到着前日  
 明日はいよいよ目的地の京都。今日が若菜と過ごせる最後の夜だ。  
 あれから毎晩、僕たちは体を重ねた。肌を合わせ、互いを絶頂に導きあった。  
 僕は若菜にいろいろなことを教えた。若菜もそれを貪欲に吸収し、自分のものとしていった。  
 体だけじゃない、心も深くつながっていた。若菜は僕のすべてになっていた。  
 もう僕には若菜のいない生活なんて考えられなかった。若菜、若菜……。  
 ……そしてこの夜も僕たちは思い出を作るために睦み合っていた。  
 
 唇に柔らかく温かいものが触れる。  
 その行為は、もう何年も付き合っているかのような自然なものだ。  
 わずかに唇を開くと、少しのためらいのあと、そのすき間から口の中に濡れたものが分け入ってきた。  
「んふ……ん、ちゅ…んぐ……」  
 部屋の中に唾液の混じり合う音が響く。  
 それはお互いの情熱を計りあうかのような激しいものだった。  
「んっはぁぁ……あぁ」  
 息苦しくなったのか、若菜の唇が離れた。甘い吐息が洩れる。  
 それは僕の耳元をくすぐり、さらなる興奮を呼んだ。  
「若菜……」  
 一瞬でも唇が離れているのが忍びない。また唇が重なる……。  
 僕と若菜は、熱すぎる、そしてとろけるようなキスを交わす。  
 
 唇が離れる。そうして僕は目を開ける。そのまま左手を伸ばし、若菜の頬をなでようとする。  
 その手に若菜が右手を重ね、優しくなぞった。  
「幸せです……」  
 小さな声で若菜が言う。  
「僕もだよ」  
 そう応じ、僕はもう一方の手で若菜を抱きしめた。  
「あなたの優しさが好き……大好きです……」  
 頬を染めて目を伏せる若菜。  
 僕は若菜の頬から手を離すと、そのまま両手を使って体をゆっくりとなでていく。  
「んっ……」  
 指が這い回るたび、最初はくすぐったそうにしていた若菜の息が少しずつ荒くなっていく。  
 その声を聞きながらパジャマのボタンに手をかけ、一つずつ外していく。  
 前を全部開けると、お腹のあたりから上に指を滑らせた。  
 そしてブラに到達すると、布地の上から静かに円を描くように指先でこねまわした。  
 繊維の向こうに感じられる大きな柔らかい塊。……僕は思わずそれを揉みつぶす。  
「ふあっ……あ、あン!」  
 若菜が身をよじらせ、切なげな表情で僕を見上げた。  
 そんな若菜に愛おしさが増す。……いつもはきれいだと思う若菜が、今日はかわいいと思った。  
 もっと若菜を感じさせたい。そう思った僕はブラを持ち上げ、ふくよかな胸にじかに触れた。  
 
 温かいふくらみが手の中に収まる。例えようのない心地よさだ。  
 そのままゆっくりと指先に力をこめていく。  
 と、ふくらみの先端の固くしこった感触が手のひらに伝わってきた。  
(乳首が立ってる!)  
 意を強くした僕はそこを手のひらで転がすように攻めてみた。  
「あっ、んんっ……ふぁ」  
 僕の手が先端を摩擦するたび、若菜の体がぶるぶると震える。  
 そして手の動きに合わせるように若菜がわななく。  
(僕の愛撫で若菜が反応している!)  
 そう考えると、なんだかとてもうれしくなった。  
「くすぐったい?」  
「い、いいえ……違います」  
 普段の凛としたものとは違う色っぽい声。そんなオンナの声に僕も興奮していく。  
 
 僕は若菜の乳首に顔を寄せ、そっと口に含んだ。  
 唇で挟み、しごき、舌で転がし、強弱をつけて吸う。軽く歯を立ててみる。  
「ひゃん! ……んぅ、んっ、ンぁ……」  
 そんな一連の口撃にたまらなくなったのか、若菜は僕の頭を強く抱きしめてきた。  
 若菜の胸に顔が押し付けられる。やわらかいが張りのある重量感が僕の顔を押し返す。  
 それほど大きいというわけではないので、胸に顔がうずまっても呼吸は苦しくない。  
 胸に顔を包まれたまま、僕はしばらく若菜の鼓動に耳を澄ませていた。  
 激しく高鳴る若菜の心臓。  
 それを確認した僕は若菜の腕から抜け出してしゃがみこんだ。  
 
 パジャマのズボンを脱がせる。脱がせるときにショーツを見てみる。  
 と、クロッチのあたりはたっぷりと水分を含み、淡いブルーの下着はその部分だけ色が濃くなっていた。  
「若菜、濡れてるの?」  
 目を見ながらそう言うと若菜は真っ赤になった。  
「そ、それは……あなたがさわるからです……」  
 僕から目を逸らし、消え入りそうな小さな声で若菜が答える。  
「感じちゃった?」  
「……し、知りませんっ!」  
「かわいいよ若菜」  
 言いながらクロッチに手を伸ばした。  
「ん……」  
 小さく声を洩らし、若菜の足が力なく開かれた。  
 
 若菜の下着はたっぷりと水分を含み、陰唇の形をくっきりと浮かび上がらせていた。  
 僕が指を動かすたび、くちゅくちゅと湿った音が立つ。まるで直接その部分をさわっているかのように錯覚する。  
 見ると中心部がしとどに濡れ、恥毛の黒い翳りがうっすらと透かし出されている。  
 その部分に指先を当て、つつつっと上下になぞる。  
 指先に力を入れると布地を押し込むようにして第一関節までくぼみにめり込んだ。  
 そのまま指をうごめかすとショーツはさらに水分を含んでぺったりと肌に張り付く。  
「ひぁっ!」  
 艶を帯びた声で若菜が鳴く。そして立っているのがつらいのか、ひざをガクガクさせて身悶える。  
 それに興奮した僕は肉ひだの合わせ目で小さく尖った肉芽に目標を移した。  
くにっ、くにっ……  
 そこを揉むようにして圧を加える。  
「ひゃんっ!」  
 クリをこするたび、若菜の体が弾かれたようにひくつき、それと同時に腰をうねらせる。  
 その様子は快感を貪欲にむさぼっているようにも僕には感じられた。  
 
 何度か続けるうち、若菜は足をもじもじと何度もこすり合わせるようになった。  
 それだけじゃなく、僕の手を押さえると陰阜に押し付けるように押さえてくる。  
「若菜?」  
 僕の問いかけに、若菜は  
こくん  
 横を向いたまま、恥ずかしそうにうなずいた。直接さわってほしい。そういうことなのだろう。  
「いい?」  
 ショーツに手をかけて聞く。  
「え、あ……はい。でも、恥ずかしいです……」  
 小さな声でそう答えた若菜は、僕の視線から逃れるように背中を向け小さくうなずいた。  
「脱がすね」  
 そう声をかけながらショーツを下ろしていく。  
 
 何度も脱がしているのに、そのたびに興奮する。  
 ショーツと秘裂との間に銀の糸がかかった。若菜もすっかり準備が整っているようだ。  
 そのまま片足ずつ上げさせて足先から抜くと、前かがみになった若菜のお尻のすぼまりが僕の目の前に来た。  
 その下には僕の性器を包み込む肉穴と、それを取り巻くやわらかな肉のひだ。  
 ……若菜のそこは充血し、ヒクヒクとうごめく膣口はすでに充分に潤っていた。  
「そ、そんなに見ないでください……」  
「……ご、ごめん」  
 言われるまで気が付かなかった。どうやら僕はかなりの長い間、若菜の秘所を見つづけていたらしい。  
 
 幼なじみ。6年生の一時期だけ一緒に過ごした若菜。  
 あのときの若菜はまだ子供だった。それが今はもう、すっかり大人の体に……。  
 大人になった若菜を僕は抱いた。自分のものにした。自分の色に染めた。  
 僕はもう若菜と離れたくない。若菜の心も体もずっと僕だけのものにしていたい!  
 それらのさまざまな感情が僕の中で渦を巻いた。  
 
 僕はゆっくりと恥肉に右手を伸ばした。  
ビクッ  
 一瞬若菜の腰が引けた。それでも抵抗せずに僕の指を受け入れる。  
くちゅ……  
 淫らな水音が鳴る。  
「ぁはッ! ……ぁぁ、あああ!」  
 ほんのわずか触れただけで若菜は感極まった声を洩らした。  
「若菜?」  
 そんな若菜の声に僕は思わず手を止めた。  
 それに気付いたのか、若菜が振り返る。  
「や、やめないでください……やめられたら……つらくなります」  
 真っ赤になった若菜が言葉を継ぐ。  
「若菜……うん」  
 うなずくと、僕はまた手を動かしはじめた。  
「あぁっ……ぅくっ……ん、んッ……」  
 行為のたびに若菜の苦悶に似た声が上がる。  
 
 形をなぞるように、若菜の大切な場所を僕は指で丁寧に前後させた。  
 複雑な形状の肉ひだを指でかき混ぜると、ヌルヌルの熱い液体がまとわりつく。  
(若菜の準備は整っているみたいだ)  
 僕自身、もう我慢できないほど高まっていた。  
 手早くコンドームを装着する。  
「いい?」  
 ベッドに四つんばいにさせた若菜の腰に手を当て、先端をわずかに膣口に潜り込ませて聞く。  
「は、はい。いいです、もう大丈夫です……来てください」  
 潤んだ瞳の若菜が僕を振り返ってうなずいた。  
 それを見た瞬間、僕の中の獣性が猛った。  
「ごめん……今日、優しくできない」  
 そのまま返事を待たずに強く腰を送り出す。同時に若菜の腰をしっかりと引き寄せた。  
 
ぐちゅっ……!  
 肉棒が若菜に埋没する。  
「んくっ! ……くぅ、ふぁっ、はぁぁぁぁぁっ」  
 中に侵入していくと若菜の体から力が抜けていくのが分かった。  
 それでも若菜の中だけはこわばっていて、僕を押し返そうとするかのようにきつく締めつけている。  
 ……その締めつけが信じられないほど気持ちいい。  
「っぅ、くぅん……」  
 若菜が鼻を鳴らして切なげな声を洩らす。同時に膣がキュッと締まる。  
「若菜……そ、そんなに締めつけたら……出ちゃう」  
「わ、わたくしは……んっ、な、なんにも……あっ、していませんっ」  
 恥ずかしそうに僕の視線から逃れるように若菜が前を向いた。  
 そんな若菜に欲情が増す。  
「若菜っ!」  
 激しく動かす。若菜のぬくもりや香りが僕に流れ込む。  
 ……若菜をたくさん感じている。若菜も感じている。お互いをきちんと感じあっている。  
「あ、あっ…ぅん、ぅンっ……んぅぅ、ん、あっ、あッ」  
 淫らな声を若菜が発する。それだけで僕の興奮も高まっていく。  
 その時、僕は若菜だけだと思っていた全身の震えが自分にも起こっているのに気が付いていた。  
 
「若菜っ、若菜っ!」  
 名前を呼びながら、腰を叩きつけるようにして若菜をえぐる。  
 奥まで強く突くと若菜の体がのけぞる。  
「あぁっ! ぅンッ、あっ、あっ!」  
 僕に突かれながら若菜が淫らな声を上げる。  
 何度も体を重ねたことにより、熟れはじめた若菜の肉体は性の歓びに目覚めている。  
「んんっんっハァっ」  
 いささか乱暴とも思える僕の攻めにも、若菜は嬌声を上げて快楽を訴えた。  
「若菜っ、好きだよ……大好きだよ若菜……愛してる、若菜!」  
 想いを言葉にして、若菜の中を満たした欲棒をこすりつけるように動かす。  
 腰を密着させたまま、そこで『の』の字を書くように円運動をくり返す。  
 モノを奥深くまで挿入された若菜は大量の愛液を膣口から太ももにしたたらせた。  
「ひんっ! ああ、あ……」  
 背中を反らして若菜が悦喜の声を上げる。  
 それと同時に若菜の粘膜の熱い内壁が僕を締め上げる。男性器がこすられる。  
「ぐっ……」  
 あまりの気持ちよさに、食いしばる歯から快楽のうめきが洩れてしまう。  
 今度は若菜の中で前後させようと思い、腰を引いた。  
 すると内部のひだが、まるで引かせまいとするかのように僕のカリ首に絡みつく。  
 それに構わず肉茎を引き戻すと、それが大きな快感を与えるのか若菜が鳴いた。  
「んんんっ! あ……ああっ!」  
 抜けきる直前まで淫茎を戻し、再び一気に叩きつけるように奥まで突き刺す。  
「ひゃんっ!」  
 二人の下腹部の肉がぶつかり合い、  
ぱんっ!  
 と小気味いい乾いた大きな音が静かな部屋に鳴り響く。  
 その衝撃と、奥までえぐられた快感なのか、若菜の体が跳ね上がった。  
「あ……ああっ!」  
 陶酔した感じの若菜の腰を両手でつかむ。そうして元の姿勢に戻す。  
 腰を固定したまま僕は再度若菜を突き上げた。  
「あっ! あっ! あっ! あっ!」  
 僕が腰を突き入れるたびに若菜は悦声を上げ、中は収縮を起こした。  
「だ、だめですっ! だめぇっ!」  
 激しく突かれながら若菜が叫ぶ。声に切迫した響きが濃くなっていく。  
 それに構わず、僕は若菜を後ろから何度も何度も突き立てた。  
 そうしながら若菜の背中に胸を合わせ、また背中を反らし角度を変えて若菜を攻める。  
 狭い膣道で僕のペニスは突く場所を変えながら何度も前後した。  
 同時に波打つ長い髪の中をかき分け、若菜の背中にも舌を這わせる。  
 若菜は胸をベッドに押し付けて潰すようにしながら体を前後に揺らしていた。  
 
 射精感が押し寄せる。限界はすぐそこまで来ている。  
「若菜……イキそうだよ若菜……」  
 一緒にイキたい、若菜と絶頂を共有したい。そう思って声をかけた。  
「はぁ、はぁ……若菜?」  
 返事がない。  
 動きを止める。  
「若菜?」  
 もう一度呼びかけて若菜を見る。呼吸は規則正しく続いている。  
 しかし反応がない。……気を失っているようだった。  
(失神してしまったのか?)  
 誇らしい気持ちもあったが、どうしたらいいのかわからずに若菜からそっと離れる。  
 そうしてベッドにひざ立ちして若菜を見下ろす。  
 射精の直前まで高まっていた欲望が股間で脈打っている。  
 大きく固くそびえる勃起は放出をねだるようにビクビクと脈動を続ける。  
 ……出したい。  
(だめだ……我慢できない)  
 若菜の裸を見ながら僕は勃起を握り、手慣れた動作で前後させた。  
 考えたら、若菜と旅をするようになって初めてのオナニーだ。  
 たちまち射精感が高まっていく。  
「はぁ、はぁ、若菜っ……うっっ!」  
 
 射精後のけだるさの中で白濁に満たされたゴムをはずし、口を縛ってティッシュにくるむ。  
 それをくずかごに捨てるためベッドを降りた。  
 カーテンを開けると月明かりが部屋を満たした。冴え冴えとしたきれいな月だった。  
 若菜と一緒に達したいと思ったけれど、射精したことで肉体は満足を得ていた。  
 月を見ながら僕はしばらくそのままでいた。  
 鼓動が落ち着き、熱を持った体が徐々に冷えていく。  
 体を見ると互いの体液や汗にまみれている。僕は熱いシャワーを浴びようとバスルームに向かった。  
 
シャーーーー  
 思いっきり熱いシャワーの中に体をゆだねる。  
 肉体的にも精神的にも満足を得た体にその刺激が心地よい。  
 僕はしばらくその感覚を楽しんでいた。と、  
カチャッ  
 静かな音がした。  
 振り向くと若菜が恥ずかしそうな顔で立っている。  
 目が覚めたようだ。  
「こちらで音がしたもので……」  
 そう言ってぽつねんとこちらを見ている。  
(失神したことは言わないでおこう。若菜も恥ずかしいだろうし)  
 僕は何もなかったかのように若菜に声をかける。  
「若菜もシャワー浴びなよ。濡れたまんまだと気持ち悪いでしょ?」  
 その言葉に若菜は真っ赤になってうつむいてしまった。が、顔を上げると  
「お湯加減はいかがですか? お背中、流してさしあげます」  
 言うなりタイル地に足を伸ばした。  
 
 近付いてきた若菜の手を取ると、僕はいきなり  
ぐいっ  
 と抱き寄せた。そして引っぱるようにして身を倒す。  
 そのまま、若菜がタイルで背中を打ったりしないように自分が下になって転がった。  
「きゃっ!」  
 小さな叫びを上げる若菜。  
 僕はその口を唇でふさぐ。  
「ん……」  
 
 唇を離すと  
「突然ですからびっくりしました……重い、ですよね」  
 そう言って僕の上からどこうとする。  
「重くないからこのままでいて……。それに僕の体洗ってくれるって言ったろ?」  
 そのまま腕に力をこめて離れられないようにする。  
「で、ですがこのままでは……」  
「若菜の体を使って洗ってほしいな」  
「! ……そ、それは」  
「お願い……ね?」  
 しばらくの沈黙のあと、  
こっくり  
 全身を朱に染めて若菜がうなずいた。  
 
 若菜はボディソープを手に取り、自分の身体で泡立てる。  
 ……たちまち若菜の体が泡まみれになった。見た目がすごくいやらしい。  
 あくまでも願望を口にしただけだ。まさか本当に実現するとは……。  
ぬるんっ  
 シャボンを身にまとった若菜が僕の肌に触れる。  
「うあっ!」  
「き、気持ち…いいですか?」  
「うぅぅっっ!」  
 若菜のやわらかい体と泡のヌルヌル感とで、言葉を失うほどの気持ちよさだった。  
(ま、まずい……かも)  
 股間がぴくんっ、と脈を打った。  
 
「ん……」  
 鼻にかかった色っぽい声を洩らして若菜が僕の上で覆いかぶさるようにして前後に動く。  
ぬちゃ、ぬちょっ………  
 そのたびに体が合わさっている面から淫靡な音が響く。  
 若菜が動くたび、胸のふたつのふくらみが僕の体にむにゅむにゅと当たる。  
 やわらかなお腹のあたりはちょうど僕の股間の上を行き来する。  
(あ……勃ってきた……)  
 射精してそんなに経っていないのに、この状況と刺激とで股間に血液が集まっていく。  
「ん……はぁ…ど、どうですか?」  
「き、気持ち…いいよ若菜」  
 僕の返事を聞いた若菜は手を胸の上に置く。  
 ただ単純に体を支えるためだったのだろうけど、それがちょうど僕の乳首に当たった。  
「うぅっ!」  
 思わず声が出た。  
「? ………」  
 怪訝そうな顔で若菜は僕の乳首を指ではさむとコリコリとつまむようにこすった。  
「あぁっ!」  
 再び知らずに声が出る。  
「男の人も胸が感じるのですか? 乳首が……立っています」  
 僕もそんなこと知らなかった。だけど、どうもそうみたいだ。  
「ふふふ」  
 小悪魔の笑みを浮かべ、若菜が僕の胸を攻めはじめた。  
 
 さわさわと手のひらで胸をなでまわす。  
 石鹸ですべりがよくなっている上、若菜の手のあたたかさとやわらかさとでなんとも言えず気持ちいい。  
「気持ちいいんですか? エッチな顔……していますよ」  
 いつもと違い、自分が主導権を握るのがうれしいのか若菜が笑みを浮かべてささやく。  
 振り払おうとすれば簡単だと思う。だけど僕はこの快感をもっと味わっていたかった。  
「若菜ぁ……っっ!」  
 若菜に攻められ、不覚にも感じた声を上げてしまう。  
 
 僕の乱れる様子に気を良くしたのか、若菜は  
「わたくしで感じてくれて……うれしいです」  
 そういって体を下にずらした。  
 若菜の胸がお腹に当たる。やわらかく弾力のあるふくらみから絶妙な刺激が伝わる。  
「うっく……あぁっ!」  
 恥ずかしいことに、僕は若菜から与えられる快感に身を任せることしかできなかった。  
「ここは……どうですか?」  
 そう言って若菜の手がだんだん下方に伸びていく。  
 そこには……。  
 
「もう…こんなになってます……」  
 若菜の言葉に僕の顔が熱を持ったのがわかった。たぶん、僕、いま真っ赤だ……。  
「………」  
 返事ができずにいる僕に  
「うれしいです」  
 そう言うと、若菜の手が勃起をゆっくりと上下にしごきはじめた。  
「うぅっ!」  
 はしなくも声が出た。  
「熱いです……」  
 ボディソープの泡と手のぬくもり。それらがあいまって少しずつ高まっていく。  
「……っっ!」  
 
ずっちゅ、ぬっちゅ、ぶちゅっ………  
 勃起がしごかれる音が浴室に響く。  
「ううっ、あぁっ!」  
 つい声が出てしまう。  
ずちゅっ、ぬちゅっ、ぐっちゅ………  
 見ると、僕を攻めながら若菜も上気した顔をしていた。  
「はぁ、はぁ、はぁ」  
 若菜の甘い吐息が顔をくすぐる。  
 湯気の温度と高まる興奮。それらで頭が働かなくなる。ぼうっとしてくる。  
ぬちゅっ、ぐちゅっ、ぬちゃっ………  
 少しぎこちないが、その微妙な指の感触に快感が増す。興奮があおられる。  
「はぁ、はぁ、はぁ………」  
 上気した顔で吐息を洩らしながら若菜が僕を絶頂へと押しやっていく。  
(このまま若菜の手で射精させられるのもいいか……)  
 そんな思いが心をよぎった。  
 
 尿道口のあたりを指が這いまわる。カリのくびれがさすられる。袋がくすぐられる。  
 数日前まで処女だった若菜が、今ではここまでオトコを翻弄している。  
 そうしたのは自分だ。そう思うとどこか誇らしげな気持ちになった。  
 その一方、だからこそ若菜にイカされるわけにはいかないと主張する自分もいた。  
 若菜に愛撫を頼んだのも自分だという考えがよぎる。  
(反撃だ!)  
 僕は身を起こすと若菜の股間に手を伸ばした。  
 
 すでにじっとりと濡れた場所に指が及ぶ。そこで指を小刻みに動かす。  
「あっ、んぁっ!」  
 若菜が嬌声を上げる。  
ぷちゅっ、くちゅっ………  
 ぬるぬるの溝を指が動き回る。  
「あっ、ダメですっ! んあぁ……」  
 僕の上でのけぞりながら、それでも若菜はペニスから指を離さない。  
 今度は空いているほうの手のひらで若菜の胸の上の愛らしい蕾をこする。  
むにゅ、むにゅ……  
 そのまま先端をつまもうとするが泡のせいで指がすべった。  
「あっ、んんっ、あぁっ!」  
 それが微妙な感覚を与えたのか、若菜がうめくように鳴いた。  
 同時に若菜の手がおろそかになる。  
「あっ、あ…んんっ」  
 ぴくぴくと引きつるように僕の上で震える若菜。……かわいい。  
 それを見ながら、僕は股間に伸ばしていた手でクリをつまんだ。  
「あっ、んんっ……ああぁぁっ!」  
 
ビクンッ  
 と身を震わせて若菜の体が反った。  
「気持ちいい?」  
 若菜の目を覗きこむようにして聞くと、  
「し、知りません……」  
 真っ赤な顔でそう答えた。しかも今しがたまで動きが鈍っていた手の動きが早まる。  
 剛直をまさぐる手の動きがひたむきさを増した。  
 ……自分が絶頂を迎える前に僕を射精させようという考えなのか?  
 そうはいかない。  
「じゃあこれは?」  
 肛門を締めて射精をこらえると、僕は若菜への攻めを本格的に開始した。  
 
 陰核からひだに沿って指を這わせる。  
 熱くほとびる肉ひだを指先でつまみ、軽く引っぱるようにして動かす。  
ぬちゅう……  
 そのまま膣に指を挿しこむとまわりから僕の指が締めつけられた。  
(きつい……)  
 軽く指を前後させると  
「んんっ、あぁぁ……」  
 若菜の手が僕のモノから離れ、身体が強く震えた。  
ずっちゅ、ぐちゅ、ぬちゅるっ………  
 少しずつ指の動きを早める。  
「あ、あ、んんっ! あぁぁっ! んんっ……」  
 それに呼応するように若菜の声が高くなる。  
ずちゅっ、むちゅっ、ぬちゅぅっ………  
「ふわ……あ、ん……はぁ、は……んん、ン……」  
 どんどん若菜は絶頂に向けて高まっているようだ。  
 
ちゅぽっ  
 指を抜く。  
「……あ」  
 切なげな目で僕を見る若菜。もっと続けてほしい。そう言いたげな目だった。  
 膣から抜いた指を顔の前に持ってくると若菜に見せた。  
 べっとりと愛液をまとい、ぬらぬらと光る指をぬちゅぬちゅとこすり合わせる。  
 指が離れるたび、いやらしい液体が糸を引いた。  
 若菜は恥ずかしそうに目を伏せたが、すぐに切ないようなじれったいような目で僕を見上げた。  
 そっとその口をふさぐ。  
「ん、んん……」  
 そのままゆっくりと舌を絡めた。  
 
 舌の生あたたかい感触が僕の脳をしびれさせる。  
 もっと強く若菜と感じあいたいと思った僕は胸に手を伸ばした。  
「んぐ……」  
 途中でやめたせいか体全体が敏感になっているようだ。乳首に触れただけでピクンッと反応する。  
 続けて、やわらかいけれど芯にわずかに固さを残す独特の触感のふくらみをなでさする。  
「ひんっ!」  
 若菜が感極まったような声をあげる。  
(感じている?)  
 その反応が僕の心を躍らせる。僕は少しだけ胸に重点を置いて攻めてみた。  
 
 泡ですべりがよくなった乳首を指の腹で転がすように左右に動かす。  
 手のひらで乳房全体を押し上げるように圧迫する。乳首をつまんで引っぱってみる……。  
 僕の手にちょうど収まる感じの双球を五本の指を使って揉む。  
「ひっ……んんっ!」  
 若菜はぎゅうっと僕の腕を握るとしゃくりあげるように呼吸を止めた。  
 その勢いで顔が離れる。  
「あふぅ、くぅん……んぁあ」  
 ……色っぽく鳴く若菜に嗜虐心があおられる。  
「若菜ってえっちな声出すんだね……乳首もこんなに固くなってるよ」  
 耳元でとどめを刺すようにささやいた。  
 
 真っ赤な顔でいやいやをするように首を振る若菜。  
 ……ますます欲望が猛る。  
(入れたい……)  
 僕は若菜の腕を取る。そして挿入するために体勢を入れ替えようとした。  
(固いタイルの上だと若菜がかわいそうだな……)  
 直前でそう思いとどまる。  
「若菜、立って」  
 僕は若菜を立たせると壁に背を預けさせて片足を持ち上げた。  
「……あ」  
 濡れて光る秘部をあらわにし、身をよじる若菜。  
「かわいいよ若菜……」  
 胸に口を付けながら中指を膣に入れる。そしてくじるようにかきまわす。  
「あ……ん、ぁ……」  
 最初はゆっくりだった指の出し入れを少しずつ早くする。  
ずちゅっ、ずちゃっ、ぬちゅぅっ………  
「ぁあっ……ん、くふっ……は…ふ、んっんぅ……くぅんっ、んぅ……くふっ」  
 それに合わせるかのように若菜の声が淫らに変わっていく。  
 
 指を出し入れしたまま僕はひざをついた。  
 そうして若菜の恥ずかしい部分を口で激しく吸いたてる。  
ちゅうぅぅ……  
「あ、だ、だめですっ……そんなっ! んんっ…あンっ!」  
 身体をくねらせて抵抗する若菜。  
 僕は若菜を押さえる手に力を入れた。  
「あ……ンっ、ふぁッ、んっ、ひゃ……っふ、はふ…は、ンっ…んふぁ、はふっ!」  
 乱れる若菜に興奮があおられる。  
 
 こねるようにゆっくりと親指の先で陰核を転がす。  
 膣に挿入した指は中を練るようにかき混ぜる。  
「はぁ、は…あ、い……いやです、もうっ…ぁあっ、はっ! んんっ、あんっ…ぁ……っふっ!」  
 若菜の声に切羽つまった感じがにじむ。  
 僕も射精したくてたまらなくなっていた。  
「若菜……」  
 立ち上がり、名前を呼んで口付ける。  
 そうしておいてもう一度ひざの裏に手を当てて抱えあげる。  
 そのまま肉棒を恥裂にあてがうと、  
ぐぷぅっ!  
 ねじ込むように挿入した。  
「んく…っふ、あふぅっ!」  
 
 熱くて狭くて、とろとろに蜜をたたえた膣の感覚を味わう。  
 だけど、まわりからきつく握られるような締め付けに我慢ができなくなってくる。  
「若菜っ!」  
 腰を突き上げる。  
「ひんっ!」  
 僕の動きに同調して若菜が鳴く。  
 ……腰が止まらない。  
「は、激し…すぎます……」  
 腕を僕の首に回してすがりつき、若菜が絶え絶えの息で告げる。  
「ごめん……止められない……」  
 そう答えるのが精一杯の快感。目の前が真っ白になるような悦楽……。  
 
「くっ、若菜ぁ……」  
「はぁ、は……あンっ、んんっ」  
ずちゅっ、ずちゃっ、ぶちゅっ、ぬちゃっ………  
 僕のうめきと若菜の声、剛直から発する音が浴室内に充満する。  
 バスルームに反響する互いの吐息と性器がこすれあう音はこの世で最も淫らに思える音だった。  
 ……興奮が限界いっぱいに高まる。  
 
 若菜との結合部から垂れた淫液が太ももを伝う。  
「んっ、はふっ! あふっ……イッてしまい…ます」  
 オンナの快楽を身をゆだねる若菜の、苦悶にも似た愉悦の表情に嗜虐心が増す。  
(もっと感じさせる!)  
 
 僕は腰を動かしながら若菜の乳首を口に含んだ。  
 そうしてしこるように尖った乳首を口の中で転がす。  
「あっ、あ…だめです……」  
ずちゅうぅぅ……  
 激しく吸いながら若菜の奥に深く腰を差し込んだ。  
「はふ、ン、くっ! ……ぁあ…んむ、ぅう……ふっ」  
 若菜のあえぎに合わせ膣がきゅっと締まり、背すじをゾクゾクした快感が走り回る。  
「ふぁっ、んんっああ……お、おかしく…なり…そうです」  
 そう言ってぐったりと僕にもたれかかる。体も少し痙攣しているように感じる。  
(イクのか?)  
 
「若菜? 若菜?」  
 僕の問いかけにも答えられず、若菜はよがりつづける。  
「んん……ぁふ、は……んっ! ……ん! んんんんんーーーー!」  
 ぎゅっと膣が収束する。  
「あっ、イク、イキますっ! ……い、イクうぅううううーーー!」  
 若菜が絶頂した。  
 それに合わせ、しぼり取られるように僕のモノが根元から先端に向かってしごきあげられた。  
「っっっ!!」  
 腰の奥で快感が炸裂した。  
びゅくっ! びゅるっ! ずびゅっ! びゅびゅぅっ!………  
 射出を待ちわびていた精液が若菜の膣内にまき散らされる。  
「あっ、あぁ、あ…ぁあ」  
 声にならない声を上げ、びくびくと体を痙攣させながら若菜は僕の精を受け止めていた。  
どぴゅっ! ずぴゅっ! どくっ!………  
 収縮をくり返す若菜の膣が勃起を締めあげ、それに呼応するように射精が続く。  
「んっ! ぐっ、うぅっ!」  
 そのたびに僕は苦悶に似たうめきを発しながら白濁を放ちつづけた。  
 
 たっぷりと精液を注ぎ込み、射精が終わる。萎えた陰茎が膣圧で押し出される。  
 立っていられなくなったのか、若菜は僕にすがりつくようにずるずるとくず折れ、タイルに横座りする。  
 そうして愛液と精液にまみれた淫茎のそばで絶頂の余韻の痙攣にヒクヒクと震え続けた。  
 その股間からは初めて胎内に射ち出された精液が垂れてきている。  
(若菜を本当に僕のものにした……)  
 僕は若菜からこぼれる白濁を見ながら、そんなことを思っていた。  
 
 愛液と精液にまみれた肉棒を若菜の顔から離すようにそっと腰を引く。  
 と、若菜は荒い息で顔を上げると力を失ったペニスを口に含んだ。  
「わ、若菜!」  
「ちゅっ…ちゅぱ、んむ……じゅる……」  
 そのまま舐めて清めていく。尿道に残る精液を吸う。袋のほうに垂れた愛液を舌ですくう。  
「若菜……」  
 僕の困惑をよそに、若菜は何かに憑かれたように男性器を舌と唇で愛撫しつづけた。  
「若菜」  
 もう一度呼びかける。  
 と、若菜はふと我に返ったという素振りで僕を見上げた。  
 そして慌てたように肉茎から離れると  
「こんなになってしまって……恥ずかしいです」  
 本当に恥ずかしそうに言ってうつむいた。  
「僕はうれしいよ。だって若菜がこんな姿見せてくれるの、僕だけでしょ?」  
「知りませんっ!」  
 怒ったような、それでいて恥じらいの表情を浮かべる若菜を僕は強く抱きしめた。  
 そして性の満足の余韻にひたりながら口づけを交わした……。  
 
最終日  
 京都に着いた。ここで若菜とお別れだ。  
「ここが……最後の街なんですね」  
 心なしか若菜の声が震えているように感じられる。  
「……うん」  
「あなたと過ごした幾日か、決して忘れはいたしません」  
「僕だって忘れないよ」  
 ふと気づくと若菜の瞳に光るものがある。  
 それでも若菜は気丈に  
「とても楽しかったです。普段は中島さんの車でしか移動しませんからとても新鮮でした」  
 そう言って笑顔を見せた。  
「若菜……」  
「貴重な経験をさせてくださいまして、本当にありがとうございました」  
 そのまま若菜が頭を下げる。  
 
 ……いつまで経っても顔を上げない。肩が震えている。泣いてるのか?  
 その姿を見ていると僕も心が揺らぐ。このまま若菜と別れたら、次はいつ逢えるかわからない。  
 家を長く留守にしたことで若菜がおじいさんに叱られるかもしれない。外出が禁じられるかもしれない。  
 そんな逡巡の間に若菜はようやく顔を上げ、言葉を続ける。  
「大切な思い出を一つ一つ……胸の中へそっとしまっておきますね」  
 泣き腫らしたのがはっきりわかるほど目が真っ赤だった。  
 このままでは……このままではダメだ。  
 心を決めて僕は若菜に言った。  
「おじいさんに挨拶したいんだけど」  
「……構いませんが、おじい様に何かご用でもおありですか?」  
 若菜はちょっとだけ意外そうな顔をした。  
「うん。……若菜を僕のお嫁さんにくださいって言おうと思うんだ」  
「!」  
 目を見開いたま若菜が固まっている。よほどびっくりしたみたいだ。  
「若菜のいない生活はもう僕には考えられないんだ」  
 若菜の返事も待たずに僕は続ける。  
「責任取るとかそんなんじゃないんだ。もちろん若菜の処女をもらったことの大きさは分かってる」  
 小学生のあの日、お蔵の中で僕は若菜を守ると誓った。  
「若菜がつらい時には僕が力になりたい。若菜がうれしい時は一緒に喜び合いたい」  
 僕たちはしばらく離れて時間を過ごしていた。でもこれからはずっと一緒にいたい。  
 どんなときにも若菜のそばにいてあげたい。若菜と共に人生を歩んでいきたい!  
 そんな精一杯の想いを込めて若菜に話しつづける。  
「今の僕では若菜を幸せにするって言い切れない。それが悔しいし、自分に腹が立つ」  
 僕はまっすぐに若菜を見つめ、思いの丈を語る。  
「でもね、僕はどんなことがあっても若菜を悲しませたりしない。若菜を裏切ることもしない」  
 そこで大きく息をついた。そして  
「だから……僕と……」  
 その言葉をさえぎり、若菜が言った。  
「はいっ! 若菜はあなたについて行きます。たとえおじい様が反対なさっても、若菜は、若菜は……」  
 そのまま僕の胸に顔を埋めると、  
「好きです……あなたが大好きです。愛しています」  
 ……最後はほとんど聞き取れないほどの涙声だった。  
「うん。僕もおじいさんに認めてもらう。説得力ないと思うけど、一生懸命説明する」  
 僕の胸の中で若菜はただただうなずくだけだ。  
「そして若菜を誰よりも大切にすることをわかってもらう!」  
「若菜は……若菜は……」  
 言葉にならない。若菜はただ泣きじゃくるだけだ。  
「行こう、おじいさんのところへ」  
 僕は若菜の肩を抱くと一歩を踏み出した。  
 自分の全存在を賭け、若菜を一生守るということをおじいさんに伝えるために。  
 
 
           おわり  
 

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