ステージを終えた千恵が、汗も拭かずに僕の元に駆け寄ってくる。  
「どうだったぁ? 今日のライブ」  
「うん。とっても盛り上がったよ」  
「そう! ならよかったよ」  
 千恵は僕が飲んでいたコーラを一息に干すと、本当にうれしそうに笑う。  
 この笑顔を見るためなら福岡なんかちっとも遠くない。そんな気持ちにさせてくれる笑顔だ。  
 今日は連休を利用しての福岡入りだ。もちろん突然の来訪。千恵を驚かすのが目的だった。  
 それは成功したんだけど、約束していたわけじゃないので千恵にはライブの予定が入っていた。  
 そして僕はそれを客席の隅で聞いていたわけだ。  
 
 次のバンドとの入れ替えでごった返す客席でしばらく話をしていると、僕はメンバーに楽屋に招かれた。  
 そこで彼らは気を遣ったのか、僕を千恵と二人だけにしてくれた。  
 ……といっても楽屋は共同なので、他のバンドがたまたまいない今が貴重な時間だ。  
「でも不思議だよなぁ。あんたがいるといつもよりライブに熱が入るんだ。なんでかね?」  
「う〜ん……僕のことが好きだから、とか?」  
「あ、そういえば時間大丈夫なのか? 今夜は特にアンコールガンガンだったから」  
 ライブの熱気で紅潮させた頬をさらに染め、千恵はあわてたように話題を変えた。  
「多分大丈夫じゃないかな?」  
「そんなこと言って……ねぇ、いま何時だよ」  
 言いながら千恵は壁にかかった時計に目を走らせる。  
 そんな千恵とは対照的に、落ち着き払って僕が答える。  
「もうそろそろ6時半だね」  
「えぇ! それじゃもう最終の新幹線出ちゃったあとじゃない……困ったなぁ。どうするぅ?」  
「うん。明日も休みだし、実はそれほど困ってないんだ」  
 一瞬千恵が顔をほころばせる。そしてちょっと言いにくそうに提案した。  
「そうなの? ……ねぇ、なんなら、うちに泊まってく?」  
「それはマズイんじゃない? 千恵の家って両親も弟もいるだろ?」  
「あ、あははは……そうだよな。それもなんだかね」  
「あははは」  
 つられて僕も笑う。  
「よし! それじゃあ朝まで付き合うよ」  
「千恵は外泊しても平気なの?」  
「あたしは大丈夫。いつものことだからさ」  
 千恵は胸を叩いてそう言ったけど、それって自慢できることじゃないような……。  
「それに、東京モンのあんたをこんなところに一人では置いていけないよ」  
 心配そうに僕の顔を覗き込んで続ける。とどめに、  
「このあたりのヤンチャな連中につかまるのがオチだからね」  
 おどかすようなことも言う。  
「でも千恵がいれば安心なんだろ?」  
「ま、まぁね……」  
 面映そうに千恵が答えた。  
「頼りにしてるよ」  
 僕は微笑んで千恵を見つめた。  
 ……二人の目が合う。その笑いが消える。だけど目が離せない。離れない。  
「あんた……」  
「千恵……」  
 唇が重なった。  
 
 そっと唇が離れる。  
 もう一度、今度はきちんとキスしようとしたけど、千恵がうつむいて小さく言う。  
「あ、あのさぁ……あたし……」  
「オハヨーゴザイマ〜ス」  
 その時、他のバンドのメンバーが入ってきた。  
 何かを言いかけた千恵が赤面して黙り込む。  
 二人だけで親密にしているところを見られたのが恥ずかしいのかな?  
「千恵、出ようか?」  
 僕もなんとなく居づらくなって、そう千恵に声をかけた。  
「そ、そうだな」  
 
 博多は東京に比べて日が暮れるのが遅い。  
 軽く食事でもしようと、僕たちは宵の口の街を並んで歩いた。  
「どこ行く? ……って言っても博多は千恵のほうが詳しいからね。まかせるよ」  
「じゃあ着いてきなよ」  
 繁華街を行くと目に付くのは、楽器を持って歩く人の多さだった。  
「ねぇ千恵、なんだかギターを持った人が多いんじゃない?」  
「ここは通称『親不孝通り』だよ」  
 聞いたことがある。そうか、ここが……。  
 僕がうなずいたのを見た千恵が言葉を継いだ。  
「このぐらいの時間になると、ミュージシャンを目指すやつらがストリートライブをあちこちで開くんだ」  
「そうなの?」  
「あたしらもよくああやって歌ったもんだよ。……ああ忘れてたなぁ、この感じ」  
 まるで独り言のように千恵がつぶやく。  
「千恵?」  
「お金なんてもらえなくてもいいんだ。ただ自分の演奏を、歌を、誰かに聞いてもらえればそれでいいんだ」  
「そうなんだ……」  
「ほら、その証拠にみんななんだか生き生きした顔してるだろ?」  
 千恵に言われて見回すと、たしかに彼らの顔は輝いている。  
「満足してるんだよ。あいつらは今、最高のステージに立ってるんだからさ」  
「うん」  
「かりに観客がたった一人だとしてもライブには変わりないからね」  
「そういう熱意って大事だよね。音楽はその気になればどこででも演れるんだから」  
「あたしら、恵まれてるよね。もっと、もっとがんばって上目指さなきゃね」  
 そう言って千恵が僕を見つめた。そしてさらに言葉を続ける。  
「うかうかしてるとあいつらに先越されちゃうかもしれないもんな」  
 それは僕に言うというより、自分に言い聞かせているような言葉だった。  
「そうだよ。千恵の夢はメジャーデビューだろ?」  
「……ありがとう。大事なこと、思い出させてくれて。……あんたのおかげだよ」  
 少ししんみりした千恵。目がかすかに潤んでいるようにも見える。  
 そんな雰囲気を変えようと、僕は問いかけた。  
「そうだ千恵。さっき楽屋で何か言いかけたんじゃない?」  
「えっ? あ、ああ……そうだけど……」  
 なんとなく歯切れが悪い。いつもの千恵じゃないみたいだ。  
「千恵?」  
「ライブのあとはさぁ、体が火照っちゃって…その……オナニーしないと寝られないんだよ」  
「え?」  
 なんの脈絡もなく千恵が切り出した。  
 突然のことに僕も言葉が出てこない。  
「あ、あんたとえっちしてからさ、な、なんか体がヘンなんだよ」  
 
 千恵と結ばれたのは、夏休みがそろそろ終わろうかという頃。もう半年近く前になる。  
 童貞と処女だった僕たちは、まるで何かに憑かれたようにセックスの回数を重ねた。  
 それでも、逢うたびにセックスをしていたのでは千恵の体だけが目的と思われるのではないか?  
 そう考え、ここひと月ほどは僕も我慢してきた。だから今日も千恵を抱かないつもりだった。  
「じゃあ前は、その……えっちな気持ちにはならなかったの?」  
 せっかくの決心が揺らぎそうな胸の高鳴りの中で思わず聞く。  
「そりゃあ興奮して夜は目が冴えたりしたけど、あんたとするまではこんなことはなかったよ」  
 言いにくいことをしゃべってしまった反動からか、千恵はどことなく落ち着いているようにも見える。  
「そういえば最近は千恵もよく感じるようになってたしね。慣れてきたのかな?」  
 ベッドでの千恵の様子を思い出しながら答える。  
「ホテル行こ? 二人っきりになりたい。ね?」  
 これ以上ないほど真っ赤になった千恵は、僕の手を取ると早足で歩き出した。  
 
 ホテルに入る。  
 何度か来たことのあるホテル。何度か使ったことのある部屋。  
 ドアを閉め、カギをかけた途端、千恵はギターを置くのももどかしいといった感じで唇を求めてきた。  
 さらにジーンズの股間を僕の太ももに押し当てるようにしてこすりつけてくる。  
 ……よっぽど我慢してたみたいだ。  
「好き……ずっと会いたかった……あんたが好きだよぉ」  
 唇を交わしながらささやくように言う千恵に、トランクスの中が少しずつこわばっていく。  
「千恵……」  
 名前を呼ぶ。  
 そのまま本格的にキスをしようとした僕の腕から、千恵はするりと抜け出た。  
「ねぇ、ベッド行こうよぉ……しよう?」  
 僕の手を引いてベッドに歩み寄りながらそう言うと、手早く服を脱いでいく。  
 今日の千恵、いつも以上に積極的だ。  
 そんな姿を見ているうちに、僕の欲望もどんどん高まっていく。  
「千恵!」  
 押し倒すようにベッドに横になる。  
 そして競うように服を脱いでいく。……ほどなく僕たちは全裸になった。  
 
 ベッドの上に座ったまま向かい合う。  
 今日はどうしよう?  
 とりあえず千恵を抱きしめようとしたとき、  
「アレ……着けてもいいかな?」  
 千恵が上目遣いで聞いた。  
「今日は危ない日なの? うん。いいよ」  
 本当はナマでしたいところだけど、高校生の僕たちに子供を育てることは出来ない。  
 だから安全日以外はコンドームを使っていた。  
 『着けないでするほうがずっと気持ちいい』。  
 前に僕がそう言ったことを千恵は覚えているのだろう。済まなそうにしている。  
 安心させるように明るく言った僕の返事を確認した千恵は枕元から小さな包みを取り袋を開けた。  
 中身を二、三度ひっくり返して向きを確かめると、先端をつまんで亀頭にあてがう。  
 そして勃起に顔を寄せると口で避妊具を装着させていく。  
 僕は千恵が着けやすいように背中を倒した。  
 完全には横にならず、肘を立てて千恵の唇にモノが呑みこまれていくのを期待して見ている。  
 ……そのままフェラチオが始まった。  
 
「うっ!」  
 ゴムにさえぎられているのが信じられないほどの快感が走る。  
 僕の一番感じる部分を千恵の舌と唇が的確に捉えているからだ。  
 これまでに僕たちはさまざまな体位を探り、いろいろな愛撫を試していた。  
 その過程で僕も千恵も、お互いがどこに官能を覚えるかを把握していた。  
 その部分が千恵によってなぞられる。  
 まるでこのまま僕を射精させようとしているのではないかと思えるほどの千恵の攻め。  
「ち、千恵……」  
 まだ射精はしたくない。もっと千恵の技巧を楽しみたい。それに、出すなら千恵の中で……。  
 そんな僕の心が伝わったのか、  
「あたしも準備はもう出来てるよ。……じゃあ入れるからな」  
 言いながら千恵は僕のモノを握ったまま腰をまたいできた。  
「なぁ千恵、アレ……やってよ」  
「えぇ? ……あんたホントに好きだな」  
 動きを止めた千恵は、にっこり笑うと体をずらせて剛直を大きくて張りのある胸にはさみこんだ。  
「うっ!」  
 やわらかな感触に包まれ、思わずうめき声が上がった。  
 
 両手で乳房が寄せられ、谷間に心地よい圧力が増す。  
 最初はゆっくりと、徐々に早く動かされる。  
 なまめかしい表情で千恵が聞く。  
「どうだい? 気持ちいいかい?」  
 ……言葉にならない。ただガクガクとうなずくことしか出来ない。  
「ふふっ……」  
 それを見て千恵が淫靡な笑みを浮かべた。  
 かすかに薄桃色を帯びた双球に、赤黒い肉棒が出入りする。  
 肉体的な快感もそうだけど、視覚的な興奮のほうがより大きい。  
 少しずつ腰の奥が熱を持ってくる。射精にいたる導火線に火が着く。  
 額にほんのりと汗をかき、たわわな胸を揺すらせる千恵の媚態に射精感がせりあがっていく。  
「あぁっ! 最高だよ、千恵……」  
 
 初めて千恵にパイズリしてもらったのは去年の暮れのことだ。  
 ずっと前から興味はあったけど、なかなか言い出せなかった。  
 ある時、思い切って言ってみた僕に千恵は半ばあきれたような顔をした。  
 それでも嫌がらずに、胸の谷間で射精まで導いてくれたんだ。  
 それ以来、前戯として僕は何度か千恵の胸の感触を楽しんでいた。  
「あたしは気持ちいいわけじゃないけど、感じてるあんたの顔を見るのは好きだよ」  
 器用に胸を上下させて僕の性感帯を巧みに突いてくる千恵。  
「うぁっ!」  
 その刺激にこらえきれずにうめき声を上げる僕。  
 そんな恥戯がしばらく続いた。  
 
「もういいだろ? あたしも我慢できなくなっちゃったよ……」  
 頬を紅潮させて千恵が告げる。  
「……うん」  
 僕も千恵と一つになりたい気持ちが強くなっている。入れたい。  
 身を起こそうとする僕を千恵が制する。  
「あんたはそのままでいいよ。あたしがしてあげる」  
 そう言って千恵が僕をまたいだ。  
 右手を怒張にあてがい、自らの秘所に添える。  
「入れるね」  
 そのままゆっくりと腰を沈み込ませていく。  
「くっ!」  
 熱を持った千恵の性器に勃起が埋没する。同時に四方から適度な抵抗が加わっていく……。  
 
 背すじがぞくぞくするように強烈な快感。それに伴い、勃起がさらに硬度を増す。  
「あぁっ! 気持ちいいよぉ……」  
 感極まったような声を千恵が洩らす。  
「千恵!」  
 名前を呼びながら、いきなり腰を突き上げた。  
「ひんっ!」  
 まったく予期していなかったタイミングで攻められたらしく、千恵がのけぞる。  
 後ろに倒れそうになった千恵の腕をつかんで体を支えると、僕はもう一度腰を突き上げた。  
「んぁあん!」  
 再び不意をつかれたようで、千恵は甘い声を上げて身悶えた。  
 結ばれたリボンを支点に、千恵の長い髪が大きく左右に揺れる。  
 僕は下から手を伸ばして千恵の胸をつかんだ。……さっきまで僕をはさんでいた胸。  
「ん…んぅ……んふぅ…ぁアんっ! ……ん…」  
 乳首を指ではさんでこするようにしながら、手のひら全体で乳房をまさぐる。  
 指の腹で乳首を転がし、弾くようにしてくじる。  
「ひゃぁ! そ、そこ……感じるよぉ」  
 胸が大きいからなのか、千恵は敏感に反応した。  
 そしてそれが僕の嗜虐心をさらに煽っていく。千恵の胸を集中的になぶる。  
「あぁっ! ふわぁ!」  
 淫らな声を上げるたび、千恵の膣は絶妙な締まり加減で僕を追い詰めていく。  
 ……射精感がどんどん高まっていく。  
「千恵っ!」  
 上半身を起こし、千恵の乳房に顔をうずめる。そうしてむしゃぶりつくように顔を押しつける。  
「千恵、千恵……」  
 何かに衝き動かされるような気持ちが高まる。  
 そのまま千恵を押し倒すようにのしかかると、僕は猛烈な勢いで腰を振り出した。  
 性器がぶつかり合う音が淫らに響く。  
「あんっ! んっ、ひぁぅ!」  
 快感を隠そうともせずに千恵が乱れる。  
「あぁっ、イクっ! イッちゃうよぉ!」  
 長い髪をベッドに散らし、千恵があられもない声を上げた。  
「千恵もうちょっと我慢して……もう少しで僕もイクから……一緒にイコう?」  
「うん、うん……いっしょに……いっしょに」  
 うわごとのようにつぶやきながら千恵が僕の背中に回した腕に力をこめてきた。  
 そのまま唇が重なる。  
 舌を絡めながら、僕は二人の体のすき間をこじ開けるようにしてふくよかな胸に腕を伸ばした。  
 そして手のひらいっぱいに伝わる熱とやわらかみとを堪能する。  
「んっ、んんっ!」  
 唇をふさがれた千恵がのどの奥で淫らに鳴く。  
 同時に僕を咥えこんでいる肉の穴がきゅっ、と締まった。  
 続けて起こった小刻みな脈動が千恵の絶頂の近いことを僕に教えた。  
 ……そういう僕も限界が近い。腰の裏のほうに射精感がくすぶっている。  
「んんっ!」  
 千恵の舌が動きを止め、次の瞬間、全身に力が入った。  
 それが引き金になった。  
どくんっ! びゅくっ! どびゅっ! びゅびゅっ!………  
 ビクビクと痙攣し、こわばる千恵の体を抱きしめながら、僕も思いっきり精を放った。  
 それはコンドームが隔てていなければ千恵を妊娠させたに違いないと思えるほどの量だった。  
 
 激情が去る。  
 久し振りの千恵の肉体ということもあるけど、今日の快感は格別だった。  
 大きく息をついて身を離すと、僕はコンドームをはずすために千恵に背を向けた。  
 その背中に千恵が抱きつく。……二つのふくらみが当たる。  
「千恵?」  
「離れちゃヤだよ……」  
 甘えたような声で、そのまま千恵が体をすり寄せてくる。  
「あ、ごめん……ゴムはずそうと思ったから」  
 言いながら柔らかくなった性器に手を添える。と、千恵の手が前に伸びてきた。  
「あたしがしてあげるよ」  
「い、いいよ……」  
「あたしがしたいの……」  
 千恵は僕の手を押さえると白濁に満たされた避妊具をはずした。  
 そしてそれを目の高さに掲げると  
「すごい……精子、いっぱい出たね……溜まってたの? 気持ちよかった?」  
 耳元でささやいた。  
「うん。ちょっと溜まってた。でもこんなに気持ちよかったの、初めてかもしれない」  
「あたしも気持ちよかったよ。あんたに……あんたに抱かれてイッちゃったよ……」  
 僕の背中に寄り添い、照れたように告げる。  
「千恵のこと、もっとイカせてあげるよ。しばらくしてあげなかった分、千恵と何度も愛し合いたい……」  
「は、恥ずかしいこと言うなよ! それに……あたしじゃなくて、あんたをいっぱいイカせてあげるよ」  
 力を失った肉茎や睾丸をやわやわと揉みほぐしながら千恵が言う。  
 射精したばっかりだというのに、それに応えるかのように少しずつ力がみなぎっていく。  
「千恵……」  
「さっき言ったろ? 朝まで付き合うってさ。今夜はいっぱい……しようね」  
 
 
               おわり  
 

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