あれは転校初日、校内の位置関係を把握しようと放課後に歩き回ってたときだった。  
(あれ?)  
 音楽室の前を通りかかるとかすかにバイオリンの音色が聞こえた気がした。  
 ……窓から覗いても誰もいない。  
(気のせいか……)  
 そこから離れようとしたとき、今度は間違いなく聞こえた。  
 だけど注意していないと聞き逃してしまいそうな小さな音。  
 気になった僕は音楽室に入った。  
 やっぱり聞こえる。中には音楽準備室に続くドアがある。  
 その窓から覗くと同じクラスの女子が演奏しているのに気がついた。  
(……たしか遠藤っていったっけ?)  
 バイオリンにそれほど関心はなかった僕だけど、目の前で弾いているのを見たのは初めて。  
 ちょっとだけ興味を持ち、しばらくそのまま見ていたが準備室も簡易防音のせいか聞こえづらい  
 そしてとうとう、僕はドアを開けると中に入っていった。  
 
「そこにいるのは、誰?」  
 ドアの開く音にそう言いながらあわてて視線を向けた遠藤は、僕を見て一瞬怪訝な顔をした。  
 そして今日転校してきた相手だと気付いたらしく、困ったという顔をしたあと、  
「お願い! 他のみんなには秘密にしておいてほしいの、私が放課後練習していること……」  
 そう懇願した。  
 ……こうして僕たちは秘密を共有する仲になった。  
 
 中学1年にしては遠藤は大人びていた。どちらかといえば「きれい」に属する女の子だった。  
 当然クラスの、いや学校中の男子生徒にもそれなりの人気はあったようだ。  
 何人かは思いを告白し、交際を申し込み、そしてことごとく撃墜されていったという噂だ。  
 だけどそれらは僕が転校してくる前の話で、そのころは誰もが遠藤にやや距離を置いていた。  
 家がとんでもない金持ちだとか、ハッキリものを言う性格だとかが敬遠される理由だったようだ。  
 もちろん僕はそんなことをまったく知らなかった。だから自分の今までのやり方で遠藤に接してしまったわけだ。  
 どうやらそれが新鮮だったらしい。遠藤は僕を信頼できる相手と認めてくれたようだ。  
 それから僕は毎日のように遠藤の練習を見に行った。  
 遠藤もいやな顔一つせず練習を見せてくれた。それはある意味、僕だけの演奏会だった。  
 
 遠藤の演奏を聞いているだけで自然と優しく、あたたかい気持ちになれる。  
「そんなに私のバイオリン聞くの好き?」  
 僕に笑いかけながら遠藤が聞いてくる。  
「わかる?」  
「わかるわよ。だって本当に幸せそうな顔してるんだもの」  
 本当にうれしそうに遠藤が笑った。  
 
 3学期が始まってしばらく経った。5時を過ぎるとあたりはもうすっかり暗くなる。  
 音楽室以外に明かりはない。そんな中で遠藤と二人きり。  
 遠藤はそのころにはすっかり打ち解けて、僕に好意的なまなざしを向けてくれていた。  
 それだけじゃない。他の男子に対するときには決して見せない甘えたような表情もだ。  
 たしかに遠藤はきつめの性格をしていたけど、時折見せるやわらかな笑顔はとても素敵だった。  
 僕は遠藤を好きになりかけていた。いや、もうなっていたのかもしれない。  
 
 中学に入って僕は性に関心を持ちはじめ、その過程でオナニーを覚えていた。  
 自分の手で甘美な快感を得られることを知った僕はその魔力にすっかり魅入られていた。  
 白濁液が尿道を通って射ち出されるときの気持ちよさは初めて味わうものだった。  
 またちょうどそういう時期なのか、些細なことでも僕はすぐに股間を硬直させていた。  
 そして家にいるときはもちろん、学校でも何度もトイレで淫靡な快楽に耽っていた。  
 射精するときの背中がぞくぞくするような感覚を求め、毎日何度も自慰をくり返していた。  
 ……僕はいつしか遠藤に惹かれていき、そして遠藤でオナニーするようになっていた。  
 授業中や休み時間、それ以外にもあらゆる瞬間に僕は遠藤を目で追っていた。  
 転校してきてすぐに何回かだけ見た遠藤のスクール水着。体育の時間に盗み見たブルマー。優美な太もも。  
 上着を脱いだ際のブラウス姿。そしてそこから透けるブラジャー。健康的な二の腕。  
 何気ない仕草。時に見せる笑顔。問題を解くときの真剣なまなざし。正解したときの誇らしげな表情。  
 みんなと同じ給食なのに、どことなく垢抜けた遠藤のマナー。上品な物腰。  
 遠藤のすべてが僕を興奮させた。そんな時、僕は想像の中で何度も何度も遠藤を穢した。  
 不思議と罪悪感はなかった。いつか本当にそういう関係になれれば……。ただそれだけを思っていた。  
 
 その遠藤と今日も準備室で二人きりだ。だけど、いつものことなのにその日は何かが違った。  
 普段よりも強く異性として見ていたといったほうが正確かもしれない。  
 ゆるやかにウェーブのかかったロングの髪が女性を意識させる。  
 少し丸みを帯びた腰まわりや挑発的にふくらんだ胸。すらりとした首すじ。  
 動くたびに漂う女の子らしい甘い香り。バイオリンを奏でるたおやかな指。僕を呼ぶ声。  
 ちょっとした仕草も洗練されていて、本当に「お嬢さま」を感じさせる優雅さ。  
 それらは男とは明らかに違う「オンナ」を主張していた。  
ごくっ  
 のどが鳴った。  
 
「遠藤……」  
 声がかすれた。  
 何かに衝き動かされるように僕は立ち上がり、遠藤に向け一歩足を踏み出した。  
「!」  
 僕の様子がいつもと違うことに気付いたのか、遠藤が身体をこわばらせた。  
 バイオリンを下ろし、弓を置くと僕をまっすぐに見つめる。  
「遠藤……」  
 もう一度呼ぶ。  
「な、なに……」  
「好きだ…ずっと好きだった。遠藤、僕……」  
 ついに思いを告げた。そんなこと、いま言うことじゃないのに……。  
 振られるかも。他の撃墜されていった連中と同じく僕も。  
 そう思ったが、もう遅かった。  
「わ、私は……」  
 何かを言いかけ、遠藤が黙った。そして唇を噛み、下を向く。  
 そして意を決したように顔を上げると  
「私もあなたが……キライじゃないわ」  
 肝心な部分は濁されたものの、そう言ってはにかんだ笑顔を僕に向けた。  
 
(遠藤に嫌われてはいない!)  
 その思いが僕に勇気を与えた。  
 そしてそれが、これまでの僕ではできないような大胆な行動に出るきっかけになった。  
 
 遠藤に近付く。  
「ありがとう、僕うれしいよ。……え、遠藤……あ、晶って呼んでもいい?」  
 想像で遠藤を穢すとき、僕はいつも晶という名前を呼んでいた。  
「……うん」  
 目を伏せ、僕の顔を見ないで小さくうなずく。  
「晶……」  
 初めて名前で呼ぶ。  
「……うん」  
 手を伸ばし、晶の体にそっと触れる。  
 晶が顔を上げた。そのまま見つめ合う。  
 ……晶が目を閉じ、かすかに顔を上向けた。  
 
 首を力のかぎり伸ばしての口付け。ただ唇が触れるだけの淡いキス。  
 手もお互いの身体に添えるだけ。決して抱き合ったりしない。  
 そんな初々しいキスを僕たちはした。それがその時の僕にできる精一杯だった。  
 
 唇が離れる。  
「晶……僕」  
 言いかけた僕を  
「私のファーストキスなんだからね……感謝しなさいよね」  
 制するようにそう言って晶が頬を染めた。  
 
 ただ唇を合わせただけとはいえ、キスをしたことで僕の欲望に歯止めがかからなくなりかけていた。  
 理性が麻痺する。淫欲が暴走しかける。  
 必死の思いでなんとかそれを食い止めようとしていると、晶が僕に身を寄せてきた。  
「!」  
 僕の腕の中に晶がいる!  
 晶は僕を見上げると、  
「好きよ」  
 今度はハッキリとそう言った。  
 その瞬間、抑圧されていた本能が僕を支配した。  
 
「晶っ!」  
 名前を呼びながら強く抱きしめ、唇を重ねる。  
「んっ!」  
 晶はのどの奥でうめき声を立てわずかに抵抗したものの、そのまま僕に抱かれつづけた。  
 生まれて二度目のキス。  
 舌を入れる。……知識では知っていてもタイミングがつかめない。やり方も分からない。  
 僕はひたすら晶を抱きしめつづけた。  
 
 すでに痛いほど勃起している。それを構わずに晶の下腹部に押しつける。  
 僕がそういう状態になっていることはスカートごしに晶にも伝わっているはずだ。  
 『最低の男』。そう思われ、晶に嫌われるかもしれないことまで考えが及ばない。  
 コロンだろうか、晶からいい匂いがする。ぬくもり。やわらかさ。晶の声。整った顔立ち。  
 ただただそれらを欲し、自分の快楽を追求して僕は晶に剛直をなすりつけていた。  
「っっ!」  
 いきなり暴発した。  
 下着の中に精液がほとばしる感触がある。そしてそれはたちまち不快感に変わる。  
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
 晶を抱きすくめたまま大きく息をつく。  
 ……射精してしまった。だけど、それによって僕はようやく冷静さを取り戻していた。  
 
「ご、ごめん……」  
 謝りながら晶から身を離す。  
「ううん……でも、ちょっとびっくりしたわ」  
 そう言って晶が笑顔を返してくれた。よかった、怒ってないみたいだ……。  
「晶、ごめんっ!」  
 そう言うと僕は居たたまれなくなって音楽室をあとにした。  
 そのままトイレに直行し、股間を拭き清める。  
 粘度の高い精液がべっとりと陰毛に絡み付いていた。それをティッシュでこそぐように拭き取る。  
 拭きながら自分がイヤになる。あんなことされて、晶もショックだろうな……。  
 自分が悪いとはいえ、晶と顔を合わせづらい。このまま帰ろう。  
 そこで気が付いた。カバン、準備室だ。  
 ……僕は重い足取りで音楽室に戻った。  
 
 準備室には当然ながら晶がいた。  
 いつもなら練習を終える時間じゃないのにバイオリンはケースにしまわれている。  
「戻ってくるって思ってたわ。カバン、ここにあるし」  
「ほんとにごめん……僕、どうかしてた」  
 このまま晶と気まずくなるのだけは避けたい。だからもう一度謝る。  
「……ねぇ……射精…したの?」  
「!」  
 驚いて固まっている僕に構わず、晶が僕の顔を見たまま言葉を続ける。  
「男子ってえっちなこと考えたり、そういう気持ちになったりすると勃起するんでしょ?」  
「……う、うん」  
「それですごく興奮すると射精するんでしょ?」  
 頬を染め、晶が聞いた。  
「……そうだよ」  
「勃起してたの気付いてたわ……私で興奮して……射精したんだ」  
「ほんとにごめん! そういうつもりじゃなかったんだ。僕、晶が大好きだけどそういうつもりは」  
 僕の言葉をさえぎり、  
「見たいな、精子」  
 晶がそんなことを口にした。  
「えっ……」  
 異様な興奮が全身を駆けめぐった。  
 射精して間がないのに、再び僕の股間は脈打ちはじめる。  
「私にあんなことした罰よ。ね、精子……見せて」  
 そう言って晶が誘うような目で僕を見る。やや潤んだ、煽情的な目……。  
 その目に見つめられると逆らうことができなくなる。  
 僕は見えない何かにあやつられるかのようにのろのろとズボンのベルトをゆるめた。  
 ホックをはずし、ファスナーを下ろす。  
 完全に勃起した剛直に指が触れた。精を吐き出し、敏感になった亀頭からえもいわれぬ快感が押し寄せた。  
 下着ごしなのに背すじを脳天まで快感が駆けのぼる。  
「うぅっ!」  
 小さくうめいて前かがみになる。  
「平気?」  
 あわてたように僕に近寄った晶の戸惑いを含んだ声がする。  
 
「だ、大丈夫……気持ちよかったから、つい」  
「気持ちよかったんだ……ね、脱いで……」  
 興奮のせいか、晶の声もかすかに震えている。  
 晶に見られたまま、僕は下着ごとズボンをひざまで下ろした。  
 
 勃起が晶の眼前にあらわになった。  
 さっき性器をティッシュで拭いただけで、下着もまだ濡れている。  
 そこから青臭い匂いが立ちのぼる。  
 晶はわずかに顔をしかめると  
「精子ってこんな匂いするの?」  
 そう聞いた。  
「うん」  
「……栗の花の匂いってほんとだったのね……さわってもいい?」  
 そう言いながら手を伸ばす。  
 僕が答えるより先に晶のほっそりした指が亀頭に触れた。  
ビクンッ!  
 勃起が震えた。  
「きゃっ!」  
 小さく悲鳴を上げて晶が手を離す。  
「あ、晶……大丈夫だからもっとさわって……」  
 そこまでくると、僕も恥ずかしさより快感を求める気持ちのほうが強くなっていた。  
 すでにオナニーによって性の快感を知ってしまっている。何度でも気持ちよくなりたい。  
 まして大好きな晶にさわってもらっているという絶好の機会を逃がす手はない。  
 女の子の体にも興味がある。うまくいけば、僕も晶の裸を……。  
 そんな思いが交錯し、僕はそのまま晶の自由にさせた。  
 
「熱くて固い……ドキドキする……」  
 そう言いながら晶は僕のモノをいじくりまわす。  
 晶の頬は上気し、額もうっすらと汗ばんでいる。  
 コロンと汗の匂いが混じりあい、晶からメスのニオイがする……。  
「晶……」  
 無意識に晶の名をつぶやく。  
「精子?」  
 先端からにじみ出る透明な粘液を指先にからめ、晶が聞く。  
 晶はそうしながらも手は休めない。僕をどんどん高みに導いていく。  
「違うよ、最初にヌルヌルした液が出るんだ。精子はこのあと」  
 腰が砕けそうな快感の中、それだけを答える。  
「精子が出るとこ……見たいな」  
 
 晶は丸く輪にした指で亀頭のまわりを回すようにこすりたてる。  
 鈴口を親指の腹で何度かしごき、裏スジに軽く爪を立てる。  
「あ、晶ぁ……」  
 情けない声を出し、僕は晶の愛撫に酔いしれる。  
「ん、んんっ、ふ…ん……」  
 わずかに開いた晶の唇から小さく吐息が洩れる。  
 僕の性器を玩弄しながら、晶も興奮しているのだろうか?  
 
 右手で竿をしごきながら、晶の左手は袋に伸びる。  
 最初はさわさわと優しく、次第に手のひらで睾丸を転がすように刺激する。  
 そんな愛撫に僕の股間ははちきれんばかりに屹立していた。  
 カリのでっぱりを指先でつまむように弾く。亀頭の表面でツツッと指先をすべらせる。  
 先端からあふれた先走りで晶の手とペニスがくちゅくちゅと淫らな音を立てる。  
 晶は茎の真ん中あたりを強く握るとそのまま手を上下させた。  
 それにともなって先走りの液体がしぼり出され、さらに晶の指を濡らしていく。  
 どこでこんなことを学んだのか、そんな疑問もかき消すほどの圧倒的な快美感に包まれていく。  
 頭の中にもやがかかったように真っ白になる。  
 身体がフワリと浮き上がるような感覚、そして下半身がドロドロに熔けていくような感覚。  
 ……限界が近い。  
 
 混濁する頭に  
(こ、このままじゃ晶の制服を汚してしまう……)  
 それだけが警報のように鳴り響いた。  
 いつイッてもおかしくないほど切迫した状況でティッシュを用意するゆとりなんかない。  
 勃起をしごく晶の手に、僕は自分の手のひらをかぶせた。  
 直後、  
ずんっ!  
 という衝撃に似た響きが腰の奥で生まれた。  
 そしてオナニーなんかとは比べものにならない快感とともに、おびただしい精液が射ち出される。  
びゅびゅっ! びゅくっ! びゅるっ! どびゅびゅっ!………  
 信じられない享楽に貫かれながら僕は晶の手をつかみ、その中に何度も白濁をまき散らす。  
「うぅっ、うぐっ! むんっ! んんっ!」  
 僕はうなり声を上げながら腰をガクガクさせて射精を続けた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
 大量に白濁を吐き出し、大きく息をつく。ぐったりとして力が入らない。  
「本当に白いのね……」  
 晶が手のひらにべっとりと付いた精液を見ながら言った。  
「晶、どうしてこんなに……」  
「女の子向けの雑誌って男の子が思ってる以上にカゲキなのよ。でも想像以上……」  
 そう言うと、晶は艶然と微笑んだ。  
 
 その後、金沢に転校するまで僕は晶と毎日のように淫らな遊びにふけった。  
 僕たちはお互いの性器を刺激しあい、性の悦楽を味わったがとうとう結ばれることはなかった。  
 そして高校3年になって再会。その夏、僕たちはようやくひとつになった。  
 長崎と東京。決して近くない距離も僕たちを引き離すことはできなかった。  
 高校を卒業すると晶は上京した。  
 いま、僕のそばには晶がいる。これから僕たちは二人で人生を歩んでいく。  
 
「なに考えてたの?」  
 晶の声に我に返る。  
 バスタオルを巻いただけの晶がシャワーを終えて立っている。  
「ん、ああ……昔のこと」  
「昔って?」  
「初めて会ったころのこと」  
「うふふ、いろんなことがあったわね」  
 そう言ってベッドに腰を下ろし、晶も遠い目をする。  
「初めて晶に手でイカされたときのこと思い出してた」  
「ちょ、ちょっとぉ、そんなこと思い出さなくていいわよ!」  
 真っ赤になり、抗議するように僕を軽くにらんだ晶の肩に手をかけるとベッドに押し倒す。  
「思い出してたらまたしたくなった」  
「ば、バカっ! いまシャワー浴びてきたばっかりなんだからねっ!」  
「シャワーなんかまた浴びればいいだろ?」  
 そう言うと僕はバスタオルをはぎ、晶の乳首を口に含んだ。  
 
 
         おわり  
 

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