結局、僕は妙子の部屋に入り、ベッドに二人並んで腰掛ける。
気まずい雰囲気の中、先に口を開いたのは妙子の方だった。
「ねぇ……もしかして……見てたの…?」
妙子は潤んだ瞳を僕に向ける。どうやら床の汚れには気付かなかったようだ。
「……ゴメン…覗く気は無かったんだ…」
僕は頭を深々と下げて妙子に詫びる。
「…………」
妙子はしばらく黙り込み、そして静かに口を開いた。「……じゃあ……あなたが…して…」
「えっ?」
「体が……熱くて……変なの…っ…」
そのまま僕に唇を重ねる。「……んっ」
短いキスの後、僕達は見つめ合う。
「……いいの?」
僕の言葉に、妙子は声は出さずにこくん、と頷いて同意を示した。
僕は再び妙子にキスをしながら、静かに服を脱がせていった。薄明かりの中、妙子の白い肌が露になる。
「ん……んん…ッ……」
僕は、妙子の舌を夢中で貪る。妙子もそれに応える様に懸命に舌を絡めてくる。
(妙子っ…妙子っ…妙子っ……)
沸き上がる愛しさをぶつけるように、僕は妙子の胸を揉み始めた。
妙子の乳首は既に硬く尖っていて、僕はそれを指で摘んだり押し付けたりして刺激する。
「……ふぁ…ッ…んンッ」
妙子は、眉間に皺を寄せて何かに耐えながら声を洩らした。
「……いい…よ…」
妙子は僕の体に両腕を絡めて耳元で囁く。
「……私の…触っても…いいよ…」
「わかったよ、妙子」
僕が右手を妙子の陰部に伸ばすと、そこは既にぐっしょりになっている。さっきの自慰で身体が敏感になっているのだろう。
くちゅ…っ…。
妙子の陰部は、僕の指を容易く呑み込んでゆく。僕はそのまま妙子の膣内を掻き回し始めた。
「あっ…あぁん…ッ……はぁ…んっ………」
妙子の喘ぎ声が耳元で響いて、更に興奮が高まる。
「…ねぇ……っ」
妙子が潤んだ瞳を僕に向けた。口元からは涎が垂れて艶めかしい。
「……こ…これ…を…」
妙子の右手が僕のモノに添えられた。
「………欲しい…の」
聞き取れない程の声。
「……これを……入れて……欲しい…のっ…」
「た……妙子…」
まさかそんな風に直接的に言われるとは思わなかった僕は、目を丸くした。
「……ゴメンね……私、あんな事言ってたのに…」
一呼吸いれて続ける。
「……こんな……こんなに…Hな女の子で…でも」
「…あなたのが……欲しくて、ガマン出来ないの」
―――――気持ち良くしたい…妙子の事を。
僕は自らの性欲以上に、心からそう思った。
「……わかった」
僕は胸の辺りを片手でパンパン、と探った。
(しまった…服のポケットの中だ)
こんな事の為に用意しておいた避妊具が無くて焦る。
「ゴメン、避妊しないといけないのに…」
「……それなら」
妙子が枕の下を漁ると、ピンク色の小さな包みが姿を現した。
「これ、使って」
「え…妙子もコンドーム用意してたなんて…じゃあ」
妙子の顔が耳まで一気に紅潮する。
「…だ……だって…」
言葉に詰まる妙子。そんな初々しい様子が堪らなく可愛い。
僕はしどろもどろになっている妙子の口を自分の唇で塞いだ。
「…嬉しいよ、妙子…」
慣れない手つきで僕は自分自身に避妊具を被せた。そして改めて妙子と見つめ合う。
「妙子……入れるよ」
小さく頷く妙子。
「うん…私を、あなたのものに…して……」
妙子はゆっくりと脚を開いて目を閉じた。
ごくり、と唾を飲む。妙子に伸ばす指が緊張で震えてくる。
(情けないな…男なのに)
自分の腑甲斐なさを嘆きつつ妙子の頬に触れた。
……妙子も、全身を小刻みに震わせている。
「……妙子…」
僕達は、初めての行為に同じように期待と不安で一杯だったのだ。――そう、一緒なんだ。
「…いくよ…」
「うん…」
僕達はお互いの両掌を握って、お互いの瞳に愛する相手の姿を映した。
そのまま、僕はゆっくりと自分自身を妙子の膣へと沈めていく。
……ぬちゅ…っ…。
「はぁぁ…ぁ……っ…」
妙子は体の奥から絞り出すような声を上げた。
二人の結合部から、一筋の赤い血が流れる。…そう、妙子が「女」になった証拠だった。
「…うっ…ぁあ…締まる…っ…」
僕のモノを妙子の両膜が締め付け、頭の先が痺れて来る。
「…あ…っ…はぁん…っ」
妙子の瞳からぽろぽろと大粒の涙が零れた。
「…大丈夫…?痛かった…よね……?」
「う…ん、ちょっとだけ………でも」
妙子は薄く目を開いて言った。
「…嬉しい…あなたと、ひとつになれて…」
妙子は、安らかな笑みを僕にくれた。
胸一杯に愛しさが溢れてくる。
「僕もだよ……好きだ、愛してるよ…妙子」
単純でありがちな言葉で精一杯の気持ちを伝える。こんな時、もっと気の効いた台詞が言えたら…。
「…私も…あなたが…大好き、だよ」
妙子はそう言って軽く僕にキスをした。
「…ねぇ……いいよ…動いても」
「でも…」
相変わらず返事に困る僕。
「……じゃあ…」
妙子はひと呼吸置いて続けた。
「……もっと……気持ち良く…して……」
その言葉が引き金になり、僕は腰を前後に振り始め、妙子を味わう。
ぐちゅ……ぬちゅっ……ぐちゅぐちゅ…っ…。
「……あ…っ……あぁん…はぁん…っ…」
妙子が僕の下で喘ぐ。
始めは僕が一方的に妙子を責めていたが、いつしか僕に合わせて妙子もぎこちなく腰を振っている。
「……いいよ……もっと…突いて……動かして…」
妙子が両腕を背中に絡めてくる。それによって密着度が増し、妙子を一段と近くに感じた。
ぱんっ…ぱんっ…ぱんっ…ぱんっ…。
僕は少し動きを早め、自分自身を妙子の奥まで突き上げる。
「妙子の膣……熱くて、気持ちいい………」
率直な想いを告げる。
「……あぁん…っ…わ…私も…いい……あっ……気持ちいい…の…っ……奥に当たっ…て…っ…」
艶めかしく汗を滲ませた妙子が、喘ぎながら快感を伝えてくれる。
もっと長く、妙子と繋がって居たかったが、駄目だった。射精感が限界まで来ている。
「…妙子っ……僕…もう…」
妙子を貫きながら、その時が迫っているのを告げる。
「わ……私も…あん…っ…ダメぇ…イッ…ちゃうよ…ぉ…」
妙子の口から「イク」という言葉が出た事が、更に僕の興奮を高めた。
妙子を壊れる程に強く抱き締め、最後の瞬間まで駆け上がる。
「妙子ッ…ああッ…妙子ッ妙子ッ……出る…ッ」
「あぁん……あんッ…あぁンッあんあンあんっ……あぁんッ…あンッ…!」
妙子の喘ぎ声が高くなる。
「うッ…!!」
「あッ…あぁぁぁぁんッ!!」
ドクッ!ドクドクンッ!!
妙子の中で、避妊具に一気に熱い快感を吐き出した。
―――意識が遠くに飛ぶ。
引っ越しのあの日、妙子が泣きながら走ってくる。
手を伸ばして僕の名前を叫ぶ。
僕も届く筈のない手を伸ばして妙子の名前を呼ぶ。
――二人の距離が一気に縮み、僕達はお互いの手を強く繋いだ……。
「…はぁ…はぁ…はぁ…」
妙子が僕の腕の中で肩を上下させながら余韻に浸っている。
僕はゆっくりと自分のモノを妙子から抜き出す。
そして、熱くなった避妊具をティッシュに包んでゴミ箱に捨てた。
「…妙子」
妙子の髪を撫でる。
「…………ねぇ」
妙子はゆっくりと瞳を開いて僕を見つめた。
「私の…はじめてをあげたんだから……」
顔を近付け、軽く口づけて微笑む。
「ちゃんと、責任取ってね」
終わり。