「純ったら、なんだか臭ーい」  
 次の日、玄関で出迎えた妙子は、純を見るなりそう言って、体に顔を近づけて鼻をクンクン鳴らした。  
「あけみとひろみの匂い、プンプンさせちゃって……わあ、いやだ!」  
 顔をしかめて鼻先で手を振る。  
「…………」  
 純は顔を赤らめながら、自分で自分の体の匂いを嗅いでみる。いまさら、そんなことをしても、鼻そのものにこびりついた匂いが感じられるはずもない。  
「シャワー、早く浴びてらっしゃいよ」  
 それだけ言うと、妙子はプッとふくれっ面をして、さっさと奥に入っていった。  
「チェ、なんだよ」  
 いつもゾクゾクッとさせられてしまう、ミニスカートからのぞく妙子の太腿を見送りながら、純は舌打ちした。最初の一瞬はムカッとしたものの、純の顔はすぐににやけてしまう。  
 二人の女、それもあけみとひろみのようなゴージャスな二つの女体に、ひと晩中、身体を擦りつけられていたのだ、残り香があって当然だ。金色と黒い恥毛の群れが、抜群のプロポーションの全裸女体が、いつまでも純の脳裏でチラついて離れそうになかった。  
 
「お、お姉さん!……」  
 シャワーを浴びて、腰にバスタオルを巻いただけの格好でバスルームから出てきた純は、居間のドアのところに寄りかかるようにして立った妙子の出立ちを見て、思わず目を丸くした。  
「ふふっ、純……どう、これ?」  
 妙子は、はにかむような表情を浮かべながら、身体を半回転させる。  
「!…………」  
 純の喉仏が大きく上下する。上は、お臍の上までしかない短いTシャツでいつもと変わりはなかったものの、下には小さな黒いパンティ一枚きりなのだ。しかも、それは先日、純がポルノショップで買ったものとそっくりのTバックではないか。  
「そ、それは……もしかして……」  
「そうよ。純が買ってきたやつよ」  
 内腿を擦り合わせて、晒した肌をポッと赤らめながら言う。  
「これ、誕生プレゼントだったのよね。私のために買ってくれたのよね。いまごろになって気がついたの。あんなに怒ったりして、ごめんね」  
「えっ……い、いや、そんなこと……もういいんだよ」  
 胸にキューンと甘酸っぱいものがこみあげてくる。姉に気がついてもらえたことが、自分の本意をわかってもらえたことが、たまらなくうれしかった。そうではあれ、妙子にそんなふうにして謝られるのは面映ゆい。  
 妙子には、眩しい太腿を持った姉には、むしろ抗弁も許されずに、思いきり引っぱたかれるほうがいい。なぜか、そんなふうに思わずにはいられなかった。  
「でも、私にこんなものプレゼントして……私に、こんなものはかせて、純はどうするつもりだったの?」  
「どうするって……」  
 純は答えに窮する。  
「姉と弟なのよ。恋人同士じゃないのよ。実の姉にパンティなんか、しかも、こんなに挑発的でいやらしい形のパンティ、プレゼントする弟なんている?……生意気よ!」  
 話しているうちに、いつもの妙子らしい、きつい口調になっていた。  
 
「…………」  
 純は黙ったままうつ向いて、妙子の言葉を待つ。  
「こんないやらしいパンティ……」  
 黒い総レースのパンティはほとんどスケスケで、黒い陰毛をくっきりと透かし見せている。後ろは紐一本でお尻の肉は丸見えだ。そして、その細紐が痛いほどに股間に食いこんでいるのだ。  
 およそ下着としての用をなさない、それどころか、かえって恥ずかしい部分が際立ってしまって、よけいに恥ずかしく、ふしだらな気分になってきてしまうのだ。それが、そのパンティをはいた妙子の実感だった。  
 いま、こうしていても股間に食いこむ感触の卑猥さに、神経はその部分ばかりに集中してしまい、どうしようもなく艶めいた気分になってしまう。  
「純ったら、私がこうして、いやらしいパンティはいてるところ、見たかったんでしょう」  
「う、うん」  
 純はうつ向いたまま、しっかりとうなずく。  
「だったら、そんなに目そらしてないで、見ればいいじゃない。顔をあげて、よーく見なさいよ!」  
 妙子は羞恥に赤らんだ顔をそむけ、開いた戸口の柱に身体を向けて寄りかかり、純に背を向ける。  
「…………」  
 そのほうが純にも好都合だった。黒い細紐を食いこませて剥きだしになった姉のむっちりとしたお尻を、純は生唾を飲みこみながら、大きく目を開いて見入る。  
「こ、これで、満足でしょう」  
 柱に頭をすりつけながら妙子が言う。  
「う、うん……」  
「見るだけで満足したのね。だったら、もういいのね」  
 首を曲げ、純を振りかえって見ながら、妙子は自分から弟をそそのかすようなことを言ってしまう。  
「あっ、待って……もう少し、そばから見てもいい?」  
「やっぱりね」  
 恥ずかしさを隠すように、あきれたような声を出す。  
「好きにすればいいでしょ」  
「は、はい……」  
 
 純は床に膝をついて、妙子のヒップを正面に、間近に据える。  
「あーっ、綺麗だァ、お姉さんのお尻」  
 思わず溜め息をつかずにはいられなかった。  
 あけみやひろみのお尻よりはいくらか大きめの、それだけによけいにむっちりとした肉感に満ちたヒップは、黒い細紐をきっちりと食いこませて、ひときわ肉の起伏を際立たせて、艶めかしく息づいている。  
 そしてその下から伸びた肉の引き締まった太腿。艶々と輝くほどになめらかな生脚は、もう絶品と言うしかない。ここまでじっくりと、姉の尻肉を、妙子の太腿を鑑賞したことは一度もなく、純は我れを忘れて見とれてしまった。  
「お、お姉さん、ちょっとだけ……ちょっとだけ、触っても、いい?」  
 こみあげる衝動が口をついて出てしまっていた。  
「す、好きにすればいいでしょ」  
 太腿に吹きかかる熱い息にゾクッするものを感じて、一瞬ためらいつつも、妙子は吐き捨てるように言って柱に額をすりつける。  
「…………」  
 純は生唾をゴクリと飲みくだして、恐るおそる両手を妙子の太腿にあてがい、肌の感触を確かめながらさすりあげていく。  
 滑るようにすべすべの肌。手のひらを押しかえしてくる、むっちりとした肉感。太腿というより生腿の感触に、心の底からうっとりと酔いしれながら、純はおずおずと、さらに両手を這いあがらせて、目の前に盛りあがった尻肉に手をかけていく。  
 両方の尻肉を持ちあげるようにして手のひらに包みこめば、肉がピクッとひきつる。たまらずに純の両手は、ムチムチの尻肉を両手にギュッと鷲掴んで、押し揉んでしまっていた。  
「やめてっ! いやらしい!」  
 まるで痴漢のような、あまりにふしだらな図々しさにたまらなくなり、妙子はカッとして弟を足で蹴り飛ばしていた。  
 ゴツーンッと音を立てて、純が頭をドアにぶつける。  
「それがちょっとだけなの!」  
 床に尻もちをついた純を見おろして、妙子は声を荒らげた。  
 
 目の前に仁王立ちになった妙子が、黒いパンティから透ける秘毛が、そして、なによりも太腿が眩しかった。  
「お姉さん……ぼく、本当はお姉さんに、それをはいてもらって……それで……」  
 思いきって言いかけたものの、言いよどんでしまう。  
「それで?……言ってごらんなさいよ。なんなの?」  
 妙子の声がかすかに和らいだように感じられた。チャンスはいましかない。今言わなければ、一生言えない。純は切羽つまった気持ちで口を開く。  
「そ、それで、お姉さんに……お姉さんの脚で、締めつけてもらいたかったんだ。昔よくしたみたいに、ヘッドロックされたかったんだ」  
「…………」  
 妙子の表情に戸惑いの色が浮かぶ。  
「お願いだよ、お姉さん。お姉さんの脚で、ぼくの顔を、思いきり挟みつけてくれるだけでいいんだ」  
 言いながら堪えきれなくなったかのように、純は妙子の片脚にすがりついてしまっていた。足蹴にされてもいい。踏みつけられてもいい。そんな激昂に駆られながら、純はすがりついた妙子の太腿に頬ずりして哀願する。  
「な、なんなの……おまえって、本当に……」  
 片脚を純に委ねたまま、妙子はすがりつく弟の頭に両手を添える。  
「おかしな子ね。ちっちゃな子供みたい……そんなにお姉さんと、レスリングごっこがしたいってわけ?」  
「うん」  
 太腿にしがみついたまま、半ベソをかかんばかりの顔でうなずく純を見れば、妙子はムラムラとしてくるものを感じずにはいられなかった。  
 股の間に挟みつけて、窒息するまで締めつけてやりたい! 泣きだすまでいじめてやりたい!……  
 そんな激しい衝動がグツグツと沸き立ってくるのだ。  
「いいわ。わかったわ。ヘッドロックで、おまえの頭を締めつけてやる。ベソをかいたって、知らないからね」  
 そう言うと妙子は、すがりついた純の頭を押しのけ、片脚ずつ肩にまたがせていく。そうして両手で上向きにさせた純の頭を股の間に挟みつけ、ギュッと力をこめて両腿で締めあげていく。  
 
「ああああああああああーっ……」  
 秘毛を透かし見せた黒いパンティに目をふさがれ、鼻を恥毛の群れにすりつぶされ、両頬から後頭部までを左右から内腿で締めあげられる。もうそれだけで、純は人生で最高の至福の瞬間を迎えて感激の吐息をもらす。  
「どう、苦しいでしょう」  
「ウッ、ウーン」  
 太腿に挟みつけられた頭を横に振る。苦しいどころか、うれしくてならなかった。  
 内腿の熱くしっとりとすべらかな感触。ムチーッと締めつけてくる肉感。これこそが、純の欲していたものなのだ。そればかりか、口や鼻をふさいだパンティから甘い香りがするのまで感じられれば、純は狂喜せずにはいられない。  
「よーし、じゃあ本気出すわよ」  
 頭を掴んだ両手に力をこめ、全身の力を振り絞って内腿を締め合わせる。  
 幸せだった。最高に幸福だった。純は、妙子の太腿の締めつけに、心からうっとりと酔いしれる。  
「この体勢じゃ、力が入らないわ」  
 妙子は柱につかまって身体を支え、純の頭を股に挟みつけたまま腰を落としていく。肘をついて床の上に半身の体勢で横たわると、すっかり横向きになって倒れた純の顔を、両の足首を交差させてギリギリと絞りあげるように締めつける。  
「ウーッ……」  
 そこまでされれば、かなり苦しいとはいえ、それが純にはうれしかった。もがくような真似をして片手で妙子の太腿を掴み、もう片方の手を剥きだしになったお尻の肉にあてがっていく。  
「まだなのね。よーし……」  
 妙子は息を荒くして、痙攣しそうなほどに脚を力ませて締めつけながら、股間をグイグイッと純の顔に擦りつけていく。  
「ウーッ……」  
 鼻に擦りつけられてくるパンティが湿り気を帯び、パンティ越しに女陰の熱気が伝わってくるのが感じられれば、純はもう有頂天だった。  
 太腿から尻肉を掴んだ手に力をこめて、肉の感触を盗み味わいながら、もがくようにして鼻を小刻みに蠢かせて、妙子の女陰を擦りこね、匂いを嗅ぎまわる。  
 
「フーンッ、もうこれ以上、力が入らないわ」  
 力の抜けていく内腿に挟まれたまま、純は顔を蠢かせては妙子の股間に鼻を擦りつけ、両手で太腿と尻肉をさすりつづける。  
「フーッ……」  
 妙子はそんな純を制するでもなく、大きく息を吐くと、目を閉じて動きをとめる。  
 時折り内腿がピクピクッとひきつる以外、呼吸で胸が上下する以外、妙子の身体はじっとしたまま動かない。純は内腿に頬ずりしつつ鼻で姉の股間を擦りつづけ、両手で太腿から尻肉を撫でまわしていく。  
 ずいぶん長く、そんな静寂の時間があった。  
「純」  
 唐突に言って、脚の締めつけを解き、妙子がムックリと起きあがった。  
「…………」  
 純はドキリとしてしまう。  
「おまえ……」  
 妙子の視線は、バスタオルを巻いた純の下腹部に注がれていた。勃起が高々とテントを張っている。  
 有無を言わせぬうちに、妙子の手がバスタオルの前をはだけた。下腹で弓形に反りかえった勃起が露わになってしまった。  
「…………」  
 純は頭をもたげてうろたえながら、下腹部の一物に目をやる。  
「……出させてあげようか」  
「えっ!?」  
 予想だにしない、ありがたい言葉だった。  
「私が、出させてあげるのよ」  
 妙子はいきなり片手で勃起を掴み、しごきだそうとした。  
「あっ、待って! お姉さん」  
 純は咄嗟に妙子の手首を持って押さえた。  
 
 妙子がいぶかしげに弟の顔を見る。  
「そ、そうじゃなくて、あの……できたら……」  
 長い間の密かな願望を、純は意を決してついに打ち明ける。  
「できたら、でいいんだけど……お姉さんのお尻で、踏んでもらいたいんだ」  
 心臓が早鐘をついてしまっていた。  
「プッ」  
 妙子は思わず噴きだしていた。セックスしたい、フェラチオして欲しい、などと言われたらどうしようと、内心で怯えていたのだ。  
「おまえって、本当に……」  
 純がいじらしかった。  
「駄目?……そうだよね、やっぱり駄目なんだよね」  
 純が首をうなだれる。  
「ふふふ、それくらいならいいわ。お尻で踏んであげる。おまえの……」  
「えっ!? 本当!?」  
 たちまち純の顔が歓喜に色づく。  
「変態っ! 大変態っ!」  
 妙子はそう罵って、純のほうに顔を向けながら、あお向いた弟の下腹にまたがっていく。  
「おまえって、いつもそんなこと考えてるの? そんなこと考えながら、私のお尻、見ているの?」  
 純の両脇に膝をつき、妙子はあきれ顔で弟を見おろしながら言う。  
「そんな……いつもだなんて……」  
 いまにも勃起に触れそうになった妙子の股間を、頭をもたげて見つめながら、純は半ば放心のていで答える。  
「本当に、いやらしいやつなんだからァ」  
 上半身を起こしたまま、妙子は純の下腹にどっかりと座りこんで、弓反った勃起をお尻の下に組み敷いていく。パンティをはいているとはいえ、ほとんど剥きだしのお尻の肌に触れる勃起が熱い。  
「あーっ……」  
 たちまち純の顔が歓喜に歪み、頭をのけ反らせて床にぶつける。  
「馬鹿ァ」  
 妙子は両手で純の腿を掴んで上体をかすかに反らせながら、腰を小刻みにクイックイッと揺すって、お尻の下に組み敷いた勃起をこねまわす。  
 
「ああーっ、いい! いい気持ちだァ」  
 羞じらいもなにもなく、さもうっとりとしたような恍惚の表情を浮かべる純が、おかしくていじらしかった。  
「こう? こうされるのが気持ちいいの?」  
 妙子は投げだした両脚で純の体を脇から挟みつけて、膝をくの字に折ると、さらに上体を反らせて体重をかけていく。お尻の谷間に勃起を埋めこみ、挟みつけるようにしながら、体重をかけたお尻をグリグリとこねくりまわす。  
「オオーッ!」  
 尻肉の谷間の生肌に勃起が挟まれ、こねられ、押しつぶされる感触がたまらない。生の尻肉が下腹の上で小さな円を描いて擦りつけられるたびに、谷間に食いこんだパンティの細紐が勃起の裏茎に擦れる。  
「こんなことされて悦ぶなんて、おまえって男は……」  
 裸の尻肉にじかに伝わってくる勃起の感触が、いよいよ熱く、いよいよ硬くなっていくその感触が、いかにもはしたなく、卑猥だ。  
「フーンッ、変態よっ」  
 妙子も、いつの間にか淫ら気分をそそられていた。  
「ああーっ、お姉さん……あ、足……足の指、しゃぶらせて……」  
 こみあげる快感に、純は理性もためらいも忘れていた。  
「馬鹿ァ……おまえって……」  
 そう罵りながらも妙子は片足を前に伸ばして、指を純の口に含ませていく。  
 チューッ……チュッ、チュウウウウッ!……  
 両手で妙子の足を大事そうに掴むと、純は足の指を一本一本口に含んでは、夢中になって舐め吸う。  
 
「なんで、そんなことが……フーンッ……」  
 足の指を吸われるという信じられない変態行為。なのに、なぜか得も言われぬ甘美な気分になってしまうのが不思議だった。  
「あっンッ、もォ……このォ……馬鹿ァ……」  
 妙子も我慢しきれなくなったかのように、思いきり腰を気張らせて、狂ったようにお尻を揺すりたてる。  
「ウウウウウーッ!」  
「もう、おまえのオチンチンなんか、踏みつぶしてやるゥ!」  
 使ったこともない下品な言葉を口にして、本気で踏みつぶさんとするかのように、妙子の尻肉は勃起を蹂躙しつづける。  
「あっ、ああああっ」  
 妙子の尻肉の下で勃起はつぶれ、砕け、ドロドロの肉汁をまき散らす。純の下腹に白い粘液がひろがり、妙子の黒いパンティに吸いこまれていく。  
 
 
 

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