような自分を纏う環境に灯火が灯るような気分だった。  
「それは褒め言葉なのか?」  
 口に笑みを残したままそう言う工藤に北川は苦笑する。  
「さぁね、アンタの想像に任せるわ。」  
 と、北川は工藤の反応など構わない様子で窓の外を見つめる。  
 
 二人は会うなり喫茶店へと足を運んでいた。  
思い出話に長くなるだろうと工藤から誘ったのだが、  
彼はすっかり北川のペースに巻き込まれているようだった。  
「あんな頃もあったのよね・・私達・・」  
 外には再び卒業生の姿が見える。  
窓の外をたそがれるように眺める北川は先刻まで見せていた切ない表情を見せる。  
「そうだな。」  
 それ以外の言葉をかけることはできななかった。  
否、言葉が見つからなかったという方が正確なのだが。  
「ねぇ、工藤」  
 そう言った北川はいつになく穏やかな顔をしていた。  
「卒業式のコト、どれだけ覚えてる?」  
 そう言われると、と工藤は考えを巡らす。  
「・・そうだな・・あの時は委員長が答辞をして・・小林が礼を遅れたりしてたな。  
委員長が必死にフォローしていたからよく覚えてる。  
それと渡部は中山ちゃんに絵をせがまれていつまでも帰れなかったっけ。  
関は式が終わった途端に女装を始めるし・・今を思うと無茶苦茶な式だったな・・」  
 そしてその懐かしさに口元に笑みを浮かべる。  
 
「そうそう・・そうなんだけどね。」  
 工藤の言動に納得しながらも不十分とばかりに顔をしかめる北川。  
「ん・・他には・・そうだな、みかセンセ、子供のように泣き崩れてたなぁ・・。」  
 つられるように言葉を紡ぐ工藤に北川はようやく回答が出たとばかりに口元に笑みを浮かべる。  
「忘れないで、先生のこと。」  
 しかし次の瞬間その表情を一変させ真剣な眼差しで工藤を見つめる。  
「別段忘れていたわけではないのだが・・」  
 北川はこの話になると長いからな・・だから避けていた、  
とは今の工藤の口からはとても言えない様子だった。  
「・・まさかワザと避けていた・・なんてことはないわよね・・」  
 そんな工藤の思いがいつの間にか表情に出ていたのか、  
あるいは北川の第六感が働いたのか彼女の表情は刻々と変化してゆく。  
「そっ・・そんなこと・・あるわけないだろ・・」  
 と、逃げるように窓の外に視線を移す。  
すると黒い長い髪の女性が目の前を通り過ぎていった。  
気に留めることもない光景のはずだったのだが何故か心に残るような・・  
懐かしいものが通り過ぎ去っていくかのように見えた。  
ー気のせいか?  
 と、視線を現実に戻してやる。  
「きっ・・北川・・落ち着け・・そっ、そうだ今晩は暇か?  
たまには呑みに行こう、なっ!」  
「そう?」  
 ダメで元々、とばかりに言った台詞であったが北川の表情は元通りの穏やかなものへとなっていた。  
 
 
―ねぇ・・覚えてる?あの日のこと・・忘れるわけないか、あれだけ脅したんだものね。  
―こういう返事って女の方から求めちゃいけないって知ってるけど・・  
―やっぱり知りたいのよ。  
 
 
 いつの間にか転寝をしていたようで目が開いた時には時計が夕方の六時を指していた。  
慌て、布団から飛び上がると、工藤は首に締め付けられているネクタイを外しタンスからTシャツとジャケット、  
そして動き易いようにとGパンを取り出し着替え始める。  
待ち合わせの時間は六時半、駆け足でやっと間に合う程度だ。  
しかし、と工藤は思う。あの北川を怒らせるほどに怖いことはない。  
全速力で歩道を走り抜けていた。  
「待たせたなっ!」  
 息を切らし工藤が店へ・・北川の居る席へと向かうと  
その前の時間から飲んでいたのか北川は既に頬を染め上げていた。  
「遅いわよぉ、工藤!」  
 既に絡まれそうな勢い漂うその場所に工藤はおそるおそる坐る。  
「いや・・間違ってないぞ・・待ち合わせは六時半。今も六時半だ!」  
 と、あらそう、とばかりに時計を見る北川。  
次の瞬間には柔和な表情を見せる。  
「じゃ、聞いてくれるかしら・・あたしの話・・」  
 そして頬杖をつくなり甘い声でそう言った。  
―一体どっちが本当の北川なのだろう・・?  
 そう思いつつ工藤は北川の語りに耳を傾けることとした。  
別段彼女が怖いわけではなく・・否・・ないとはいい切れないが、  
一度点いた灯火を易々と消したくなかったという方が真実に近いのだろうと思われた。  
 
「北川さん・・」  
 全ての式が終わった昼下がりの頃、校舎の裏でみか先生は北川を見つめていた。  
呼び寄せたのは言うまでもなく北川の方である。  
―先生に最後に伝えたいことがあるの。  
 式の後、泣きじゃくるみか先生の耳元でそう囁いて。  
 何の策略もなく純粋な気持ちでみか先生をここに呼び寄せたのだ。  
 
「・・」  
 別れ、そんな感情が北川の胸を容赦なく押してゆく。  
そしてこれからのことを考えるだけでも・・  
「寂しいの?北川さん。」  
 俯き言葉を濁す北川に問いかけるみか先生。  
「・・当たり前じゃないですか・・だって・・」  
「どうして?」  
 先刻まで泣きじゃくっていたようにはとても見えないくらいに淡々と・・教師らしい態度で北川に優しく話しかけるみか先生。  
今の北川にはそれが意地の悪いようにしか受け取ることができなかった。  
 いろいろと自信はあった。だからこそアタックしてきた。  
だけど今の今まで返事を貰ったことは一度だったなかった。  
だからこそ今のみか先生の態度が・・気持ちが見えないことが怖かった。  
 
「今日で離れ離れになるなんて・・!」  
 一年前にあった出来事。  
みか先生が結婚してこのまま居なくなってしまうのではないかという恐怖が再度襲ってくる。  
「私は嫌、ずっと先生と一緒に居たい!」  
その言葉をいい終えると北川ははっ、と口を塞ぐ。  
ここからは戻ることは出来ない。  
あとは天使が微笑むか悪魔が微笑むかを待つだけである。  
と、北川の胸にみか先生の感触が伝わる。  
そしてその感触は腰へと伝わってくる。  
「せん・・せい・・?」  
 戸惑いながらも小さくも温かいその手のぬくもりを北川は感じ取っていた。  
「ゴメンネ、北川さん。私に勇気がなかったばっかりに。」  
 北川の胸に顔を埋めたまま濁った声で・・北川にだけに聞こえる声でみか先生は呟く。  
「いいの・・先生・・」  
 次に発されるだろうみか先生の言葉を聞く前に北川は彼女の頭を撫で、そう囁きかける。  
「顔を見せてください。」  
 そして両手でみか先生の顎を持ちゆっくりと上を向かせる。  
その顔は涙目で・・そしてまた北川の目も潤んでいた。  
「これからも・・ずっと一緒にいようね。」  
 そう言い切なく笑うみか先生。嬉しいことのはずなのに。  
これまでのことが互いの中を駆け巡りそれがはちきれんばかりの感情となって押し寄せる。  
そしてそれに惹かれるままに口を重ねる。  
 始めこそ柔和なものだったそれは徐々に深いものへと変わってゆく。  
北川の手がみか先生の顎を下ろし空きかかったその口に舌を流し込んでやる。  
初めての感覚なのかみか先生は首をピクリと動かす。  
舌と舌が絡むたびに漏れる吐息が徐々に熱くなってゆくのが分かる。  
「あふんっ・・」  
「はぁん・・」  
 その声音は互いの頭の中をも支配してゆく。  
北川がみか先生から口を離し、みか先生につく粘液を軽く手でふき取るとそれを自らの口へと運ぶ。  
「・・先生・・どうしよう・・あたし・・」  
 と、北川は恥じるように大腿を擦らせ始める。  
「・・安心して・・北川さん・・私も・・だから・・」  
 息の整わないままに北川の胸に手をあてるみか先生。  
「だっ・・だめですよ・・こんなとこで・・」  
 そう言いつつも北川の手はその手を振り解こうとはしない。  
あくまでみか先生の意向に従うつもりだった。  
 
「北川さんの胸・・温かい・・」  
 そしてみか先生は北川の胸と胸の間に顔を埋める。  
「温かい・・でも・・感じちゃいます・・」  
 と、みか先生の頬が北川の胸を擦り始める。  
「んっ・・」  
 頬と胸が擦れるたびに声をあげる北川。  
耐え切れないとばかりにブラウスに手をかけ、ブラをたくし上げる。  
そこにすかさずみか先生の手を運び擦らせてやる。  
「・・先生のせいで・・こんなに・・感じちゃってるんですよ・・どうしてくれるんです・・?」  
 そう言い隆起し始めている自らの乳頭にみか先生の手を運ぶ。  
頬を紅く染め上げ見たこともないくらいに可愛らしい表情をする北川に  
みか先生はたじろいでいる様子だった。  
「ごめんなさい・・」  
 先刻の北川の言動も気になったのかあてがわれた手を離し、目を伏せてしまう。  
と、北川の手がみか先生のスカートの中へと入ってゆく。  
「えっ・・?あんっ・・やぁっ・・」  
「冗談なのに・・本気にして・・かわいいv」  
 本当、素直なんだから、と北川はみか先生の大腿の内側を擦り出す。  
触れることに慣れていないみか先生のその身体はビクンビクンと刺激に合わせて動いてゆく。  
そして追い討ちをかけるように北川の片手がみか先生のブラウスのボタンを開け、あらわになった胸に口づけを始める。  
 
「いやんっ・・上と下からなんて・・酷いよっ・・」  
「あっ・・こんなとこ濡らしちゃって・・」  
 と、北川はみか先生の秘部にショーツの横から探るように指を入れてやる。  
その刺激にみか先生は思わず座り込んでしまう。  
それに合わせるかのように北川も身体をうつ伏せに寝そべらせショーツの横から舌先と指での愛撫を始める。  
「いやんっ・・あっ・・あっ・・」  
 北川の愛撫が刺激となりみか先生から甘い声が・・愛液が・・次々にあふれ出てくる。  
そんなみか先生を見上げるなり柔和な表情を浮かべる。  
「先生・・大好きです・・」  
 自らの担任教師であり最愛の人が自分の与えた刺激に怒ることなく忠実に反応してくれることに  
今の北川は歓喜を覚えているようだった。  
「きた・・がわ・・さん・・?」  
 そう言うと北川は自らの衣類を脱ぎ始める。  
「ありのままの私を見て欲しくて・・学生最後のわがままを・・聞いてもらえますか?」  
 一瞬たじろいだみか先生であったが、  
一息つきゆっくりと立ち上がると自らの衣類を脱ぎ北川のその身体を後ろから抱きしめてやる。  
「あたしには・・これくらいしか出来ないけど・・」  
 感じさせることも出来ないけどね、と切なく笑う。  
「いいえ、それだけで十分です。」  
 
 それに・・とばかりに北川はぬくもりを惜しむようにみか先生の手を振り解くと、  
彼女と向き合いその肩を掴む。  
「一緒に・・なることだって・・一瞬なら出来ますから。」  
 そして微笑を見せるとみか先生をその大地に押し倒す。  
突然の出来事ではあったがみか先生は分かったかのように北川の目だけを見つめていた。  
そしてごく自然な形でその身体か重なるとその身体を・・本能の赴くがままに擦らせ始める。  
「あっ・・あんっ・・」  
「・・きもち・・いいですっ・・」  
 一つになりたい、その気持ちだけが彼女達を動かしていた。  
擦らせることで息が・・愛液の漏れる音が盛んになってゆく。  
「・・いっ・・いっ・・ちゃう・・」  
「・・あぁぁlllんっ」  
 静寂が成功の証だった。  
北川もみか先生もただ互いの肩を後ろ髪を見つめ息を整えていた。  
 
「その後のみか先生ったら可愛くってね。  
『北川さん、今日は疲れたでしょ。ゆっくり休んでね!』なんて言うのよv」  
 酒に酔っているのかぞれとも自らの思い出に酔っているのか北川は顔を真っ赤に火照らせ工藤に訴えていた。  
しかしそんな彼女とは裏腹に工藤の表情は曇っていた。  
「・・そんなに私の話、面白くない?」  
「違う・・」  
「だったら何でそんな暗い顔してるのよ。」  
 怪訝そうな顔をしつつもどこか気遣うような顔を見せる北川。  
工藤もそれを悟ったのか口を割り始める。  
「・・いい先生だったよな、みか先生。俺、今でも大好きだぜ。」  
 そう言いつつも目が明後日の方を見ている工藤を北川は心配そうな顔で見つめていた。  
 
 
「みか・・先生・・北川・・?何やってるんだよ・・」  
 工藤は物陰から愕然とした表情で彼女達を見つめていた。  
 体育館に忘れ物を取りに来ただけだった筈。なのに。  
 彼の目にはあってはならない光景が広がっているかのように見えた。  
―俺だって・・  
 それは禁断の愛に対する断りではなく、  
彼自身の恋心の葛藤に対する渇望を呼び起こした為に起きた・・嫉妬のような感情だった。  
 戻る先には一緒に帰ろうと末武が待っている。工藤は俯き拳を握り締めその場を後にした。  
 
 
 

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