僕と妙子が青森で再会してから、数か月が過ぎた。僕は離れていた時間を取り戻す様に、何度も妙子に会いに行った。妙子もそんな僕を受け入れてくれた。――そうする内に僕ら二人は改めて互いに魅かれ合い、そしてお互いの想いを打ち明け合い、そして「恋人」になった……。
そして、遠距離恋愛が始まってしばらくしたある日。
僕は妙子に会いに来た帰りに、久しぶりに妙子の家に泊まる事になった。
「大丈夫だよ、家の人はみんな出掛けてるから」
そんな言葉に、僕はあらぬ期待を抱いていた……。
「じゃあ、先にお風呂どうぞ」
「うん…じゃ遠慮無く」
僕はそそくさと風呂場に消えた。逆に、間が保たない状況に耐えられなかったのが本音だった。
「ふ〜う…生き返るな〜」
僕は長旅の疲れをゆっくりと湯槽に沈めていった。何回往復しても、やはり東京・青森間はしんどい。余りお金も使えないから電車移動なので尚更だ。
(にしても……やっぱり急には駄目かぁ……)
僕はついさっきのやり取りを思い返す。
他愛の無い会話の後、ふと二人の間に沈黙が訪れた。そしてどちらからともなくキスを交わした。
「……ん…っ…」
唇を離した妙子から溜息が洩れた。その何気ない色っぽさに僕は欲望を昂ぶらせてしまった。
(妙子を…抱きたい…ッ)
僕は再び妙子を抱き寄せ、唇を塞いだ。そして自分の舌を妙子の口内に滑り込ませた。一瞬、妙子は体を強張らせたが、すぐに僕を受け入れた。
ぬちゅ……ッ…。
くちゅ……ちゅ…ッ…。
互いの舌が絡み合う音が僕の理性を小さくさせた。右手を妙子の左胸に伸ばし、そしてゆっくりとその柔らかい乳房を揉む。
「…ちょっ…やだ…っ」
妙子の制止も聞かず、僕は愛撫を続ける。僕の掌の中で妙子の胸が形を変え、徐々にその先端を尖らせてゆく。
「妙子……僕はッ」
「や……私、まだ……」
妙子は耳まで真っ赤に染めて視線を泳がせた。
「…我慢出来ないよッ」
そして残された左手を妙子のスカートの中へ侵入させた。指が妙子の下着に触れる…。
「ダメェ――――!!」
ドーン、と両腕で突き飛ばされた。僕はだらしなく後ろにひっくり返った。
「うわたたっ!」
僕は情けない声を出す。
「ちょちょちょちょっとぉ!まだ私達高校生だぞ!そんな事、早すぎるんじゃないの!?」
いつもの台詞だ。
そして、これが出ると僕は何時も引き下がっている。
「ごごごごごめんッ!」
これまたいつもの台詞。
そしてうやむやになってしまい、しばらくの沈黙の後でさっきの妙子の言葉。
(そりゃ妙子の言う事も一理あるけどさ)
僕は頭からお湯をかぶって思考を巡らす。
昔から口うるさかった妙子だから、こういった行為に抵抗があるのは至極当然だろう。だが、僕にしてみれば妙子とひとつになりたいってのも至極当然な発想なのだ。
いつもの堂々巡りに填まり込んでいると、ふと脱衣所に人の気配がした。
(えっ!?)
僕の思考回路が瞬時にして混乱する。
「……ねえ…っ」
強がる様な、か細い妙子の声が硝子戸越しに聞こえてきた。
「わ…私も一緒に入っていいかな…」
「え!?えっ!?」
しどろもどろに答える僕の言葉を遮る様に、ガチャリとドアが開かれた。
そこには白いバスタオルで体を隠して妙子が立っていた。いつもは二つ縛りにしている髪を解いた姿に何故か女らしさを感じる。
「た……妙子…」
その身体のラインに僕は見惚れてしまった。
「こらっ……あんまりジロジロ見ないでよっ」
「…………。」
「…………。」
僕と妙子は二人して黙り込んでしまっていた。妙な雰囲気の中、気が付くと妙子が僕の後ろに回って背中を洗っていた。
すぐ後ろには、バスタオル一枚の妙子が……。ついつい振り返りたくなる衝動を抑えるのが精一杯だ。それこそ、僕のモノは既に硬くなっている。
「ね…ねえ」
不意に妙子が話し掛けてきた。
「あの、さっきは……ゴメンね、突き飛ばしたりしちゃって」
「いやっ、僕の方こそゴメン…妙子の気持ちも考えないで」
……そしてまた沈黙。
ふと前を見ると、鏡に妙子の姿が背中越しに写っている。何か決意したかの様にも見えていた。と、いきなり妙子がその視野から消えた。
ぎゅっ。
「た…妙子ッ!?」
妙子は後ろからいきなり抱き締めてきた。
「………私、あなたにいっぱい我慢させてるよね」
囁くような妙子の声。
「だ……だから、私…………………」
不意に下半身に電流が走った。下を向くと、妙子の右手がそっと僕のそこに添えられていた。
「た…た…妙子っ!?」
思いも寄らない妙子の行為に僕は面食らい、裏返った声で言った。
「や……ダメっ、こっち見ないでよ……私だって恥ずかしいんだから…っ」
妙子の声も少し上ずっている。
「だ…だって男の子ってここ触られると気持ち良くなるんでしょ?わ、私だってあなたに……そのっ…き…気持ち良くなって欲しいっていうか…その…」
早口で一気に言う妙子。
「…………わかったよ、妙子」
「えっ…」
「じゃ…じゃあ、お願いしようかな」
僕は間の抜けたお願いをした。……我ながらカッコ悪い。
「う……うん、わかった。……ね……どうしたら良いの…?」
妙子は改めて恥ずかしそうに尋ねてきた。そんな事言われても、僕だって詳しい訳がないのだが。
「え……あ…うん、と…取り敢えず上下にこすって…欲しいな」
「…うん」
妙子はゆっくりと僕のそこに添えた右手を動かし始めた。
「うぁっ」
思わず声が洩れる。
「え?大丈夫?私、何かまずい事した?」
妙子は慌てて僕に尋ねてきた。
「ち、違うよ…気持ち良くって…だから、そのまま続けてよ、妙子…っ」
僕は早々襲い来る快感に耐えながら答えた。
正直に言えば、妙子と再会して以来、僕は何度も妙子で妄想して抜いていた。
正常位で責めたり、バックから何度も突いたり、時には口で慰めさせたりと、それはそれは淫らな行為を繰り返してきた。
始めはそんな事しちゃいけない、と思ったが、次第に欲望が抑えきれなくなってきて、例えば友人から借りたAVを観ていてもすぐに女優を妙子に置き換えて考えるようになっていった。
それに比べれば、たかだか手で扱いて貰ってるだけなのに、物凄く気持ちいい。想像では無いその手の感触に、僕は信じられない程に射精感を募らせていた。
「…ねぇ…………」
妙子の小さな呼び掛けに、僕はハッと快感から呼び戻される。
「き……気持ちいい…?」
恥ずかしそうに僕に尋ねる妙子。その表情は見えないけど、背中越しに伝わる動悸がドクドクと早足になっているからそれが判る。
「うん…もっと…早くシゴいてよっ……妙子…っ」
僕の言葉に、たどたどしく動かされる妙子の右手がスピードを増す。
「ゴメンね、私…まだちょっと怖くて……だから…その、手で………」
「うん……っ」
僕はすぐにでもイキそうになるのを堪えながら短く答える。
「…凄く…気持ちいいよ、妙子の…手」
「本当?……嬉しい……じゃあ、いっぱいしてあげるね……」
妙子は残っていたもう片方の手を伸ばして僕のそこに添えた。体が更に密着する格好になり、背中に妙子の両胸の感触が当たる。いつの間にかバスタオルが下にずれていたのか、肌に直接妙子の乳房が押し付けられる。
(うわっ…や…柔らかい………)
僕は未だ一度も目にはしていない妙子の胸の感触にドギマギする。その上、妙子の両手が僕のそこに添えられている…。そう思うと、僕の分身は更に大きく膨れ上がる。
「…また、大きくなった……それに、ビクビクしてる…」
「だって…その、妙子のが…気持ち良くって……」
僕は射精感を堪えるのに必死だった。
「…………いいよ」
妙子が背中越しに小さく呟く。
「……そ…その……出しても……いいよ……」
その甘い言葉に、僕の我慢は限界を迎えた。
「あッ……妙子…っ…で……出る…ッ!」
僕のそこから白濁した欲望が堰を切った様に飛び散った。
ドクッ!ドクドクッ!!
勢い良く飛び散った精液が僕の目の前に次々と溢れ、タイルを汚した。と同時に妙子の手の平にも大量に掛かってしまう。
「あ……凄く…熱い……」
「―――はぁっ、はぁ、はぁっ……」
僕は少し肩で息をした。
「あ……御免…妙子の手、汚しちゃったね…」
「ううん、平気」
妙子は自分の手を引き、僕の精液で汚れた手の平を見つめた。
「……あなたのだから」
少しはにかんでペロッと赤い舌で舐める。
「………苦ぁい……」
少し顔をしかめる妙子。その形の良い胸を少し上下させて……………。
「えっ」
「えっ」
僕たちは顔を見合わせた。僕は無意識に後ろを振り返っていたのだ。
「ちょちょちょちょっとぉ!何見てるのよ!!」
妙子が僕を力任せに突き飛ばす。
「うわあああっ」
僕はバランスを崩し、一回転する形になって妙子の方へ倒れ込んだ。そのまま妙子の胸の谷間に顔を埋めてしまった。
「ばっ………」
妙子の表情が見る見る内に変貌していく。
「ばかぁぁぁぁっ!!」
バチ―――――ン!
妙子の平手打ちの音が風呂場じゅうに響き渡った…。
おわり。