安達純は浪人生である。今春高校を卒業したが、目指す大学に合格できずに一浪中だ。  
 都内の予備校に通う純は姉の妙子と二ヶ月前まで二人だけで暮らしていた。  
 その姉が結婚した。義兄は純たちが青森から上京してのちに知り合った相手だった。  
 
 青森にいた頃の妙子の心には忘れられない大切な相手が住んでいた。  
 その相手とは、かつて純たちの実家に間借りしていた少年だった。  
 まだ幼かった頃の純にとり、兄のような存在だった少年。  
 同時に、いつかは姉と結婚してほしいと心のどこかで思っていた少年だった。  
 その少年は高校を卒業する直前、不慮の事故でこの世を去ってしまった。  
 以来、妙子は心を閉ざした。誰に対しても、もちろん家族であっても笑顔を見せなくなった。  
 そんな妙子の心を解きほぐし、再び笑顔をもたらしたのが義兄となった青年だった。  
 二人は順調に愛を育み、先月華燭の典を挙げた。  
 本来ならば新婚の二人は新居を借りてそこで暮らすはずだった。  
 だが、純が勉強に専念できるように、との義兄の意見もあり3人は一緒に暮らすことになった。  
 おかげで純は食事の支度や洗濯などの家事を姉に任せ、勉強に取り組むことができている。  
 
 純は義兄が嫌いではなかった。むしろ好感を持っていた。尊敬できる相手だった。  
 しかし、あの少年の面影を完全には払拭できない純にとり、どこかよそよそしさを覚えているのも事実だった。  
 さらに、『姉を奪っていった男』という筋違いの気持ちもあり、どことなく複雑な思いも抱いていた。  
 無論それが純の一方的な思い込みであることは自分自身が一番よくわかっていた。  
 頭では理解できても、心の奥底では割り切れない思いに戸惑う純だった。  
 
 お盆に帰省していた純が東京に戻ってきたのは、あと一週間ほどで8月の終わる頃だった。  
 再び3人での生活が始まった。  
 食卓をともに囲み、他愛のない話で笑いあう。  
 妙子の笑顔を見られることが純はうれしかったし、その笑顔を取り戻してくれた義兄にも感謝していた。  
 夕食を済ませると、まだ新婚の二人を気遣い純は自室にこもった。そして参考書を広げ、問題集を解いていく。  
 勉強を終えた純が床に就いたのは、午前1時を少し過ぎた頃だった。  
 
 その晩は風もなく、まるで蒸し風呂のように暑い夜だった。  
 まして青森で何日も過ごしてきた純にはその暑さが一層こたえた。  
 エアコンは居間にしかなかった。  
 眠ろうとしても眠れない。何度も寝返りを打つ。少しまどろむと暑さで目が覚める。  
 そんなことがしばらく続いた純は、次第に正常な判断力を失っていった……。  
 
(冷たいものでも飲もう……)  
 時計を見る。  
 午前2時半。  
(お姉ちゃんたちもう寝てるよな? 起こしちゃ悪いな……)  
 そう考えた純がそっと布団から抜け出す。そして音のしないようにドアを開け、廊下に出た。  
ミシッ、ミシッ、ミシッ……。  
 あたりが静まり返っているせいか、純の足元で床板のきしむ音が大きく響くように感じられる。  
 純はキッチンに向かい、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出すと立て続けにコップ3杯飲んだ。  
「ふぅ〜」  
 のどを通る冷たい感触に気持ちがすっきりとしたものの、体の火照りは鎮まらない。  
(あっ、残りが少ない……)  
 ボトルに残った麦茶の量はコップ半杯もなかった。  
 それを飲み干すと、純はあきらめてキッチンを出た。  
 
 部屋に戻ろうとした純は、見るともなしに見た姉夫婦の寝室のドアが開いていることに気が付いた。  
 エアコンのない部屋に少しでも風通しをよくするため、開けてあるのだろう。  
 無意識のうちに純は近付くと、ドアの隙間から中の様子をうかがった。  
 ……かすかにいびきが聞こえる。義兄のものだ。  
 その手前にタオルケットをお腹にかけた妙子がいる。  
 
 それを認識した途端、純は音もなく部屋に忍び込んでいた。  
 なぜそんなことをしたのか純にもわからなかった。  
(俺、ヤバイことしてる……でも二人ともぐっすり寝てるし……)  
 頭の片隅にあった罪の意識が次第に朦朧としていく。  
 目が暗闇に慣れるまで、そう時間はかからなかった。  
 そんな純の目に薄手のネグリジェをまとった姉のなまめかしい姿が飛び込んできた。  
 
 小さく寝息を立てている妙子のネグリジェの裾はまくれ上がり、太ももがむき出しになっていた。  
 タオルケットに覆われていない胸は、ブラを付けていないのか先端の突起まではっきりわかる。  
ごくんっ  
 しどけない姉の寝姿に興奮した純ののどが大きく鳴った。  
 純はあわてたように身を縮めしばらく姉を観察していたが、起きそうな気配はまったくない。  
 少しだけ冷静になった純はもう一度、今度はじっくりと妙子を見た。  
(きれいだ……お姉ちゃん、すごく色っぽい……)  
 結婚しているということはセックスを経験しているということだ。  
 今まで姉に対して考えたこともなかった、だが当然の事実に純は気が付いた。  
(セックス経験したからきれいになった?)  
 それを意識した途端、純は股間に血液が一気に流入していくのを感じた。  
 どんどんと固く、大きくなっていく。あっという間に最大に膨脹した。  
 義兄の様子をうかがう。タオルケットを腰にかけ、向こう向きになっていびきをかいている。  
 ……当分は目が覚めそうもない。  
 一瞬、純は義兄に対して申し訳ないという感情を持ったが、体は止まらなかった。  
 
 淫らな好奇心で姉に近付く。と、かぎなれた匂いに気が付いた。  
(こ、この匂いって……)  
 あわててあたりを見回すと、畳の上に丸まったティッシュが散乱しているのが目に付いた。  
(ま、まさか!)  
 そう思って見ると、シーツは寝乱れたにしてはしわが寄りすぎている。  
(ヤッたんだ! 今夜、お姉ちゃんたちはセックスしたんだ!)  
 激しい興奮に包まれるのを純は感じていた。  
 これ以上は固くならないだろうと思っていた勃起が、さらに硬直する。  
(どんな風にセックスしたんだ? 義兄さんはお姉ちゃんにどんなことさせたんだ?)  
 互いの性器を舐めあう。お姉ちゃんを後ろから貫く。お姉ちゃんが上になって腰を振る……。  
 歓喜の声を上げながら性の絶頂を迎えるお姉ちゃん。一番奥で義兄さんの精液を受け止めるお姉ちゃん……。  
 童貞の純が想像しうるあらゆる妄想が頭の中に渦巻いた。  
 欲望に血走る目で妙子の顔を見下ろす。  
 白い額にうっすらと汗をかき、規則正しく寝息を立てる姉。……きれいだと思った。  
 どことなく愛嬌のある顔立ちは、きれいというよりはかわいい部類だと純は思っていた。  
 だがその時の妙子はオンナの魅力にあふれ、妖艶ともいえる美しさだった。  
 
 顔から胸に目を移すと、ネグリジェの薄い布地越しに乳暈と乳頭が見えた。  
 純の震える指先がそこに近付く。……が寸前で思いとどまる。  
(さわってもし起きちゃったら……)  
 そう思うと純は触れることができなかった。  
 代わりに顔を近づける。  
 若い女性特有の甘い香りの中に、なんともいえない淫靡な香りが漂う。  
「ううんっ……」  
 そのとき、義兄が伸びをするように身をよじらせた。  
 びくっとして身を起こした純は義兄の腰を覆っていたタオルケットがずれたのを見た。  
 ……てっきり下着を穿いていると思ったのに、その下は何も着けていなかった。  
 生白いお尻が目に飛び込む。  
 
 散乱するティッシュ。乱雑の度が過ぎるシーツ。むき出しになった下半身……。  
 性行為があったことは確実だった。あまりにも生々しい現実に動悸が激しくなる。  
(お姉ちゃんもネグリジェの下は……裸?)  
 のぼせきった頭でそう考えた純は、ふいに浮かんだ欲望を押さえることができなくなっていた。  
 ひざで妙子の足元ににじり寄ると、姿勢を低くして太ももの間を覗きこんだ。  
 だが照明の落ちた部屋では股間が陰になっていてよく見えない。  
 それが純を駆り立て、より大胆な行動を取らせることになった。  
 
 そっとネグリジェをまくり上げる。  
「!」  
 純が息を飲んだ。思ったとおり、妙子はショーツを着けていなかったからだ。  
 下腹部にいたるなだらかな曲線と、そこに繁茂する逆三角形の縮れ毛が純の目に映った。  
 闇の中で、白さをくっきりと際立たせた姉の姿は例えようもないほど官能的な眺めだった。  
(お姉ちゃん……きれいだ……)  
 このとき、純は体が震えるのを感じていた。  
 息が荒くなる。歯の根が合わない。唇が乾く。  
 舌で唇を湿らせると、純はもう一度妙子の股間に視線を移した。  
(さわりたい……舐めてみたい……)  
 そんな誘惑にかられるたが、ギリギリで踏みとどまる。  
 妙子に気付かれては身の破滅だからだ。  
 
 純はトランクスに手を入れると極限まで硬化した肉棒を握った。  
(むぅっ!)  
 自分で握っただけなのに達してしまいそうな快感が背すじを駆け抜ける。  
 肛門を引き締めて射精をこらえると、純は大きく深呼吸した。  
 そのとき、妙子が大きく寝返りを打ち仰向けになった。  
 あわてて身を引いた純が息を詰めて見ているうち、妙子はまた静かに寝息を立て始めた。  
 義兄とのセックスで身も心も満足したらしく、妙子はぐっすりと眠り込んでいる。  
(起きそうもない……よな?)  
 それに意を強くした純は再び姉の股間に目をやった。  
 妙子が深く寝入っていることに安心した純の行動は徐々に大胆になっていった。  
 吸い寄せられるように純は姉の股間に鼻を近づけた。そして恥丘に顔を寄せるとそこで大きく息を吸い込んだ。  
 そうしながら姉の顔を見上げる。……起きそうな気配はまったくない。  
 
 足の間の秘められた部分をよく見たいと純が思っても、足を開くのは不可能だった。  
 力なく横たわる姉の太ももはぴったりと閉じられているわけではない。が、そこに顔を突っ込むのは絶対に無理だった。  
(せいぜい手か……)  
 恥毛をかき分けるようにしてそろそろと指先を陰裂に伸ばす。  
 濡れた肉溝に指が到達すると、妙子の腰が純の指から逃げるように小さく動いた。  
 純は急いで指を引き抜くと息を殺す。……そのまましばらく待つ。  
 妙子が起きた様子はなかった。純は行為を再開した。  
 指の腹で割れ目を撫であげると、濡れそぼつ淫唇がまとわりついた。  
 柔らかく、そしてヌルヌルしていて温かいひだの中で指を前後させる。  
(本当に濡れるんだ……)  
 いくら純が童貞とはいえ、それぐらいの知識はあった。それを実体験できることに純は胸を高鳴らせていた。  
(舐めてみたい……)  
 妙子の淫裂にあてがっていた指の匂いをかぎ、ついで舐めてみた。  
(しょっぱい?)  
 舐めてから純は気がついた。義兄は妙子の膣の中で射精したかもしれないと思ったからだ。  
 だが指からは精液の匂いはしなかった。  
 当分は子作りの予定がないらしく、義兄は避妊したようだった。  
 
 純は再び秘唇をいじり始めた。淫らな好奇心は妙子が起きることへの警戒を薄れさせていた。  
 先ほどまでのおどおどした感じよりはやや大胆な指使いで姉の性器をまさぐる。  
 這いまわる指が中心に開いたくぼみを探りあてるのにそれほど時間はかからなかった。  
(ここに入れるんだ……)  
 少しだけ指を挿入するとずぶずぶと潜り込む。同時に膣壁がまわりからきゅっと締めつける。  
「う、う……む」  
 その感触に純が夢中になっていると、上からくぐもった声が聞こえた。  
 妙子のうめき声とともに腰がむずかるようにうごめく。  
(ヤバイ!)  
 そのまま指を止め、様子をうかがう。……妙子はまだ眠っていた。  
(眠ってても感じるのか?)  
 純が観察するかぎりでは目覚めた様子はなかった。  
 もう一度、今度はさっきよりも慎重に指を前後させる。  
 内部は微妙に凹凸があり、ペニスが挿入されたときに心地よい抵抗として伝わることが純にも理解できた。  
(こ、こんな気持ちよさそうなところに入れるんだ……)  
 我慢できないほどの欲望に全身が支配される。  
 しかし今の状況で姉に挿入することはどう考えても無理だった。  
 
 純は指をペニスに見立てて何度も前後させた。  
 部屋に戻り、オナニーで欲望を発散させようとも考えたが、二度とないかもしれないこの機会を堪能したかったのだ。  
 膣で指を行き来させながら、もう片方の手でトランクスを脱ぎ捨てる。そして勃起を握るとゆっくりとしごきはじめた。  
 指を出し入れするたびに膣が潤い、ぬちゃぬちゃといやらしい音が立つ。  
 その大きな音に、さすがにこれ以上はまずいと判断した純は指を抜いた。  
 姉の淫蜜にまみれた指で剛直をこすりたてながら、純は次の行動に移った。  
 妙子の顔をまたぐようにすると、勃起の先端を姉の唇になすりつけたのだ。  
 塗りたくられた先走りの粘液が妙子の唇を妖しく彩る。そのまま頬やあごにも透明な跡が残される。  
 姉を穢している背徳感が射精感となってこみ上げる。  
 わずかに開いた唇を割るようにして剛直を押し当ててた純は限界を意識した。  
(あ、イク……)  
 射出の予感にあわてて妙子から肉茎を離すと亀頭を手のひらで覆った。  
「うっ!」  
 直後、こってりとした粘液が尿道を駆けぬける。  
びゅるっ! びゅびゅっ! っびゅっ! ずびゅっ! どびゅびゅっ!…………  
 手のひらからこぼれるほど大量の白濁が射ち出される。  
 これまでのオナニーでは決して味わえなかった甘美な感覚に包まれながら、純は何度も射精した。  
 
 最後の一滴まで出しつくした純はようやく冷静になっていた。同時に強い罪悪感に襲われる。  
(お姉ちゃんにこんなことするなんて……義兄さんにも顔向けできないし……)  
 そう思いながらも純はあわてて自分の欲望の痕跡を探した。  
 手のひらから垂れた精液はシーツに小さなしみを作っていた。  
 処理をどうするかしばらく考えた純は、結局そのままにすることにした。解決策が浮かばなかったからだ。  
 来たときと同じように、純は気取られないように姉夫婦の寝室を出た。  
 自室に戻ると深い後悔の念に頭を抱えた。そして明朝からの姉夫婦への接し方に悩んだ。  
(やっぱり僕が家を出るしかないな……でも家賃どうしよう? 親になんて伝えよう?)  
 純はまんじりともせずに夜明けを迎えた。  
 悩みはまだまだ尽きそうになかった。  
 
 
        おわり  
 

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