「晶、おかえり!」  
「! ……どうしてここにいるの? 来ないって言ったじゃない! 会社はどうしたのよ!」  
 一瞬目を丸くした晶が矢継ぎ早に質問をぶつけてくる。  
「僕が迎えに来たの、迷惑だった?」  
「そ、そんなことあるわけないでしょ……」  
 いきなり弱気になったかのような口調で口ごもる。  
「おかえり、晶」  
 僕はもう一度そう言うと晶に近付き、ぎゅっと抱きしめた。  
 晶も僕の背中に手を回す。  
「ただいま……」  
 国際空港のロビーで、僕たちは人目も気にせずに抱き合った。  
 
 僕たちは大学時代の同級生。付き合ってそろそろ4年になる。  
 もう25歳。結婚してもおかしくない年だが、二人にそんな話はまだなかった。  
 しがない会社員の僕には晶を養う自信がなかったし、むしろ僕が養われる可能性の方が高かった。  
 それがプロポーズをためらわせている理由の一つでもあった。  
   
 大学を卒業後、バイオリンの腕にますます磨きがかかった晶は海外での仕事も多くなっていた。  
 在学中から国際的な評価を得ていた晶にとって決して珍しいことではない。  
 今回は海外のオーケストラに招かれての4週間のヨーロッパツアーだった。  
 4週間など、ウィーンと日本との超長距離恋愛を経ていた僕たちにはあっという間だった。  
 
 それでも晶が日本を発つ前の晩、僕たちは何度も何度も求めあった。  
 しばらく会えなくなるという思いがいつも以上に僕たちを興奮させた。  
 晶のヨーロッパ滞在中は時差や僕の仕事の関係もあり電話はほとんどできなかった。  
 たまに話したとき、思いが募った僕たちはテレホンセックスで慰めあった。  
 
 その晶がいま僕の腕の中にいる。  
 幸せそうな笑顔で、僕を頼りきったように見上げる晶。  
 そっと口づけた。  
 
 空港からの高速は順調に流れていた。  
 僕は運転に集中しながらも隣りの晶の話にうなずき、相槌を打ち、時には質問をしたりした。  
 晶は笑い、また演奏に納得のいかなかった部分に不満を表し、聴衆のマナーを褒めたりする。  
 僕にはよく分からない世界の事ながら、それを楽しそうに語る晶が好きだった。  
 それを話しながら輝いた表情を見せる晶が大好きだった。  
 ……こうしたなんでもないことが僕には本当に幸せだと思えた。  
 
 順調だった高速が、東京が近付くにつれて少しずつ流れが滞りだした。  
「あれ? 事故かな?」  
 僕の言葉に  
「この三つ先のインターで事故渋滞って出てるわね」  
 晶が電光板の文字を読む。  
「まいったなぁ」  
「有給取ってるなら会社のことは心配いらないんでしょ?」  
「ま、そうだけどね」  
「こういうところは『ニッポン』って感じよねぇ〜」  
 ノロノロ運転を楽しそうに見やりながら晶が言った。  
 
 車が走らなくなると僕にも晶を見る余裕が出てきた。顔を見ながらいろいろな話をする。  
 と、シートベルトに強調されたタートルネックの胸も目に飛び込んでくる。  
 あわてて視線を窓の外に向けると、今度は沿線のラブホテルの看板がやたらと目に付く。  
 心にどす黒い欲望が湧きあがった。  
 
「晶ぁ、ホテル行こうか」  
 前を向いたまま言う。声に固い響きが含まれているのを自覚する。  
「ちょっ、ちょっとぉ! いやよこんなところで。……家に着くまで我慢できないの?」  
 僕の言葉の意味に気付いたのか、気色ばんで晶が言う。  
 
 僕はハンドルを切った。手近のインターから下道に下りる。  
 晶は何も言わずに助手席から外を見ていた。  
 黙っているということはOKだ。本当にイヤだったらこんなに素直に従うはずがない。  
 僕はそのままホテルに向かって車を走らせた。  
 
 
 部屋に入る。  
 入るなり唇が重なった。  
 晶を壁に押し付け、立ったまま胸をまさぐる。  
 僕も晶も興奮しきっていた。こんなに気持ちが昂ぶるのは初めてかもしれなかった。  
 
「晶と電話でしたろ? あれ以外オナニーもしないで我慢してたんだぞ……」  
 唇が離れると僕は晶の耳元で言った。  
「私だって……ずっと我慢してたのよ」  
 晶もそうささやき返す。  
 ……また唇が重なった。  
 
 キスをしたまま、晶がもどかしそうに僕のベルトを外す。  
 その間もスラックスのふくらみを手のひらで何度もなでまわす。  
「くっ……」  
 立ちのぼる快感に思わず声が出る。  
 
 スラックスを下ろすと晶がひざをついた。  
 モノの形をくっきりと浮かび上がらせ、カウパーのシミが浮き出たブリーフに頬ずりする。  
 そして布地の上から剛直を口に含んだ。  
 
 何度も体を重ねている。お互いの感じるポイントも好きな攻め方も熟知している。  
 その弱い部分を晶がブリーフ越しに攻めてきた。  
 途端に射精感が押し寄せる。  
(このままではイク……)  
 僕は深呼吸してなんとか快楽の波を引かせると  
「晶、キスしよ! キスしたい!」  
 僕は晶の腕を取り、腋を抱えると引っ張り上げるように立たせた。そのまま口づける。  
 
 晶はキスをしながらも僕のブリーフを下ろそうとする。  
 僕はそれに手を貸し、下半身を丸出しにした。  
 
 今度は僕の番だ。  
 晶のミニのスカートに手を入れると、荒々しくパンストを引き下ろす。  
 布の裂ける音がしたが、僕は気にせず行為を続けた。  
 そのままショーツに手を入れる。そして恥丘から淫溝に指を伸ばす。  
 
 すでにたっぷりと潤っていた淫裂をこすり上げるようにまさぐる。  
「んっ…ぁ……くぅ…」  
 指先の動きに合わせ甘い吐息を吐き、それに答えるかのように更に指が濡れていく。  
 ふと指先が晶の1番感じる部分の柔らかな突起を軽く押すように撫でた。  
「ひゃうっ! そ、そこはぁ……」  
 今まで以上の感覚を味わったのか、晶の腰が浮く。  
「あ、あ、あ……んんっ…あん! あぁん……」  
 その部分を何度も触れるたびに愛液が湧き出し、下着と秘所と指先とを濡らしていく。  
 
 途中でもどかしくなった僕は晶のショーツを下ろすと恥ずかしい部分を直接なぶった。  
 指先での感覚を十分に楽しんだあとで股間から離す。  
 そしてしたたり落ちるほどに濡れた指を晶の顔の前で見せた。  
「ほらっ、晶が気持ちよくなった証拠だよ」  
 そう言い、とろんとした表情をする晶の口元に持っていく。  
 無言で答えるかのように自分の愛液に濡れた指先に舌を這わせ、口に含み愛しそうにしゃぶる晶。  
 その行為と今まで見たこともなかった晶の淫靡な姿に僕は更に興奮を覚え、晶の口から指を抜くと  
「晶……もう我慢できない」  
 そう言って晶の片足を持ち上げた。  
 顔を真っ赤にさせ恥ずかしそうに口元に手を添えていた晶は、視線を会わせず  
こくん  
 と小さくうなずいた。  
 
 淫唇をかき分け、膣口に先端をあてがうと、  
ぐっ!  
 僕はそのまま腰を突き上げた。  
「くぅぅ……」  
 晶の唇から快感のうめきが漏れる。  
 挿入されただけで軽く達したのか、ビクビクとした蠕動が茎全体に伝わる。  
 
 晶の片方のひざの裏を抱えて持ち上げたまま、ひざのバネを使い荒々しく抽迭する。  
 片足でつま先立ちし、壁に背中をつけた晶は両腕を僕の首に回してすがりつく。  
「はぁ…はぁ……くっ…んんッ!」  
 僕は晶の腰を抱いて何度も何度も奥まで肉茎を突き立てた。  
 
「んんっ! ……気持ち…いいっ! それに……んっ! …もぅ、イ…っくぅ…」  
 晶が鳴く。僕ももう限界だった。  
 僕は全身で受け止めてくれるようにと晶の体を抱きしめ、大きく奥まで突き上げた。  
「晶……くっっっ!!」  
びしゅっ! ずびゅっ! どぴゅぴゅぅっっ!………  
 
 晶の髪に顔をうずめ、甘い香りを胸いっぱいに吸い込みながら僕は全てを解き放った。  
 膣奥を打ち付けて、大きく、勢いよく、何度も己の想いのこもった白濁を吐き出す。  
 これまで交わった中でも一番と思える量の精液が晶に注ぎ込まれていった……。  
 
 しばらく抱きあった後、僕は晶の額に軽くキスすると中から小さくなっていくモノを抜き出した。  
 幸せそうな絶頂の余韻が続く晶は、荒い息遣いを胸の上下で表している。  
 それに合わせるかのように開いたままの膣口から中に吐き出された精液が垂れてきた。  
 
 淫裂からあふれた精液が晶の太ももを伝う。  
「赤ちゃんできちゃうわ……」  
 その感触に今の行為の意味を悟ったのか晶が言った。  
「結婚しよう。だから僕のためにスケジュール空けてくれ。調整は難しいと思うけど、子供も産んでほしい」  
 何度も逡巡し、それでも言えなかった気持ち。……ついに言った。  
「それって……プロポーズよね?」  
 僕の目をまっすぐに見据えながら晶が聞く。  
「……うん。僕でよかったら…その……」  
 雰囲気に気圧される。つい語尾が震える。鼓動が激しくなる。  
「僕『で』じゃないわ。あなた『が』いいの。あなたでなくちゃダメなの!」  
「晶……」  
「私が…この私がこんなことさせる男……世界中であなただけなのよ……感謝しなさいよね」  
 涙声の晶が言った。  
 そしてそのまま僕の唇にむしゃぶりついてきた。晶を強く抱きしめ、僕もそれに応えた。  
 
 
       おわり  
 

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