土曜日の午後8時。
青森にやってきた僕は、おじさん(=妙子のお父さん)がいないということで、妙子の家の仕事を手伝った。そして妙子が作ってくれた夕食をご馳走になって、そろそろ帰る時間になった。
妙子は、
「泊まっていってくれればいいのに・・・」
残念そうな顔をして下を向いている。
僕も残念だが、それ以上に、そこまでお世話になるのは申し訳ない。
ちょっとの間僕たちが何も言わないと、風が木の葉を揺らす音が耳に入る。
「・・・」
「・・・」
突然、道路の方から、やけに陽気な男性の声がした。
「妙子、一緒にいるのは誰だ?」
声の方を見ると、安達のおじさん(=妙子のお父さん)だった。
なんだか赤い顔でにこにこして、僕の顔を見て、
「あっ、ひょっとして・・・」
僕が、
「お久しぶりです・・・」
言い終わる前に、
「堅苦しいあいさつはいいよ。東京の生活はどうだ?」
なんて話し始めた。
「お父さん!電車の時間があるんだから!」
妙子は必死になって僕の事情を説明してくれたのだが、おじさんはお酒を飲んでいるらしく、
「まあいいからいいから・・・」
なんて言いながら僕の話を聞こうとする。
少しくらいならと思っておじさんの話に付き合ったら、いつのまにか9時を回っていた。
(青森駅発が9時5分だから・・・、間に合わないな・・・)
おじさんが席を外した隙に、
「ごめん、妙子。今日泊めてくれる?」
と言ったら、妙子の笑いがぎこちなくなった。
「あはは・・・。ごめんねぇ・・・」
しょんぼりして謝る妙子を見ていると、やっぱり面倒見がいいんだな、と思えてくる。
それから小1時間くらいおじさんの話しに付き合って、昔僕の家族が間借りをしていた部屋の1つに泊まることになった。
部屋に着くと、妙子が珍しくおこったような表情で、
「お父さんったら、お酒を飲むとああなんだから・・・」
そう言ったかと思うと、今度は残念そうな表情になって、
「ごめんね・・・。迷惑かけちゃったね・・・」
「でも、おじさんと話すのは本当に久しぶりだったからね。それに、おじさんの話も結構おもしろかったよ」
僕の答えに安心したのかがっかりしたのか、苦笑いしながら、
「あなたも今からそんなじゃあ、お父さんみたいになっちゃうぞ」
そう言った。そして僕を見て笑う。
本当はおじさんを好きなのがよく分かって、少しうらやましかった。
「おじさんって、お酒の飲むといつもああいう感じなの?」
妙子がちょっと腕を組んだ。
「ほとんどあんな感じ。さすがに法事の席だと違うけど、飲むとやたら明るくなって、小さい頃なんか怖かったんだから」
おじさんも、かわいそうに・・・。
「明るくなるんだからいいじゃない?」
「でもね、さすがに・・・」
そこからおじさんが酔った時の話が始まり、いろんな話題が出てきた。
酒屋のこと、家族のこと、僕が引っ越してから再会するまでのことなど。
僕も近況報告も含めて、僕の周囲の話をする。
家族のこと、学校のこと、友達のことなど。
妙子は、僕の話を興味深そうに聞いてくれている。
「駅前のちょっとしたスペースに座り込んで話ししてる子たちがいてね・・・」
妙子がうなずく。
「うん」
「ズボンだったらいいんだけど、ミニスカートになるまで丈を詰めた制服でアスファルトに座り込んで話をしてるのは、どうかと思うよ。青森にはそんなことする人はいないよね?」
僕の言葉を聞いた妙子の顔から元気がなくなっていった。
そして、少し小さい声で、
「・・・東京の女の子って、やっぱりかわいいんだろうね・・・」
僕はあわてて、
「いや、そういうことを言いたいんじゃなくて・・・」
弁解しようとしたけど、妙子は寂しそうな笑顔になってしまった。
「きっと制服もかわいいんだね。私の高校の制服じゃ、スカートを切ってもバランス悪いだけだし・・・」
「別にそんなこと考えてないよ。こっちにはそういう信じられない人もいるっていう話をしたかっただけだよ」
間髪入れずに否定した。
そのつもりだったけど、わずかに笑った表情から、どこか寂しそうな感じは消えなかった。
「・・・ありがとう、あなたは優しいね・・・」
僕に気を使ってくれて、自分のコンプレックスを隠して笑っている。
そんな感じだった。僕はできるだけのフォローをする。
「妙子だって東京の子に負けてないし、妙子には、妙子のいいところがあるよ。
人の評価は外見だけで決まるわけじゃないし、それ以上に大切なものがあるでしょう?」
妙子の表情から、微笑みが消えた。
「・・・でも、きれいなほうがいいでしょ?」
「それはそうかもしれないけど、それ以外に大切なことがいっぱいあるよ」
そう言ったけど、妙子は寂しそうにうつむいてしまった。
僕のフォローは、妙子の気持ちを軽くすることはできなかったらしい。
僕は少し考える。
コンプレックスは感情だから、言葉、つまり理詰めで何か言ってもだめなときもあるのかもしれない。
それなら非言語的な部分を織り交ぜたらどうだろうか。
僕はそれに賭けてみることにした。
うつむいてる妙子に、
「いやだったらすぐにやめるからね」
とだけ言って、僕は妙子を軽く抱きしめた。
「ど、どうしたの?」
慌てて裏返ったような妙子の声が僕の耳のすぐ横から聞こえる。
「思わず抱きしめちゃうほど、妙子はかわいいよ」
妙子の声が高くなる。
「あっ・・・」
やはり、驚いているようだった。
妙子を抱きしめたまま、できるだけ穏やかな声でゆっくりと話す。
「妙子が自分のことをどう思ってるか分からないけど・・・。
おしゃれするとかに関係なく、僕は妙子をすごくかわいいと思ってる」
「・・・そんなこと・・・」
妙子の声がわずかに震えて、さっきより高くなっている感じがした。
ちょっと横顔を見ると、妙子の顔は耳のすぐ近くまで赤くなっていた。
僕は続ける。
「僕の評価じゃ意味ないだろうけど、そう思ってる。そういう人もいるんだってことだけ、覚えておいて」
妙子が僕の肩に頭を預けた。
しばらくそのままでいると、妙子が小さい声で、
「・・・うん・・・」
という返事をした。なんとか分かってくれたようなので、
「突然こんなことして、ごめんね・・・」
言って離れることにした。
ところが離れようとしたら、妙子の顔が僕の目のすぐ前に現れた。
僕の腕の中から僕を見ている妙子は、まるで、上目遣いで僕を見ているようだった。
頬を染めて、僕のすぐ近くでひたすら僕を見つめる。
その女の子らしい雰囲気に、僕は動けなくなった。
妙子はその表情のまま、
「ありがとう・・・」
言ったかと思うとちょっと背伸びをして、
"ちゅっ"
僕にくちつけた。
軽く触れるような感じだったけど、妙子のくちびるはとても柔らかいと思えた。
「た、妙子?」
僕は驚いたけど、妙子は恥ずかしそうな目で僕を見つめて、
「かわいいと思ってくれてるなら、いいよね・・・」
「そうだね・・・」
僕が答えると、妙子が僕の名前を呼び、また目を閉じた。
ちょっと迷ったけど、僕は妙子の頬に手を当てると、少し長くキスする。
「・・・ん・・・ん・・・」
妙子の唇は甘くて弾むような感じだった。
妙子は、潤んだ瞳で僕を見つめ、それからすっと目を閉じた。
今度は妙子の唇をふさいで、長く長くくちづける。
「・・・んん・・・んっ・・・」
それから何回となくくちづけをしているうちに、
妙子の頬が桜色に染まった。
「・・・ねぇ・・・」
僕の目を期待を込めたような瞳でまっすぐ見つめた。
後で妙子が聞いたら私じゃないと言いそうなほど魅力的な、柔らかく輝く瞳だった。
「戻れないかもしれないよ・・・」
僕はそう言ったけど、妙子は静かな声で、
「戻りたいなんて思わないから・・・」
そう返して目を閉じた。
僕は一度妙子にキスをして、それから頬にキスをする。そしてフェイスラインからくびすじへとキスを続けながら、パジャマのボタンを外す。
「・・・ん・・・あ・・・はぁ・・・」
妙子はため息のような息をつき、僕の頭に手を触れた。
着ているものを取ってしまうと、僕は妙子の胸にわずかに触れる。
柔らかくて温かいと思った。
「あん・・・」
甘いため息をついた妙子の顔がまた赤くなる。
円を描くように妙子の胸を刺激すると、ほとんど力を入れていないのに、僕の手の動きに添って動いた。
「あ・・・はぁ・・・あん・・・」
布団の上にあお向けになってもらい、両方の手で横や斜めに少しずつ動かすと、胸のいただきが鮮やかな桜色になって、少しだけ小さくなる。
「あっ・・・んっ・・・あふ・・・」
妙子の息が少し大きくなってきた。
それに合わせて手を動かし、いただきを指で刺激すると、
「あっ!・・・は、あぁん・・・ふぁ・・・」
今度は妙子の吐息が僕の手の動きに合ってきて、胸が弾むような感じになり、いただきがつんととがってくる。
妙子の背中がわずかにそってきて、肌色が少し鮮やかになる。
胸のいただきを、少し力を入れて何度となくふるわせながら、同時に脚の内側を軽くなでる。
「はぁ・・・あん!・・・ひゃ・・・あっ!・・・」
甘いため息がそのたびに深くなったり戻ったりする。
左手で左の胸を少し大きくなで、右の胸はいただきを口で刺激して、右手で妙子のを一度だけなぞる。
「あっ!・・・あんっ!・・・ふぁ・・・」
指先に湿った感じがして、妙子の背中が布団から浮いた。
妙子の顔は桜色になり、目は完全に閉じていて、息をつくたびに小さく口を開けていた。
最初はさわるか触らないかくらいの強さで妙子のに刺激を与えていくと、
「はぁん・・・あっ・・・いっ・・・」
妙子の声が少し大きくなって、妙子の全身がほんのりとピンクになっていく感じがした。
指が少し入るくらいまで力を入れると、
「んっ!・・・あふ・・・あっ!・・・」
僕の指に妙子の液体がついた。もう一回同じように手を動かすと、
「はぁっ!・・・」
"ちゅ・・・"
妙子のから水音が聞こえた。
今度は少し速く、横にも動かすことにした。
途端に妙子が
「ああんっ!・・・あっ!・・・ふあっ!・・・」
高い声を上げ、背中がそったようになった。
妙子は赤い顔で目を強く閉じ、僕に任せてくれているようだった。
(大丈夫かな・・・)
胸に置いた手にわずかに力を加えてなでながら、妙子の中に指を入れて少し動かしてみる。
妙子は
「あっ、は・・あんんっ!・・・あふ、はぁん!・・・」
ソプラノの声になって、体をぴくんと震わせた。
耳にほんの少し息をかけただけで、
「あんっ・・・はぁ・・・あっ・・・」
妙子の声が深い大人の吐息になった。
もう少し良くしてあげても大丈夫だと思った僕は、深くキスをして、左手の人差し指で左の胸のいただきをこするようにする。
右手はランダムに、時に強めに妙子の中を動かしてみると、
「ひゃぁぁぁん!・・・あんっ!・いっ!・・・あっ、あっ!・・・」
"ちゅ・・・ちゅっ・・・"
口が小さく開いて、頬が濃い桜色に染まる。
胸は淡い桜色に色づき、いただきは鮮やかなピンクになってその存在を主張する。
僕の指には妙子の液体が伝わるようになり、体全体が熱くなっているようだった。
僕が動くと
「あんっ!・・・あっ、あふっ・・・」
"ちゅ・・・・・くちゅ・・・"
妙子の声と水音が重なり、妙子は大きく息をつくようになった。
妙子も妙子のも大丈夫かな、そう思った僕は妙子に聞いてみた。
「妙子・・・、いい?」
目を閉じて息をついていた妙子がゆっくりと目を開け、
「・・・うん・・・」
紅く染まった頬で微笑んだ。
僕はできるだけゆっくり妙子の中を進んでいく。
「あ!ああーーーーっ!!」
"くちゅ・・・"
妙子の頬が真っ赤になる。
妙子の液体があふれて、体がさっきよりも熱を帯びてくるのが分かる。
ほんの少し動かすだけでも
「あんっ・・・、は・・・あ・・・」
妙子は高い声を上げる。ちらっと顔を見ると、目を閉じたそのまぶたも桜色になっていて、ぎゅっと目をつぶっていた。
ゆっくり、かすかに動く程度に動いたけど、
「んっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
妙子は手を握っていた。
僕がその手を包み込むと、妙子の手が、僕の指と妙子の指を絡めるように握った。
妙子の頬が染まり、目が少し開いて、夢を見るような目で僕を見て言う。
「いいよ・・・。あなたのいいように・・・」
そういって握った手にわずかに力を入れた。
「ありがとう・・・」
僕が妙子にくちづけてできるだけ優しく妙子の目を見ると、妙子は静かに目を閉じた。
僕はゆっくりゆっくりと動き出した。
すぐに、
「あっ・・・はあっ・・・んっ・・・」
妙子の声が僕の耳に届く。でもさっきより深くて柔らかい声。
妙子が僕を信頼してくれた証拠、のように思えた。
もう一度ゆっくり動かすと、
「あんっ・・・は・・・あぁ・・・」
僕の耳元に深い吐息が届く。
そして妙子の中が、僕のを締めつけはじめた。
「妙子・・・。ちょっと動くからね・・・」
妙子は握った手に少しの間力を入れ、小さくうなづいた。
僕はゆっくり、妙子によくなってもらえると思える程度の速さで、妙子の中を行き来する。
妙子の甘いため息がだんだん僕の動きと合ってきて、
「・・・あっ・・・あっ・・・あんっ・・・んっ・・・」
"くちゅ・・・ちゅ・・・"
妙子の液体がつながりから流れた。
見ると、頬から首、それに肩のラインがしっとりとしてきた。
さっきよりわずかに速くすると、妙子の胸のいただきが僕の体に当たって、
「あんっ!・・・んっ・・・はぁ・・・」
妙子の肩がぴくんと震えた。見ると、胸も桜色になり、そのいただきはつんととがっていた。
少しずつ早くしていきながら、同時に胸のいただきも体で押すようにすると、
「はぁん!・・・あっ・・・ふぁ・・・」
また妙子の声が高くなった。耳もとでささやかれた甘いため息みたいな声。
「んっ・・・あっ・・・あんっ・・・」
妙子の背中がわずかに浮いて、僕の体に柔らかい胸が当たる。
僕がそれを回避しようとして僕の肩を上げたら、その分妙子の中に深く入ってしまった。
途端に、
「ああんっ!」
"くちゅ"
つながりから液体があふれ、妙子の中が僕のをしめつけた。
そして、妙子の背中が浮いて、耳は赤くなり、手がしっとりとする。
僕が謝ろうと思ったら、妙子は僕の背中に手を回し、僕の口を妙子の口でふさいだ。
「んん・・・、んっ・・・」
同時に妙子のが僕のをしめつけた。
僕はだんだんと早くすることにした。動くたびに
「あんっ・・・あふっ・・・んんっ・・・」
少しだけ広く開いた唇から流れる妙子の声が大きくなってきて、額からまぶた、頬、くびすじまでピンクになり、唇が赤くなった。
また僕が動くと、
「はあっ・・・んっ・・・あんっ!・・・」
"くちゅ・・・くちゅ・・・"
妙子の背中が少しそって、動くたびに液体が流れる。
脚には力が入っていないみたいだったけど、僕が内側をなでただけで、ぴくんとなって、
「・・・はぁ・・・ん・・・、あっ・・・んっ・・・」
深い大人のため息をついた。
(感じてくれてる)
そう思えた僕は、少し速く動くことにした。
「あっ!・・・んっ!・・はぁっ・・・」
すぐに妙子の頬までが真っ赤になり、僕の背中にまわされた手が強く僕を抱きしめる。
額にうっすらと汗が浮かび、肩口までピンクになりながら、僕が与える感情を受け入れる。
妙子の中が僕のをきつくしめつけて、僕の意識が飛びそうになる。
(妙子がよくなってくれきゃ意味がないだろう?)
自分に言い聞かせて、出し入れを大きくしていく。
「あんっ・・・んっ・・・ひぁ・・・」
"くちゅ・・・くちゅ・・・"
僕の動きに合わせてだんだんと妙子の声が響くようになっていき、つながりから出る液体は布団にまで達するようになる。
ぎゅっと抱きしめられて柔らかく押し付けられた胸は温かかくて、妙子の中は熱いくらいになっていた。
残った理性で妙子によくなってもらうようにと考えながら、さらに速く動くと、
「あっ!・・んっ!・・はあぁん!・・」
"ぐちゅ・・ぐちゅ・・"
ぴくん、と妙子の中がふるえた。
僕の顔に息がかかるくらい近くで一度僕を見た妙子が、潤んだ瞳で僕を見つめながら、
「・・・私、もう・・んっ!・・もうだめ・・あぁん・・」
僕は
「いいよ・・・。好きな時に登りきってね・・・」
そう言って、持てる力のすべてを出して妙子の中を行き来する。
液体が布団に池を描いて、妙子の声は部屋に響くほど大きくなり、僕たちのつながりからはとめどなく液体があふれる。
「あっ!・はっ!・ああっんっ!・あっ!」
"ぐちゅっぐちゅっ"
僕に抱きついて必死で感情を抑えている妙子の体が震えだした。
「あっ!・あんっ!・ああ!あっ!!」
僕が懸命に動きながら妙子の一番感じやすいところを細かくふるわせると、妙子の中がぴくんと震えて、
「あっ!ああっ!!あっ!!んっ!!あっ!!いっ!!」
"ぐちゅ!ぐちゅ!ぐちゅ!"
リズムよりも速さを優先して妙子の中のあらゆるところを刺激して感情を与えると、妙子と妙子の中がびくびくと大きく震える。
妙子の体が弓なりになり、妙子の中は僕のを引き込むように何度も動く。
そしてひときわ大きな声で、
「あっ!!ああああああああーーーーーーーーーー!!!!」
妙子が叫んだかと思うと、妙子の中がぎゅっと収縮する。
僕も達した。
「くっ・・・」
妙子は一度びくんと震えると、
「あっ!・・はああぁぁ・・ぁ・」
全身の力が抜けていった。
大きかった妙子の声が小さくなって、妙子が大きく息をつきながら少し、ぴくぴくと震える。
「・・・はぁ・・・ぁ・・・」
そして息が落ち着いたと思ったら、妙子はそのまま静かに目を閉じた。
「妙子?」
「・・・」
呼びかけてみたけど反応がなかった。
見ていたら、しばらくして
「・・・くぅ・・・くぅ・・・」
小さな寝息が聞こえてきた。
(ずっと働きどおしだったんだよね・・・。ゆっくり休んでね・・・)
頬に赤みが残りながら寝ている妙子の頬に軽くくちづけて、妙子に掛布団をかける。
妙子がわずかに笑ったような表情になったのを見て、僕は壁によりかかって寝ることにした。
翌朝。穏やかな声で、
「・・・もう朝だよ、起きて・・・」
起こされた。目を開けると、妙子の顔が僕の目のすぐ前にあった。
僕があいさつをすると、妙子は嬉しそうな、少し恥ずかしそうな声で
「朝ご飯できたから・・・、食べてくれるよね?」
「うん、ありがとう」
僕が姿勢を正して頭をクリアにすると、妙子は少し赤くなりながら、
「・・・あのね・・・」
と言って言葉を切った。
「なに?」
僕が聞くと、妙子は顔が赤いままで、
「私、東京の女の子よりおしゃれじゃなくてもいい?」
と聞いた。
「もちろんだよ」
僕が言うと、妙子は嬉しそうに微笑んで、僕の目を見つめた。
「・・・」
「・・・」
しばらく僕を見つめた後、妙子が
「でも、きれいな方がいいよね?」
「今の妙子がそのままきれいになってくれたら、それは嬉しいよ」
僕の答えを聞いた妙子はほんのりと頬を染めて、澄んだ目で僕をまっすぐ見ながら、明るい声で言う。
「私、自分がおしゃれじゃないことを気に病むのはやめる。
でも、できるだけきれいになるね」
そして妙子と僕の頬が合うほど近くなったと思ったら、僕の耳もとで優しくささやいた。
「みんな、あなたのおかげ・・・。
だから、あなたのために、きれいになるね・・・」
きれいな目で僕を見て微笑む妙子は、お化粧なんか必要ないほど純朴なかわいらしさでいっぱいだった。
Fin.