パァン! パンパァン!
「メリークリスマ〜ス! えへへへっ、夏穂サンタからクラッカーのプレゼント〜」
突然の物音にびっくりして固まった僕を尻目に夏穂が続ける。
「もちろん本物のプレゼントはちゃんと用意してあるけど、まずは景気づけだよぉ〜」
「………」
「どうしたの?」
何も言わない僕に、きょとん、とした顔で夏穂が尋ねた。
「耳がキーンっていってる……」
頭から垂れ下がった紙テープを取り除きながら答える。
「ごめんごめん、ちょっと耳元すぎたかな?」
「夏ぁ穂ぉ」
「あ〜ん、悪気があったわけじゃないから許してよ」
かわいらしく片目をつぶり、拝むようにして謝る。
「さっきはシャンパンの栓も顔に当てたじゃないか」
「それもごめんってば」
今日はクリスマスイブ。夏穂の部屋で過ごす、二人だけのクリスマスイブ。
小さいけど夏穂の手作りケーキと、未成年のくせに用意したシャンパンでお祝いだ。
「はしゃぎすぎだよ、夏穂」
「だって……なんだか恥ずかしいんだもん。私、こんな風に男の子と二人きりでイブを過ごすなんて初めてだし」
「そうだね」
高校時代の夏穂は女子高ということもあってか、女の子とイブを過ごしていたらしい。
「でも、たまにはこういうのもいいかな? なんてねっ、あははっ……やっぱりなんだか照れちゃうな」
去年のイブはおたふくで過ごしたんだ。おばあさんが通天閣スペシャルを作ってくれたっけ。
ケーキとはまた違うおいしさや、夜中まで賑やかに騒いだことなど、とっても楽しかったのを覚えてる。
……でも二人っきりにはなれなかったんだよな。
スポーツ推薦で大学に受かった夏穂は今年の春、住み慣れた大阪を離れ東京に出てきた。
高校時代は遠距離恋愛だったけど、今はこうしてすぐ近くに夏穂がいる。
大学こそ別々だけど、それでも僕たちは時間を作り、何度も二人だけの想い出を育んでいった。
夏には僕たちは『男と女の関係』にもなった。夏穂の部屋に泊まったことだって数え切れないぐらいある。
だけどやっぱりクリスマスや誕生日は特別なものだと思う。
その特別な日の今日、こうして二人きりのイブの夜を迎えている。
「じゃ、乾杯!」
「乾杯!」
部屋の明かりを落とし、揺らめくキャンドルの光の中でシャンパンで乾杯する。
お互い飲めないくせに、『クリスマスには絶対必要!』と主張する夏穂が買ったシャンパン。
それに口を付けているうち、なんとなくいい雰囲気になっていく。
「あのね、私ずっと……あなたのことがね……その、す……」
僕の肩に頭をもたれさせた夏穂が小さな声で言う。
「夏穂、まだ耳がキーンとしててよく聞こえないから大きな声で言ってよ」
耳鳴りはとっくに収まっているけど、わざと意地悪で言ってみる。
「だーめっ! こういうことは一度しか言わないのっ!」
少しあわてた感じで夏穂がかわす。
「そんなこと言ったって聞こえなかったら意味ないんじゃない?」
「もうっ、しょうがないなぁ〜。……わかったよ、じゃあもう一度だけね……あなたが……好き」
それでもさっきと同じぐらいの声だった。
「僕もだよ、夏穂」
それがおかしくって、夏穂の顔を見ながら笑って返す。
「やだっ! なぁに、聞こえてたの?」
「うん」
「……ばか」
恥ずかしそうにうつむく夏穂。……か、かわいいぞ夏穂!
「夏穂……」
抱き寄せる。
慣れないアルコールのせいか、いつも以上に昂ぶっているのを自覚する。
「……うん」
唇が重なった。
舌を絡めたまま自分のシャツのボタンをはずし、もう片方の手でベルトをゆるめる。
キスをしながら夏穂もボトムスを下ろしている音が聞こえる。
先に下半身を露出した僕は夏穂のセーターの裾から手を入れて胸を揉んだ。
「んくっ、んん……」
小さなあえぎを洩らして夏穂がしがみつく。
もっとキスしていたい。だけど唇を離さないと夏穂のセーターを脱がせられない。
……冬とあって、着ている服が多いのがじれったい。
名残り惜しいけど、一旦離れよう。
そう思って舌を引っ込めた僕の口の中に夏穂の舌が入り込む。
「ちゅっ、ん…ちゅ…くちゅ……」
淫らな音を立てて唾液を交換し、舌を甘噛みし、むさぼるように唇を押し付けあう。
頭の中がぼんやりしていく。もう何も考えられない。考えたくない。
「!」
突然股間で快感が生まれた。
夏穂が指をからめたんだ。しかもそのまましごき立ててくる。
お返しとばかりに僕も夏穂の下半身に手を伸ばした。
いつの間に脱ぎ去ったのか、夏穂も下は裸だった。
(別に全部脱がなくてもセックスできるよな)
決めた。このまま抱く。
体重を預け、カーペットの上に横たわらせる。
「夏穂」
ようやく唇を離し名前を呼ぶと、夏穂はベッドに行くのももどかしいといった感じで腰を押し付けてきた。
だけどちょっと位置が悪い。テーブルが邪魔して自由に動けそうにない。
「もうちょっとこっちへ」
声をかけて夏穂にずれてもらう。
その際に見えた夏穂の下腹部が、キャンドルに照らされてなんともなまめかしい。
裸は何度も見ているのに、陰影に富んだ肌に信じられないほど興奮してくる。
……我慢できない。入れたい。
「夏穂、今日……」
「あっ、うん……いいよ、中で」
「わかった」
すぐにでも夏穂と一つになりたい!
そう思ったけど、形だけでも愛撫をしようと恥裂に指を伸ばす。
するとそこはすでに充分すぎるほどほとびっていた。
膣に指を入れるとヌルヌルとした熱がまとわりつき、奥に引き込もうとする。
「ねぇ、指じゃイヤ……来て……」
潤んだ瞳で夏穂が僕を見上げる。夏穂も僕を求めている。
僕は指を抜くと、返事の代わりに先端を淫裂に押し当てた。
ぬるっとした感触が亀頭を包み込んだ。
「入れるね」
そのまま腰を送り出す。
熱い粘り気の中を剛直がもぐっていく。
「ぁあっ!」
半分ほどうずめた時、ほっそりした首筋を反らせて夏穂があえぎ、ブルブルと震えた。
……入れられただけで軽くイッてしまったようだ。
それに合わせるように淫茎に強い圧力がかかる。
その適度な抵抗の中を僕はゆっくりと、まるで夏穂をじらすかのように押し込んでいく。
「んんっ!」
僕の背中に回した腕に力をこめ、夏穂がしがみつく。
「ああっ……」
そして根元まで収め、僕も大きくため息をついた。
しばらく夏穂の感触を味わったあと、入れたときと同じぐらいゆっくりと肉茎を引き抜く。
「ぅあぁっ!」
僕にしがみついたまま夏穂が下半身を痙攣させた。
背中でシャツが引っ張られているのがわかる。夏穂の腕に力が入っている。
さらに腰を引く。
膣壁内部の微妙な起伏がカリ首にまとわりつき、なんともいえず気持ちがいい。
抜けきる寸前まで戻すと、また夏穂の中に沈めていく。
そうしてもう一度根元まで押し込み、今度はそこで恥骨をすり合わせるようにして押しつけた。
恥毛がこすられ、かすかにショリショリと音を立てた。淫らに聞こえる音だった。
「くぅんっ……」
鼻を鳴らすようにして夏穂がすすり泣く。
二人で愛を確かめ合うときも夏穂はあまり大きな乱れ方をしなかった。
最初は僕の技巧が稚拙なせいだと思ったけど、そうではなく、それが夏穂の感じ方だった。
「夏穂……」
耳元に唇を寄せ、そっとささやく。
同時に耳たぶを唇ではさむとこするようにしごき、軽く引っ張ってみる。
そうしながらセーターの上からふくらみに指を立てる。生地がある分、強めにもむ。
服を着たままのセックスなんて、考えたら初めてだ。
胸を合わせているというのに、いつものようにぬくもりが伝わってこない。
だからその分、僕たちは頬を寄せあい、少しでもお互いを感じようとした。
「んんっ、はぁっ……」
顔を真っ赤にして小さくあえぐ夏穂。それが感じている姿だということを、僕はもう知っている。
「かわいいよ夏穂……好きだよ」
首筋や頬、額や鼻の頭やまぶたに唇を押し当てながら何度もささやく。
「んくっ! んふぅ……」
もう夏穂は返事ができなくなっている。ただうめくように悶えるだけだ。
「愛してる、夏穂……」
わずかに唇を開いてあえぎ声を洩らす夏穂に僕はキスをした。
太ももを僕の腰に巻きつけるようにして夏穂が腰を押し付けた。
こうなると前後運動よりは摩擦運動が主になる。
膣の奥のほうで何かがうごめくような感覚が亀頭に伝わる。
それだけじゃなく、根元から先端に向けてしごき立てるような動きも感じられる。
僕を射精に導く蠕動。僕に精液を吐き出させようとするメスの本能的な蠢動……。
(マズイ、イキそうになってきた……)
大きく深呼吸するが、射精感が一向に引いていかない。
「くふん、くぅん……」
まるで泣いているようにも聞こえる夏穂のあえぎ声にますます興奮がつのっていく。
その時、ペニス全体を締めつけ、脈動する膣壁が小刻みに痙攣を始めた。
「ぁ、イク……イッちゃいそう……」
つぶやくような夏穂の声。
「僕も……イキそうだよ……」
「あっ、あっ、んっ!」
短い間隔でせわしない声を上げ、夏穂が快感を訴える。
いやらしい声音と色っぽい表情。そして絶え間なく僕を刺激する夏穂の女性器……。
(マズイ……)
夏穂がイクまであと少し。そう思って必死に耐える。
「あ、ダメ……イク、イクっ!」
差し迫った声と共に、背中に回された腕に力が込められた。
同時にビクビクと脈を打つようにペニスが搾られる。
「んんっ! んんーー!」
「っっ!」
二人同時に達した。
びゅくっ! びゅるっ! びゅびゅっ! ずびゅっ!………
子宮の入り口に押し付けられた亀頭から白濁の粘液が噴き出し、夏穂の膣を満たしていく。
「ひゃんっ! ひんっ……」
言葉にならない声を上げ、夏穂が絶頂を迎える。
そしてそのたびに膣は収縮し、僕から精液を搾り取っていく……。
荒い息で抱きあったまま、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「あっつ〜い、汗かいちゃった……」
見ると夏穂の額に汗が光っている。
「着たままだったからね……シャワー浴びよっか?」
「そうね」
手を伸ばしてティッシュを取ると、股間に当てて身を離す。
愛液と精液にまみれた性器をそれぞれ処理しながら僕は言った。
「ねぇ夏穂、シャワーのあとでもう一回しよ?」
その言葉に夏穂が僕に顔を向ける。
そしてはにかんだ笑顔のまま上目遣いで僕をにらむと、甘えたような声で言う。
「……えっち」
おわり