「……またやっちゃった」
私は、濡れた髪をドライヤー乾かしながら独り言を呟いた。勿論、さっきの風呂場での一件のこと。
あの後、私はあいつを残して脱衣所に戻り、そそくさとパジャマに着替えて自室に帰ってきた。今頃はあいつも着替え終わった頃合いだろう。
(ビックリしたなぁ…何であそこで振り返るかなぁ)
私は鏡を覗き込む。知らず知らずに少し膨れっ面になった私が写っている。
確かに、またビンタしたのは私がまずかった気はするけど。でも、「見ないで」っていったのに…。
「ああっもう!」
バンッ、と手に持った道具を机に置いた。
(まったく……何であいつはあんなにHなんだか)
自分からお風呂に一緒に入ったんだけど、それは棚に上げておこう。
……結局、あいつに裸を見られちゃった訳で。思い出すだけで何だか恥ずかしくなる。
鏡の中の私は、頬を少し赤く染めている。別に風呂上がりだからって訳ではないよね、やっぱり。
机の横に置いたカバンの中から、私は自分の財布を取り出した。そしてその中身をごそごそと漁って、ある物を取り出す。
「……でも、私も人の事は言えないか…」
こっそり忍ばせてあるコンドームを手にして呟く。ピンク色の可愛い包装の、ちっちゃい小袋。
あいつと付き合うようになってから、実はすぐに用意していた。予備の分も、ちゃっかり机の奥に隠してあるのは誰にも秘密だ。
「財布にコンドームを入れておくと幸せになる」なんてとある占い雑誌に載ってたのを、私は真に受けて実行しているのだ。
……でも、やっぱりそれだけじゃない。私だってこれでも18の乙女なんだから、少しはそーゆー事にも興味はある。
いざって時もあるかも知れないし…。
「でもいつかは、私たちもそーゆー事をするんだよね…」
私がそんな独り言を洩らしていると、
――トントン!
「おーい、妙子」
突然のノックにあいつの声がほぼ同時に飛び込んできた。
「きゃあっ!?」
私は素っ頓狂な悲鳴を上げて、手にしていたコンドームを慌てて枕の下に放り込んだ。
「な…何よ?」
私は平静を装ってドアをカチャリと開けて頭を出す。
そこには寝巻代わりに私が出しておいたジャージに着替えたあいつがいた。
「あ…妙子、今日僕は居間で寝ればいいのかな?」
「そ、そうよ?ちゃんと布団敷いておいてあるでしょ!」
思わず口調が荒くなる。こういう所が我ながらかわいくない。
「わ…わかったよ」
あいつは少したじろいで答え、そしてくるっと後ろを向いた。
「じゃあ…お休み、妙子」
「うん、お休み」
短く挨拶を交わした。
ドアを閉め、段々足音が遠ざかるのを聞いていた。
「ふ〜う……」
ドサッと私はベッドに身を投げた。部屋の明かりを消した代わりに、枕元の電気のスイッチを入れる。
そして体を横に向けて、その身を少し丸くした。
……何だか今日は疲れてしまった。色々な事がありすぎたせいかも知れない。
(色々か…確かに)
私はふと自分の手のひらを見つめた。ベトベトになったこの手は洗い流してすっかりキレイになっている。
(あいつの……いっぱい、付いちゃったな)
今思い返すと、すっごい恥ずかしい事をしたんだと思う。いくら付き合ってるとは言え、まだ高校生なのに手で、なんて…。
それに、場の流れとはいえ思わず舐めちゃったし…。
私は思わず舌で唇をペロッと舐めていた。
(あいつの…凄く、熱かったな…)
私の手に、男の人のモノの感触が蘇る。
今まで、小さい頃にお父さんや弟の純の物を見た事ある位だし、ましてや触った事なんかない。それが、あんなに熱くて硬くなるなんて…。
それに、私の手の中でビクビクと脈打つ様に小さく動いて、また徐々に硬く大きくなって……。
………やだ。
何だか顔が熱くなってきたみたいだ。
それに、体の奥の方も…。
(この手が…この手で…)
私は何故か、見つめてた右の手のひらを自分の左胸の辺りに持って来ていた。
ドクッ…ドクッ…ドクッ…ドクッ…ドクッ…。
やけに心臓がドキドキしている。
(どうしちゃったの……私…?)
グッとそのまま、右手で胸を掴む。
「あ…っ」
私はつい声を出してしまった。その声が思いがけず大きくてまた驚く。
(あれ…この手は…私の?それとも…)
何だか頭がボンヤリしてきた。私の手は、勝手に動き続けている。
「あっ……はぁ…っ」
体が、熱い……。
私はパジャマのボタンを上から三つ外した。そこから白い下着が見えた。
まだ、熱い……。
空いていた左手でブラを上にずらす。左の胸が露になった。
ここが、熱い……。
露になった胸が、その手に掴まれて形を変えた。
……こんな気持ちは初めてだった。
切ないような、気持ちいいような感じ。
私はそのまま左胸を揉み続ける。その手の中で、気が付くと胸の先っぽが硬くなっていた。
「あ…っ…や…やだ…」
恥ずかしい。こんな…。
それでも手の動きは止まらない。
それどころか、さっきよりも身体中が熱にうなされたかの様に火照っているみたい。
「……あ…ぁ……ん…」
何故かあいつの顔が浮かんだ。その途端に、さらに体が熱くなってきた。
……ダメっ…ガマン出来ない……。
留守になっていた左手を、パジャマのズボンに滑り込ませる。
そして下着の中心辺りにそっと指を添えた。
(…ここも…熱くて…っ)
自分でも驚く程の熱さだった。そして、添えた指でゆっくりとその布地を擦る。
「あぁん…っ!」
堪えられなくて声が出てしまう。それどころか、声を上げてしまった事で何かが崩れてしまった。
私はその動きを止め、少し上に戻した。そして、今度は下着の中に直接手を入れていく。
さわさわと、私の恥ずかしい毛が指に触れる。その音まで聞こえて来る気がしてどんどん顔が熱くなる。
そしてそのまま、指で毛を掻き分ける様に下へ滑らせる。
…くちゅ…。
そこは既に濡れていた。
(嘘…こんなっ……)
私はもう完全に冷静さを失っていた。
こんなにも身体中が熱く火照っているのに、私のそこはどこよりも更に熱くなっている。そう、まるであいつのモノみたいに…。
――くちゅっ。
「はあぁン…ッ」
自分の意志とは無関係みたいに、私の指がその中に入った。ぬめっとした感触に頭がしびれてくる。
「あ…ッ……ああぁんッ」
声を出すのをガマン出来ない。
左の人差し指は私の中でくちゅくちゅ、とはしたない音を立てる。
左胸を揉んでいた右手は、今度はツンと張った胸の先っぽを親指と人差し指で軽く摘む。
「はぁ…っ…やぁ……こんな……っ…はぁんッ…」
――私は両手で自分の体をいじってしまっている。
こんな…こんなの……ダメ…っ…ダメなのに……。
そう思えば思う程、私は抜け出せなくなる。
ぼーっとする頭の片隅で、妙に冷静さを取り戻してる自分がいる。
その自分には、わかっていた。
――これは、オナニーだ。
いくらここが田舎でもそれ位は私でも知っている。ただ、私はした事はなかっただけ。
男の人は大体みんなしてるらしいが、女友達はわからない。そんな話になった事はないから。
……じゃあ、私は……。
くちゅ…くちゅっ…くちゅくちゅ……ちゅくっ…
「…はぁん……は…はぁぁん…っ……ふぁっ…ふぅん…ぅんっ………」
自分の声と、自分のそこの音が頭の中で絡み合う。
(き…気持ちいい…)
認めたくないけど、私はその想いを認めるしかない。
右手は先っぽをいじりながら胸全体を揉み、左手はいつしか中指もそこに入れて二本指ではしたなくかき回す。
「あ……いい……いい…よぉ……」
自分の言葉さえもうコントロール出来ない。
男の人も、こんな風にしてるのだろうか。
あいつも、私の事を考えながら、こんなに……。
そんな考えが不意に頭をよぎる。そう思ったら、更に体が熱くなる。
「あぁ……や……やだぁ……そん…なぁ……あんっ……はぁ…ッ…」
始めは閉じていた両脚はいつの間にか軽く開かれ、指の動きは止められなくなっている。
……私……こんなHな娘だったの……?
頭の片隅に浮かんだ想いはすぐに消えて、再び両手の感触に身を任せた。
「や……何か…くる…っ……きちゃう…の…ぉっ」
体の奥から沸き上がる気持ちに、私はどうしようもなく切なくなる。
その気持ちは段々大きくなり、くちゅくちゅと恥ずかしい音も大きくなる。
「…も……ダメ…ぇッ…ダメッ……だ……ダメェ………ッ……!」
―――そして。
「あっ…あっ……あぁぁぁぁんッ!!」
びくんびくんっ、と全身が震えた。
それはものすごく長い時間みたいに思えた……。
「………はぁ…はぁ……」
(私……自分で……こんな……)
夢の中にいるのようなぼんやりとした意識の中で、私は体中の力を失っていた。
左手の指はぐっしょりになっている。どうやら下着も濡れちゃったみたいだ。
上着もすっかり乱れてパジャマの前が開きっぱなしになり、そこから上下する両胸が見えている。
「……はぁ…はぁ……」
ゆっくりと呼吸を整えようとしたその時――
ガタンッ!
ドアの方から物音がした。
「えっ……?」
つづく。