二日目
障子から差し込む和らいだ朝の光と、小鳥のさえずりで僕は目を覚ました。
……隣りを見る。
若菜は僕の腕の中で軽やかな寝息を立てていた。
規則正しく上下する胸。ベッドに広がった長い黒髪。それと対照的に、透き通るほどに白い肌。
(僕たちはもう『男と女の関係』になったんだなぁ……)
僕は昨夜のひと時を思い出し、幸福な気持ちで若菜の寝顔を見ていた。
「ん、んんっ……」
若菜が身じろぎする。そして静かに目が開いた。
「おはよう、若菜」
「……はい、おはようございます」
まだ焦点の合わない目で、それでも礼儀正しく挨拶が返ってくる。
と、若菜はパッチリと目を見開くとあわてて身を起こし、居住まいを正した。
そして寝乱れてはだけた浴衣に気付き、急いで胸元と裾をかき合わせた。
「お、おはようございます……」
赤面しながらもう一度言う。
「あははは、ゆうべはもっとすごいもの見ちゃったからね。今さら隠さなくてもいいよ」
僕の言葉に、これ以上ないというほど赤くなる若菜。
「し、知りません!」
怒ったようにプイッと横を向く。
機嫌を損ねてはいけないとあわてて話題を変える。
「ゆうべはよく眠れた? 体は平気? もう痛くない?」
「あ、はい。よく眠れました。……まだ少しヒリヒリしますが、それほど痛むわけではありません」
そう言いながら若菜は顔を向ける。そして伏せた視線が自然に僕の股間に注がれた。
「! ………」
あわてたように視線を逸らす若菜。
「?」
なんだ? そう思い、若菜の見ていたあたりに目を落とす。
「!!!!」
……朝勃ちしていた。
トランクスを突き破らんばかりに硬直している。
たしかに朝の光を浴びた若菜のしどけない寝姿を見ながら僕はゆうべのことを思い出していた。
それで股間が反応したのも理由の一つだと思う。
だけど朝勃ちなんて健康な男なら当然の生理現象だし、いつものことだ。
……だから勃っているのに気付かなかったんだ。
「そ、そんな…朝から困ります……」
目を泳がせ、どうしていいのか分からなそうな口ぶりで若菜が言う。
「ち、違うよ若菜……。これは…そう、自然現象! 自然現象だから!」
取り乱して弁解する。そうしながらそれを鎮めるため、窓を開けて朝の空気を入れる。
清冽な、身の引き締まる空気を深呼吸する。
(落ち着け…鎮まれ…えっちなことを考えるな! ……あっ、生理現象って言いたかったんだ)
まだ頭の中がパニクっているが、なんとか平静を取り戻そうと試みる。
……その甲斐あってか、少しずつ股間が力を失っていくのが感じられた。
(よし!)
完全に萎えさせようと胸いっぱいに新鮮な空気を何度も吸い込む。そうしながらも若菜を盗み見る。
若菜はばつの悪そうな顔でもじもじしている。身の置き所がなさそうな仕草。……恥ずかしいんだ。
(あれ? ちょっと待てよ?)
先ほどの若菜のセリフをふと思い出す。
「ねぇ若菜……『朝からは困る』ってことは夜ならいいの?」
「! ……し、知りません!」
若菜が真っ赤になった。
僕たちはホテルを出ると次の町に移動し、街角に立った。
……今日はお好み焼き売れるといいなぁ。
道行く人に声をかけたり試食品を配ったりしながら頑張って売る。
そのかいあってか、昼過ぎまではぼちぼちという感じだったのが夕方近くなるとそこそこはけるようになった。
忙しいときには休憩も取れないほどの盛況ぶりだった。
今晩もまた、若菜と愛しあいたいなぁ……。
トイレ休憩のついでに、僕は街角の自販機でコンドームを買い求めた。
(ゆうべは何とか膣外射精できたけど、ちゃんと避妊しないとマズイからなぁ……)
若菜のもとに戻ると
「飲み物でもお買いになったのですか?」
そう聞かれた。
「いや、買ってないけど……どうして?」
「あちらの販売機で何かをお求めになったのが見えたものですから……」
「か、勘違いじゃない? あ、あはははは」
思いっきりうろたえて答える。……怪しまれたかな?
若菜は不思議そうに小首を傾げたが、それ以上は追及してこなかった。
昨日の行商でコツをつかんだのか、今日はメダル5枚のプラスだった。
(昨日よりはいい宿に泊まれるな……)
……考えが甘かった。
二部屋を取ると昨日と同じぐらいの部屋しか選択肢がない。
一方、一部屋にすれば二部屋分よりも安い料金でいい部屋に泊まれる。
悩んだ末、僕は一部屋に決めた。
若菜とは深い関係になった。一緒でも嫌がられないだろう。そう思ったからだ。
一緒の部屋に泊まることを若菜に告げる。
若菜は頬を染めてうつむいただけで何も言わなかった。……断られなくてよかった。
今晩の部屋は小さいながら浴室が備えられていた。
また、温泉地にある宿だけあって別に天然温泉の大浴場もあり、僕たちはそっちに入ることにした。
もちろん男女別だけど、壁一枚を隔てたむこうの若菜と会話しながらの入浴はとても楽しかった。
『若菜ぁ、そろそろ出るけど、いい?』
『はい、わたくしも上がります』
若菜の声が返ってくる。……う、うれしい。
壁越しに会話をしただけなのに、まわりの入浴客に対してなんとなく誇らしい気持ちになる。
まるで新婚みたいだ。新婚といえば、夜はもちろん……。
むくっ
そんなことを考えた途端、股間が元気になりかけた。
(マ、マズイ!)
あわてて冷水を浴びせて落ち着かせる。
僕はそそくさと大浴場をあとにした。
廊下で若菜を待つ。
程なくして若菜が出てきた。
ほんのりと上気し、若い女性特有の甘い香りを漂わせた若菜に胸が高鳴る。
「若菜…きれいだ……」
思わず言葉が出る。
「そんなに…見ないでください……」
恥ずかしそうにうつむく若菜。
「ご、ごめん。……でもホントに綺麗だよ」
「……ありがとうございます」
そして僕たちは手をつないで部屋に戻った。
布団のそばに横座りし、
「今日は髪を洗いました」
そう言って湯上がりの長い黒髪をくしけずる若菜は神々しいまでの美しさだった。
「若菜……」
僕は我慢できなくなり、若菜を抱きしめるとそっと唇を合わせた。
昨日は若菜を指でイカせた。今日は口で……。
予感と期待とで限界まで固くなった肉棒を若菜に押し付け、腰を前後させて動かす。
そこから立ちのぼる快感にすべての理性が麻痺していく。
僕は若菜にキスしながら自分で下着を脱いでいた。
若菜の手を取り、勃起に導く。
「んむっ!」
のどの奥で若菜がうめいた。
僕は唇を離すと、若菜の目を見ながら
「さわって……」
そう頼んだ。
「……はい」
若菜はうなずき、長い髪をかき上げると耳にかけた。そして細い指をそっと僕のモノに絡める。
「ドキドキします……」
そう言うと、そのまま僕の股間に顔を近づけていく。
(ま、まさか……若菜が口で!)
予想もしていなかった事態に勃起がビクビク脈打つ。
先端に唇が付くかという間際まで来ると一旦若菜の動きが止まった。
そうして唇を開くと、ゆっくりと僕のモノをその中に呑みこんでいった。
若菜の呼吸のたび、鼻息で陰毛がなびく。だけど咥えただけで若菜は動かなかった。
より一層の快感を求めて腰を前後させたい欲求を必死で押さえ込む。
「若菜……」
声をかけると、それに呼応したかのように若菜が唇を締め付け、舌をうごめかせた。
「うっっ! 気持ちいいっ!」
初めての経験、初めての快感に思わず声が出る。
僕が快感を得ていることが分かったのか、若菜は静かに頭を前後させはじめた。
それと同時に竿をしごき、空いた手で袋をこねまわす。
二つの玉が若菜の手で転がされる際の疼痛にも似た感覚が徐々に心地よくなっていく。
くちゅ…あむ、ちゅっ……ぴちゅ…んむ……
淫らな水音が若菜の口から発せられる。僕の勃起を口に含み、一途にフェラチオを続ける若菜。
(こんなに楚々とした若菜が、こんなにいやらしいことをしてくれている!)
そう思っただけで射精感がこみ上げる。自分でも信じられないほど早く絶頂が近付く。
(マズイ! ……イク!)
「若菜っ! ……出るっ!」
ずびゅっ! びゅびゅっ! びゅっ! どぴゅっ!………
若菜の口の中に大量の白濁がまき散らされた。
「むぐっ!」
のどの奥に僕のほとばしりを受けたのかうめく若菜。それでも口を離さずに若菜はすべてを受け止める。
びゅっ! びゅくっ!………
さらに精液が奔流となって噴出する。僕は若菜の口内を汚して射精を続けた。
放出が止む。
何度目かの脈動が収まると、若菜の口中を占領していた剛直が柔らかくなった。
……若菜は僕が完全に射精を終えるまで口を離さなかった。
「はぁはぁはぁ……」
大きく息をついて射精の快感を味わっていた僕が若菜に目をやる。
と、ちょうど若菜が口を離したところだった。
小さな口腔には収まりきらなかったのか、こぼれた精液があごに伝っている。
「若菜」
声をかける。若菜はそれに返事をしようと口を開けた。
とろり……
若菜の口から、たったいま僕が射ち出した白濁がこぼれた。
「んっ……」
あわてて手を添え、白くドロッとした液体を受け止める若菜。
「若菜、これ」
ティッシュを手に若菜に声をかける。
「ここに出して」
若菜は胸の前あたりにティッシュを持ってくると、口から垂らすようにして残りの精液を出した。
銀の糸を引き、若菜の口から出てくる僕の精液。……淫靡な眺めだと思った。
若菜がこんなことをしてくれるのは世界中で僕だけだ。僕はそれがうれしかった。
「味のいいものではありませんね」
少し表情をゆがめて若菜が感想を述べた。
「そうなの?」
「少し苦くて……あとちょっと生臭いです」
(そんなものを若菜は口で受け止めてくれた……)
心に温かいものが広がる。
「ありがとう若菜」
僕はそう言うと若菜を抱きしめた。
「若菜、今度は僕が」
自分だけ性の満足を得たのが心苦しく、僕は若菜にそう言った。
「わたくしは構いません。あなたが気持ちよくなってくだされば……」
若菜が固辞する。
「だめ。それじゃ僕が満足できない。若菜もイカせる!」
「で、ですが……。わかりました……」
断っても僕が納得しないのが分かったらしく、若菜は折れた。
旅館の浴衣を羽織ったままだった僕はそれを脱ぐ。そして若菜の浴衣に手をかけた。
「だ、だめですっ!」
若菜が抵抗する。
「若菜?」
「……じ、自分で脱ぎます」
真っ赤になった若菜はそう言って脱ぎはじめた。
「若菜……」
全裸になった若菜を静かに横たえ、唇を重ねる。
軽く唇が触れる。触れただけでまた離れる。
「若菜の唇、やわらかい……」
「そんなこと言わないでください……」
恥ずかしそうな声。
「あなたの唇もやわらかいです。……それに熱いです」
「若菜がそうさせてるんだよ」
手を伸ばし若菜の頬を撫でる。
その手を若菜の耳元から後頭部にあてがう。親指が若菜の耳たぶに触れる。
「若菜も熱くなってるよ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、今度は若菜から唇を寄せてきた。
唇が重なる。
ただ唇を合わせるだけのキスだが、今度は長く続いた。
僕は舌で若菜の唇をなぞってみた。若菜は唇に力を入れ体を震わせたが、抵抗はしなかった。
舌を戻し、また唇だけのキスをする。
すると今度はためらいがちに若菜の舌が僕の唇に触れてきた。
唇をわずかに開く。
……探るようにゆっくりと若菜の舌が中に入ってきた。
舌先が触れ合う。一瞬、
ビクンッ
と身を縮こめた若菜だが、僕の首に両腕を回すと積極的に自分の方に抱き寄せてきた。
それに応え、僕も若菜の腰を抱く。
……二人の舌が絡まった。
舌を絡めると口の中に今まで味わったことのない不思議な味とぬめりが広がる。
(あっ、そういえばさっき、若菜の口の中に……)
その味の正体がわかったが、若菜はそれを口で受け止めてくれたことを思い出す。
僕はそのままキスを続けた。
舌を強く吸う。
「んっ……っ!…んん……」
若菜が苦しそうな声になる。
「そんなに強く吸うと……痛いです」
顔を離すと若菜が言った。
「ごめん、経験少なくて加減がわからなかった」
僕は昨日の若菜がファーストキスだった。それも告げると
「いいえ。わたくしも同じです……」
若菜が答えた。
「若菜、またキスしよ」
「……はい」
恥ずかしそうに若菜がうなずいた。
軽くキスしたあと、少しずつ体を下に移動させる。
首筋、わきの下、胸、へそと舐めて来て恥丘に到達した。
しゃりしゃりした陰毛の感触が唇やあごに当たる。
「そ、そんなところ! いけません、だめです!」
舌がその部分に触れた途端、若菜がうろたえた声を上げる。
あまりの拒絶ぶりに僕は顔を離すと若菜の顔を見て問いかけた。
「どうして? 若菜は僕のを口でしてくれたろ?」
「で、ですがそんなところ……汚いです」
「若菜のなら汚くないし、僕は平気だよ。……若菜は自分でさわってるんだよね?」
「……してません。お風呂に入ったとき、軽く洗う程度です。そんな恥ずかしいところ……嫌です!」
「うそ。昨日はオナニーしてるって言ってたよ? ……それより若菜は僕のこと嫌い?」
切れ長の瞳をじっと覗き込んで聞く。
「そ、そんな! あなたを嫌いだなんて……嫌いになることなんか……できません」
目を伏せ、唇を噛んで答える若菜。
「こんなことする僕も嫌いじゃあない?」
ふっくらとした肉のひだを指でもてあそびながら聞く。
「……はい」
「だったら……僕のしたいようにさせて。ね?」
「……はい」
これ以上ないというほど赤くなった若菜が小さくうなずいた。
愛撫を再開する。
僕はさらなる刺激を与えるために若菜の股間に再び顔を近づけた。
肌に貼りつくように茂る恥毛が目に飛び込む。僕が呼吸するたびにそよぐ姿はなんとも淫猥な感じだ。
しかも初めて間近に見る成熟した女性の「そこ」。自然と心が躍る。心臓が破裂しそうなほど脈打つ。
僕はためらいがちにそっと舌を伸ばしてみた。
ひくひくとうごめき、粘り気のある液体が湧き出る若菜の「女」の部分に舌先が触れる。
「あぁっっ!」
その途端、若菜の腿に力が入り、僕の頭を締め付ける。
両手で腿をこじ開けるようにして頭を押し込み、もう一度そこを舐めた。
……そこはほのかな石鹸の香りとともにかすかに塩気がした。
続いて腿を抱えて陰部を上向けると、舌の腹を使ってクリを舐め上げる。
「ひん!」
若菜の声が聞こえた。
僕は舌先を尖らせるとクリを転がすように愛撫した。
唇ではさんだり、軽く歯を立てたりといった刺激に反応し、膣口からは愛液が分泌される。
舌を尿道口や膣口にも這わせ、こんこんと湧く液体を音を立ててすすった。
クリに口を当てたまま膣に中指を入れる。
腹側のコリコリとした感触を楽しみながら親指でクリをつぶすように力を加える。
「ひゃんっ! ……ぁあッ、はん…ひん! くふぅ……」
若菜は声を上げつづけ、快楽に浸っている。
興奮で何も分からなくなる。僕はその部分を必死に舐めまわし、膣に入れた指をこねまわした。
「あぁっ!」
指を前後させるだけ、クリをただ舐めているだけという稚拙なテクニックだが若菜が声を上げる。
(感じている?)
確信は持てなかったが、少なくとも嫌悪や忌避ではないらしい。僕はそのまま続けた。
「あぁっ! だめです、もう…もうだめですっ!」
若菜の声に切迫した響きが含まれる。
(若菜をイカせる!)
僕は若菜の身体の内と外から性感帯を刺激し、最後のとどめとばかりにクリを甘噛みした。
「ひんっ! あぁぁッ、あンっっ! んんっ…イクっ、イキますっっ!」
ひときわ高い声を上げ、若菜の全身が突っ張る。……そして力が抜けた。
「はぁはぁはぁ………」
乱れた息で若菜が力なく横たわる。
僕は若菜の隣りに横になると静かに抱きしめた。
たったいま見た若菜の痴態に肉茎は硬度を取り戻していた。出したい気持ちが高まる。
若菜の手を取り、勃起を握らせる。
「若菜」
名前を呼ぶ。
「……はい」
まだ放心したままの若菜が答える。答えながらその手はやわやわと剛直をなでさする。
「また、出したくなっちゃった……」
「……今度はわたくしが」
若菜はそう言うと僕の股間に顔を寄せた。
「おそそ……だっけ?」
「……はい?」
「ほら、京都の言葉で『おまんこ』のこと」
その瞬間、これ以上ないというほど若菜が赤くなる。
「若菜のオソソも舐めたい」
「だ、だめです……」
「やだ。若菜のオメコもっと見たい」
「その言い方…恥ずかしいです……」
「どうしてもダメなの?」
「……知りません」
口ではそう言ったが、若菜はゆっくりと僕の顔をまたいできた。
若菜の割れ目が目の前にある。角度が違うせいか、何度か見た場所なのに新鮮に映る。
たまらずむしゃぶりついた。
鼻から口を押し付け、狂ったように匂いをかぐ。分泌液を舐めまわし、いやらしい音を立ててそれを吸う。
指で裂け目を広げると舌を伸ばして若菜の愛液をすくい何度も飲みこむ。
顔中がベタベタになったが、それすらも快かった。
目を開ける。
お尻のすぼまりが目前にあった。
汚いところというイメージがあり、今まで愛撫しようと考えたこともなかった場所。
だがいま目の前にある可憐なつぼみは汚いと思えなかった。
「若菜のお尻の穴も丸見えだよ」
「!」
僕の言葉に反応したのか、若菜の膣がきゅっと締まるのが見えた。
お尻の穴にそっと触れてみる。
ビクン!
若菜の体が跳ね上がった。あわてて若菜の腰に両手を回し、動かないように押さえこむ。
もう一度そこをねらった。
手が使えない代わりに今度は舌を近寄せる。中心に向かって収束していくひだを舌の先が捉えた。
「そ、そんなとこいけません!」
僕がその部分を目指していることがわかったのか、若菜が抵抗を始めた。
足を閉じようとするが僕の顔をまたいでいるためそれができない若菜は腰をよじって逃れようとする。
だけど僕の腕で腰を押さえつけられた若菜はどうすることもできない。
「だめです……お願いです、やめてください!」
若菜の言葉を聞き流し、その周りで舌をうごめかす。
「いや……お願いします!」
若菜は本心から嫌がっている?
迷いが生じた僕は肛門を避けて膣口に目標を移した。
「あぁっ! いッ、はぁンっ……ひぁ…ふぁぁ! んん……」
会陰から膣口にかけてを尖らせた舌で何度か往復していると、若菜の声が艶を帯びだした。
(こっちで正解だ)
そうこうするうち、太ももに当たってくすぐったい感じを与えていた若菜の髪の感触が軽くなる。
と思う間もなく水分を含んだ温かいものに肉棒が包まれたのを感じた。
……若菜が口でしてくれているんだ。
僕たちは互いの股間に顔をうずめたまま享楽を味わった。
女陰への攻めに加え、僕は若菜の背すじからお尻の割れ目までの間を幾度も指でなぞった。
ときどき、指をさらに滑らせてお尻の穴にも触れてみたが若菜から忌諱の声は出なかった。
何箇所も同時に快感を与えようと空いていた片方の手をクリに持っていく。
左右の手と口を使い若菜を攻め立てた。
「んっんっんっーーーー」
僕のを咥えているためか、はっきりとしない若菜の声が聞こえた。
もっと若菜を悦ばせたい。そう思いさらに刺激を与える。
温かい湿り気に固定されていた陰棒が自由になった。若菜が口を離してしまったのか?
「はぁっ……ふぁッ、んんっ! うぅぅ…やっ……」
若菜の喘ぐ声が聞こえる。
間違いない。若菜は今フェラをしていない。できないんだ。
ペニスが握られる感覚がした。……その手が上下する。
だがスピードも力も弱々しい。ただ手を動かしているというだけだ。
僕に奉仕できないぐらい感じてるんだ! よし、このままイカせる!
……だけど僕にも絶頂が近付いていた。
目の前でヒクヒクとうごめく女性器が興奮をあおる。見ているだけで我慢ができなくなりそうな昂ぶり。
根元まで精液がこみ上げてきているのを感じる。ちょっとの刺激でイッてしまいそうな射精感!
一生懸命に気を逸らして射精を押さえる。下っ腹に力を入れて射精をこらえる。
(先に若菜をイカせる!)
指でクリを攻め、舌を膣に押し込み、鼻の頭でアヌスを押さえる。
かなり無理な体勢なのか首筋が悲鳴をあげる。でもやめるわけにはいかない。
若菜をイカせること。僕はただそれだけに集中した。
目の前に迫った恥肉を口の中に収め、強く吸う。敏感な突起を舌先で丁寧に舐め上げる。
秘裂のまわりの複雑な構造の肉ひだを舌の腹を使って圧を加えて舐めまわす。
表面に吸い付くように口付ける。腿の肉に軽く歯を立てる。お尻のふくらみをもみしだく。
やや酸味を帯びた体液を音を立ててすすり、膣穴に舌を差し込んでかき回す。
それらと同時に指を、手のひらを使って若菜の下半身をなでまわし、刺激を与える。
「んんっ! くぅぅ……あ…あンっ……ひんっ! ひゃぅぅ……」
若菜が淫らな声で鳴く。
若菜が悶える姿に興奮が最高潮に達する。
時間の感覚が失われている。どれだけ攻めた? 長い時間? それとも短い時間?
精液が根元まで押し寄せているのがわかる。……我慢できない……出る……。
その時、突然若菜の体が突っ張った。
「あぁっ! だめですっ……いっ、イクぅぅぅっっ!」
僕の顔をまたぐ腿にも力が入り、モノも強く握られた。……それが引き金になった。
「若菜っっっ!」
どぴゅっ! どくっ! びゅびゅっ! ずぴゅぅっ!………
快楽の堤防が決壊した。こってりとした熱い塊が尿道を通過していく。
「ぐっ! うぅっ! むっ……」
僕はのどの奥でうめき声を上げながら射精を続けた。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
大きく息をついて僕は性の愉悦を味わっていた。
(若菜と一緒にイケた!)
こんなに満足でき、そして気持ちのいい射精は初めてかもしれなかった。
若菜の体からもこわばりが消え、僕の上で荒い呼吸をついている。僕の上でぐったりしている。
最前はひじやひざで僕に体重がかからないようにしていたが、いまは僕にすべてを預けている。
少しも重くない。それどころか、若菜の重さが心地よい。
先ほどまでヒクヒクと淫液を垂らしていた若菜の股間も動きがおさまっていた。
「若菜、起きたい」
「あ…はい」
若菜の体が動き出す。始まりと同じように僕の右側に移るとそのまま振り向いた。
「好きですっ!」
僕に飛びついてきた。
胸に顔を乗せ、頬ずりするように動かす。
「……大好きです」
「僕も。若菜が大好き」
「うふふふ」
僕の顔を見上げると、目を閉じて唇を突き出した。
「あ、若菜……。せっかく洗ったのにごめんね……」
若菜の髪に異物を見つけた僕はそう言って黒髪を指差す。
「え?」
言われた若菜が自分の髪を見る。
射精の瞬間、若菜はペニスを口から離していたようだ。長い黒髪に白濁が絡みついていた。
大きく脈動しながら精を吐き出したペニスは若菜の顔や髪に白濁をまき散らしていた。
「……まぁ」
言葉を失う若菜。それでも
「あなたの出してくださったものです。わたくしは構いません」
そう言ってかすかに微笑んだ。
「若菜……」
若菜はもう一度顔を上向けると、目を閉じた。
僕も目を閉じると若菜に応えた。
二日目おわり