夏休みに入った僕は長崎に来ていた。夜行列車で長崎入りし、着く早々晶とデートしている。  
 狭い寝台は体を十分に休められたとはお世辞にもいえなかった。  
 それでも晶の笑顔を見た瞬間、僕の疲れは吹っ飛んでいた。  
 
 僕は晶が好きだ。でもちゃんとした気持ちはまだ伝えていない。  
 正式に付き合ってるわけではないが、こうしてデートしてくれるってことは嫌われてはいないと思う。  
 ゴールデンウィークにはキスしそうにもなった。  
 ……あれはデートで行った教会で甘い雰囲気になったときのことだったっけ。  
 
「ね、キス…しよっか……」  
 晶が僕のそばに顔を寄せ、色っぽい目つきでささやく。やわらかい吐息が頬に当たる。  
 それだけじゃなく、晶は目を閉じると心持ち顔を上向け唇まで突き出した。  
「!!」  
 固まっている僕を晶が促す。  
「ほら……は・や・く」  
 僕も目を閉じると晶に顔を近づけた。  
 ……ところが唇の感触がない。  
 不思議に思ったけど、僕はそのまま動かずにいた。すると  
「な〜んてね! ほらっ、いつまでも一人で何やってるの?」  
 離れたところで晶の声がする。  
「え?」  
 あわてて目を開けると  
「うふふっ、単純ね〜。そんなに簡単にキスできると思ったの?」  
 いたずらっぽい笑みを浮かべた晶がいた。  
「晶ぁ……キスしようよぉ〜」  
「だ〜め。……そう…ね。……そのうち、ね」  
 ……そんなことがあった。  
 結局、晶にからかわれただけなんだけど、晶は本気だったのかなぁ?  
 
 でも、そんなことがあっても僕たちの関係はぎこちなくなったりしなかった。  
 手紙をやり取りし、電話をかけ合い、東京と長崎でそれぞれの時間を過ごしている。  
 晶は僕のこと、どう思ってるんだろう……。  
 
 今日も朝から暑い。涼しげな恰好をした晶の首筋も汗ばんでいる。  
「う〜ん、今日も暑くなりそうね……」  
 うっすらと汗のにじんだ白い額にハンカチを当てながら晶が続けた。  
「そうだ! クルージングにでも行かない?」  
「え?」  
「ウチのクルーザー、たしか今日は誰も使ってないはずだし……。ねぇ、行きましょうよ!」  
 とんでもないことを、まるでなんでもないかのように言う晶。  
 晶の家が金持ちなのは知っていたが、まさかクルーザーまで持ってるとは……。  
 
 晶はクルーザーを操縦する資格も持っているらしい。  
 夏になると毎年クルージングを楽しんでいるとのことだが、今年はまだなんだそうだ。  
「一人より二人の方がきっと楽しいわよ」  
 そう言うと先に立って歩き出した。  
 
 こんな展開になるなんて想像もしていなかった僕は水着を持ってきていない。  
 それを告げると晶は何着か出してくれ、ここから選べと言う。  
 ……全部ブランドものだよ。すごいんだなぁ遠藤家は。  
 
 沖に出ると僕たちは子供のようにはしゃいで泳ぎを楽しんだ。  
 興奮が収まってくると、僕は晶と二人っきりなのを強く意識した。  
 晶の水着は目のやり場に困るような真っ赤なビキニだった。  
 水はきれいに透き通っている。普通に泳いでいても晶の身体が目に付く。  
 そんなに大きいわけじゃないけど、決して小さくはない晶の胸。  
 形よくつんと上を向いた二つのふくらみはブラからこぼれそうに自己主張する。  
 自然と目が行ってしまうのを僕は意識してなんとか見ないようにしていた。  
 
 しばらく泳いだ僕たちはクルーザーに上がる。  
 晶は寝そべると、  
「せっかくだから背中にオイルでも塗ってもらおうかな?」  
 そう言って僕をいたずらっぽい笑顔で見上げた。  
「え? いいの?」  
「うふふ……。いいわよ、塗らせてあげる」  
 言いながら晶は水着のブラのヒモを外した。  
「ヒモの跡が着くと……ねぇ」  
 そう言って晶はほんのりと頬を染めた。  
 
 僕に無防備な背中を見せている晶。  
 オイルを手のひらにたらすと、僕はゆっくりと晶の背中で伸ばしていく。  
 
 緊張して手の動きがぎこちなくなる。  
「こ、こらぁ、くすぐったいわよ」  
 晶が笑う。  
「ご、ごめん」  
「もうっ、なんか手の動きがいやらしいわよ……ヘンなことしてるんじゃないんだからちゃんと塗りなさいよね」  
「う、うん」  
 たしかに晶の言うようにいかがわしい行為をしているわけではない。  
 だけど童貞の僕が大好きな女の子の肌に直接触れているんだ。ドキドキしないはずがない。  
 背中をすべらせている手を体の横にずらしただけでふくよかな双球に触れることが出来るだろう。  
 それでも何とか平静を保って背中全体にオイルを伸ばしていく。  
 僕の心臓は割れんばかりに脈打っていた。  
 
 手が腰のくびれのあたりに近付く。自然と目はビキニに行ってしまう。  
 お尻のふくらみも僕を興奮させる要因だった。  
 のどがカラカラだ。  
 僕は何度もつばを飲み込んで晶の背中をまさぐりつづけた。  
 
グラリ  
 大きな波が来たのか、その時クルーザーが揺れた。  
 何事かと晶が半身を起こす。僕も少しよろける。  
 それらの動きが重なり、偶然に僕の手が晶の胸に触れた。  
 
ぐにゃ……  
 なんともいえないやわらかな感触が指に伝わる。  
「あ……」  
「……え?」  
 そのまま固まる僕たち。  
「ご、ごめんっ!」  
 あわてて手を引っ込めた僕を、泣きそうな顔で晶が見上げた。  
 
「ごめん……」  
 もう一度謝る。晶は  
「……いいわ、事故だもの」  
 そう言ってうつむいた。  
 
 まだ指に晶のふくよかな胸の感触が残っている。  
 僕は思わず、見るともなしに自分の手を見つめてしまった。  
 
「晶……」  
 名前を呼ぶ。  
 晶が見上げる。  
「好きだよ、晶」  
「! ………」  
 びっくりした顔をしてまたうつむく晶。  
「……私も」  
 小さな声で返事が返ってきた。  
 
 晶が身を起こす。そうして目を閉じた。  
 ……前にもこんなことがあった。でも今日の晶は真剣だ。  
 僕はそっと晶の肩を抱くと、静かに唇を重ねた。  
 
「ん……」  
 優しく触れるだけの口づけ。  
 目を閉じているせいか、感覚が研ぎ澄まされるのを感じる。  
 晶の匂い。息づかい。肌が触れ合うところから伝わるぬくもり。濡れた髪の感触……。  
 肩を抱いていた手をゆっくり動かし、優しく肩を撫でる。そのまま手を首筋に持っていく。  
 荒々しく扱うと壊れてしまいそうなほど細い肩。やわらかい首筋。湿った髪が手をくすぐる。  
 そんな僕の動きに対し、晶は震えず、怖がらず、あたたかな吐息を奏でる。  
 
「ねぇ……」  
 唇が離れると晶が言う。  
「……え?」  
「……そんなにびくびくしながら触らなくてもいいわよ……」  
 そして僕の手を取ると、晶は自らの胸に押し付けた。  
「あ……」  
 びっくりした僕は思わず晶の顔を見つめてしまった。  
「鼓動、わかる?」  
 頬を染めて晶が言う。  
「……う、うん」  
 頭の中がズキズキと脈打つ。  
 これが晶の鼓動なのか、それとも自分の心臓の高鳴りなのかが僕には判断できなかった。  
「これはね……うれしいドキドキなんだからね」  
 晶が続ける。  
「……ちゃんとさわってもいいのよ」  
 
 心が燃える。頭の芯がいとしさに焼け付く。  
 僕はまだどこかでためらっていた自分を恥じた。  
 ……心を決めてじかに触れる。  
 あたたかくて、やわらかくて、それでいて強い弾力のある乳房をゆっくりと下から揉みあげる。  
ピクンッ  
 晶の体が電気でも走ったみたいに震えた。  
 
「ごめんっ! ……痛かった?」  
 初めての経験で加減がわからない僕は晶に聞いた。  
ふるふる……  
 無言で晶が首を振る。そして  
「私のこと、好き?」  
 僕の目を見て聞いた。  
「うん」  
 うなずく。  
「もっと、ちゃんと言って……」  
「好きだよ。……晶の優しいところも、強いところも、何もかも」  
 答えながらも手が止まらない。  
「んっ! 私…強くなんか……あ、んっ…はふっ……あ、んんっ!」  
 晶の声が上ずる。そうして  
「もう……話してるときは…い、いじらないで……んくっ! よね!」  
 言葉を続けた。  
 
 手のひら全体で包み込み、少しだけ強く揉む。手の中でころころと転がる乳首が心地いい。  
「んくっ、くすぐった……ンっ、あっ……あん、あっんん、は…ひゃッ……ン!」  
 ビクッと跳ねる体を押さえつけ、また少し力をこめる。  
 ……晶は感度がいいらしい。  
 完全に勃起した乳首が僕の中でかわいい悲鳴をあげていた。  
 
「……怖い?」  
ふるふる  
 きゅっと眉間にしわを寄せ、小刻みに頭を振る晶。  
 その仕草がかわいらしく、僕は晶の唇に自分の唇を押し当てた。  
 
「ン……ぅ、んむ……んっ!?」  
 叩くように舌先を唇に何度も押し当てる。  
 その間も乳房への愛撫は忘れない。  
 むき出しになった左右の乳房をなでさすり、乳首を転がす。そして弱くつまむ。  
「ひゃうっ!」  
 声を出すために開いた晶の唇に舌を割り込ませ、歯を舐める。  
 
「も、もぉお! そういうことするときは先に言ってよね!」  
 唇を離し、軽くにらむ感じで晶が僕を見る。  
 ……でも目は笑っている。よかった、晶は怒ってない。  
「ごめん……じゃあ、口開けてくれる?」  
「遅いわよ、もう……」  
 おっかなびっくりといった感じで吐息とともに口を開く晶。  
 怖がらせないようにゆっくりと舌を伸ばし、唇をなで、また歯を舐める。  
 
「ん……ふぁ、は……っふ、ぁんん……はむ、んぅう……ン」  
 口の中にまでもぐりこんだ舌に驚いたのか、晶は舌を引っ込めた。  
 舌先でしか触れられない晶の舌に、僕はもどかしさよりも安堵を覚えた。  
 ……それは晶の純潔の印だから。  
 
「晶、大好きだよ……」  
「……うん」  
 見つめあう。もう一度唇が重なる。  
 今度は晶からおずおずと吸い付いてきた。そのぎこちなさがまた愛らしい。  
 僕は落ち着いて受け入れ、晶の舌が伸びてくるのを待った。  
 
 僕の唇を舐めるだけだった舌を捕まえる。甘噛みし、吸い、口の中に引き入れる。  
「ン……む、んんぅ……」  
 激しくはしない。  
 吸い込んでそのままじっと落ち着くのを待つ。  
 じわりとしみ出す唾液の味が僕の口腔にしみわたる。  
「んむ、ん……ん……ン、んん…ぅん……むふぅ、うちゅぅ、ちゅ……くちゅ」  
 まるで小さな魚が跳ね回るような感覚。  
 口の中でうごめく晶の舌のなんともいえない気持ちよさ。このまま飲み込んでしまいたくなる衝動。  
 それらにあおられ、昂ぶる性の興奮!  
 激しく膨脹した股間のモノから先走りの粘液があふれ出すのを、僕は感じていた。  
 
 間に銀の糸を引き、唇が離れる。  
「はっ、はぁっはぁ……あぁ…っふは…う、んあ……っ!」  
 ぞくぞくっと身を震わせ、晶が甘い吐息を吹きかける。  
「うふふ、なんだか……すごくエッチな気持ち……」  
 上気した晶。すごく色っぽかった。  
「うん」  
「私がこんなキス……できるなんて思ってなかったわ」  
「晶が上手で僕はうれしいよ」  
「わ、私、初めてなのよ。……恥ずかしいこと言わないで……」  
 晶が頬を染めた。  
 
 キスに夢中になって忘れていた愛撫を再開する。  
 乳房を揉みこみ、その先端をつまみ、指を立てて全体をくすぐる。  
「む、胸ばっかりいじられたら……くすぐったくて……も、もう……」  
「もう、何?」  
 僕の意地悪な質問に、晶はちょっとにらむようにして僕を見た。……でも目は笑っている。  
 
 乳房を通して伝わってくる小刻みな震え。  
 キュッと引き締まった乳首をつまむと、その震えはさらに強まる。  
「そ、そこ…つまんじゃダメっ!」  
「ここ?」  
 意地悪くさらに乳首を攻める。  
「ひゃ、ふっ! やん、あ……ダ、ダメだって言ってるのに!」  
 
ビクッ、ビクンッ!  
 突如断片的な痙攣が晶を襲い、  
「あ……ふぁ、ふはっ、はっ、はぁぁぁーーー!」  
 ぐったりと体を預けてくる。  
「な…に? 私、どう…しちゃったの?」  
「怖がらなくてもいいよ、何も変じゃないから」  
「違うわ、おかしい……こんなの私の体じゃないみたい……」  
ぶるっ  
 寒気を感じたかのように一瞬大きく体を震わせる。  
 快楽の余韻が押し寄せたらしい。  
 晶は軽い絶頂を迎えたようだ。  
 恍惚感に満ちたその顔は、僕の愛欲を駆り立てるのには充分だった。  
 
 僕は晶の唇にもう一度自分の唇を重ねた。触れあった部分から、晶の体温が流れ込む。  
 間近で感じる晶の息づかい。  
 やがて、どちらからともなく唇が離れた……。  
 
「晶……」  
 名前を呼ぶ。  
「……うん」  
 僕に身を預ける晶。  
 背中に回した手をゆっくりと下げる。  
 腰のあたりで手を止める。……そこには晶のビキニがあった。  
 
「脱がすね」  
 晶のビキニはヒモで止められただけのものだった。  
 僕はそこに指をかけると思い切って引っぱった。  
するり  
 かすかな抵抗とともに紐がほどかれ、晶の秘められた部分が白日にさらされた。  
 
 栗色の恥毛が太陽を反射してキラキラ光る。  
 ……初めて見る女性のアソコ。晶のそこは神々しいまでに美しいと僕は思った。  
「私だけ……脱がせてズルイ……」  
 晶が僕の胸に額を付け、顔を見せないようにして小さく言った。  
「うん……僕も脱ぐよ」  
 そう言って水着に手をかける。  
 僕が水着を下ろす邪魔にならないように晶が離れる。  
 その目の前で僕は押さえつけられていた剛直を解放した。  
 
「っ!」  
 晶が息を飲むのが聞こえた。……怖いのか?  
「晶…僕……」  
 話しかけようとした僕を晶がさえぎる。  
「わ、私初めてなんだからね! その……や、優しくしなさいよね!」  
 頬を染め、それでも僕の目をまっすぐに見つめて晶が言った。  
「初めて……なの?」  
「違うと……思ってた?」  
「だって晶キレイだしボーイフレンドたくさんいるって言ってたし、僕なんかよりカッコいい人……」  
 言葉の続きは晶の唇にふさがれた。  
 
 晶が僕の勃起に手を伸ばす。  
 そうして茎の部分に指を巻きつけると  
「こんなに……固いの?」  
 かすれた声で言った。  
「固くないと晶の中に入れないからね」  
 その僕の言葉に  
こっくり  
 頬を染めてうなずいた。  
 
 そのまま指が先端に向かう。大きく張った部分を越え、亀頭に到達する。  
 先端の割れ目から漏れでた透明の先走りでヌラヌラする亀頭。  
 そこに触れた晶は小首をかしげ、  
「……やわらかいわ」  
 意外そうな声。  
「え?」  
「全体が固いんじゃないのね」  
 ……考えたこともなかった。たしかに亀頭は茎部に比べれば弾力がある。  
「……先まで固かったら晶の粘膜が傷むからじゃないかな?」  
 一瞬の間のあと、  
「ば、ばかっ!」  
 真っ赤になって晶は下を向いた。  
 
 出したくてたまらない。精液が出口を求め、すぐそこまで来ているかのようだ。  
「晶、いい?」  
「……う、うん」  
 晶が横になる。  
 僕は体を起こすと晶の足の間にひざをついた。  
 
 膣口を探す。  
 ヒクヒクとうごめき、あとからあとから粘液の湧きだす亀裂が見つかった。  
 あとはここにあてがって、腰を突き出すだけだ。  
「いくね」  
 腰を進める。晶のぬめった陰唇に亀頭が触れた。ヌチャッとした濡れた感触がする。  
 ……その瞬間、留め金が外れた。  
 
「っっっ!」  
「きゃっ!」  
 晶が驚いた声を上げたのが聞こえる。  
 めくるめく快感が背筋を走り、熱いものが尿道を通っていく。  
びゅくっ! びゅるっ! ずびゅっ!………  
 しゃくりあげるように脈動する勃起は、先端から白い軌跡を描いて欲望を吐き出しつづけた。  
「うっ! ぐうっ……むむっ……」  
 ……僕は体を震わせ、射精を終えた。  
 
 白濁の液が晶を汚す。  
 あわてて晶の下腹部に目をやると、そこには白い粘液が付着している。  
 飛び散った精液は下腹部だけではなく、晶のお腹から胸のあたりまでまき散らされていた。  
 
 ……挿入してもいないのに射精してしまった。  
「……ご、ごめん」  
 恥ずかしさと情けなさの混じった複雑な思いで、やっとそれだけを口にする。  
「ううん、平気。……いきなりだったからびっくりしただけ」  
 晶は上半身を起こし、そう言ってぎこちなく微笑んだ。  
 
「これ、精子?」  
 ねばつく液体が晶の体を滑り落ちる。  
「……うん」  
「精子……かけられちゃった……」  
「ほんとにごめん。僕……」  
 屈辱感からつぶやくような小さな声になる。  
「気にしないで。だって、私の裸に感じてくれたってことでしょ?」  
 晶が僕の胸に手を置いて言う。  
「晶……」  
「うれしかったわ」  
 そう言ってニッコリ笑う晶。  
「晶、ありがとう」  
「ふふふ。あら? それ……」  
 今は力を失った陰茎を晶が指差す。  
「え? あぁ、射精したから……」  
「射精……すると縮むんだ」  
 射精という言葉を、晶は頬を赤らめながら発音した。  
「うん。知らなかった?」  
「知るわけないでしょ!」  
「そうだよね」  
 ようやく僕にも笑いあえる余裕が戻ってきた。  
 
 晶が自分の体を彩った白濁を指にからめる。  
「こんなにドロッとしてるのね……。精液っていうからもっと水っぽいものかと思ってたわ」  
「溜まってると濃くなるんだよ」  
「じゃあ溜まってたの?」  
「あ、いや……」  
 図星を指されてちょっとだけうろたえる。  
「溜まってたんだぁ」  
 そう笑って言いながら、晶は指を開いたり閉じたりしている。  
「もういいだろ、拭きなよ」  
「ネバネバする。……変なにおいもするわ」  
 晶が生まれて初めてかぐにおい。それは僕の体内から射出されたものだ。  
 ……晶を征服した。なんとなくそんな気になった。  
「くさいだろ?」  
「う〜ん……変なにおいだけど、嫌なにおいじゃないわ。あなたのだからかな?」  
 晶はまぶしい笑顔でそう答えた。僕の方が恥ずかしいよ……。  
「バ、バカなこと言ってないで! ほら、手ぇ拭いて」  
「ふふ。ねぇ、気持ちよかった?」  
 僕が渡したティッシュで指と体を拭きながら晶が聞く。  
「う、うん。……よかった」  
「ふふふふ」  
 晶がうれしそうに笑った。  
 

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