な、なんでここにいるのよ……  
 クラブ活動も終わって帰ろうとした矢先、一番会いたくない人間に出くわしてしまった。  
「美由紀さん、お疲れ様」  
 人懐っこい笑顔を見せたこの人は『安田健司』という名前で、最近決まった私の許婚だ。  
 有名な会社の社長の息子で、許婚になるまで全く関わり無かった人種なんだけど、できることなら一生関わりたくは無かった。  
「こんにちは健司君。なぜここに?」  
「美由紀さんが通っている学校が見たくなった―――じゃだめかな」  
 笑顔の健司君を私は睨みつけたけど、涼しい顔で交わされた。  
 
「ねえねえ美由紀、もしかしてこの人が許婚の……」  
 友だちのミカが嬉しそうに聞いてきた。  
 それはそうだろう。あの制服は県内でも文武両道で有名な私立校の物で、知らない人はまずいない。  
 健司君はスポーツ万能、成績優秀、お金持ちと、全く非の打ち所のない人間である。  
 ……そう、外見だけは。  
「美由紀さんのお友達?初めまして安田健司です」  
 健司君は笑顔で自己紹介した。  
「ちょっと美由紀、可愛い男の子じゃない」  
「親が決めた許婚って聞いてたから心配してたけど……どっちかって言うと弟?」  
「そ、そんなんじゃないって」  
 健司君は童顔で身長も低く、いかにも人畜無害な人間だ。初めて見た人は誰でもそんな印象を持つだろう。  
 でも笑顔の下に隠れた本性は全く違う。  
 ……最低な人間だ。  
 その最低な人間と婚約した理由は経営難に陥った呉服屋を助けるためだ。  
 半ば強引に婚約されてしまったけど、お父さんとお母さんを助けたいという気持ちや、家業を潰したくない気持ちも確かにあった。そこに私自身の気持ちが含まれていないのは知っていて、それが間違いだっていうのはわかっていた。  
 けど一番の間違いはこの男の本性に気づくのが遅かったことだ。  
 この笑顔は本性を隠すための"仮面"で、私は犯されるまで仮面に気づけなかった。  
「美由紀さん、折角来たんだから学校を案内してくれないかな?」  
 私が断れないのを知っていて健司君は聞いてきた。  
 
 ガチャガチャ……  
「どうぞ」  
 私は自分が所属するクラブ―――美術部に案内した。  
 誰もいなくて少し寂しい雰囲気がする美術室。  
 そこで私は健司君と二人きりになった。  
「へえ……ここが美由紀さんのクラブか」  
 物珍しそうに見ているのは多分こういう場所に縁が無いだけだろう。  
 部室は美術室の名前に相応しく、絵画や彫刻、陶芸品などが置かれている。  
 もちろん全部レプリカで、彼の学校の設備に比べれば数段劣るだろうけど、私には愛着のある物ばかりだ。  
 でも健司君は一度だけぐるっと見渡しただけですぐに興味を無くした。  
 健司君は窓を背にしていたので夕日が眩しくて顔がよく見えない。  
 けど絶対笑っているはず……  
「もう見ないんですか?でしたら早くここから出てください」  
 バカにされた気がしてイライラした。  
 けど出ていくかどうかを決めるのは私ではない。  
 それが悔しくて悔しくて下唇を噛んだ。  
「そんな怖い顔しないで欲しいな。可愛い顔が台無しだよ」  
「ふざけないで!」  
 私は怒りに任せて大声で叫んだ。  
 なんでこんな男と……  
 自分ではどうにもならない現実に目の前がぼやけてきた。  
「……やれやれ、君はもう少し物分りの良い娘だと思ってたけど」  
 ため息をつくと健司君は仮面を外す。  
 人懐っこい笑顔が消え、替わりに私を弄んだ時の嘲笑う顔が表に出た。  
「やだ、こないで……」  
「どうやら一から躾直さないと駄目みたいだね」  
 背中に壁がつき、もう逃げられない。  
 でも健司君はさらに私を追い詰める。  
「逆らえばどうなるか―――わかっているよね」  
「こ、この卑怯者……」  
 私には負け惜しみを言うのが精一杯だった。  
 
「脱いで」  
 逆らってはいけない命令。  
 私は震えながら制服のボタンに手をかけた。  
「ああ、上着は着ていていいよ。脱ぐのはスカートだけ。そっちの方が厭らしいからね」  
「へ、ヘンタイ!」  
「うん、僕は君の言う通り変態だよ。でも君は変態の言うことを聞かなければならないよね」  
「わかってるわよ!」  
 ファスナーを降ろして茜色のスカートを脱ぐ。  
 何度も見られたはずなの、恥ずかしくて前を手で隠した。  
「……こ、これで満足?」  
「駄目駄目。隠してたら見えないでしょ。手は横」  
 言われた通り手を横に移した。  
 カーテンを閉めてなかったから向う側の校舎が見える。  
 誰もいなかったけど怖くて膝がカタカタ鳴った。  
「大丈夫。僕が壁になってあげるから向うからは見えないよ」  
「あ、ありがと……」  
「僕のお嫁さんだからね。僕以外の人に君の裸は見せないよ」  
 お嫁さんと言っているけど、どうせ私のことは"所有物"としか思っていない。  
 わがままで反論は許さず、飽きるまで私の身体を弄ぶところは小さな子供と同じだ。  
 しかも身体は大人だから余計にタチが悪い。  
「可愛いね、白のパンティ」  
「……これも脱ぐんですか?」  
 どうせそうに決まってる。  
「何、脱ぎたいの?」  
 え……  
 
「まさか美由紀さんから言ってくるとは思わなかったな。あ、もしかして僕に見て欲しいの?」  
 バ、バカにしないで!  
 引っ叩いてやりたかったけどできない。憎しみを込めて睨みつけることしか私にはできない。  
 ……でも、そんなささやかな抵抗も健司君を喜ばせる物でしかなかった。  
「いいね、その顔。言いなりになるだけの女には飽きていたんだよ」  
 悔しい……  
 健司君は私の乱れる姿が見たいだけ。  
「機械みたいに従順な女の子なんていらない。僕が欲しかったのは生きた玩具なんだ」  
 身体だけじゃなくて心まで弄ぶの……  
「僕が憎い?」  
「当たり前でしょ!」  
「でも逆らえないよね」  
 泣かないって決めたのに涙が出てきた。  
「口を開けてベロを出して」  
「ん……」  
「もっと出さないとしゃぶれないよ」  
「んんッ……」  
 言われた通り舌をいっぱいに突き出すと健司君の顔が近づいてきた。  
 口が開いて中に真っ赤な舌も見えた。  
 パクっと舌を食んで厭らしい音を立てながら私の舌をしゃぶる。  
 ちゅっちゅちゅっ、ずずずッ……  
 健司君と至近距離で目が合う。  
 ……笑ってる。きっといつまで耐えられるか試してるんだ。  
 キスをされて口の中に健司君の唾液が流れてきたけど、頭を押さえられているから離れることができない。  
 腰をぐっと引き寄せられて密着させられて、股を割って脚が差し込まれて、制服の生地と内股が擦れ合い、あそこがムズムズしてヘンな気分になってきた。  
「ん……んグッ! ン……コクん…」  
 苦しくて健司君の唾液を飲んでしまった。  
 甘い……嫌いな人のなのにどうして……  
 舌がナメクジみたいに私の口内を這いずり回って理性を蝕んでいく。  
 胸がドキドキして、気がつけば差し込まれた健司君の脚にあそこを擦り合わせていた。  
 
「ンああ……」  
 たっぷりと私を弄んで健司君は口を離した。  
 けどテラテラと光る唾液の糸でまだ私と健司君は繋がっている。  
 舌は突き出したままで目も健司君を見つめたままで、名残惜しいと思っている自分がそこにいた。  
「気持ち良かった?」  
「な……そんなはずありません!」  
 でも私の身体は「気持ち良かった」と言っている。  
「そうなの?」  
 勝ち誇った健司君の笑顔が癪に障った。  
 なんで聞いてくるのよ……どうせ知ってるんでしょ!  
 だって私の脚は健司君の脚をギュっと挟んで、太ももにあそこをくっ付けてモゾモゾ動いてるんだもん……  
「美由紀さん。何してるの?」  
「…………」  
 恥ずかしくて言えない。  
 真っ赤になった顔を健司君から逸らしたけど、あそこはスリスリと健司君の太ももを擦っている。  
 全部健司君のせいだ……  
 私の身体がおかしくなったのは、健司君が私の身体を弄んで変えたからだ。  
「弄ってあげようか?」  
「!」  
 悪魔のような囁きが胸をドキンと高鳴らせる。  
 弄って弄って―――  
 私じゃない私がおねだりする。  
「机の上に座って脚開いて」  
 私は言われた通り長い机に座った。お尻に冷たい感触が広がる。  
 こ、これは命令なの……  
 健司君に向かって脚を広げると、恥ずかしくて目を開けてられない。でも近づいてくるのがわかった。  
 だって…あ、あそこに健司君のい、息が……  
 
「何この染み。おしっこ?」  
「ち、違います!」  
「なら何なの?」  
 何も知らない子供みたいに聞いてくる。  
 そんなに私の口から言わせたいの……酷すぎるよ。  
 机に座った私のあそこに顔を寄せて、好奇心旺盛で無邪気な目がパチパチ瞬く。  
 私と同じ歳なのに健司君の仕草は小さな子供みたい。  
 だからこんな酷いことを平気でするのかも……  
「……です」  
「聞こえないよ」  
「あ、あ、愛液……です」  
「やっぱり気持ち良かったんだ」  
 ほくそえんだ健司君とは逆に私は黙って歯を食いしばるだけだった。  
 何も言い返せないから肯定したのも同じだ。  
「なんで嘘をついたの?」  
「なんでって……あ、あはぁっ!」  
「動かないでよ美由紀さん」  
 返答に困っている私のあそこに指で突く。  
 人差し指で突っつかれるたびに私の身体はビクン、ビクンと跳ね上がる。  
「や、やめ……健司君、お、お願いっ……」  
「でも染みがだんだん広がってきてるよ」  
 身体はもう私の言うことを聞いてくれない。  
「気持ち良い?」  
 私はフルフルと首を振って気持ち良くないと否定した。  
 口を『へ』の字にして、出そうになった声を飲み込む。  
 でも無駄だった。  
 
「ああーっ!は、は、ああッ!」  
 ツンツンと突っついていた指が下着ごと力任せにぐいぐい中に入ってきた。  
 ずるい……こんなの反則よ!  
 気持ち良くて声が止まらない。  
 健司君の指から逃げたい……けど命令だから逃げたら駄目。  
 意地悪されてるのに私は命令を忠実に守る。辛いけど健司君が与えてくれる快感がもっと欲しくて我慢する。  
「イキたい?イかせてあげようか、このまま」  
「や……いや、イキたくない!」  
 でも私は健司君が指を挿れ易いように腰を浮かせて、手とつま先だけで身体を支えていた。  
 イキたくないのになんで私はこんな恥ずかしい格好をしているの?言っていることとやっていることがバラバラだよ。  
 私の中で天秤がぐらぐら揺れて、快楽の方に傾いていく。  
 だって気持ち良いんだもん……いっそこのまま……  
「美由紀さん、イキたくないの?」  
「…………」  
 もう嫌とは言えない。  
 でも意地になっている自分もいて素直に頷けない。  
 どうすればいいのかわからない私を健司君は愉しそうに見ている。  
 “ねえ、イかせてくださいって言わないの?素直に言えたらすぐにイかせてあげるよ”  
 健司君の目が私に聞いてくる。  
 “言わないんなら絶対にイかせてあげないよ。それでもいいの?”  
 目を見ているだけで誘惑される。唇も動いて、“ほら、イ・か・せ・て・く・だ・さ・い”って言って私を誘っている。  
 もういや!気が狂いそう……  
「…………」  
 口がさっきの健司君の真似をしてパクパク動いた。  
「美由紀さん、なんて言ったの?」  
「……イ、イかせて……イかせてください」  
 自分の身体が恨めしくて、しゃくりあげた。  
 
 駄目だった。健司君には勝てない……  
「イキたいの?」  
 コクンと頷いてみせる。  
 恥ずかしくて目も口もギュっと閉じた私はイキたくてあそこに神経を集中させる。  
 でもちゃんと言えたのに、待っていても健司君は何もしてくれなかった。  
 我慢できなくなった私は甘えた声でおねだりしてしまう。  
「け、健司君……早く……」  
「美由紀さん、僕の目を見て」  
 薄く目を開けると健司君は横に立っていて私を見下ろしていた。  
 いつもの人懐っこい笑顔で、じっと見つめられる。  
「お、お願いだから見ないで……」  
 浅ましい姿なんて見て欲しくなかった。  
 でも健司君は私のわがままを許してくれない。  
「ちゃんと見て」  
「はい……」  
「じゃあもう一度。ちゃんと僕の目を見てお願いしてごらん」  
「……け、健司君、お願いします。は、早く…………イ、イ、イかせて…ください」  
「はい良くできました」  
 健司さんはニッコリ笑ってまま指を動かし始めた。  
「ひっ、ひぃぃぃ!あああっ……あ、あああっっっっ!」  
 ち、違う……全然違うよ!だって奥までズボズボ入れて掻き回してる!  
「どう?気持ち良い美由紀さん」  
 返事なんか出来ないからコクコクと頷いた。  
 情け容赦無い健司君の攻撃に、私は身体をのけぞらして咽を見せて、開いた上と下の口から涎を垂らして、気持ち良くて声にならない声を上げて、もう身体を支えていられなかった。  
 でも脚は開いたままで指をズボズボしやすいように浮かせたまま。  
「ねえ美由紀さん、イク?イキそうなの?」  
「うんっ、健司君の指でイクぅ!もう我慢しません!もっと気持ち良くさせてください……いっぱいイキたいんです!」  
 自分でもどうしてこんなことを言っているのかわからない。  
 意地悪ばかりする健司君なんて嫌いだったのに今は好きになっている。気持ち良いことを教えてくれたし、気持ち良くさせてくれる健司君が大好き!  
 全身に電流が走って私の身体はビクン、ビクンと痙攣して、真っ白になる頭の中で何を叫びながら達したのか知る術も無い。  
 起きた時、健司君は何て言って私をいじめるんだろう……  
 

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