優に会うため、僕は広島に向かっていた。  
 僕たちが付き合いはじめて3ヶ月。  
 時間をやりくりして何度か会っていたけど、もっと優と過ごせる時間を僕はいっぱい持ちたかった。  
 今日の約束はしていない。ふと思い立って、どうしても会いたくなって新幹線に飛び乗ったんだ。  
(優に影響されたのかな……)  
 自然と頬がゆるむ。  
 
 新幹線はひたすら西へ進む。  
(待てよ? せっかく広島まで行くっていうのに、優が留守だったら……)  
 途中でそれに気がついて電話を入れた。優は出なかった。留守電が応えるだけだった。  
 ここまで来たらもう引き返せない。  
 だけど今は夏休み。時間ならたっぷりある。そう考え、僕はそのまま広島に向かった。  
 
 世の中、何が起こるかまったくわからないもんだ。  
 たまたま発生した瀬戸内海を震源とする地震の影響で送電線が切れてしまったらしい。  
 広島まであとちょっと。30分もすれば到着というところで列車は止まってしまった。  
 なかなか走り出さない列車に、最初は線路の点検のために停まっているんだと思った。  
 そうじゃないことがわかったのは、冷房が切れ、車内が蒸し風呂のような暑さになってからだった。  
 
 ようやく動き出したのは地震発生から6時間後。広島に着いたのは夜7時を回っていた。  
 そんなに大きな揺れじゃなかったようで、幸い地域に被害は出なかったということだ。  
 だけど僕にとっては最悪の旅になってしまった。  
 
 汗だくで広島駅に降り立つ。肉体的にも精神的にもすっかり疲れ果てていた。  
(こんな時間じゃ優に会ってもどこにも行けないな……今晩はホテルに一泊だな)  
 そんなことを思いながら、安いホテルを探そうと駅を出た。  
 と、  
「あれ? キミは?」  
 聞きなれた声がした。  
「優!」  
 驚いて声のするほうを見た僕の前に、涼しげな笑顔の優が立っている。  
 いっぺんで疲れが吹っ飛んだ。  
「どうしたの? 広島に来るなんて言ってなかったじゃないか? 新幹線、止まってなかった?」  
「うん。おかげでこんな時間になっちゃったよ。……急に優の顔が見たくなったんだ。迷惑?」  
「まさか! ……フッ、キミも私と同じで思い立ったらすぐ行動するんだね」  
 そう言いながら、優はなんだかうれしそうに笑った。  
「優も旅行?」  
「そうだよ。旅に出ようと駅まで来てみたらキミがいるんだもの、びっくりしたよ」  
「でもタイミングよかったよね。もうちょっとずれてたら会えなかったもんな」  
「運命……なのかな?」  
 優はまじめな顔で言う。  
 
「優、これからデートしてくれって言いたいけど、こんな時間じゃどこにも行けないよね」  
「………」  
 僕の言葉に、何かを考えるように優は黙った。  
「それに冷房も止まっちゃってさ、汗びっしょりだから今日は残念だけど遠慮するね」  
「そうだ! 夜でなければ行けない場所があるんだ。そこに行こうよ」  
「夜でなければ?」  
 不審に思って聞き返した僕に、優は  
「私がとっておきの場所に案内してあげる」  
 そう言うと先に立って歩き出した。  
 
「ここは?」  
「そうだよ、私の母校。そしてキミが通うことになっていた中学校さ」  
「そうか……」  
 夜の闇にたたずむ校舎を見上げる。そうか、ここが……。  
「ようやく来てくれたね、幻の転校生クン」  
 そう言って優は笑った。  
 
「ほらっ、こっちだよ!」  
 優はそう言うと夜の学校に入っていく。  
「ゆ、優……いいの?」  
 いくら卒業生とはいえ、今の優はこの中学校とは無関係のはずだ。  
 そう思ったけど、優は気にせずにどんどん校舎裏に回っていく。  
「昼間はどんなに子供たちの喧騒に包まれてても、夜の学校は神秘的なぐらいどこまでも静かな空間なんだ」  
 市内のはずなのに、そこはたしかに静かだった。優の声だけが聞こえる。  
 いつしか僕は優と一緒に二人だけの世界に入っていったように感じていた。  
 
 しばらく歩いた僕たちの前にプールが現れた。  
「プール?」  
 そんな僕の言葉に、柔らかな笑みを浮かべると優はプールサイドに向かった。  
「この水音……どこまでも耳の奥に涼しく響くよ……」  
 そう言いながら優はプールサイドをゆっくりと歩く。  
「優……」  
「それにプールサイドに立っただけでひんやりして気持ちいい……泳ごう?」  
 優はそのまま、ためらう素振りも見せずに服を脱ぎはじめた。  
 ……いくら泳ぐとはいえ、まさか裸になるなんて。  
「ゆ、優……だからってどうして裸に?」  
「キミは着衣水泳って知っているかい?」  
 ブラウスのボタンに手をかけたまま優が聞いた。  
「着衣水泳?」  
「そう。服を着たまま泳ぐことだよ。最近は小学校でも訓練として取り入れているところもある」  
「どうしてそんな訓練を?」  
「やってみればわかると思うけど、服を着たままだと思ったほど泳げないものなんだ」  
 言いながらも優はブラウスを脱ぎ、背中に手を回すとブラをはずした。  
「それで練習か……」  
 思わず目を逸らした僕に優が話しかける。  
「慣れないと本当に泳げないよ。体力ばっかり消耗する」  
 そして優はいったん言葉を切ると、  
「フッ、それにキミには何も偽らない、何も隠さない本当の私を見て、知ってほしかったんだ……」  
 静かな声でそう言った。  
 
 優の本心を知った。僕にうそ偽りのない自分の姿を知ってもらいたいという優の想い。  
 ……僕もそれに応えるべきだ。いや、応えたい、理解してもらいたい。  
「優にもありのままの僕を見てもらいたい」  
 そう言って僕も服を脱いでいく。  
 ほどなく優の前で全裸になった。  
「あっ!」  
 ……疲れマラ、っていうのかな? 勃起していた。そんなに淫らな気持ちになっていないはずなのに。  
 恥ずかしい。そんな思いが心をよぎった。  
 優もちょっと困ったような表情を浮かべ僕を見ている。  
 だけどすぐに穏やかに微笑むと、優も着ているものをすべて脱ぎ去った。  
 
 月光が優の裸身を静かに照らしている。  
 胸や下半身を隠すことなく自然に立つ優。  
 もしも女神や天使が実在するのなら、今の優はまさにそれだと思った。  
 神々しいまでのその姿は、まるで絵画や彫刻のように美しかった。  
「さぁ、泳ごう」  
 僕に手を差し伸べ、厳かにも聞こえる声で優が言う。  
 そしてそのまま身をひるがえすと、しぶきを上げて水に飛び込んだ。  
 水しぶきの音に我に返った僕もあとに続く。  
 
 裸の優と、誰もいない場所で二人っきり。  
 ……こんな状況なのに、なぜだかそれほど卑猥な気持ちにならない。  
 気高ささえ感じさせる優の裸身が僕から淫猥な感情を奪っているのか?  
 勃起は収まる気配を見せなかったけど、体を包むひんやりとした水が僕を冷静にさせていった。  
「こうして水に浮かびながら見ると夜空の星も違って見えるんだ……キミもやってごらんよ」  
 見ると、優がぽっかりと浮かんだまま言った。  
「うん」  
 それに倣い、僕も同じ姿勢をとる。  
 勃起が水面から顔を出しているけど、優が落ち着いているせいか、僕もそれほどあせらない。  
「この星に抱かれてるって気がするよね……」  
 感じ入ったような優の声が聞こえた。  
 
「ねぇ……本で読んだだけだから違ってるかもしれないけど……」  
 優はそう言うと一旦言葉を切った。そして  
「男の子って勃起したら射精しないと苦しくて我慢できないし、おさまらないんだって?」  
 そう続けた。  
 あながち間違いではない。だけど我慢できないほどつらいってわけでもない。  
「………」  
 答えられず、黙ってしまった僕に優が話しつづける。  
「私は人から干渉されるのが何よりも嫌い。もちろん他人に干渉するのも嫌いなんだ」  
「知ってるよ……」  
「だから……イヤだったら言ってね」  
「……え?」  
「……私でよければ……キミが射精するのを手伝ってあげる」  
 気がつくと優が僕のすぐそばまで来ていた。  
 いつの間にか浮くのをやめ、水の中に立っている優。  
 それを見、僕もプールの底に足をつく。  
「優……」  
 僕の中で性の欲求が少しずつ頭をもたげはじめていた。  
 
 静かに僕を見ている優に  
「……お願いしてもいいの?」  
 半信半疑のまま聞く。  
「フッ……私だってもう子供じゃない。自分で決めたんだ。……いいよ」  
 そしてそのまま僕の肩に額をつけ、  
「キミが……好きだよ」  
 小さくつぶやいた。  
「優が……優が欲しい……」  
 欲望とは違う何か大きな想い、優に対する愛おしさに衝き動かされるように言った。  
「! ……うん。私もキミに抱かれたい。だけど今日は……ううん、なんでもない。いいよ、キミの好きにしても」  
 一瞬びっくりした顔になった優は、それでも僕の気持ちを受け入れてくれた。  
「優……」  
 
 僕たちは手をつないだままプールを出た。そしてプールサイドに腰を下ろす。  
 手紙をもらい、再会し、自分の気持ちを伝え、優の気持ちを確かめ、付き合いはじめて3ヶ月。  
 手をつないだのも今が初めて。キスしたことはおろか、抱き合ったこともない。  
「ほら、こうして見るととてもきれいだよ」  
 プールサイドに横になった優が夜空を見上げて言う。  
 見上げれば満天の星。  
「ほんとだ……」  
「私……星の中でキミに抱かれるんだ……」  
「うん」  
 優の首の下に回した左手で肩を抱きながら答える。  
「……あ、あれ? なんで私……泣いてるんだろう?」  
 そう言う優の瞳からは涙が一筋こぼれている。  
「優、怖いならやめるよ?」  
「ううん、平気……だけど…その……初めてなんだ」  
「僕もだよ。うまくできなかったら……ごめんね」  
 そのままそっと唇を重ねた。  
 
 唇を合わせたまま時間が過ぎていく。  
 知識では舌を入れると知っている。……だけどタイミングがわからない。  
 と、優が僕の首に両手を回し、自分から舌を入れてきた。  
 それに応え、舌を絡ませる。  
「んっ、んん…む……んん」  
 
 何度もお互いの口の中で舌を這いまわらせたあと、始まりと同じようにゆっくりと唇を離す。  
「積極的な女の子はキライ?」  
 星明かりでもわかるほど真っ赤に頬を染めた優が聞いた。  
「どんな優でも大好きだよ……愛してる、優……」  
 僕はそう答えながら右手で優の頬を静かになでた。  
 そしてそのまま耳から首筋、肩、鎖骨へと手をすべらせ、二つのふくらみに手のひらを乗せる。  
「あ……」  
 ちょっとだけ戸惑いを含んだ優の声。  
「いや?」  
「ううん……びっくりしただけ」  
 そう言って優は目を閉じた。  
「やわらかい……」  
 思ったままを口にする。  
「恥ずかしいよ……」  
 なんだかくすぐったそうに優が答える。  
「そん……」  
 続けて何かを言いかけた優の唇を僕の唇がふさいだ。  
 
 一度キスを経験しているだけあって、少しは気持ちにゆとりがある。  
 今度は僕から舌を絡ませた。  
 そうしながら、右手を優の下腹部に向けた。  
「んっ!」  
 一瞬、優はピクッと身を震わせたけど、とくに抵抗はしなかった。  
 指先にしゃりしゃりとした恥毛の感触がある。  
 そのまま太ももを割るように手を股間に差し入れた。  
 優は僕が手を動かしやすいようにわずかに足を開いてくれる。  
 内ももをなで上げるように手のひらを上に滑らせた。  
 そこは少しだけ湿っていた。……プールの水とは違う粘り気。優が感じてる!  
 僕は優の肉のひだを指先でつまむと、こするように上下させてみた。  
「んんっ!」  
 唇をふさがれた優が言葉にならない声をあげる。  
 続けて僕は右の手のひら全体を優の股間に当てた。  
 親指の腹は股間の小さな突起に、少し曲げた中指は淫溝の中に少しだけもぐりこませる。  
 ぬめりをまとった指先を動かしながら、親指を静かに振動させる。  
 もう優の舌は動かなくなっていた。  
 両手を僕の首に回し、強くしがみついている。  
「んん、んっ! んんっ……」  
 鼻を鳴らすように、そして泣いているようにも聞こえる声を優が洩らす。  
 心臓が早鐘を打つように高鳴り、僕も呼吸が苦しくなってきた。  
 名残惜しいけど鼻だけでは息が続かない。  
 絡めていた舌をほどくと、僕たちは唇を離した。  
 
「優……」  
 名前を呼んで、今度は首筋に口づけた。そのまま鎖骨を通って胸に舌を這わせる。  
 ふくらみを手で揉みながら頂を口に含む。  
 舌の腹で押さえつけ、乳房の中に押し込む。舌先で転がす。唇ではさんでしごく。  
 僕は夢中になって優の胸を吸い、甘噛みし、顔を押し付けてやわらかさを堪能した。  
「あぁっ! んっ、はぁ……」  
 初めて聞く官能的な優の声。  
 それを聞いた途端、僕の肉茎がビクビクと脈打った。  
 
 僕は何かに憑かれたように優を求めた。  
 優の太ももをこじ開けるようにひざをねじ込む。  
 そのまま体を割り込ませ、優の足の間に身を移す。  
 そうしておいて胸をなぶっていた舌を正中線に沿って下に移動させる。  
 形のいいおへそを過ぎ、陰毛が淡くけぶる恥丘に到達する。  
 そこに鼻を押し当て、一心に匂いをかぐ。  
 両足の間に指を伸ばし、膣口を覆う陰唇を左右に広げた。  
 ためらうことなく口をつけると、そのまま舌で舐めまわす。  
びくっ!  
 優の腰が揺れる。  
 僕は口を離すまいと優にしがみつき、尖らせた舌先でクリトリスをそっと弾いた。  
「あん……」  
 なまめかしい声で優が鳴く。  
 音を立てて愛液をすすり、クリをなめ上げることを続けているうち、優の息遣いが荒くなっていく。  
 陰唇を唇にはさんで引っ張る。鼻の頭でクリを押さえつける。  
 そんな愛撫に優も興奮しているのか、腰を僕の顔に押しつけるようにしてくる。  
 同時に優の声がする。  
「あ、あん……あ、いい…そこ、感じるよ……」  
 優を感じさせてる!  
 男としての自信が湧いた気がした。  
 
 痛いほど勃起している。それだけじゃなく、むずむずする感覚が股間に集まっていく。  
 僕もさわってもらいたい。僕も気持ちよくしてもらいたい。  
 そう思い、優の股間に顔をうずめたまま僕はひざで移動を始めた。  
 円を描くようにして優の顔に股間を近づける。  
 その動きが伝わったのだろう。僕の意図を察した優の  
「いいよ、キミのを……私もしてあげる」  
 そんな声が聞こえた。  
 
 優の顔をまたぐ。  
 その直後、ペニスが固定された。続けて温かく湿った空間に包まれたのを僕は感じた。  
 同時に先端にむずがゆい感覚が生まれる。  
 どうやら優の舌が亀頭を這いまわっているようだ。  
 お返しとばかりに僕も優の股間にむしゃぶりついた。  
 クリトリスから膣口に向けてなめまわす。……すっかりなじんだ優の味がした。  
 
 僕たちはお互いの股間に顔をうずめ、性器を唇で、舌で刺激しあった。  
 ずっと続けていると苦しくなるのか、優は時々口を離して大きく息をつく。  
 その間も手は絶え間なく動き、僕を高みに導いていく。  
 あの優がこんな淫らな行為をしているということがまだ信じられない。  
 それは相手が僕だからだ。僕を信じ、僕のために尽くしてくれる優。  
 一気に興奮が高まる。射精感が押し寄せる。  
「ゆ、優っ……イクっ! イッちゃう!」  
「いいよ……出して」  
 優の声が聞こえた。そして勃起をしごく手の動きが速くなったのを感じた。  
 僕は目を閉じると優の股間に顔を押し付けた。  
 淫靡な香りをかぎ、ぬめった肉ひだの感触を味わいながら登りつめていく。  
「優……優ッ!」  
 ……そして限界がきた。  
びゅびゅっ! びゅるっ! どびゅっ!………  
 尿道が破裂するのではないかと思える勢いで何度も射精が起きる。  
「ぐっ、むむっ…んっ!」  
 あまりの快感にうめくことしかできない。  
 僕の下で精液を浴びている優を気遣いながらも、僕は硬直したように動けず、射精を続けた。  
 
 射精が終わった。  
(そうだ、優が!)  
 強烈すぎた快感のせいか腰に力が入らない。それでも優の上から慌ててどく。  
 振り向いた僕が見たものは、精液を顔から髪にまでまき散らされた優だった。  
「ご、ごめん。優、平気?」  
「気持ち……よかった?」  
 優はまるで少しも気にしていないかのように言った。そして  
「あんなふうに出るんだね。キミの…キミの生命力を感じたよ……でも、変な味だね」  
 そのまま身を起こすと、微笑みながら目を閉じて大きく息をついた。  
 
 プールの水をすくって優が顔を洗っている。  
 それをぼんやりと見やりながら、僕はさっきの優の言葉を思い返していた。  
 「生命力」。僕が白濁を射ち出すのを優はそう表現した。  
 それとはちょっと違うかもしれないけど、僕が元気なのは優がいるからだ。  
 優に会いたいから、一緒の時間を少しでも長く過ごしたいからバイトも学校も頑張れる。  
 僕は優が大好きだ。そして誰よりも大切だ。優、優……。  
「優!」  
 胸が熱くなった僕は優を抱きしめた。  
 勢いあまって優を押し倒してしまう。そのまま唇を重ねる。  
 射精したばっかりなのに再び股間に血液が集まっていく。  
 性欲ではなく、純粋な愛情で優を欲していた。優を本当に自分のものにしたかった。  
「優」  
 もう一度呼ぶ。  
「うん……いいよ」  
 下腹部に当たる感触で僕の気持ちを察したのだろう。優が答えた。  
 
 すっかり屹立したペニスを優の股間にあてがう。  
 陰唇の溝でぬめりをまとわせると  
「いくよ」  
 そう声をかけ、ゆっくりと優の中に入っていった。  
「くぅっ!」  
 優の顔が苦痛にゆがむ。  
「優!」  
 動きを止める。  
 処女の優の膣は狭かった。ペニス全体が搾られるような感じがする。  
 ともすれば痛みを感じるほどの締め付けは、裏返せば優の苦痛ということだ。  
「大丈夫。心配しないでいいよ。……続けて」  
 そう言うと、優は僕の首に両腕を回しキスをせがんできた。  
 それに答えながらも、僕は腰を動かさずにじっとしていた。  
 まだ半分ほどしか入っていない。どうする?  
 ペニスが埋まっている部分の膣が微妙に蠕動しているのがわかる。  
 なんともいえない快感がそこから伝わってくる。  
 
 唇を離し見つめあう。  
「続けて。……キミを感じたいんだ」  
「優……」  
 まだためらいが含まれた僕の声に、優が  
こくん  
 ぎこちない笑顔でうなずいた。  
「……分かった。続けるね。……だけど我慢できなかったら言えよ」  
 
 行為を再開する。  
 たっぷりの時間をかけ、僕は優の中に入っていった。  
 根元まで収まる。……ペニスが押しつぶされるような強烈な締めつけ。  
 大好きな優と結ばれた、ひとつになっているという精神的な満足もある。  
 それらは、ついさっき射精しているにもかかわらず僕に絶頂を予感させた。  
(早いほうが優も苦しがらないよな)  
 優は眉を寄せて痛みに耐えているように見える。  
 僕は優のそばに両手をついてあまり体重をかけないように体を支えた。  
 少しでも優への負担を減らすためだ。  
 そうしておいて少しずつ動き出す。  
 抜き差しよりも回転運動を主体にした。恥骨でクリトリスを愛撫するように動く。  
 どんどん性感が高まっていく。達するのは近い。  
 と思った次の瞬間、腰の奥で何かが砕けるような快感が生まれた。  
「優、優っ……っっ!」  
 後頭部がしびれるような感覚の直後、僕は限界を迎えた。  
びゅっ! びゅくっ! どびゅっ! びゅるっ!………  
 優の中に精液がほとばしる。  
「あぁっ!」  
 僕の精液を膣内に射ち込まれ、優が細い首をのけぞらしてうめく。  
「優……優……」  
 何度も名前を呼びながら、優にしがみつくようにして僕は射精を続けた……。  
 
 長かった射精がようやく終わる。  
 二度目だというのに大量の精液が射ち出されたようだった。  
「優、大丈夫?」  
「えっ? あ、ありがとう……フッ、暖かいものだね……キミのぬくもり」  
 僕の首に回していた腕の力をゆるめながら優が言う。  
 体位のせいか、体が触れ合う面積が大きく、僕にも優のぬくもりが伝わってくる。  
 そしてそれが一体感となる。  
 離れるのが忍びない。まるでそういうかのように僕たちはずっと抱き合っていた。  
 
「ねぇ優、さっき言いかけた『だけど今日は』ってなに?」  
 射精したことで冷静になった僕は先ほどの優の言葉を思い出していた。  
「……え?」  
 わずかに優の顔が曇る。  
「もしかして危ない日?」  
「………」  
 優は答えない。  
「優、結婚しよう! 現実的にはまだ無理かもしれないけど、せめて婚約だけで……」  
「責任を取るってこと?」  
 僕の言葉をさえぎって優が聞く。  
「違うよ。いや、違わないかな? とにかく僕は優が好き。優といつかは結婚したいって思ってる」  
「………」  
 まっすぐに僕を見る優は何も言わない。  
「だからそれがちょっと早くなるだけ。優を誰にも渡したくないんだ。僕だけの優でいて欲しいんだ」  
「私は……キミだけのものだよ」  
 頬を染めて優が言った。続けて  
「たぶん大丈夫。いま計算したけど妊娠はしないと思う。……でも、ありがとう」  
 言いながら瞳を潤ませた。  
 
「あっ! いけない、そろそろ警備員が回ってくる時間だ」  
 慌てたように優が言った。  
「そうなの?」  
「もっとずっとキミとこうしていたいけど……残念だけどそろそろ帰ろう」  
 言われて立ち上がる。  
 そこで初めて僕は優の中からペニスを抜いた。  
 白濁にまみれ、かすかに赤く染まっている。優の処女の証……。  
 胸が熱くなった。  
 何があっても優は僕が守る! そう誓った。  
 
「また……広島に来てくれるかな?」  
 ブラウスに袖を通しながら優が聞いた。  
「もちろん! ……だけどすぐってわけには……」  
 言葉を濁す。僕だって優に会いたい。だけど、そのためにはもっとバイトしないと……。  
「ううん、いいよ。人を待つことには慣れていないけど……キミだけは特別さ」  
 はにかんだ笑みを浮かべ、優が言う。そして  
「キミが……大好きだよ……」  
 そのまま目を閉じて顔をわずかに上向けた。  
「優……」  
 僕は優の肩をそっと抱くと、静かに唇を重ねた。  
 
 
                おわり  
 

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