一日目  
 次の目的地に向かおうと駅まで行く途中、街角に見慣れた顔が立っていることに気が付いた。  
 ……若菜だ。  
(どうしてこんなところに?)  
 そんな疑問を抱えながら歩いていると、向こうもこちらに気付いたようで、  
「あら、こんにちは。どちらへいらっしゃるんですか?」  
 にこやかに話しかけてきた。  
「今あっちこっちを旅行してるところなんだ」  
 そう言ってカバンを掲げて見せる。  
「そうでしたか、素晴らしいですね。……お一人で、ですか?」  
「そうだよ。一緒に来る? こんなプランがあるんだけど」  
 若菜と旅ができたらどんなに素敵だろう。そう思ってプランカードを見せた。  
『お好み焼き行商の旅』  
 ……カードを見た若菜の表情が険しくなった。  
 
「……それはご迷惑になりますからやめておきます」  
 言葉遣いは丁寧だが、強い拒絶の意思が感じられる。  
「そんなことないよ」  
「いえ、本当に。それに、おじい様に叱られますから……」  
「でもさぁ……」  
 僕は食い下がったが、  
「それにお好み焼きは大阪の食べ物ではありませんか?」  
 困惑の色を浮かべて若菜が答える。  
「同じ関西なんだから、京都も大阪も食文化はそんなに変わらないんじゃないの?」  
 無責任に言う僕に、  
「全然違います! 東京だって下町と山の手では味付けが違うのではありませんか?」  
 若菜が柳眉を逆立てて怒る。……美人が怒ると怖い。そう思った。  
「ご、ごめん。僕が悪かった。言いすぎたよ……」  
「わかってくださればいいんです」  
 感情的になったことを恥じ入るように若菜が頬を染めた。  
 
 僕はポケットからもう一枚のカードを取り出した。そしてそれを若菜に見せる。  
「若菜、これでどう?」  
『せつなさのカード』  
「これは……」  
 そのカードを見た途端、若菜の態度が軟化した。  
「ついていってもよろしいんですか? お邪魔じゃありませんか?」  
「邪魔なわけないじゃない。若菜さえよかったら一緒に行こう!」  
「……はい。お供します」  
 こうして僕は若菜と旅に出ることになった。  
 
 各地を回りながらお好み焼きを売る。こういうことに慣れていない僕も若菜も失敗続きだった。  
 ……成績は芳しくない。結局ほとんどのお好み焼きが売れ残ってしまった。  
 今日の売上げはメダル7枚のマイナスだ。それでも工面してホテルは別の部屋を取ることにした。  
 一緒の部屋ってのは、僕はよくても若菜が嫌がるだろうからな……。  
 
 入ったホテルは予算が足りないせいで部屋面積が狭く、調度は小さなベッドのみ。  
 しかもそれ以外のスペースはほとんどないに等しかった。  
 部屋にシャワーはなく共同風呂。トイレも各フロアに一つで洗面所すら備えていない部屋。  
 若菜に対する申し訳ない気持ちで僕の心はいっぱいになった。  
「ごめんね若菜、こんな部屋で」  
 綾崎邸に比べ、あまりにもみすぼらしい環境に心から詫びる。  
「いいえ、体を休められるだけありがたいです。……お心遣い、感謝します。お風呂もいいお湯加減でしたよ」  
 湯上がりで火照った顔の若菜がそう言ってにっこり微笑む。  
 
 心が熱いもので満たされる。若菜の優しさと自分自身の情けなさとでふいに涙ぐみそうになった僕は  
「じゃあまた明日。おやすみ、若菜」  
 あわててそう告げると自分の部屋にきびすを返した。  
「はい。おやすみなさいませ」  
 丁寧にお辞儀をしたのか、衣擦れの音を背後に聞きながら僕は自分の部屋に入った。  
 
 ベッドに横になる。  
 寝返りを打つのが精一杯で、手足を伸ばすこともままならない狭さ。  
(どうせ今夜だけの辛抱だ。明日はもっといい部屋に泊まれるといいな……)  
 そんなことを考えていたときだ。……突然部屋の電気が消えた。  
『きゃあぁぁ!』  
 若菜の声。  
 ガタガタと騒がしい音がひとしきりしたあと、  
ドンドンドン!  
 僕の部屋のドアが叩かれた。  
 
『開けてください! 若菜です。お願いです、開けてください!』  
 若菜に何かあったのか? あわててドアにすっ飛んでいく。  
ガチャ  
 ドアを開けた途端、若菜が僕の胸に飛び込んできた。  
 
「ど、どうしたの若菜?」  
「わ、わたくし……暗くて狭いところは苦手なんです……」  
 小刻みに体を震わせ、若菜が言った。  
(そうか、あのときのことが今でも怖いんだな……)  
「停電だと思うよ。ほら、窓の外は電気ついてるし」  
 そう言って若菜を安心させようとしたが、僕にしがみついて離れようとしない。  
 
 若菜のぬくもりと女の子らしい甘い匂いに少しずつ淫らでよこしまな気持ちになっていく。  
 必死に自分を抑えようとするが、それとは裏腹に股間には力がみなぎっていった。  
 体の前面を僕に押し付けている若菜がそれに気付かないはずがない。  
 だがうつむき加減の若菜は表情がうかがえず、本心が読み取れない。  
(やっぱり迷惑だよなぁ……それどころか軽蔑されるかも)  
 そう思っていると  
「わたくし、あなたのことを信頼しています……」  
 顔を上げ、若菜が言った。  
 
 つややかな髪と、紅を帯びたなめらかな肌……。  
 何より瞳が美しかった。いつもは慈愛を感じさせる目が、今日は女性的な魅力にあふれていた。  
 そんな若菜を見ているうち、僕の胸はどんどん苦しくなっていった。  
「若菜……」  
 名前を呼んでそっと抱き寄せる。  
「……あ」  
 小さく声を出し、しかし逆らわずに僕に抱かれている若菜。  
「若菜みたいな素敵な女の子目の前にして……我慢できる男なんていないよ」  
 そのまま静かに唇を重ねた。  
 
 ホテル備え付けの浴衣は若菜の体の線をくっきりと浮かび上がらせていた。  
 腰ひも一つで体に留められた薄布は、ちょっと力を入れるだけで脱がせられるほどもろいものだった。  
 目を閉じてキスをしていても、さっきまで見ていたそれが頭にちらつく。  
 童貞の僕に、それはあまりにも強すぎる刺激であり、誘惑だった。  
 
 ……と、消えたときと同じように突然部屋の明かりが灯った。  
「あ……」  
「……あ」  
 唇が離れる。  
 明るい電灯の下で改めてお互いの顔を見合う。  
 恥ずかしいという感情と若菜に対する愛情、高まりつつある性の欲求とが僕の中で入り混じる。  
「若菜……」  
 もう一度名前を呼び、今度は明確に性愛の意志をもって若菜を抱きしめた。  
「……はい」  
 僕の声に含まれた意図を感じ取ったのだろう。若菜がまっすぐに僕を見据え返事をした。  
 
「いいの?」  
 それでも僕にはためらいがある。本当にいいのか? 若菜やご家族に責任を取れるのか?  
「わたくし、あなたにでしたらどのようなことをされても構いません。どんなことでも我慢できます」  
 かすかに微笑を浮かべ、落ち着いた口ぶりで若菜が答える。  
「我慢って言うなよ……なんか僕…悪いことするみたいだ……」  
「あ、すみません…そういう意味では……。ただ、わたくしにとって勇気のいることですから……」  
 沈んだ調子で言葉を継いだ僕を、心配そうにとりなす若菜。  
「あははは、わかってるよ。言ってみただけ」  
 冗談を真に受け、困惑の色を浮かべた若菜があまりにもおかしく、僕はつい笑ってしまった。  
「……知りません!」  
 それを見た若菜は怒ったような口調で横を向いてしまった。  
 だがその目は怒っていない。いつものように優しい瞳だった。  
 そしてそのまま僕の胸に頭をつけると  
「わたくしのことは気になさらないでください……。こうなることを……望んでいました」  
 小さな声でそう言った。  
 
「わたくしの初めて……もらってくださいますか?」  
 若菜が恥じらいの表情を浮かべて言う。  
「若菜……僕もはじめてなんだ……。その…だから…上手くできなかったら…ごめんね」  
 正直に告げる。そうして若菜の頬に手のひらを当て、慈しむようになでる。  
 僕の手に若菜の手が添えられ、そして重なった。  
「あなたが……誰よりも好きです。誰よりも愛しています。……若菜は…あなたのものになります」  
 僕の目をまっすぐに見、若菜がハッキリと言った。  
「僕も若菜が大好きだよ。若菜のこと、ずっと大切にする。ずっと守る!」  
 そしてそのまま若菜を抱きしめた。  
 
 浴衣の下の若菜の胸が僕の体に押し付けられる。その感触はあまりにも生々しかった。  
(ブラジャー付けてない?)  
 そっと手を若菜の胸に置く。  
「……あ」  
 若菜の口から小さな声が洩れた。  
 生地を通し、頂の蕾が手のひらに当たる。  
(やっぱり付けてないんだ……)  
「若菜」  
 名前を呼んでその手を襟の合わせ目から中に忍ばせる。  
「恥ずかしいです……」  
 僕の手を押さえ、消え入りそうな声で若菜が言う。  
「好きだよ」  
 安心させるようにそう言うと若菜の手から力が抜ける。僕はそのまま手を胸に這わせた。  
 
 適度に張りを持った柔らかなふくらみに指が触れる。  
ビクッ  
 若菜は弾かれたように体を震わせたが、そのまま僕に身を任せている。  
 下から持ち上げるような感じでふくらみを揉む。  
 首筋まで朱に染めた若菜はうつむいて僕と目を合わせてくれない。  
「若菜、イヤだったら言ってね」  
 そう声をかけると  
こっくり  
 かすかに首を振るが、言葉は返ってこなかった。  
 
 僕の揉む力に反発するかのように弾力を返してくる若菜の胸。  
 女性としての存在を意識させる二つのふくらみは僕を魅了した。  
 すべてを包み込むような優しさに満ちた乳房を、テクニックも何もなくただ一心に揉む。  
 先端で自己を主張する桜色をした乳首にも指を持っていき、ゆっくりと転がす。  
 突起に口をつけると舌で丁寧に舐め、しゃぶった。  
 口を付けて吸い、唇でしごく。そのまま舌で押し込むように力を加える。  
「あん!」  
 若菜が鼻にかかった声を出す。若菜の顔を見上げると目を閉じて眉根を寄せている。  
 僕は驚いて口を離すと  
「ごめんね、痛い?」  
 そう聞いた。  
「平気です。……あの……続けてください」  
 これ以上ないほど真っ赤になった若菜が答えた。  
 
 よかった。若菜を傷つけるようなこと、痛がるようなことだけはしたくない。  
 再開する。  
 若菜の乳首を唇でしごくと、最初の頃に比べ、乳首がとがったように感じた。  
(乳首が立つってこれのことか?)  
 
 柔らかいのだが、硬さも残した若菜の乳房。  
 触っててこんなに気持ちいいものがこの世にあったのか。……僕は感動した。  
「若菜……好きだよ若菜……若菜…若菜……」  
 愛撫の最中にも何度も名前を呼ぶ。これだけ若菜の名を呼んだのは初めてかもしれなかった。  
 
「あんっ……んっ、んんっ…はぁぁ……あッ」  
 艶を帯びた若菜の声。  
 深窓で育てられ、女性らしい優しさにあふれた若菜。優雅な物腰に芯の強さを秘めた若菜。  
 育ちのよさを思わせる立ち居振舞いや、聡明さを感じさせる言葉遣いの若菜。  
 温かく親しみのある眼差しを僕に向けてくれる若菜。その若菜が僕の愛撫に感じている!  
 ……そんな若菜の姿に興奮が急に高まる。  
 僕は浴衣を脱ぎ捨てるとトランクスを下ろした。  
 
 痛いほど勃起し、お腹につきそうなほど反り返った陰茎が解放される。  
「!」  
 若菜が息を飲むのが聞こえた。  
「そ、そんなに大きいのが……本当に入るのでしょうか……」  
 声が震えている。  
「怖いならやめるよ」  
 無理はしたくない。若菜が望まないことはしたくないしさせたくない。  
 そう思って言ったのだが、  
「……大丈夫です。わたくしが自分で決めたことですから」  
 若菜はそう言った。そして  
「わたくしも……脱ぎます」  
 そう言って深呼吸すると、若菜は浴衣を脱ぎショーツを下ろした。  
 足先から抜くと、僕の目に付かないようにすばやく隠す。  
 そうして横になるとそのまま目を閉じた。  
 
 かすかにカチカチと音がする。見ると若菜の唇が震えている。  
 歯の根が合わないんだ。……恐いのか?  
「若菜、怖いなら無理しないで」  
「違います、緊張しているだけです。……心配なさらなくても大丈夫です」  
 本心はわからない。だけど若菜はそう言いきった。  
「でも……」  
「本当に平気ですから」  
 気丈に言葉をつむぐ若菜。  
「……うん、若菜がそう言うなら」  
 若菜を信じるしかない。  
「ダメだと思ったらいつでも言ってね」  
 そう言うと、僕は若菜を静かに抱きしめた。  
 
 抱かれていることに安心したのか、若菜の震えは止まった。  
 処女の若菜の破瓜の痛みを少しでも軽減させるためにはなるべく濡らしておいた方がいい。  
 ……僕は愛撫を始めることにした。  
 
 童貞の僕には未知の場所、若菜の「女」の部分が見たい。そう思った僕は体をずらし、若菜の股間に移動した。  
 ……なんと言えばいいのだろう。悪友たちとビデオやエロ本で見たものとは色も形も違っていた。  
 醜悪。そんなイメージしかなかったそれは、意に反し端正だった。  
 
 中心に二筋あるぼってりした肉のひだが小陰唇だろう。  
 その奥でヒクヒクとうごめく亀裂がいやらしい感じで濡れて光っている。  
 あとからあとから粘性の高そうな液体が染み出てくる。これが愛液?  
(ここに入れるんだ)  
 
 憑かれたように見入る。  
「恥ずかしいです……」  
 若菜の声に呼び戻された。  
 いつまでそうしていたのか、気が付くとこれ以上ないぐらい赤くなった若菜が僕を見ていた。  
「ごめん……若菜のここ、とってもきれいなんで……」  
「いやです……」  
 手で顔を覆い、僕の目から逃げる若菜。  
 
 もう一度若菜の股間に目を向ける。そっと触れてみる。  
 恥丘に手を乗せると最初に和毛の感触があった。  
 ……少しずつ指を伸ばす。  
「あっ!」  
 身をよじる若菜。  
 まだ早かったか? それとも感じているのか? ……判断できかね、手が止まる。  
 
 若菜の顔を見る。  
こっくり  
 僕の目を見、若菜はしっかりとうなずいた。  
 大丈夫だ。若菜は嫌がっていない。……僕は指を進めた。  
 
 濡れた中を探るうち、小さな突起が見つかった。  
「あぁっ!」  
 同時に若菜の首がのけぞる。  
 ……若菜の様子を見た。若菜も僕を見た。  
「そこは……」  
 語尾を濁し、小さな声で若菜が言う。  
(これがクリトリスか)  
 慎重に、だが適確に愛撫を集中させる。場所がわかればあとは指だけでいい。  
 僕は若菜を抱き寄せると唇を重ねた。若菜も僕の首に腕を回し、全身ですがりつく。  
 
 若菜と見つめ合う。そうしたまま静かにクリトリスに手を這わせる。  
 狭いベッドが幸いし、僕は若菜と体を密着させていた。  
「好きだよ、とっても」  
「わたくしも……大好きです」  
 見つめあう。  
「痛かったら言ってね」  
 そう告げると静かに、優しく、そしてゆっくりとクリトリスを指の腹でもむ。  
「ん!」  
 若菜の目がきつくつぶられる。  
 だめだ、強すぎた。  
「ごめん!」  
「違います……」  
 目元まで染め、首を振る若菜。  
「若菜?」  
「痛かったらちゃんと言います。心配しないで続けてください」  
 小さな声だがしっかりと若菜は答えた。  
「わかったよ……」  
 
 さっきと同じぐらいの力でクリを揉む。僕の指に若菜のヌルヌルした粘液が絡みつく。  
 ある程度の力を入れても若菜が痛がらないことが分かる。  
 ……少しずつ力を強くした。  
 
 僕の首に回された腕に力がこもる。だが若菜は痛がっていないようだ。  
「んんっ、くぅん…あぁ.ん……くん、ふんっ……」  
 それどころか鼻を鳴らすようななまめかしい声を出している。  
 さらに力を増した。  
 静かに撫でるだけだったクリを、転がしたり、皮膚の中に埋め込むように強く押さえつけたりする。  
 あるときは羽根のように軽やかに触れる感じの刺激を与える。  
「あっあっあっ……」  
 若菜の息が荒くなる。体もうっすらと汗ばんでいる。  
 感じているんだ!  
 こんな若菜の姿は見たことがない。若菜がこんなになるなんて想像したこともなかった。  
 
 今度は恥裂に指を伸ばす。と、ぬるぬるした感触が指にまとわりついた。  
 そのまま溝を上下に撫ぜる。すると中ほどに一か所くぼんだ場所があることが分かった。  
(ここだ)  
 ためしに少しだけ指を入れてみた。  
ぬるりっ  
 なんの抵抗もなく第一関節の少し下まで指が沈む。  
「あぁっ!」  
 その途端若菜が嬌声を上げる。  
 手の甲を口元に当て、続けて大きな声が出るのを防いでいる。  
 
「ご、ごめん。痛かった?」  
「違います……」  
 そう言うと若菜が手を広げ、僕に差し伸べた。  
(抱いてほしいってことか?)  
 膣から指を抜くと、また若菜におおいかぶさった。  
 若菜が僕を強く抱きしめる。唇を求めてくる。  
 これまで以上に激しいキス。同時に腰が押し付けられる。若菜のあえぐ声が官能を揺さぶる。  
 
 若菜は腰を持ち上げるようにして僕の手にクリを押し付けてくる。  
 僕は執拗にクリトリスをなぶった。  
 円を描くようにゆっくり動かす。上下に揺する。そして軽く押し込んでみる。  
 指の側面ではさんで静かにこする。かすかな力で叩くような刺激を送る……。  
「好きだよ若菜……愛してる…ずっと、ずっと好きだった……若菜……」  
 その間も若菜の耳元で愛をささやく。息を吹きかけ、耳たぶを甘噛みする。  
「ぅんっ、ふんっ…あ……ンっ、あ……」  
 初めて聞く若菜の淫らな声!  
 
 若菜は処女だって言った。オナニーの経験はあるのか? だからこんなに感じやすいのか?  
「若菜? 気持ちいいの? 感じたことあるの?」  
 疑問が思わず口をついた。  
「っ……いつも…あなたのことを…思って…んっ、一人で……して…います……」  
「!」  
 若菜はオナニーをしている! それも僕を思って!!  
「好きですっ……好きぃ…大好きっ!」  
 普段は見せない取り乱した調子で若菜が僕の胸に飛び込んでくる。  
「若菜!」  
「はい……」  
 唇が重なる。舌を吸いあい、唾液をすすりあう。僕たちは獣のように激しく求めあった。  
 
 若菜はすでに性の絶頂を体験していると知った僕は、キスをしながらより強くクリを攻めた。  
 少し強めにクリを揉みこむ。爪で引っかくようにこする。指先で弾くように何度か叩く。  
 指先でつまむと引っ張るように動かす。ぐっと力を入れて肉の中に押し込む……。  
「んんっ! ぐっっ……むっ…んんッ……むんっ!」  
 唇をふさがれ、それでものどの奥から快楽の声を響かせて若菜が悶える。  
(感じている。若菜が感じている!)  
 秘唇は濡れたいやらしい音を立て続ける。その分泌液でさらにクリをくじる。  
 
 呼吸が苦しくなったのか、若菜が僕から唇を離すと大きく息を吸う。そのまま嬌声を上げる。  
「あっ! あんっ……いや…だめです! おかしくなってしまいます! あっ、んっ……うぅっ! あぁっ!」  
 若菜の絶頂が近いと感じ取った僕はクリを回し揉みながら、えぐるように強く押し込んだ。  
 
「あっ! …だめっ! ……だめっ!」  
 イクのか?  
 ここぞとばかりに肉芽を強く圧迫する。  
「ひゃぅうっ!」  
 そう声を上げると、僕の首に抱きついていた若菜の身体が突っ張る。  
 ……ぶるぶると身を震わせたあと、静かに力が抜ける。  
 イッたのか?  
「若菜?」  
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」  
 荒く大きな息をついて目を閉じている若菜。  
 さっきまでとは明らかに違う。イッたんだ……。僕が若菜をイカせた。僕が若菜を!  
 男としての自信が沸いてきた気がした。  
 
「ん……」  
 しばらく息を整えていた若菜が力なく息を洩らす。初めて聞くような大人びた感じだ。  
「イッちゃった?」  
「知りません……」  
 そう言うと僕の胸に顔をうずめた。  
 
「はぁ…はぁ…はぁ……」  
 まだ少し息の荒い若菜を抱きながら髪をなでる。  
 しばらくそうしていると、呼吸を整えた若菜が僕の胸から顔を上げ、  
「えっちな子だと思わないでください」  
 赤い顔で言った。  
「どうして? そんなこと思うわけないでしょ?」  
「………」  
 僕を見上げたまま若菜は答えない。  
 
「ひとりエッチ? そんなの誰だってしてることだよ。もちろん僕だって若菜のこと思って毎日してる」  
「! ………」  
 一瞬びっくりしたような顔をした若菜だが、それでも口を開かなかった。  
「それより、若菜が僕のこと思ってくれてるってことのほうが嬉しい。幸せだよ、僕」  
「……ほんとですか?」  
 ためらいがちに、やっとそれだけを口にした若菜。  
「うん!」  
 その若菜を勇気付けるように大げさにうなずく。  
「えっちな子だってわかって、嫌われたらどうしようかと思ってました……」  
 もじもじしながら、小さな声で若菜が続ける。  
「若菜の本当の姿を見せてもらって、むしろ感謝してるぐらいだよ。僕しか知らないもう一人の若菜。ね?」  
「もう! 恥ずかしいです……」  
 そう言うと若菜はこぶしを丸めて僕を叩くまねをした。  
 その若菜の腕を取り自分のほうに引き寄せると、そのまま抱きしめる。  
「あはははは」  
「うふふふふ」  
 抱き合いながら僕たちは笑った。僕はまた一つ、若菜の新たな面を知った。それがうれしかった。  
 
 誰も見たことのない若菜の恥ずかしい姿。それを目の当たりにしたことで興奮が限界まで高まっていた。  
 入れたい。若菜に射精したい。その気持ちがどうしようもないほど昂ぶる。勃起が最大限に張りつめる。  
 お腹に当たる感触でそれを知った若菜が  
「あなたのものになるのですね」  
 僕の股間を見ながら静かな口調で言った。  
「うん。若菜を僕の……僕だけのものにする」  
 その言葉に、若菜は僕の目を見て  
「はい」  
 とうなずいた。  
 
「若菜……」  
「はい……来てください」  
 僕は体を起こすと、若菜の足の間にひざをついた。  
 ……腰の奥のほうに熱いものを感じる。  
 出したくてたまらない。精液が出口を求め、すぐそこまで来ているかのようだ。  
 
 若菜の腰を引き寄せ、先端と膣口を合わせる。  
「いくよ」  
 声をかけ、ゆっくりと怒張を挿入していく。  
「ひぎっ!」  
 若菜の体が突っ張る。  
 だがまだ亀頭がもぐりこんだ程度で、全体は収まっていない。  
 僕の体を押しのけようと両の腕に力がこめられる。だが若菜の力では僕を押し戻すことなどできはしない。  
 
「若菜…痛い?」  
「くっっ……うぅぅ、んんっ!」  
 つややかな長い黒髪を振り乱し、整った顔立ちを苦悶にゆがめ若菜がうめく。  
「んんッ! くっ…んっ……あっ……」  
 強く目をつぶり、何かに耐えているかのようにうめき声を上げる若菜。  
(やっぱり痛いんだ……)  
「ごめん、抜くね」  
 そう言って若菜から抜きさろうとした僕の背中に腕が回される。そのまま強く抱きとめられた。  
「若菜!」  
「大丈夫です……続けてください……」  
 無理をした笑顔と苦しそうな息でそれだけを告げると、若菜はまた目を閉じた。  
「でも若菜が!」  
「お願いですっ! もしわたくしのことが少しでも好きなら続けてくださいっ!」  
 若菜は本気だ!  
「……若菜……わかったよ」  
 僕は行為を続けた。  
 
めりめり……  
 若菜の狭い肉穴にこわばりが入っていく。  
「あぁ!……うっ…」  
 痛みに耐えている若菜の顔。これ以上は無理か?  
 その一方、貪欲に快感を得ようと性器をねじ込みたい気持ちも湧く。  
 少しずつ、少しずつ押し込む。ゆっくりと、ゆっくりと若菜に入っていく。  
 突然奥につっかえた感じがした。見ると一番奥まで入っていた。  
 ……若菜の処女が散った。  
 
「きついっ……」  
 あまりの締め付けに思わず言葉が出る。処女の膣がこんなに締まるなんて思ってもみなかった。  
 だけどその分、若菜の体には負担になっているはずだ。  
 若菜を見る。  
 固く目を閉じて苦痛に耐えている若菜。  
 僕の陰茎がギリギリと締め上げられる。痛みすら感じるほどのきつさだった。  
 
 僕はゆっくりと腰を引いた。  
「あぁっ!」  
 若菜が細いのどをのけぞらせてうめく。咥えこんで離すまいとするかのような抵抗が肉茎に伝わる。  
 ある程度まで引くと今度は腰を送り込む。  
「うぅっ!」  
 若菜が歯を食いしばる。狭い膣道を押し広げて入っていく感触が竿全体を包む。  
 
 僕は若菜の中でゆっくりと前後させながら二人の結合している場所を見た。  
 血。  
 肉棒は血にまみれていた。若菜の処女の血。僕が貫通した若菜の初めて。  
 
 何度目かの抽迭。  
 僕の動きに合わせて若菜の体も前後に揺れる。  
 若菜はもう声も出さずに力なく横たわっている。目は閉じられ、眉にときどきしわが寄るだけだ。  
 
 根元が熱くなってきた。射精が近い。  
「若菜……イキそう…」  
「出して……ください」  
 若菜が目を開け、僕を見てうなずいた。  
 だめだ……限界だ……。  
「若…菜っ! ……っっっ!」  
 ひときわ強く若菜の中に肉竿を突きたてると急いで抜き、僕はそこですべてを解き放った。  
 
ずびゅっ! びしゅっ! どびゅっ! びゅるっ!………  
 音がするのではないか。そう思えるほど強烈な勢いで精液が発射される。  
「あぁぁぁ!」  
 眉根を寄せ、悲痛な表情を浮かべて若菜は僕の射精を全身で受け止めていた。  
 ……膣中で出していれば間違いなく若菜が身ごもる。そう思えるほどの量だった。  
 
 恥毛のあたりは言うに及ばず、腹部から胸、はては首筋や頬にまで飛び散った僕の精液。  
 白い液体にまみれた若菜は、熱に浮かされたように  
「あ、熱いです……」  
 そう言うと、そのまま目を閉じた。  
 
 長い髪が背中に流れ、幾筋かは布団の上にこぼれている。  
 僕はティッシュを取ると静かに若菜の体を拭った。  
「わ、わたくしが自分でやります!」  
 あわてて僕を制止しようとする若菜に  
「痛かったろ? そのまま横になってて」  
 そう声をかけ後始末を続ける。  
「ですが……」  
 まだ何か言いたげな若菜だったが  
「僕が好きなら、僕の言うことも聞いて。ね?」  
 それを聞くと  
「……はい」  
 真っ赤な顔で小さくうなずいた。  
 
 若菜の体に飛び散った粘液を処理したあと、自分の体も拭く。  
 それが終わると僕たちは下着を着け、並んで横になった。  
「足の間に……まだ何かはさまっているようです……」  
 浴衣を直した若菜が頬を染めて言った。  
 そんな若菜に肉茎がピクンッと反応しかける。  
 もっと若菜を抱きたい。もっと若菜を愛したい。もっと若菜と一つになりたい……。  
(でも若菜は処女を失ったばかりだ。旅は長い。そんなに無理することないよな)  
 そう思い直し、自分の気持ちを押さえ込む。  
「ずっと抱いててあげるね」  
 そう言って僕は若菜を強く強く抱きしめた。  
 
 幸せそうな笑顔で若菜が微笑む。僕もそれに応え、優しい気持ちで若菜と見つめあう。  
 足を絡め、唇を重ね、髪をなでる。  
 肌を触れあい、意味もなく笑いあう。  
 お互いの体を密着させ睦み言を交わすうち、僕たちはいつしか眠りに落ちていった……。  
 
 
          一日目おわり  
 

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