青森駅に降り立つ。  
 約束はしていない。突然行って妙子を驚かせようと思ったからだ。  
「うぅっ、寒っ」  
 同じ11月でも東京と違ってこっちは明らかに気温が低い。ましてもう下旬だ。  
 軽く身震いすると僕は肩をすくめ、上着の襟に首をうずめるようにして人波の中を歩き出した。  
 
 今年の春、妙子から手紙をもらって青森を再訪した。7年ぶりの再会だった。  
 離れていた期間が7年もあるのに、その長さが嘘のように僕たちは昔のまま付き合えた。  
 ただひとつ違ったのは僕も妙子も大人になっていたということ。  
 お互いを異性として意識した。友情がいつの間にか愛に変わった。  
 そして夏前には僕たちは幼なじみから恋人になった。  
 ……とはいえ、東京と青森の距離は僕たちが容易に会える近さではもちろんなかった。  
 それでも僕はバイトを増やし、時間を作り、何度も妙子のもとを訪れていた。  
 今日も妙子に会うため、僕は青森に来ていた。  
 
「こんにちはぁ」  
 声をかけながら店に入る。  
「いらっしゃ……あれぇ? どうしたの? 来るなんて言ってなかったのに……びっくりしちゃった」  
 驚いた顔の妙子。よし、狙いどおりだ。  
「おじさんやおばさんは? 奥?」  
 妙子は一人で店番をしていた。ちょうどお客さんが帰るところだったが、なかなか忙しそうだ。  
「ううん、商店街の慰安旅行で温泉。純も付いてっちゃったの」  
「じゃあ妙子ひとり?」  
「お店閉めるわけにはいかないでしょ?」  
 言いながらも伝票を見ながら在庫をチェックし、商品を奥から手前に並べなおしていく。  
「……大変そうだね、何か手伝えることあったら言ってよ」  
「えへへっ、そんなに大変ってほどでも……あっビール屋さんだ……」  
 車の止まる音に妙子は店先に視線を向けた。そして僕を見て、  
「ねえ、いきなり好意に甘えちゃってもいい? お客さん来たらお願いね」  
 そうして片目をつぶり、はにかんだ笑顔を見せた。  
 
 びんビールが入ったケースが店頭に積まれていく。  
 たしか一つ20本入りだったはず。ざっと15キロかな? あんな重いの、妙子じゃ無理だろ……。  
「妙子、それ僕が運ぶよ」  
「いいよそんなの」  
 顔の前で手を振って妙子が拒む。  
「だって重いだろ? 女の子にはキツくない?」  
「うん……でも大丈夫? すっごく重いよ?」  
「大丈夫だって」  
 言いながら持ち上げてみる。  
 ずしっとした重みに、腕だけでは無理と判断して腰を入れて持ち上げなおす。  
「わぁ、やっぱり頼もしいね! それじゃ私は品物をチェックしてくるからいくつか運んでおいてね?」  
「ゆっくりでも平気だよ。全部運んでおくから」  
 そう声をかけると、僕はそのまま作業を続けた。  
 
「ごめんね…疲れたでしょう? ありがとう、おかげで助かっちゃった」  
 すべてを運び終え、うっすらと汗ばんだ僕を妙子がねぎらう。  
「あはは、思ったよりもキツイかも……」  
 ちょっと息が上がっている。こんなことをおじさんはずっとやってたんだ。頭が下がるよ。  
「でもうれしいなぁ、青森まで来てくれて。……とりあえず上がっていって。ご飯作ってあげるから」  
「上がるのはマズイだろ? だってこの家で二人っきりってことだよ?」  
「も、もう…ヘンなこと言わないの! 私は平気だよ……あなただって理性ぐらいあるでしょう?」  
「そ、それはもちろん……」  
 まさか毎日のように妙子でオナニーしてるなんて言えるわけがない。自然と口ごもる。  
 だけど妙子はそんな僕の様子に気付かなかったらしく、  
「じゃあいいじゃない。ねっ、手伝わせるだけ手伝わせたんじゃ悪いもん」  
 そう言ってニコニコと僕を見る。  
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」  
 座敷に上がろうと靴を脱ぎかけた僕の視界が突然、ぐらりと揺れた……。  
 
「あっ、気がついたの? よかったぁ……ホントに…ホントに心配したんだぞっ!」  
 目の前に妙子の泣きそうな顔があった。  
 気が付くと布団に寝かされている。……どうやら倒れたらしいが記憶がない。  
「僕、どうなったの?」  
 とにかく起きようと半身を起こす。その僕を妙子が制して  
「あっ、いいから寝てて……急に倒れちゃったんだよ。平気? 苦しいとか痛いとかない?」  
 瞳を潤ませたまま心配そうに尋ねる。  
「うん、大丈夫みたい」  
 ちょっと寒気がするが、晩秋の青森が寒いのは当たり前だからそれは黙っている。  
「熱が39度もあるんだよ。こんな時間じゃお医者さんだってやってないし、私、どうしたらいいか」  
「そうか……風邪でも引いてたのかな? ごめんね、心配かけて」  
 寒いのは気温のせいではなく、熱があるかららしい。  
 もしかして青森駅に着いたときから体調が悪かったということか?  
「だめだよ、ちゃんと身体には気を使わなくちゃ……」  
「うん」  
「青森までわざわざ来てくれるのはうれしいけど、無理しちゃダメだゾ!」  
 目尻を手の甲でぬぐうと、妙子の顔にようやく安堵の色が戻った。  
「ごめん……どうしても妙子に会いたかったんだ。……妙子、妙子を僕だけのものにしたい!」  
「……え? うそ! どういうこと?」  
 妙子が目を丸くする。  
「嘘なんかじゃない。僕、本気なんだ」  
 熱のせいか、正常な判断力が鈍っているらしい。  
 気持ちに偽りはないが、こんなタイミングで言うセリフじゃない。  
 だけど止まらない。止められない。  
 普段なら歯止めがかかるはずなのに、衝動的なものに心が支配される。  
「妙子っ!」  
 上体を起こすと、のしかかるようにしていきなり抱きしめた。  
「あっ!」  
 かすかな抵抗を見せただけで、妙子は僕から逃げようともせず抱かれつづけている。  
 
 やんわりと抱きしめて、僕は妙子の細さにビックリした。  
 たとえ両手で抱きしめなくても、片手だけで全身を包み込める感じさえ覚える。  
 そうでありながら、腕には女性の体特有の柔らかな感触が伝わってくる。  
 綿かスポンジで出来ているのではないかと間違えてしまうほど妙子の体はふかふかと柔らかだった。  
 しなやかで、そしてスリムで、そのくせ柔らかい。どうしてこんなに柔らかいのか不思議なほどだった。  
 
 両手で妙子の背中をまさぐる。指先を弾力が優しく押し返す。めまいがしそうなほどの興奮が僕を支配する。  
「妙子……妙子がほしい」  
 もう一度耳元でささやく。  
「……うん。いいよ」  
 わずかなためらいのあと、小さな声で妙子が答えた。  
 
 見つめあう。  
「妙子」  
「うん」  
 小さくうなずくと妙子の瞳が閉じられた。僕も目を閉じ、ゆっくりと唇を合わせた。  
 そして唇を閉ざしたまま妙子に自分の唇を押し当てる。  
 ふわりとした、柔らかく温かい感触が伝わってくる。信じられないほど心地よいぬくもりだ。  
 ……まるで春の日差しを思わせる、包み込むような温かさ。  
 それだけで興奮しきったのか、熱にのぼせたように目の前がぼんやりする。  
(もっと妙子を感じたい……)  
 舌を伸ばしてそっと妙子の唇をなぞる。と、わずかにすき間が出来る。  
 だけども僕はすぐに舌を差し入れたりはしなかった。そのまま勿体つけるように唇を舌先でなぜる。  
 それをしばらく続けると、我慢できなくなったのか妙子の舌が小さく突き出されてきた。  
 僕は唇を少し離した。そして舌先を触れ合わせる。  
びくっ  
 その瞬間、妙子はほんの少し身を震わせた。  
 もう一度唇を押し当てた。そうして舌を回すようにしてお互いの舌をなぶる。  
「ん……んん」  
 唇をふさがれた妙子がのどの奥で小さく、そして色っぽく鳴く。……それは扇情的な声だった。  
 
 妙子の吐息が頬をなでる。それほど妙子は僕の近くにいる。それが僕を高まらせた。  
 僕は舌の先を優しく触れ合わせたまま軽くくすぐるようにうごめかした。  
 そのまま妙子の口の中に進入すると、舌の裏や頬の内側、唇の裏を舐めまわす。歯の表面でこするように動かす。  
 そのたびに絶妙な快感が僕の舌にも伝わってきた。  
 これがファーストキスの僕に手順なんかわからない。  
 それでも本能のまま、好奇心のまま舌を使った。  
ちゅ、ちゅぷ……くちゅ……  
 濡れた音を立ててお互いの舌が淫靡に交錯する。  
「ん……ぅふ」  
 少しくぐもった声を洩らし、妙子がうめく。  
 同時に、どこかためらいがちだった妙子の舌の動きが激しさを増した。  
 それに負けじと僕は唇をすぼめるようにして妙子の舌に吸い付いた。そのまま強く吸う。  
ちゅる…ちゅぱ……ずずっ  
 あたたかく甘い唾液をすすり、音を立てて飲み込むと  
「んっ、ぅん……」  
 妙子が悩ましい声を上げた。  
 さらに舌が絡み、唾液が交換される。妙子が切なそうな吐息を洩らす。  
 媚薬の成分が含まれているのかと錯覚するほど妙子の唾液が僕を昂ぶらせていく。  
 まるで動物になったかのように僕たちは情熱的に求めあった。  
 
 どれだけの時間そうしていたのか。舌の根がしびれるように痛む。  
 名残りを惜しむように舌を口腔内でぐるりと一回りさせると僕たちは唇を離した。  
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
 せわしない息をつく妙子に僕の獣欲があおられる。  
「妙子ぉ!」  
 抱き起こし、唇を首筋に押し当てた。そのまま首筋から耳にかけて舌を這わせる。  
 耳たぶの裏のあたりに唇を押し付け、髪の甘い香りをかぎながら妙子をきつく抱きしめる。  
 つづいて耳たぶを唇でしごきながらうなじにキスをする。  
 そうしているだけでうれしい。唇を押し当てているだけで幸福感に満たされる。  
 僕の動きに合わせてクマの髪飾りやリボンが顔に当たるが、それすら心地よく感じる。  
 本当に体が溶けてしまうのではないかと思えるほどすべてが気持ちよかった。  
 
「あんっ、うぅぅ」  
 艶を帯びた妙子の声に興奮がどんどん高まる。  
「妙子…妙子ぉ……」  
 うわごとのように名前を呼びながらベストを脱がせる。  
 そのままセーター越しにふくよかな胸に手を伸ばす。  
 指先がふくらみに触れると  
「あ……」  
 小さな声が妙子から洩れた。  
 その声に僕の指は一瞬動きを止めた。だけどすぐに動きはじめる。  
 だけどもセーターの布地とブラに阻まれ、妙子のぬくもりが今ひとつ感じられない。  
 それにもどかしさを感じた僕は裾から手を入れた。  
 
 すべらかなお腹を這い登り、指先が胸のふくらみを覆う布地に触れる。  
「……ん」  
 鼻を鳴らすような声を上げ、妙子がぎゅっと目を閉じた。  
「妙子?」  
「平気よ……」  
「うん」  
 再開する。  
 だけど自分がさわっているものが見えないもどかしさがある。  
 ……妙子の胸が直接見たい。  
 それを察したのか、妙子は  
「セーター脱ぐね」  
 恥ずかしそうな声で小さくそう言うと僕から離れた。  
 
 飾り気のないシンプルなデザインの純白のブラジャーが現われた。  
 ほんのりと肌を染め、妙子がうつむく。  
「きれいだ……きれいだよ妙子」  
「あ、ありがとう……」  
 僕の目を見ずに妙子が答える。  
 そっとひざでにじり寄ると静かにブラの上に手を乗せる。  
 柔らかく、そして張りのあるふくらみが僕の指を押し返す。  
「妙子」  
 胸をさわりながら名前を呼ぶ。妙子が僕を見上げる。  
 恥ずかしいのか、白い肌を赤く染め、それでも妙子はまっすぐに僕を見る。  
「好きだよ。誰よりも妙子のこと……愛してる」  
「私も……私もあなたが好き、大好き」  
 そのまま妙子が僕の胸に飛び込んできた。  
 
 妙子の背中に回した手でブラジャーのホックをまさぐる。  
 それらしい場所で留め具が指に触れた。そのまま外そうとする。  
 ……外れない。何度力を入れても上手く外れてくれない。  
「あれ?」  
 あせる。  
 もう一度試みる。  
 ……ダメだ。  
「妙子ごめん……外し方わかんない」  
 僕の言葉に張り詰めていた妙子の表情がかすかに和らいだ気がした。  
「あなたも経験……ないんだ」  
 なんだかうれしそうに聞こえる声でそう言うと、妙子が自分の背中に両腕を回す。  
 と、プチンと音がして、僕があれだけ苦戦したホックがあっけなく外れた。  
 そのまま妙子は腕で胸を隠すようにして、たわんだブラが落ちるのを押さえている。  
「うん。僕も初めてなんだ……上手く出来なかったらゴメンね」  
 正直に申告した僕に、  
「ううん。うれしいな……私の初めて、あなたにあげるね」  
 少しぎこちない笑顔を浮かべ、妙子が言った。  
 
 肩紐に手を伸ばす。そうして腕から抜き取る。  
「妙子、妙子の胸が見たい……」  
「……うん」  
 小さくうなずき、妙子は胸を覆っていた手をどけた。  
 ブラが落ち、二つのふくらみが目に飛び込んでくる。つん、と上を向いた形のいい乳房だ。  
 ……美しい。心からそう思った。言葉を失い、呆けたように見入る。  
「あ、あんまり見ないで……」  
 消え入るような妙子の声に我に返る。  
「ご、ごめん……でも妙子……本当にきれいだ」  
 妙子の顔にまた朱が差した。  
 
「さわるね」  
 宣言するようにそう告げてから僕は手を伸ばした。  
 左の乳首に指が触れる。  
 続いて手のひらを豊かなふくらみにあてがうと、まるであつらえたように僕の手の中にすっぽりとおさまった。  
 それだけじゃなく、吸い付くように僕の手のひらにしっくり来る。ぬくもりがじんわりと染みこんでくる。  
 そしてそのふくらみは、絹ですらここまでなめらかではないだろうと思えるほどすべすべしていた。  
 僕は指の腹を乳輪に沿って回転させながら、時折乳首を軽くくすぐった。  
「あぅ……くふぅ」  
 それが微妙な刺激として伝わるのか、妙子が背中を反らせるようにしてあえぐ。  
 それとともに乳首が固くしこっていく。  
(妙子が感じている?)  
 そう思うと下半身が燃えるように熱くなった。ズボンの下ではちきれんばかりに猛る。  
 同時に全身の血管がざわめくような高まりが僕の中で起こっていく。  
「ん……うン」  
 快楽を訴えるような妙子の声に僕の理性が吹き飛びかける。  
「妙子っ」  
 先端の突起を指先で転がしながら、僕はもう一方の乳首に唇を寄せた。  
 
 少しだけ覗かせた舌で乳首の周囲を舐める。それを何度かくり返してから乳房を口に含んだ。  
 そうしているだけでうれしくてたまらない。テクニックとか正しいやり方なんか分からない。  
 それでも僕の体は妙子を求めて勝手に動いた。妙子を歓ばせようと自然に行動した。  
 全体を吸いながら舌を小刻みに動かして乳首を弾くように攻める。  
「くっ……はぅ、あっ……」  
 そのたびに妙子の口から嬌声が洩れる。お腹もヒクヒクと痙攣する。  
 興奮に震える指先と、舌と唇とを使って僕は妙子の胸を玩弄した。  
「んぁっ……んんっ、あン!」  
 艶っぽく湿りを帯びた妙子の声は妖艶な響きを含んでいる。  
 子供の頃には感じなかった色気が妙子から発散されている。  
(妙子ももう4年生じゃない。大人のオンナなんだ……)  
 僕が揉むたび、妙子の乳房は指に従って形を変える。そして弾力が優しく指を押し返す。  
 それらに興奮した僕は、何かに憑かれたように妙子の胸をくじりつづけた。  
 
「ぁふん……わ、私だけ脱いで……ずるいよ」  
 色っぽい吐息と共に妙子が言う。  
 たしかに僕はまだ服を着ていた。脱ぐタイミングがつかめなかったからだ。  
 僕も脱がなければ。そう思っていただけに妙子の言葉は助け舟となった。  
「ご、ごめん」  
 そう応えて一旦妙子から離れる。  
 立ち上がり手早くシャツを脱ぐ。上着は妙子が布団に寝かせる際に脱がしてくれていたようだ。  
 続いてベルトに手をかける。……ゆるめながら考えた。  
(パンツはどうする?)  
 いざ僕がズボンを脱ごうとすると、妙子は不安そうな、そして泣き出しそうな顔になった。  
 そんな妙子にこれ以上脱いでいいものか躊躇する。  
 ……いつかは脱ぐんだ。それが早いか遅いかだけだ。  
(よし!)  
 トランクスに手をかけ、気合いを入れて一息に下ろした。  
「!」  
 これまでの恥戯で股間は猛り立っている。ちょうど目の高さのソレを見た妙子が息を飲む。  
「見るの……初めて?」  
「う、うん……」  
 下を向いたまま怯えたような声音で妙子が答える。  
「怖い?」  
「……ちょ、ちょっと怖い」  
「妙子が、妙子のことが大好きだから……妙子と愛し合いたいからこんなになるんだ」  
「……うん」  
 小さく、だけど力強くうなずく。  
 もう一度僕の股間に目を向けた妙子は、すぐさま慌てたように視線を逸らした。  
 そうしてさっきよりも赤くなってうつむく。  
 なんだか僕も恥ずかしさがこみ上げてきた。それでも足首からズボンと下着を抜き、完全に全裸となる。  
「妙子」  
 恥ずかしくて顔を見られたくなかった僕は名前を呼んで妙子を抱きしめた。そのまま両手で強くかき抱く。  
 自然と股間が妙子に押し付けられた。  
「うっ……」  
 そこから快感が立ちのぼり、僕は小さくうめいた。  
「……ぁ……お腹に…当たってる」  
「ご、ごめん」  
 あわてて腰を少し引く。  
「ううん、イヤじゃないの。平気。……それより、痛くないの?」  
 心配そうな声。  
「え?」  
「そんなに真っ赤に腫れてる」  
 聞こえないほどの小さな声が返ってくる。  
「あ、あぁ……大丈夫。妙子とこうしてると、とっても気持ちいい」  
 言いながら少し強く押し付けた。  
「うん。……ぁ、私も…脱ぐね」  
 ささやくような小さな声が耳元でした。  
 
 妙子は立ち上がると僕の視線に晒されながらジーンズを脱いでいく。  
「あ、あんまり…見ないで……」  
 僕から顔を背け、小さく言う。そう言われても、僕も硬直したように妙子から目が離せなかった。  
ごくっ  
 のどが大きく鳴った。妙子がショーツに手をかけたからだ。  
 食い入るように見ている僕の視線が気になるのだろう。妙子は一度大きく深呼吸する。  
 そして、僕の見ている前でショーツを下ろした。  
 
 片足ずつ足先から抜く。そして  
「ど…どう? 私の体、変じゃない? 東京の女の子と比べて、変わってない?」  
 気を付けの姿勢のまま僕に尋ねた。何もまとわない、生まれたままの姿の妙子。  
 だけど聞かれても童貞の僕には妙子の裸が他の人とどう違うのか判断できない。  
「う、うん」  
 答えられないまま僕は妙子を見上げてうなずいた。何度も何度もうなずいた。  
 何を言っても、どんな賞賛をしても、妙子の美しさを言葉で表現できるはずがなかった。  
 だから僕はうなずくしかなかった。それほど妙子の裸体はまぶしく、神々しいほど美しかった。  
「妙子」  
 手を差し伸べるように広げる。  
「うん」  
 両腕の間に妙子が入る。強く抱きしめあう。そうしながら僕は妙子の肩を抱くようにして静かに身を横たえた。  
 
 抱き合うような恰好は、自然と勃起を妙子に押し当てる形となる。  
「………」  
 その感触がくすぐったく、また恥ずかしいのか、妙子は決まり悪そうな笑みで僕を見上げている。  
「ごめん。でもこうしてると僕も気持ちいいんだ」  
 腰のあたりで亀頭を揺すりながらささやくと、妙子は  
「……うん」  
 恥じらうように微笑んだ。  
 
 唇を重ねる。そのまま本格的に妙子を攻めはじめる。  
 左手は妙子の首の下にある。右手しか使えない。その手を頬から首筋、鎖骨とすべらせ胸に持っていく。  
 なだらかな曲線を描くふもとから頂にかけて指先でなぞる。  
 先端の小さな突起を手のひらでこするように回し揉み、少し押し込んでみる。  
「あっ……ふン」  
 感じたのか、絡んでいた妙子の舌が止まった。  
 妙子を愛撫しながら二人の体にはさまれた剛直を腰を揺すって刺激する。そうやって僕も快楽を味わう。  
「むっ!」  
 そこから立ちのぼる快感に、僕ののどから思わずうめき声が上がった。  
「んんっ!」  
 唇をふさがれた妙子ものどの奥でうめく。呼吸が荒くなり、僕の頬をくすぐる吐息が熱く激しくなる。  
 やがて妙子が苦しそうに顔を左右に振った。その弾みで唇が離れる。  
「はぁあ」  
 大きく息をついて妙子があえぐ。  
 僕は離れた唇を妙子の首筋に寄せた。そのまま何度も押し当てる。そうしながらも、手は執拗に妙子の乳房を攻める。  
 指先で全体をもみほぐし、手のひらで乳房を下から押し上げる。指の腹で乳首を転がし、爪の先で引っかくように乳輪をなぞる。  
「はっ…くぅっ」  
 歯を食いしばりながらも妙子は感じている声を出しつづけた。それどころか足をもじもじさせるようにこすり合わせている。  
 それを見た僕は目標を下半身に移した。  
 指を立て、つうぅ…と妙子のわき腹を滑らせる。  
「ひゃぁんっ!」  
 それに合わせ、妙子のお腹がヒクヒクと小刻みに波打つ。  
 腰骨のあたりまで指を持っていくと、そこで体の中心に方向を変える。そして恥丘とおへその間で円を描くようにぐるぐると回した。  
「んくぅっ……」  
 絶え絶えの息の妙子が切なそうに僕を見る。  
「ちゃんとさわってほしい?」  
「……知らないっ!」  
 かすかに潤んだ瞳で妙子は横を向いた。  
「かわいいよ、妙子」  
 微笑みかけ、手のひらを恥丘に乗せた。  
 
 シャリシャリとした陰毛の感触が伝わる。さわっているだけで興奮する。  
 それを指に絡め、引っ張ったりかき回したりしてしばらくいじったあとで足の間に手を差し入れた。  
 と、まるでオイルでも塗ったようにぬるりとした場所に指が届いた。  
 太ももの付け根の近く。妙子の一番恥ずかしい部分。女の子の大切なところ……。  
 指の先でそのあたりをまさぐる。  
 もちもちとした弾力のある足の付け根の肉とは明らかに違う熱くぬめった箇所が感じられる。  
 その端の付近にコリコリした小さな出っ張りがある。クリトリスか?  
 そこに僕の指が到達すると、妙子の唇から  
「くふっ……あふぁあ」  
 これまでとは質の違う、かなり官能的な声が洩れた。  
(こ、この奥に膣が……)  
 指先が感知する生あたたかい感触に想像力がかき立てられる。  
 それに従い、妙子にすり付けていた怒張の動きが無意識のうちに早くなる。  
 そこから生まれる快感が腰の動きを強く、大きくさせる。  
「あぁっ……」  
 悦びの声を上げ、僕は妙子に先走りの液体を塗りたくりつづける。  
 
 熱いぬめりを指先にまとい、僕はさらに奥へと手を進めた。  
ぬるっ  
 ほんのわずか指を動かしただけで押し出されるように恥肉が動く。  
 しかも僕の指の動きに合わせ、くちゅくちゅと濡れた音を立てる。  
 中指が溶けるかと思ってしまうほど熱くほとびっているソコを僕はゆっくりと上下させた。  
 しばらく探っていると、深くくぼんだ場所が見つかった。……膣。思ったよりも下だ。  
 そこに指を静かに挿し入れる。ずぶずぶと抵抗なく埋まっていく。  
 中ほどまで指を沈めた。ヌルヌルであたたかく、搾るような締めつけがある。  
 思わず中をかき混ぜるように指を動かした。と、  
「くぅっ!」  
 苦しそうな妙子の声がした。続けて  
「ちょっと……痛い」  
 涙混じりの声がする。  
 あわてて指を引き抜く。  
「ごめんね」  
 少し急ぎすぎたようだ。  
 代わりに僕はさっき見つけた肉の芽を何度となくこすりたてた。  
「はっ…んっ、はぁぁぁん」  
 今度は大きく背中をのけぞらせて妙子がよがった。同時に淫肉が引きつるように痙攣する。  
「妙子?」  
 とっさに妙子の顔を見る。  
 眉根を寄せた妙子の表情は初めて見るメスの顔だった。  
 ……性感がそそられる。背すじがぞくぞくする。射精を求め陰茎が大きく脈打つ。  
「そ、そこ…気持ちいい……」  
「!」  
 クリトリスを愛撫され、ついに妙子が快感を口にした。  
 粘液を指にまぶし、そこをさらに慎重に攻める。  
 軽く爪を立てる。指の腹で回すように揉みこむ。少しの力で圧を加える。  
 ソコを執拗に攻めていると、突然妙子の体が突っ張った。  
「あっあっ、イク…イッちゃう、イッちゃうの! イクぅぅぅ!」  
 腰を突き出し、僕の手に押し付けるようにして体を硬直させる。  
 その瞬間、妙子に亀頭をこすりつけていた僕にも限界が来た。  
「っっっ!」  
 腰の奥のほうが熱くなり、目の前が真っ白になった。  
びゅるっ! びゅくっ! びゅっ!………  
 妙子と同時に僕も絶頂を迎えた。何度も何度も白濁が射ち出される。  
 吐き出された精液は妙子の腰から下腹部、そしてお腹にかかり、白く汚していく。  
 精液を浴びているのが気にならないのか、妙子は  
「あ…あぁ……あ、ぁ……」  
 声にならない声を上げたまま体をぶるぶると震わせている。  
 ……やがて、静かに力が抜けた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
「はぁ、はぁ、はぁ………」  
 二人して大きく息をつく。だけど僕の勃起はちっとも衰えていない。  
 赤黒く充血したまま反り返っている。下腹部に食い込みそうなほど屹立している。  
 よほど興奮しているのか、こんなのは初めてのことだ。  
 僕は妙子から身を離すとティッシュを取った。  
 そして達した余韻からまだ覚めないでいる妙子の体を拭っていく。  
 そうこうするうち妙子も落ち着いてきたのか、僕からティッシュを受け取り引き継ぐ。  
 
「あなたもイッちゃったの? ねぇ、これが精子?」  
 体をぬぐいながら上気した頬と荒い息で妙子が聞いた。  
「正確にはそれ、精液っていうんだけどね。精子が含まれた液体」  
「そうなんだ……精子ってこんな中に入ってるのね」  
 湿ったティッシュを広げてまじまじと観察する。  
「恥ずかしいって。……妙子そんなに見るなよ」  
「うん。……でもあなたの赤ちゃんの素だから……」  
 もう一度、まるで瞳の奥に焼き付けるように見たあとで妙子はようやくティッシュを捨てた。  
「妙子」  
 名前を呼びながら再び横たえる。いよいよ妙子と結ばれるんだ。  
 
 一度射精して冷静になった僕にはゆとりがあった。  
 それでも股間は真っ赤に焼けた鉄棒のように熱く、固くなっている。  
 こんなになるなんて自分でも驚くほどだ。  
 まして一回精を放っている。本当に信じられないことだった。  
 それほど妙子とのセックスは僕を魅きつけ、夢中にさせていた。  
 
 妙子の体に自分の体を重ねる。  
 胸を合わせると妙子の肌が吸い付いてくるようだった。  
 ためらいがちに妙子が足を広げる。その間に下半身をもぐりこませる。  
 いきり立った亀頭の裏側が妙子の恥毛にこすられる。その刺激がなんとも心地よい。  
「妙子……大好きだよ」  
「うん」  
 目を見たまま腰を動かして位置を合わせる。  
 熱く潤んだ淫裂に亀頭があたり、  
くちゅっ  
 と湿った音が立った。  
 僕は片手を妙子のひざの裏に当ててより大きく広げた。  
 陰唇が大きく伸びる。熱いぬめりが裏スジを快く刺激する。  
 ……いよいよ妙子と。  
 淫茎に手を添え、ぬかるんだ溝の間で先端を上下させる。  
 目指す場所は恥裂の下のほう。……あった。そこに狙いを定める。  
「妙子、入れるよ」  
 そう声をかけた。妙子が僕を見て小さくうなずく。  
 おこりに似た震えが全身に走った。ついに妙子と一つになる!  
 
 腰を突き出す。  
ぐぐっ!  
 亀頭がわずかに妙子の中に埋まる。だけどそこから先に進んでいかない。  
「ああぁっ!」  
 悲鳴に似た叫び。  
 指でさえ痛みを訴えた妙子に、その何倍も太いものが入るのか?  
「妙子?」  
「平気、続けて」  
 涙声の妙子が僕を見て微笑む。  
「だけど」  
「お願い!」  
 そう言いながら僕の腕をつかむ。  
「……うん」  
 心を決めた。妙子が望むなら、僕は最後までやり遂げる。  
 
 さらに力をこめて腰を送り込む。  
「はぅ、くぅぅぅ…」  
 泣き声に似た妙子の声。だけどやめるわけにはいかない。  
「妙子ごめん、もうちょっと我慢して」  
 唇を噛みしめ、眉間にしわを寄せて妙子が痛みに耐えている。  
 それでもほんの少ししか入っていかない。  
 強靭な処女の抵抗が勃起を押し出そうとしているのを感じる。  
 それに逆らい、さらに腰を押し込む。こわばりが妙子の中に少しだけめり込む。  
「は、入った? 終わった?」  
「うん、入った……でもまだ少しだけ」  
(妙子、痛がらせてごめんね……)  
 答えながら心で詫び、腰をねじ込むようにして妙子に入っていく。  
「あぅっ!」  
 僕の腕がさらに強くつかまれた。爪が食い込み、血がにじむ。  
 痛い。だけど妙子の痛みはこんなものじゃないはずだ。  
 結合部に目をやる。  
 血管を浮き立たせた醜い剛直が妙子の膣に頭を押し込んでいる。  
 全体の三分の一か? まだ亀頭の少し下までしか入っていない。  
 妙子を僕のものにする感動と、妙子に苦しみを与えている不本意さとがない交ぜになる。  
「妙子、やめる?」  
 すがるような瞳でふるふると首を振り、妙子は僕の提案を拒絶する。  
 ……やめることは出来ない。  
 処女の膣は僕を容易には受け入れない。それでもより強く腰を挿しこむ。  
「ぅあぁっ!」  
 悲痛な叫びが上がる。  
(妙子、ごめん……)  
 何度も心の中で許しを乞いながら、僕はさらに行為を続けた。  
 
 僕にとっても、妙子にとっても苦行といえる時間が続いた。  
 体が引き裂かれるほどの痛みが妙子を襲っているはずだ。なのに僕のために耐えている。  
 胸が熱くなった。涙があふれた。それが妙子の顔にしたたる。  
 それに気付いた妙子が僕の顔に手を伸ばし、涙をぬぐった。  
「ありがとう、うれしい……」  
 そして本当にうれしそうに妙子が笑う。  
 妙子の愛情はここまで深いのか。ここまで僕に尽くしてくれるのか。  
「妙子……」  
 頬を合わせる。両手で妙子の頭を抱えるようにして抱き寄せる。  
 合わさった胸に乳房のふくらみの柔らかさ、あたたかさが流れ込んでくる。  
 狂おしいほどの愛情が僕の胸に湧きあがった。  
「妙子!」  
 唇が重なる。舌先がふれあう。そして絡みあう。唾液を交換し、嚥下する。  
「ん、んんっ」  
 くぐもったあえぎ声が妙子から発せられる。  
 体を密着させ強く抱き合った瞬間、陰茎が妙子の奥深くに吸い込まれた。  
 僕の侵入を拒んでいたひだのようなものが突き破られるのを先端が感じ取る。  
「んんんっ!」  
 破瓜の痛みにうめく妙子の声を聞きながら、僕はついに根元まで収まった。  
 ……妙子の処女が散った。  
 
 圧倒的な快感がペニス全体を覆い尽くしている。  
 膣の中の無数のひだが肉茎を締めつける。ゆるやかに蠕動し、絡みつき、しごきたてる。  
「うああっ!」  
 射精を促すような、奥へ奥へと引きずり込むような動きが僕をあえがせる。  
 全身が性器になったような甘美な感覚が僕の体を駆けめぐる。  
 思わず腰を前後させてしまった衝撃に、妙子が  
「んあっ!」  
 細いのどをのけぞらす。  
 その反動で僕たちの唇が離れる。  
 だけど、たとえ一瞬でも唇が離れているのが惜しいとでも言うように妙子が唇を合わせてくる。  
 両手を僕の頭にまわし、むさぼるように唇を求めてくる。  
 舌が差し込まれる。僕はそれに吸い付く。  
 そうしながらも妙子の膣は僕を搾りあげた。しびれるような快感が生まれていく。  
 僕は妙子の舌を甘噛みしたまま腰をわずかに前後させた。  
 膣壁に淫茎がこすられ、快感が増幅する。中で何かがうごめいているように亀頭がくすぐられる。  
 これ以上の快感がこの世にあるのか? そう思える凄まじい悦楽がつづく。  
 
 妙子は眉間にしわを寄せたまま僕に抱かれつづけた。  
 見ようによっては快楽に耐えているようにも思える。だけどそんなはずはない。  
 時折苦しそうに表情がゆがむ。  
 ……やっぱり痛いんだ。  
 処女を喪ったばかりで快感を得るはずがない。  
 僕はこんなに気持ちいいのに、妙子は……。罪悪感が増していく。  
 今の僕に出来ること。それは少しでも早く射精することだ。  
 なるべく妙子に負担を与えないようにゆっくりと腰を振る。そのたびに勃起に伝わる感触が変化する。  
 締めつける。包みこむ。何かがうごめく。奥に引き込まれる。しごかれる……。  
 そんな千変万化の感覚を味わいながら、僕はいつしか夢中になって腰を振っていた。  
 妙子を慮るのも忘れ、奥深くに突き立てては腰を引く。それを何度もくり返す。  
 腰の奥が熱を持っていく。射精感が急速に高まっていく。  
 
 突然、何かが爆発するような快感が股間を包み込んだ。  
「妙子っ、妙子っ……イクっっっ!」  
 急いで妙子から引き抜く。  
 次の瞬間、電流が下半身から背すじを走り抜けた。背中に鳥肌が立ち、首筋の毛が逆立つ。  
どびゅっ! どびゅっ! ずびゅっ! びゅびゅっ!…………  
 今まで経験したどんな悦楽とも違う、まったく異質の性感。次元の違う、圧倒的な愉悦。  
 体全体が粉々になってしまいそうな強烈な快感が股間から生まれ、妙子にまき散らされる。  
「ぐおおぉぉぉ」  
 雄叫びに似た声が聞こえたが、それが自分の上げている声だとは到底思えなかった。  
っびゅっ! びゅるっ! びゅっ!………  
 そして僕は精をぶちまけるたびに絶叫した。射精の快楽はそれほど烈しいものだった。  
 
「はぁ、はぁ……ごめん、痛かったろ? 大丈夫?」  
 腰がとろけそうな快楽の中、整わない息で妙子に問いかける。  
 下腹部は言うに及ばず、腹、胸、そして首筋まで飛び散った粘液。  
 どこにこれほどの量が。そう思えるほどおびただしい白濁が妙子の肌を彩っていた。  
「平気……私、幸せよ」  
 目にいっぱい涙をためて妙子が答える。  
 そんな姿に僕の心が温かいものでいっぱいに満たされる。  
つつっ……  
 と、妙子の瞳から一筋の涙がこぼれた。それは、この世で最も貴く、美しいものに思えた。  
「きれいだ。とっても素敵だよ、妙子」  
 思わず発した僕の言葉に妙子の唇がほころんだ。  
 初めての経験を終え妙子も落ち着いたのか、初めて見るような安らかな笑顔だった。  
 幸福感が胸の中で風船のように膨らんでいく。  
「愛してる、妙子……」  
「私も……」  
 僕たちの唇が重なった。  
 
 妙子の体にまき散らされた精液と、妙子の初めての証にまみれた男性器を拭き清める。  
「ハ、ハクション!」  
 豪快なくしゃみが出た。  
「へ、平気?」  
「裸だから冷えたみたい。汗もかいたし。……悪化したかも」  
 腕を抱くようにさすりながら答える。  
 心は火照っているはずなのに、なんだか寒気がする。  
「ご、ごめんね。あったかくして寝てて」  
 言いながら妙子が頭から布団をかぶせた。  
 さらに布団を重ねているのか、その上に重みがどんどん加わる。  
「く、苦しいよ」  
 ようやく顔だけ出してそれを伝える。  
「すぐにおかゆ炊くからね。それ食べてお薬飲もうね」  
 心配そうな顔でそう言うと、妙子は台所に立った。……裸のままで。  
 僕の心で邪な気持ちが頭をもたげた。  
「ねぇ妙子、できたら裸エプロ……」  
「え? なぁに?」  
 鍋を火にかけていて聞こえなかったのか、無邪気な笑顔で妙子が聞き返す。  
「う、ううん……なんでもない。なんでもないよ」  
 反省した。  
「? そう? ……ヘンなの」  
 不思議そうな顔をしたままネギを刻みはじめる。裸でいることをなんとも思わないのか?  
「妙子も服着ないと風邪引いちゃうよ。僕とキスしたから風邪の菌うつったかもしれないし」  
 その背中に声をかけると、  
「ば、バカぁ!」  
 包丁を持ったまま真っ赤な顔で振り向いた。  
 
 布団のそばに落ちていたショーツを取ると、妙子が足を通す。  
 普段は絶対に人目に触れない股間の翳りが先ほどの記憶を甦らせる。  
 ……妙子とセックスした。僕のものにした。僕たちはもう『男と女の関係』だ。  
 そんなことを考えながらぼんやりと眺めていると、  
「な、なに見てるのよぉ。あなたも服着なさいよねっ……」  
 首まで朱に染めて妙子が僕に背を向けた。  
 
 妙子がかいがいしく世話をしてくれるのがなんだかとてもうれしい。  
 熱があるのを忘れてしまうほど幸福な気持ちだ。  
(もしも妙子と結婚したら、毎日がこんな感じなのかなぁ……)  
 布団の中から妙子の姿を見ながら、僕はそんなことを考えていた。  
 
 
           おわり  
 

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