僕と妙子が結ばれてから数か月が経っていた。
あの日以来、僕達は何度も体を重ねた。最初はやはり抵抗があったが、次第にそれは薄れていった。
寧ろ身体の方は徐々に馴れてゆき、妙子も段々良くなって来た様子だった。そのせいか、妙子も僕に尽くしてくれる。
その分、離れている時の寂しさも増した。
勿論、心の結び付きは以前よりも強く感じている。だが、会えない時に妙子を想うと身体が疼くのも事実だった。
僕は、妙子を想い自慰に耽る回数が増えていた。
「…ん…ふぅ…ッ…はぁんンッ…ぅん…」
受話器越しに妙子の切ない喘ぎ声が聞こえてくる。
「…あッ…妙子ッ……」
僕は携帯を右手で掴み、残った左手で自分のモノを扱く。
テスト期間に入り、中々逢えない日々の続いたある夜遅くの電話。お互いを求める気持ちが抑えられなくなってしまったのだ。
「妙子……今、手はどうしてるの…?」
「……はぁん…っ……胸…触って…る…ぅんっ…!」
青森に居る妙子の痴態を脳裏に描く。
「…乳首……勃って来た?」
「……ゃあん…ッ……うん…っ…硬くなって…る…よ……っ……」
「反対の手は…」
僕は淡々と尋ねる。
「……やだ…っ…はんッ…は…恥ずかし…っ」
「駄目、ちゃんと言って…」僕の問いに妙子は言葉を詰まらせ、押し殺すような吐息だけになる。
「…はぁ…っ………あ……あそこを…触ってる…」
しばらくして、やっと妙子が答えた。
「そうか…もう、濡れてるの…?」
「はぁ…っ…う…うん…」
妙子は喘ぎながら言う。その様子を思うと、自らを扱く手が早くなる。
「ねぇ……妙子の…音、聞かせて……」
「……ふぅっ…んッ……う…うん……」
妙子の声が遠ざかる。暫くすると、くちゅくちゅと水音が聞こえてきた。
「……や……やだ…ァ……すごく……濡れちゃって………」
少し離れた所から、妙子の声が聞こえてくる。
――くちゅ…ッ……くちゅくちゅッ…くちゅ…ッ…。
愛液の混じり合う音が受話器越しに響き、僕は興奮が昂ぶるのを感じていた。
「…ふぁ…んッ……やだ……止まんな…い…の…ッ…あぁ…んっ」
妙子の切ない声から、絶頂が近いのが判る。
「…ぼ…僕も…イキそうだよ…妙子…ッ」
「は……私…ッ……イくッ…イッちゃ……うよぉ…ッ…イク…ぅ…ッ…」
ぐちゅぐちゅッ、と水音が一段と激しくなる。
「た……妙子…ッ……」
「…あッ…ああンッ…ぁッ…ああぁぁぁぁッ!!」
妙子の高い喘ぎ声。
「――うッ!」
同時に、僕も達した。
「妙子…イッちゃった?」
「……うん」
乱れた息を整えながら妙子が答える。
「ねぇ…こんな、Hな事しちゃって…軽蔑、した?」
妙子は小さな声で僕に尋ねてきた。
「そ、そんな事ないよッ!僕だって、同じだしね」
一瞬、沈黙が流れる。
「早く、逢いたいよ」
「…私も、逢いたい」
僕達は同じ気持ちを確かめ合った。そして再び沸き上がった感情を鎮める為に、もう一度互いの声を聞きながら自慰に耽る事になってしまった……。
一旦終わり。