今年の夏は例年よりも暑いかもしれない。まだ7月の声を聞いたばかりだというのに、気温は毎日35度近くまで上がっている。  
 今日も暑い……。  
 一服の涼を求めた僕とえみるは、クラウドパークの中にあるプールに遊びに来ていた。  
 
「やっほ〜! あはは、うふふ、楽しいりゅん!」  
 まるで子供のようにえみるがはしゃぐ。  
 最初は違和感のあった『えみる語』だけど、今ではすっかり耳になじんでいる。  
 社会人のえみるがそういう話し方をするのは僕にだけだ。それがうれしい。だってそれは、僕とえみるとの親密の証だから。  
 高校を卒業して僕は大学生になった。えみるは上京し、出版社に勤めている。  
 青葉出版という、仙台にいた頃からえみるが愛読しているオカルト系雑誌で有名な会社だ。  
 念願かなってそこに就職できたとはいえ、まだまだ半人前のえみるは雑用が主だ。  
 気ままな大学生の僕とは違い、資料集めや取材の手伝いで忙しい日々を送っている。  
 本当ならこんな昼間に会うなんて難しいんだけど、入稿直後で今日は休みだそうだ。  
 久し振りの昼間のデート。せっかくだし、暑い街中を避けて泳ぐことにした。  
 しかも7月に入ったばかりで小中学生は学校がある。だから空いてると思ってプールにしたんだけど、その予想は大きく外れた。  
 クラウドパークの近くには大学や短大がある。当然学生の数も多い。  
 おかげでプールは平日にもかかわらず、若いカップルでかなりの賑わいを見せていた。  
 
「えみりゅん、プールだぁい好きなんだぁ……ダーリンもえみりゅんの水着見られてハッピーでしょ?」  
 薄紫を基調とした、だけど少しもいやらしさを感じさせないビキニのえみるが笑う。  
 健康的な笑顔がまぶしい。僕の心も躍る。僕は返事の代わりに笑顔を向けた。  
「見て見てこの水着。すっご〜く気に入ってるのだぁ……ねぇねぇ、かわいい? かわいい?」  
 僕の返事がないことが不満なのか、えみるは畳み掛けるように聞いてくる。  
「うん。とっても似合ってるし、すごくかわいいよ」  
 根負けした僕が返すと、えみるは  
「ふにゅ〜。ダーリンに褒めてもらえると、えみりゅんとってもうれしいりゅん! えへへへ、あははは」  
 笑ってそう言い、僕の前でくるりと回って見せた。  
 えみるも大人の女性の体型になった。スタイルもいい。自然と胸のふくらみに目が行ってしまう。さらには股間に……。  
 恥丘がこんもりと盛り上がり、女性器へと続く淫靡な曲線を形作っている。  
 あの中にあるのはかすかにけぶる恥毛と、その下に息づく淫裂だ。  
(いかんいかん)  
 頭に浮かんだ淫らな妄想を振り払う。今日は健康的にデートするんだ。  
 
「えみる、その大きいのは何?」  
 足元に置かれていた巨大な物体をえみるが持ち上げたのを見て僕は尋ねた。  
「え? これはね、イルカのウイリーくんだよ。えみりゅんのお気に入りなのだぁ」  
「それ、持って来たの?」  
「えみりゅんね、ホントは泳げないの。だからぁ、浮き輪のウイリーくんが頼りなんだぁ」  
 照れくさそうにえみるが答える。  
 僕たちが付き合いはじめて1年近くが経つけど、考えたら泳ぐのは今日が初めてだ。  
 去年は海に行ったけど、えみるがウニを踏んでしまい泳ぐどころじゃなかったっけ……。  
 だからえみるが泳げないのは初耳だった。  
「プールじゃないほうがよかった?」  
「ううん、えみりゅんプール大好きだよ。流れるプールで背びれにつかまってると最高に楽チンなんだからぁ」  
 そう言って本当に楽しそうに笑う。杞憂だったかな?  
「これからそういうときは僕につかまってくれればいいよ」  
 安心させようと言った僕の言葉にえみるが真っ赤になる。  
「ええ〜! キャー、ダーリンのえっちぃ! でも……それもいいかな? キャッ、えみりゅん恥ずかしいりゅん!」  
 えみるは僕の視線から逃げるように背を向けた。僕も、自分で言いながらなんとなく恥ずかしくなって視線を逸らした。  
 その視線の先に……。  
「ねぇ、えみる、あれなんかどう? あれなら二人で乗れるよ?」  
「え? どれぇ?」  
 ふり向いたえみるに、指で示したのは直径が1メートル近くもありそうな大きな浮き輪だった。  
 大きく手足を広げて浮き輪に寝そべった男性の上に、座るようにして女性が乗っている。  
(アレならえみるとぴったりくっつけるしな……)  
 見ると、あちこちで何組ものカップルが浮き輪に入って揺られている。  
 他の人もやっていることでえみるも抵抗感が少ないだろう。そう思った。  
「どう?」  
「う、うん……」  
 同じことを考えたのか、えみるが頬を染めた。  
 
 浮き輪を借り出し、早速水に浮かべる。そしてバランスに気をつけて横たわり、手足を伸ばす。  
「いいよ、えみる」  
「う、うん」  
 おっかなびっくりといった感じでえみるが僕の上に乗る。やわらかさとぬくもりが伝わってくる。  
「ほら、ここに乗って」  
 自然な感じで僕の股間とえみるのお尻を密着させる。  
 実際、バランスを取るにはそれが一番だった。だからえみるも僕の言うとおりにした。  
 それだけじゃなく、落ちないように僕はえみるのお腹に腕を回して抱えこんだ。えみるも据わりが悪いのか、もぞもぞとお尻を動かす。  
ピクンッ  
 えみるのお尻に股間が刺激され、陰茎が脈打った。  
「ダ、ダーリぃン」  
 お尻の下で動いたものの正体を悟ったのか、えみるが頬を染めた。  
 
 落ちないように安定させようとすると、自然と腰は水の中になる。  
 だから僕が勃起していることも、下半身を不自然に押しつけていることも周りに気付かれる心配はなかった。  
 抱えこまれてえみるが逃げられないのをいいことに、僕は腰を前後させて勃起をこすりつけた。  
 同時に耳たぶを甘噛みしながらささやく。  
「えみる、好きだよ……」  
「ひゃうっ!」  
 心の準備ができていなかったらしく、えみるが大きく身をすくめた。  
 その隙をついて、お腹に回していた手を股間に持っていく。  
 恥丘の上を軽くなぞったあと、僕はあえて太ももに目標を移した。  
   
 初めてえみると結ばれたのは今年のバレンタインデーだった。  
 チョコレートを届けるためだけに上京したえみると、僕は関係を持った。  
 それから卒業までに2回。えみるが東京に来てからは毎週のように体を重ねた。  
 処女だったえみるもいつしか性の悦びを知るようになった。  
 甘美な時間を過ごした僕たちがセックスの楽しさに耽るのは当然のことだった。  
「ダ、ダーリン…ここじゃダメだよ。ここ出てホテル行こ? ね?」  
 内ももを這いまわる僕の手を押さえながら、えみるが真っ赤になってささやく。  
 それを無視し、僕はさらに手を足の付け根に持っていく。  
「ダーリン、ダメだってばぁ……ちゃんとさせてあげるからホテル行こうよぉ」  
「やだ」  
 無情にそう言い放つと、僕はえみるへの行為を激しくした。  
 
 恥裂の形をなぞるように素早くこすりたてる。布地に隔てられている分、いつもと違う感覚だ。  
 股間で存在を主張するクリトリスも、注意していないと見逃してしまうほどだ。  
「あぁんっ!」  
 それでも敏感な場所を指が通過すると、えみるは甘い声を洩らした。  
 声を出してしまってから、あわてて指を噛むようにして封じる。  
 そんなえみるに意地悪がしたくなり、僕はさらに行為を続けた。  
 水着をずらす。その隙間から指を入れて、直接女性器をくじる。  
ちゅ…ちゅく……  
 水の冷たさとは違う温かなぬめりが指先に感じられた。  
「くふぅ……」  
 ヌルヌルの液体を指に帯びさせ、コリコリと尖っている突起にあてがう。  
 目視できない分、指先に意識を集中させてそこを攻める。  
 位置を確かめるようになぞる。最初は弱い刺激から。徐々に力を入れていく。  
くっ、くっ……  
 指の腹で円を描くようにして圧を加え、二本の指にはさんで転がしてみる。  
「んはぁ……」  
 切なそうな吐息がえみるの唇を震わせる。感じているんだ……。  
 僕は目標を変えた。淫裂を割り、膣に指をもぐりこませて中をくすぐる。  
くりゅっ、くちゅ…くちゅっ  
 指が締めつけられる。それだけじゃなく、奥に引き込もうとする蠕動も伝わる。  
 中で指を曲げ、膣壁をこそぐようにしてかき回す。  
「んっ!」  
 一瞬、えみるの体が跳ねた。  
「んんっ! はぁ、はぁ…ダーリン……」  
 目元を染めて肩越しに僕を振り返る。  
 
 サポーターごとハーフパンツをひざまでずり下げると、屹立をえみるの膣口にあてがった。  
「入れるね」  
 そう言うと、僕はえみるがうなずくよりも早く腰を突き上げた。  
「ひんっ!」  
 突然貫かれたえみるが手で口元を覆う。  
 僕は浮き輪に背中を預けて横になった。両手は浮き輪をつかんでバランスを取る。  
 そのまま腰だけを器用に動かしてえみるを攻め立てた。  
「ダ、ダーリン……ぅんっ! ひゃうっ!」  
 手を口元に持っていくことで、えみるはあふれ出る嬌声を防ごうとする。  
「えみる……」  
 身を起こす。そして浮き輪に投げ出していた腕をえみるの背中から回す。  
 そうして左腕を抱え、そのまま右腕も押さえつけるとえみるの手が口元から離れた。  
 もうこれでえみるは口を押さえることはできなくなる。  
「あぁんっ! んんっ、くうぅっ……」  
 それでも必死に唇を噛みしめて、淫らな声を洩らすまいとする。  
 僕は空いている手をえみるの股間に持っていった。  
 そして、僕たちがつながっている場所のすぐ近くにある肉突起をこすりたてた。  
「んぐっ!」  
 弾かれたようにえみるの背中が跳ね上がる。  
 水着の上からとあり、ちょっと強めに揉んだ刺激がえみるを反応させたようだ。  
「えみる、そんなエッチな声出すと、周りに気付かれちゃうよ」  
 耳元でささやくと、えみるは泣きそうな顔になってイヤイヤと首を振る。  
 それに構わず、僕はさらにえみるの敏感な場所をくじった。  
「ダー…リン、お願い……だめ……声、出ちゃうよぉ……」  
 その言葉が聞こえたらしく、僕たちの横を泳いでいた小さな子供が不思議そうな顔をする。  
 はっとしたえみるは口をつぐんだけど、膣の収縮がより激しくなった。  
 
 本当はそんなことないはずなのに、周りの全員が気付いて注目しているような気さえする。  
 いつもは密室で行なわれている性行為が、今日は明るい太陽の下、大勢の人ごみの中だ。  
 もしも誰かに見られたら? 僕たちを知っている人に出会ったら?  
 そう考えると、興奮とは違う、あせりに似た異様な感覚が僕の心を支配した。  
 射精感が急速に高まる。我慢できそうもない。イク……。  
「えみるっ……っっ!」  
 腰を高く突き上げ、えみるの一番深いところで射精した。  
どくんっ! どぷっ! どくっ!………  
 ぎゅっと目をつぶり、何度もえみるの中に精を注ぎこむ。  
「あんっ!」  
 押し殺した声を上げ、えみるも絶頂する。  
 収縮した膣から伝わった蠕動が僕の精液をさらに搾り取った。  
 
 たっぷりと白濁を射ち出し、冷静になった僕は急に恥ずかしくなった。  
「えみる、戻ろう?」  
 声をかけてハーフパンツを上げると、プールサイドに浮き輪を着けた。  
 プールから上がったえみるは恥ずかしそうに小走りでシャワー室に向かう。  
 その後ろ姿を見ていると、内ももで粘液質の白いものが太陽を反射して光っていた。  
 ……僕の精液だ。  
 ちょっと強引だったかな……。  
 罪悪感を覚えながら、それでも僕はえみると愛し合えた幸福な思いにひたっていた。  
 
 
            おわり  
 

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