「晶、誕生日おめでとう!」  
 
カチン  
 ワインのグラスが合わさる澄んだ音が小さく鳴る。  
「ありがとう。とってもうれしいわ」  
 シックなドレスに身を包み、ほんのりと頬を上気させた晶が僕に微笑む。  
 
 晶の誕生日を一緒に過ごすようになって3年。今日で晶は21歳だ。  
 親の仕事の都合で日本各地を転々としていた僕がはじめて晶に会ったのは中1のときだった。  
 すぐにまた転校していった僕を、晶はずっと想い続けていてくれた。  
 高校3年で再会。運命なんて信じない僕も、さすがに二人の絆は信じた。  
 ……だって僕も晶のことをずっと忘れられなかったから……。  
 
 手紙や電話で愛を温めあってきた僕たちは卒業を期に同じ街で暮らすようになった。  
 晶の19歳の誕生日から、毎年こうして一緒に過ごしている。  
 
 僕が再会したとき、すでに晶のバイオリンは音楽界でちょっとは知られた存在になっていた。  
 海外への留学や各地でのリサイタルなど、晶は芸能人並みのスケジュールでも動いていた。  
 それでも晶は誕生日を僕と過ごしてくれた。  
 ご両親や親しい友達、お世話になった先生や業界関係者の誘いも断り、僕のためだけに時間を作ってくれる晶。  
 ……僕が晶にできることって何があるんだろう?  
 そんな僕の疑問に晶が言った。  
「何も要らないわ。……ただ私と一緒にいてくれるだけでいいの」  
 
 今年の晶の誕生日、僕はちょっと張り込んでホテルのディナーを予約した。  
 食事を終え、夜景の美しいラウンジに移ってお酒を飲みながら晶との会話を楽しむ。  
 ……何度も視線が交じり合う。  
 晶は甘えたように僕に身を預ける。僕も晶の肩を抱き、ぬくもりを確かめる。  
「部屋取ってあるんだ。……いい?」  
 目元を染め、晶が小さくうなずいた。  
 
 晶とはじめて結ばれたのは1年ちょっと前。晶があと数ヶ月で20歳になる時だった。  
 あれから何度か体を重ねた。  
 もっとも、それだけの時間を過ごしながら僕たちが実際に一つになったのは数えるほどだった。  
 忙しいのはわかってる。僕はそれを受け入れていた。  
 
 部屋に入ると、晶は  
「シャワー使うわね」  
 そう言って服を脱ぎ、バスルームに向かった。  
 
 これまで晶と一緒にシャワーを浴びたことはない。  
 晶が恥ずかしがり、頑としてそれを許さなかったからだ。  
(ベッドの上ではもっと恥ずかしい姿見てるんだけどなぁ……)  
 僕は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すとベッドに腰を下ろした。  
 
 酔いを覚まそうとミネラルウォーターを飲む。そうしながら手持ち無沙汰にあたりを見回す。  
 と、晶が脱ぎ捨てたショーツが落ちているのに気がついた。  
 軽く呑んだせいか、回っていた僕はそれを拾いあげた。  
(今日の僕、ちょっとおかしいな……いつもはこんなことしないのに)  
 そう思ったが体は止まらなかった。  
 手にとって広げる。そして裏返す。  
 ……クロッチの部分にはべっとりと縦割りのシミがついていた。  
 顔を寄せるとツーンとした刺激臭が漂う。  
(晶、こんなに興奮していたのか……)  
ビクンッ  
 期待に股間が大きく脈打った。  
 
(よし!)  
 僕は手早く着ているものを脱ぎ捨てると浴室に向かった。  
カチャッ  
 音のしないように静かにドアを開ける。  
 晶は入口に背を向け、シャワーを浴びていた。  
 そっと近付く。  
 水音のせいか晶は気が付かない。のんきに鼻歌なんか歌っているのが聞こえる。  
 
 背後まで来ると  
「晶」  
 そう言って抱きしめた。  
「きゃっ!」  
 小さな悲鳴とともに僕の体にシャワーが浴びせられる。  
「わわわっ!」  
 
「バ、バカ! なに考えてるのよ!」  
 怒った口調で晶がさらにシャワーを浴びせかける。  
 頭からずぶ濡れになりながら、それでも僕は晶に向かって歩を進めた。  
「きゃっ!」  
 晶を抱きしめる。  
「好きだよ晶……晶は僕のこと、キライ?」  
 抱きしめたまま聞く。  
「こ、こんなことするならキライになるわよっ!」  
 そうは言うものの、抵抗は形だけだ。  
 僕に抱きしめられて身じろぎはするが、本気で振りほどこうとはしていない。  
「僕はどんなことがあっても晶のこと愛しつづけられるよ」  
 そのまま唇を重ねた。  
 
 晶の身体から力が抜ける。  
 僕は晶を抱きながら胸に手を伸ばした。  
 空いた手で晶の腰を抱く。そのまま抱き寄せて勃起を下腹部にこすりつける。  
「んむっ……」  
 唇をふさがれた晶がのどでうめいた。  
 
 乳房を下から抱え上げるように持ち上げる。  
 手のひらに収まりきらない晶のふくらみをゆっくりと揉む。  
 同時に頂の突起を指で転がす。親指と人差し指でつまんでこすり合わせるようにする。  
 乳首をいじられた晶は  
ピクンッ  
 と身体をのけぞらせた。  
 それに構わず、舌を絡めたまま乳首を攻める。  
「ふんっ、ふんっ……」  
 声を立てられない晶が鼻を鳴らして僕にすがりついた。  
 
 僕の指先の動きに伴い、指の間で少しずつ固く尖っていく桜色の蕾。  
 その反応に意を強くした僕は、唇を離すとそのまま晶のあご、首筋と下って胸に口を寄せた。  
 それと同時に、胸を攻めていた右手をお腹、腰とすべらせて太ももの内側に差し込む。  
 乳首を唇でしごく。甘噛みする。音を立てて吸う。  
「くふっ……ンんっ! あんッ…」  
 感じるのか、晶の声が大きくなる。  
 ぴったりと閉じられていた晶の太ももを手で割るようにこじ開け、なめらかな太ももを撫でまわす。  
 ……何度か手のひらで愛撫するうちに晶の腿の力が弱まった。  
 舌で乳首を肌に埋め込むように強く圧迫する。乳房に軽く歯を立てる。唇ではさみこむ。  
「ひゃっ! くんっ…あぅうっ! んむ……」  
 バスルームに晶の嬌声が反響する。  
 僕は右手で太ももの弾力を味わいながら、唇と舌では乳房の感触に酔いしれていた。  
 適度に張りを持った若い肌。絹のように上品な手触りの晶の太もも。かすかに芯を残す乳房。  
 それらを楽しみながら、僕は右手を少しずつ上に移動させていく。  
 
「んんっ……」  
 かすかな喘ぎ声を上げる晶。勝ち気な晶が僕に身をゆだねている。  
 僕を信頼し、僕にだけ見せる本当の晶の顔。誰も知らない晶のもうひとつの姿。  
 ……優越感。征服感。満足。誇示したい気持ち。男としての自信。  
 それらの感覚に、僕は自分が自然と興奮していくのを感じていた。  
 
 右手が足の合わせ目に到達した。そのまま大事な部分に指が触れる。  
「あッ!」  
 声とともに手がはさみこまれる。  
「晶……」  
 静かに名前を呼ぶと  
「……うん」  
 ゆっくりと力が抜けた。  
 
 もう一度、今度は意識して右手でまさぐる。  
 ……シャワーのお湯とは違うヌルヌルが指先に感じられる。  
「晶?」  
 意地悪く聞く。  
「せ、石鹸よ……」  
 僕から目を逸らして小さくつぶやく。  
「ホントに?」  
「………」  
 晶は答えない。  
「確かめてみようか?」  
 そう言うと、晶の股間から抜いた手を僕は舐めるために口元に持っていく。  
「バ、バカ!」  
 その手を押さえ、シャワーで洗い流そうとする晶。  
「かわいいよ、晶」  
 そのまま抱きしめるともう一度唇を重ねた。  
 
 淫らな欲望で胸が苦しくなる。放出欲が増す。……晶に射精したい!  
「晶……ここでしよう」  
「えぇ?」  
 さすがに顔が曇る。そして  
「こ、こんな明るいところイヤよ……」  
 耳まで真っ赤になってうつむく。  
「だめ?」  
 再び聞く。そうしながらもくちゅくちゃと晶の股間で指をうごめかす。  
 
「ダ、ダメだったら……」  
「晶……」  
「んふっ、んふぅ……」  
 肉芽をこすり上げられ、鼻にかかった声を洩らす晶。  
 
「晶が欲しい……もう我慢できないよ」  
くちゅ、くちゃ、くちゅ………  
 股間から濡れた音が響く。  
「あっ、はぁっ…うっ、うぅっ……」  
 僕に敏感な場所をいじられ、感じている声を上げる晶。  
「愛してる……晶」  
 晶の瞳をまっすぐに見据えてささやく。  
「! ………」  
 その言葉に目を見開いてびっくりした顔をした晶は、  
こくん  
 しばらくの沈黙のあと、首を振った。  
 
 晶に後ろを向かせると浴槽に手をつかせた。そしてお尻を突き出させる。  
「こ、こんな恰好……」  
 非難めいた口調で晶が言ったが、僕はそれを聞き流した。  
 後ろから、揉みほぐすように恥裂で指を何度か往復させる。  
 そこはこれ以上の愛撫が必要ないほどたっぷりと潤っていた。  
 
 太く固くなったモノを淫裂の溝になすりつけるように動かす。  
「あぁぁっ……」  
 震える声を晶が上げる。  
 先端を少しだけ挿し入れる。  
「いくね」  
 そして僕は腰を突き出した。  
 
 ずぶずぶと音を立てるような錯覚とともに肉棒が埋まっていく。  
「あぁぁぁっっ!」  
 僕に貫かれながら、晶はのどの奥から声を出して身を震わせた。  
 奥まで入れる。そのまま動かず、晶の感触を味わう。  
「あっあああっ、あああっ……」  
 入れただけなのに、晶のそこはヒクヒクとうごめき僕をキュッと締めつけた。  
 ペニス全体に蠕動が伝わる。根元から先端へ、強く、時に弱く……。  
 
「晶……」  
 少しでも長持ちさせようと、晶の膣との角度を調節するため僕は肌を合わせた。  
 そして後ろから手を回し、重力の影響で下を向いた乳房に手を伸ばす。  
「あぁんっ、はぅっ!」  
 艶めいた晶の声が浴室内でこだまする。  
 
 その声に性感があおられる。  
 もうしばらく晶の膣中を楽しんでいたかったが、あまりの愉悦に自然と腰が動いてしまった。  
「ふわぅっ!」  
 僕の抽迭に性感が刺激されたのか、晶の体がわなないた。  
 それと同時に晶の膣中がより強く僕を絞る。  
「くっ!」  
 歯を食いしばって暴発をこらえる。  
 
 なんとか射精はしのいだものの、これまでの恥戯で僕の限界はすぐそこまで来ていた。  
「晶ごめん、我慢できそうにない……出すね」  
 そう言うと僕は晶の腰をつかんで腰を振った。  
 徐々に射精感が高まり、すぐに全体がしびれるような甘美な感覚に包まれる。  
「はっ、あんっ! ひッ、ンんっ……くぅ、んッ……」  
 晶の声も切羽詰まった感じのものに変わっていった。  
 ……もう何も考えられない、イク……。  
「晶っ! ……っっっっ!」  
 それでも最後に意志の力で晶から引き抜く。  
 
 直後、  
ずびゅっ! びゅくっ! びゅびゅっ!………  
 性のとろみが尿道を通過していく。  
「うっ、むむっ、ぐっ」  
 のどの奥でうめき、晶の白い背中を見下ろしながら精液を吐き出す。  
ぴしゃっ、ぴちっ  
 タイルに音を立てて白濁が降りそそぐ。  
「はぁはぁはぁ……」  
 絶頂の余韻を楽しみながら、僕はそのまま晶の背中にぐったりと身を預けた……。  
 
 行為が終わる。  
 晶はタイルにまき散らされた白濁を見ると  
「膣中には出してくれないのね……」  
 不満の色をにじませて言った。  
「だって……妊娠したらまずいだろ?」  
 晶は僕一人のものじゃない。大げさな言い方だけど、日本音楽界の至宝だ。  
 そう思って言った僕に晶は思わぬ言葉を返してきた。  
「……あなたの赤ちゃん、産んであげてもいいわよ」  
「え? えっえっ?」  
 いま晶は何を言った? 今の…結婚……って意味だよな?  
「晶……それって……」  
 僕の問いかけに、晶はいたずらっぽく笑って何も答えなかった。  
 
 欲望の残滓を洗い流し、僕たちはバスルームを出た。  
 ベッドに身を横たえて一息つく。抱き合う。口づけを交わし、ささいなことで笑いあう。  
 性の歓びを覚えはじめた二人だ。あの程度で満足したわけではなかった。  
 もっと晶と愛しあいたい……。僕は回復するまで晶を乱れさせようと思った。  
 
「晶」  
 名前を呼んで抱きしめる。  
「……今度は暗くするわよ」  
 そう言うと晶は僕の腕から抜け出て照明を操作した。  
 部屋の明かりは落ち、ベッドサイドに小さな明かりだけが灯った。  
 晶が戻ってくる。僕はその手を引いてもつれ合うようにベッドに身を倒した。  
 見つめ合う。どちらからともなく静かに口づける。  
 二人の唇はなめらかに合わさり、そのまま動かない。  
 ゆっくりとした時間が流れていく。僕たちはそれに満足していた。  
 
 晶がかすかに唇を開き、ほんの少しだけ舌を差し出した。  
ちゅっ  
 僕は舌先でそっと触れると、すっと舌を戻した。  
 ……唇が離れる。  
「どうしたの?」  
 晶が目を開けて聞く。  
「どうもしないよ」  
「……そう?」  
 何か言いたげな晶。  
「ちゃんとキスしなかったのが不満?」  
 瞬間、紅潮した晶が  
「……ばか」  
 小さく言ってまた目を閉じた。  
 
 僕は指先で晶の唇に触れてみた。  
「ん……」  
 鼻を鳴らし、晶が僕の手を押さえる。  
「もう……する気がないなら寝ちゃうわよ」  
 晶のその言葉をさえぎるように僕は激しく口付けた。  
「ん……」  
 舌を絡ませ強く吸ううち、晶の抵抗は少しずつ弱まっていく。  
 暖色系の明かりが安らぎを与える空間で、僕はだんだん淫らな気持ちになっていくのを感じていた。  
 
 晶の唇の柔らかな肌触りと、僕の体に押し付けられるふくよかな胸の感触に興奮が高まる。  
 僕は晶を抱きながら少しずつ股間に血液が集まっていくのを意識していた。  
 それを晶の体にこすりつけるように動かす。  
「んんっ、むっ……」  
 身をよじるようにして声を上げる晶。  
 ……どう思っているかはわからないが、拒んでいる感じはない。  
 
 少しずつ唇を離す。  
 晶が吐息を洩らす。  
 かすかに潤ませた瞳で僕を見ながら  
「乱暴なんだから……」  
 小さくつぶやいた。  
 
 晶の唇を指先でなぞる。そしてそれと入れ替わるように唇を合わせた。  
 舌先で晶の唇を割り、そっと中に忍ばせる。  
 すると、それを待っていたかのように晶の舌が伸びてきた。  
 ねっとりと絡ませあい、強く吸いあって性感を高める。  
 僕は晶の舌の裏を、晶は僕の上あごをそれぞれ刺激した。  
 頭の芯がしびれるような強烈な快感に鼓動が激しくなる。  
 唾液を交換する。歯列を舐めあう。唇を軽く噛んで肉欲をあおる。  
 キスだけで達してしまいそうな陶酔に僕たちは心を奪われていた。  
 
 つんと上を向いた形のいい乳房に手を伸ばす。  
 キスだけでだいぶ気持ちが昂ぶっていたのか、晶の薄紅色の突起はすでに固くしこっていた。  
 指先で乳首を転がす。指を立てて先端を揉むように加圧する。手のひらで乳首を押し込む。  
 それと同時にもう片方の乳首を口に含み、吸い、唇でしごき、舌先で舐めまわす。  
「ふんっ…んんっ!」  
 声を立てずに晶が悶える。声を出すのを我慢しているようだ。  
 その態度に僕の中の獣性が猛った。  
 
ちゅぱ…んむっ、ちゅっ……むちゅ……  
 執拗に乳首を攻める。  
 一転して乳房のふもとをじわじわと攻め、触れるか触れないかの強さで頂上までなぞりあげる。  
 乳輪に爪を立てるように軽く引っかき、乳首を優しくつまんでねじりあげる。  
 触れたり離したりのバランスに気をつけ、乳房全体を何度もなぶった。  
「くん…んふぅ……あっ! んんっ……」  
 晶の声が少しずつ艶を帯びていった。  
 
 手をすべらせ、引き締まった腹部から腰に移すと恥部を避けて太ももに移動する。  
 太ももに指を這わせ、晶の情欲を誘うように刺激する。  
「ねぇ……いじわるしないでよ」  
 晶がそう言って腰を押し付けてきた。  
「さわってほしいの?」  
 耳元でささやく。  
「……知らないわ!」  
 僕の視線から逃れるように横を向いた晶が小さな声で言った。  
 
 ゆっくりと股間に手を伸ばす。  
 そしてきれいに整った淡い恥毛の中に指を侵入させると秘裂を左右にひろげた。  
「あんっ……」  
 僕の指が到達した瞬間、晶は小さな声とともにわずかに腰を浮かせた。  
 指の腹を使って全体を揉みほぐしてから、肉ひだの合わせ目を指先でいじくる。  
くちゅ……  
 濡れた音が響く。いやいやをするように晶が首を振る。呼吸が気ぜわしくなる。  
 続けて僕は淫靡な液体をたたえ始めた膣孔のまわりをグルグルと指先でなでた。  
 その粘液を指に絡め、股間の小さな蕾をそっと弾く。  
「ひゃんっ!」  
 晶の体が跳ね上がった。  
 
「晶……」  
 名前を呼んで体を押さえつけるようにのしかかると、そっと膣穴に指を挿し入れた。  
「ひぁ!」  
 一瞬ビクンと体を痙攣させ、晶が僕にしがみつく。  
 僕は静かに指を出し入れし、全体をゆっくりと揉みほぐした。  
 
 内部からヌルヌルとした淫液があふれ、指先を濡らす。  
 晶の恥ずかしい部分に目をやる。ほの暗い照明の中でも晶のぷっくりとした陰唇が目に映えた。  
「ねぇ…口で……してあげる」  
 自分だけ性器を見られているのが不満なのか、晶が言った。  
 これまで何度か口でしてもらったことはあるが、晶が自分から言い出すのは初めてだった。  
「……いいの?」  
 男に服従させられているようであまり好きではない。  
 ……前に晶はそんなことを言っていたような気もする。  
 本当はいつもしてもらいたい。でも晶が嫌がることはさせたくない……。  
「して欲しくない?」  
「ま、まさか! ……お願い」  
 今日は違うのかな? 気が変わらないうちに。そう思って頼んだ。  
「ふふっ、素直でよろしい」  
 そう言うと晶はするりと体勢を入れ替え、僕の股間に身体を移した。  
 そうして手のひらで包み込むようにそっと触れる。  
 
「固いわ……」  
 勃起を何度かしごいてそう言うと、晶は顔を真っ赤にしながらゆっくりと近づけた。  
 一連の緩慢な動作がじらされているようでドキドキする。  
ちゅっ  
 伸ばした舌が竿の中ほどに当たる。そのまま先端に向かって舐め上げていく。  
「うぁっ!」  
 ぞくぞくした快感が背すじを走り、思わず声が出る。  
 そんな僕の様子を、晶は顔を上げて楽しそうに見る。  
 
 ……つうっとくびれのあたりで舌先が離れた。  
「いじわるしないでよ」  
 もっと快感を得たい。そう思って晶に言う。  
「ふふふっ、さっきのお返しよ……ちゃんとしてあげるから心配しないの」  
 淫らな笑みを浮かべた晶はそう言って大きくそそり立った一物を口に含んだ。  
 
「んむっ、ちゅっ……あむっ」  
 唇をすぼませ、竿の根元を圧迫する。同時に舌は茎の裏側を左右に転がす。  
 それだけじゃなく、のどの部分で亀頭をこすり上げる。  
「ちゅっ……ぴちゅっ……じゅぽっ……」  
 髪を前後に振り乱し、首を少し左右に振りながら顔をゆっくりと上下させる。  
 浅く咥えたときには固くした舌先を先端の割れ目にねじ込むように舐めまわす。  
 そして深く咥えこんだときは口の中のあたたかさを堪能させてくれる。  
 動きそのものは激しくないけれど、晶の愛情を感じさせるフェラチオだった。  
 
 それから晶は亀頭だけを口に含み、唇でくびれを絞り込むようにこすりたてた。  
 ねっとりと唾液をまとった舌で円を描くようにカリを舐めまわす。  
「ん…はぁ……ん、ふぅ」  
 晶のなまめかしい吐息が吹きかかる。  
 
 上目づかいに僕を見ながら『気持ちいい?』とでも言いたげなとろりとした瞳をする晶。  
 僕は返事の代わりに軽くウェーブのかかった晶の髪を手に取る。  
 そして指にからませたり、かきあげたりしてもてあそんだ。  
 髪をなでながら、もう片方の手で耳をくすぐり、首筋にそっと指先を這わせる。  
「やぁ……んんっ」  
 その手に晶の手が重なる。そのまま指が絡みあう。  
「ふん、ちゅっ……じゅる…ぷはっ……気持ちいいならおとなしくしてなさいよね……」  
 ペニスから口を離し、僕を見上げ照れくさそうにはにかむ晶。続けて  
「あなたの感じる声……聞きたいな」  
 そう言いながら右手を下に移すと、袋を優しくもみしだいた。  
 小指から人差し指にかけて波打つように動かし、二つの玉を転がして刺激する。  
「うぅっ! あ、晶ぁ……」  
 ……軽い痛みが快感へと変わっていく。  
 
 晶はもう片方の手で陰茎を支えると、竿の側面を根元から丁寧に舐め上げた。  
つつっ……つっ…つつつっ………  
 先端まで行くとまた根元に向かって舌をうごめかす。  
 別の生き物のようにうごめく舌が、てらりと光る跡を残して茎を這いまわる。  
 そうして舌を上下させた晶は、何度目かに先端にたどり着くと縫い目をチロチロとくすぐった。  
「うぁっ!」  
 こらえきれずに快楽の叫びが上がる。  
 そんな僕をうれしそうに見ながら、晶は亀頭についぱむようなキスを何度か降らせた。  
くにっくにっ  
 舌先で尿道口をこじ開けるように僕を攻め立てる晶。  
 背すじをゾクゾクとした射精感が走り回る。  
(ヤバイ……イキそうだ……)  
「晶、イクっ! ダメだって……晶っ!」  
 晶のあごに手を当てると引き剥がすように股間から離れさせた。  
 
ビクンッ、ビクンッ  
 何度も脈打ち、それでも射精だけは踏みとどまる。  
「出していいのに……」  
 不満そうに晶が答える。  
「いやだ。晶の膣中に出したい」  
 晶の目を見つめながらいうと、  
「……ばか」  
 赤い顔でそう答え、晶は目を伏せた。  
 
 僕は身を起こすと、晶を横たえて股間に移動した。  
 フェラチオで興奮したのか、晶の粘膜は鮮紅色に充血していた。それが僕の性欲をかき立てる。  
(晶を抱きたい! ひとつになりたい!)  
 これ以上は待てないというほど屹立した肉棒を、かき分けたひだの間に押し入れた。  
「行くよ…晶……」  
 晶が僕を見てうなずく。  
くちゃ……  
 小さな水音を立てて僕の先端と晶の肉ひだが合わさった。  
「あっ……」  
 無意識に晶が声を上げる。  
「ふふっ……」  
 僕はかすかに笑いかけると、晶の目を見ながらゆっくりと肉茎を沈めていった。  
 
「あぁぁっ!」  
 晶がのけぞる。  
 狭い肉穴がこわばりを呑み込む際の摩擦が大きな快楽となって晶に襲いかかったようだ。  
 
 根元まで収まる。  
 強く締めつけながら、それでも僕を優しく包み込む晶の膣。晶の優しさとぬくもりを強く感じる。  
 少し落ち着いたとはいえ、射精の直前まで感覚は高まっていた。性急な行為はあまりにも早い絶頂を意味する。  
 
「動くね」  
 僕は『あわてず、ゆっくり』と自分に言い聞かせながら晶の中で前後させた。  
じゅぶっ、じゅぽっ、ずぷっ………  
 あふれすぎた蜜がいやらしい音を立てる。  
 出し入れするたびに、剛直が半透明の液体に濡れて光る。  
 今にも垂れそうなほど豊富に液体をたたえた結合部が僕をさらに興奮させた。  
 
「あっ、あっ……」  
 かすかに乱れた息で晶が鳴く。  
 あたたかく僕を締めつける晶の膣。  
 心地よい抵抗感のある肉穴を勃起が前後するたびに快感が背すじを駆けぬける。  
ぐちゅっ、ぬちゃっ、ぬぷっ、ずぷっ………  
 僕の往復に伴い、結合部は淫らな音を立てつづけた。  
「ほら、晶のここ、とっても恥ずかしい音させてるよ」  
 僕の言葉に真っ赤に染まる晶。  
「晶……すごくいい……気持ちいいよ……」  
 思わず快楽の言葉が口をつく。  
「はぁ、はぁ……私も、私も感じる……っっ!」  
 
 僕は晶の腰を両手で引き寄せ、さらに深く、奥へ奥へと貫いた。  
「ひゃうっ! きゅふっ……んんっ」  
 嬌声と同時に晶の膣中が絶妙な蠕動を肉茎に伝えた。  
 まるで精液を搾り取ろうとするかのような締めつけ。  
 
「んっ……んんっ! ア……」  
 悦楽の声を出し、晶が悶える。  
「晶の中……とっても熱いよ……とっても気持ちいいよ」  
「好き……あぁんっ、あぁン!」  
 晶の息がどんどん早くなる。  
「あ…ふっ! きゅっ……ン…あ、んッ!」  
 腰の動きが自然と早まり、最後の瞬間に向けて気持ちがどんどん高まる。  
 
「晶!」  
 射精の衝動に支配された僕は夢中で腰を振った。  
 いたわりとか気遣いの感情は消え失せていた。  
 ただただ射精することだけを考えたオスの本能のみが僕の体を動かしていた。  
「んんっ! ひんっ、くぅん……あぁぁっ! うぅっ……」  
 それでも晶はよがり声を上げる。  
(感じている!)  
 僕はさらに大きく腰を使った。  
 
 晶も腰を前後させる。僕の抽迭と同調した動きで二人で腰をぶつけ合う。  
 僕が肉棒を押し込むと晶も腰を突き出し、引き抜くと腰を引く。  
 それが目もくらむ快感となって二人を包み込んだ。  
「あっ、はっ…んんっ! くぅ…あんっ、んんっっ!」  
 次第に晶の上げる声の間隔が短くなり、大きさも強まる。  
 腰の動きも積極性を増し、それが僕に大きな快感をもたらした。  
 中の締め付けも奥まで差し入れたときに最も激しくなり、僕にもだんだん限界が近付いてくる。  
 
「晶……イキそうだよ……」  
「私も…私もイッちゃう! うんんんっっ! イクっ! あぁーーーー!!」  
 苦しげな息で晶が言い、絶叫した。  
 その痴態を見た途端、せつない感覚が僕を襲った。一瞬、目の前が真っ白になる。  
(ダメだ! 出るっ!)  
 
「晶っ!」  
 最後の瞬間、僕は晶の奥に深く強く突き立てた。  
びしゅっ! びゅびゅっ! どぴゅっ! ずぴゅっ!………  
 ……晶の一番奥に向かって大量の精液をほとばしらせ、僕は果てた。  
 
 たっぷりと精液を射ち出し、僕はようやく落ち着きを取り戻していた。  
 ティッシュを取ろうと身を離す。  
 僕が戻ると、晶は自分の膣口からあふれた白濁を指にからめていた。  
「いっぱい出たわ……出しすぎじゃない?」  
 大きく息をついて晶が言う。  
「……うん」  
「さっきも出したのに……ずっと…我慢してたの?」  
「いいだろ、そんなこと」  
 実際この日のために禁欲していた。だけどそれを知られるのは照れくさかった。  
 
「膣中に出してくれたわね……」  
 満足そうにそう言った。  
「……うん」  
「なぁに、子供ができるの怖いの?」  
 浮かない顔の僕を試すように、じっと目を見ながら晶が聞いた。  
「まさか! ……でも本当に僕とでいいの?」  
「もう! 私が選んだ人なんだからもっと自信持ってよね」  
「……うん」  
 まだ学生の僕に晶と子供を養う自信はなかった。その思いが言葉を濁させる。  
 そんな僕の気持ちを見透かしたように、  
「それにね、今日はできない日なの。……安心した?」  
 そう言って晶はにっこり笑った。  
「……えぇ?」  
 気が抜けた僕に構わず  
「でもあなたの赤ちゃん産んでもいいっていうのはホントの気持ちよ……大好きよ」  
 そう言いながら僕の胸に顔をうずめた。  
 
        おわり  
 

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