「おや、今日も来ていたんだね」  
気さくな声で二人に声をかけたのは白衣を着たまだ若い医者で、ちょうど診察に来たのだった。  
挨拶代わりの一言に部屋の中にいた少年が応えると清潔な色のカーテンが靡いた。  
日当たりの良い部屋で、開けた窓から入る風は夏であるのに涼しく、緑豊かな自然が窓の外に広がっている。  
そしてこの病室の住人である杉原真奈美はベッドの上で上半身だけを起こしていて、少年に向けていた穏やかな顔そのままで話す。  
「こんにちは、若先生」  
「はい、こんにちは」  
若先生と呼ばれた医者はこの病院の跡取りであり、医者としての能力も高く、温和な性格と優しい笑顔が相まって病院内でも信頼はとても厚かった。  
真奈美は幼い頃からのこの病院のお世話になっていて、つい最近体調を崩してしまい、またお世話になってしまったのである。  
「ふむ、今日は体調が良いみたいだね。顔色も良いし……検査が終わればすぐにでも退院できるんじゃないかな?」  
「本当ですか!」  
「もちろんだよ。もうじき夏休みだし、思いっきり遊びたいよね……彼と」  
もちろん最後だけは真奈美にだけ聞こえるように。  
「な……何を言ってるんですか若先生!?」  
「ははは、ごめんごめん。あんまり嬉しそうな顔をしてたからつい」  
二人のやり取りは微笑ましく、まるで兄妹のようにも見える。  
それを離れて見ているのは看護師の槇原つぐみ、それと東京からはるばるお見舞いに来ている甲斐智久。  
困ったような笑顔で見ているつぐみとは対照的に、少年は面白くなさそうな顔をで、じと目で若先生を見ている。  
それもそのはず、何しろ東京からはるばる電車に揺られてきている目的は真奈美に会いに来る事なのだから。  
その敵意の込められた視線に気づいたつぐみは若先生と真奈美を嗜めた。  
「ほらほら、私たちは遊びに来たんじゃありませんよ若先生」  
「ああ、そうだね。それじゃ始めようか」  
聴診器を耳にあてて準備をする。  
そしてある事に気づくと、少年に意地悪く言うのだ。  
当然、若先生の言い方に少年は憮然とする。  
「おおっと、君は少し席を外しててくれ」  
「なッ、なんでですか……」  
「君がいると真奈美ちゃんの診察が出来ないんだがね」  
はっと気づいて真奈美を見ると、真奈美は顔を赤くしてパジャマを脱ぐのを躊躇っていた  
何か言いたげな目をして、でも言い出せずにボタンにかけた指を弄んでいる。  
二人の目と目が合うと、赤かった顔をさらに真っ赤にさせて俯いてしまった。  
 
「ごめん!」  
慌てて部屋から出て、ガチャっとドアを開けたらすぐさまバタンとドアを閉める。  
それを見ていたつぐみが、あまりの初々しさにプっと吹き出してしまった。  
「本当に慌て者ね」  
「ははは、若いってのは素晴らしい物さ。さ、真奈美ちゃん服脱いでくれるかな」  
少年が出て行ったのを確認して、若先生の言葉に従ってボタンに手をかける。  
ボタンを外し、前を開けると、白く眩しい素肌と、僅かばかりに膨らんだ胸を覆い隠す可愛らしい下着が露わになった。  
そして若先生の口許が僅かに歪むのをつぐみだけが見ていた。  
 
 ◇  ◇  ◇  
 
「はぁ……まずかったな、やっぱり」  
盛大なため息をついたのは少年であり、もちろん原因は診察前の大失態。  
あの後、真奈美とろくに話も出来なかった。  
面会時間は終わってしまい、茜色に染まった夕陽をバックにトボトボ歩いていて帰る姿は哀愁を誘う。  
「はぁ……」  
もう一度ため息をついてバス停のベンチに座った。  
しかも次のバスまで時間はたっぷりとあり、今日の自分を振り返って反省するには十分な環境となってしまった。  
若先生に嫉妬して、真奈美に恥ずかしい思いをさせて、デリカシーの無い自分に自己嫌悪。  
そして今日何度目か分からなくなったため息をついた時……  
「こらこら、ため息をつくと幸せが逃げてくぞ」  
「あ……つぐみさん」  
「少年、乗ってくかい?」  
車の窓から顔を出して、にっこりと笑っているつぐみがいた。  
 
「今日は災難だったね。せっかく東京からきたのに真奈美ちゃんと話せないなんて」  
「今日のあれはまずかったですよ……まあ僕がいけないんですけどね……」  
車に揺られながらいきなり落ち込んでくる少年。  
好きな人の態度に一喜一憂してしまう少年を見て、自分もそんな事があったなぁとしみじみと思い出す。  
けどそこで、意地悪な部分がひょっこり顔を出すのはご愛嬌。  
 
「嫌われちゃったかもね?」  
「そ、そんな!でもあれは先生がいけないんじゃないですか?あんな風に人を嵌めるなんてずるいですよ」  
「人のせいにするのは良くないぞ。心の狭いひとは嫌い……って真奈美ちゃんが言ってたような言わなかったような」  
「うぐっ……」  
つぐみの言葉に騙され、この世の終わりだと言わんばかりの顔になる少年。  
流石につぐみも、この辺にしておこうと思ってフォローを入れる。  
「ごめんごめん、うそよ。真奈美ちゃんが智久くんを嫌いになるはずないわよ」  
「ほ、本当ですか?」  
期待に満ちているような、それとも疑惑の目か……ともかく色々な感情が混じった目で少年は見る。  
「本当よ。真奈美ちゃんの笑顔、今日も可愛かったでしょ?」  
「はい……」  
「嫌いな人にだったらそんな顔、しないわよ」  
「そ、そうですよね……嫌われてないですよね」  
真奈美を長く見てきたつぐみに励まされ、少年は少しだけ元気を取り戻す事が出来た。  
こうして真奈美の事で相談に乗ってくれたのも一度や二度ではない。  
少年にとっても、そして真奈美にとっても、槇原つぐみという女性は頼れる姉のような存在だった。  
(お姉さんか……)  
一人っ子の少年は感慨深い顔でつぐみを見る。  
が、それもつぐみの姿を見てすぐに変わってしまった。  
いつもとは違う私服姿は新鮮で、胸元を大胆に開けた半袖の上着とミニのスカートから覗く太腿に目が釘付けになる。  
思春期真っ只中の少年にとっては、思わず見惚れてしまうのも無理も無い格好をしていた。  
「どこを見てるのかな少年」  
「ご、ごめんなさい!」  
軽くたしなめられ、少年は罰が悪そうに窓の外に向き直す。  
する事が無くなった少年は、流れていく景色をぼんやりと目で追っていた。  
だからつぐみが笑っていたのに気づけなかった。  
 
キィッっと音を立て、何も無い所で車が止まり、サイドブレーキも引く。  
会話も止まって、なんとなくだが気まずい空気が車内に漂った。  
 
「時に智久くん」  
「は、はい!」  
いきなり名前を呼ばれ、少年は驚いた。  
真面目な横顔に気圧され、これから話す内容が重要且つ重大であろう事が予想される。  
つぐみは何も言わず、前だけを見る。  
長く重い沈黙が続き、咽がカラカラに渇いてゴクリと生唾を飲み込む。  
そしてつぐみの口から出た軽い言葉に、少年は更に驚かされる事になった。  
「真奈美ちゃんとキスした?」  
「……は……い?」  
「キスよキス。当然そのぐらいはしてるわよね、ね、ね?そ、それともまさかその先まで……」  
真面目な顔が一転してニヤニヤ笑っていた。  
「し、し、し、してません!」  
「うそぉ!?二人の事だからもうしちゃってると思ったんだけどぉ」  
「してません!!」  
力の限り否定する少年。  
真奈美と再会して以来、頻繁に会っているというのに、友達以上恋人未満で全然進展していなかった。  
一抹の不安を感じてつぐみはもう一つ聞いてみる。  
「もしかして……手も繋いでないとか」  
「……はい」  
しばらく間を置いてこくりと頷いた。  
中学生の時はあったかもしれないが、その時は異性として意識していなかったはずである。  
だが今は違う。  
真奈美を一人の女の子として意識し、もし許されるのならば真奈美と……  
そんな真面目な少年を見てつぐみはため息が出た。  
「はぁ……」  
意外に奥手なのねと思わざるを得なかった。  
でもそれならそれで逆に都合が良かった。  
とある計画の為に。  
つぐみは自分の躯を使って実行する。  
「これはもうオネーサンが人肌脱ぐしかないわね」  
 
「つぐみ……さん?」  
かちゃりと音を立ててつぐみはシートベルトを外す。  
周りに自然の多い病院だから街から離れていて、車の量も人通りも少ない山道なのが幸した。  
もちろんその意味は……  
「はい、手を出して」  
きょとんとした顔で言われた通りに右手を出した。  
そこに触れるつぐみの左手。  
少年は驚き、手を離そうとするが、つぐみがそれを許さない。  
手の平を合わせるだけのものから少年の手を包み、そして握ってくる。  
ツメを切りそろえたしなやかな指が絡み、少年の手を開かせて握り合う形になる。  
「ほら、女の子と手を繋ぐなんて、なんでもないでしょ」  
「う、うん……」  
柔らかい手と温かさが伝わり、頬を染める少年。  
その仕草が微笑ましかった。  
だからこそつぐみは、まだ何も知らない少年が羨ましくて顔が翳る。  
しかしつぐみは慌てて思い直し、もう後戻りはできないと自分に言い聞かせ、前に進むしかなかった。  
「つぐみ……さん?」  
「な、何、智久くん」  
前屈みの態勢になって、わざと開いた胸元をチラつかせる。  
その中にある豊かな膨らみは下着もつけておらず、痛いくらいに先を硬くして服を持ち上げている。  
瞬く間に少年の顔が真っ赤になり、それでも目を逸らす事など出来ない。  
「どこを見てるのかなぁ……」  
エアコンが効いている車内でも躯が火照るくらい熱っぽい声を出す。  
少年が慌てて顔を逸らしてもつぐみは身体を近づける。  
顔を紅潮させながら開いた上着の付け根に指をかけ、少年の若い衝動をくすぐる。  
「もっと見たい?」  
「え……あ、あの……でも……」  
少年の頭に泣いている真奈美の顔が思い浮かび、罪悪感が襲った。  
しかし性に対して好奇心旺盛な年頃の少年には拒む事の出来ない誘いであり、抗えぬまま握られた右手をバストへと導かれる。  
柔らかい弾力とつぐみの手に挟まれ、少年の思考がショートした。  
 
「どうかな、女のひとの胸は……」  
そう聞かれても、少年はなんと答えていいのかわからず、口をパクパクさせる事しか出来ない。  
しかもただ触れさせるだけではなく、少年の手の上から動かして自分の胸を弄らせる。  
ショートした思考は身体を硬直させ、手の平から伝わる柔らかな感触を受動的に受ける事しか出来ない。  
それに拍車をかけるようにつぐみは甘く囁く。  
「手、動かしてもいいんだよ。それとも中に手を入れて直に触る?」  
「つ、つぐみさん……」  
「私ね、ブラジャー着けてないんだよ」  
手を離して少年に決めさせる。  
けど、答えなどとうに決まっている。  
つぐみは期待に胸を高鳴らせ、少年も思いは同じだった。  
「あ……はぁぁぁ……」  
開いた胸元に手を差し込み、直に女性の象徴である乳房を触る。  
それだけではなく、円を描くように手を動かして手の平全体で豊かな膨らみを弄る。  
初めての女性の肉体に夢中になり、手の平で硬くなった蕾を確かめると、つぐみが短く声を上げた。  
「だ、大丈夫ですか?」  
「う……ん。君の触り方がエッチだからね。ほら、もっと動かして」  
つぐみに促され、少年の手は動き続ける。  
触るだけの動きから、もっと女の躯が知りたくて手に力が入る。  
まだ加減の知らない少年の手により、上着の中でバストは変形を繰り返す。  
それでもつぐみは熱い吐息と甘い声を漏らし続ける。  
「わかる?乳首が立ってるの」  
「は、はい……」  
「私ね、感じているの。気持ち良くて……」  
目をトロンと蕩けさせ、言葉と触覚、そして視覚で少年の思考を混乱させる。  
すでに真奈美に対する罪悪感などは消え、性に対する青々しい衝動だけが少年を突き動かす。  
つぐみもまた同じだ。  
まだ拙い少年の愛撫で昂ぶった躯を持て余し、自分から胸を揉みしだく。  
それも少年の手の上から「おっぱいはこう揉むのよ」と教えるように。  
「つ、つぐみさんの手つき、すごく厭らしいよ……」  
「あら、厭らしいのは智久くんだって同じでしょ。手だけじゃなくて、こっちの方もこんなにして……」  
つぐみの手は少年の股間へと伸び、手の平で硬くなった怒張を摩った。  
 
「つッ、つぐみさん!そこ……」  
「ほら……こ〜んなに硬くしている」  
「や、やめ……」  
ジーンズの下から押し上げる物を上から手で包み、軽く力を入れながら擦ると少年が悶える。  
今にも張り裂けそうな程ヒクヒクさせながら、やめてなどと説得力の欠片も無い。  
無論つぐみは止める気などさらさら無かった。  
亀頭の部分を指でなぞったり、竿の部分を手の平を使ってぐりぐりと押し撫で、少年を感じさせる。  
ジーンズの上から与えられる刺激はもどかしく、息も絶え絶えになってきた少年につぐみは更に囁きかける。  
「キスして……」  
簡潔な命令は少年の脳に直接訴えかけ、考える余裕すら失くす。  
目の前では首を少し傾げ、顔を寄せるつぐみがいる。  
断る理由は無い。  
少年も目を閉じながら顔を寄せる。  
闇の中でお互いの息遣いだけが聞こえ、唇が触れ合うと電気が流れたように全身が痺れた。  
「んんん……」  
ファーストキスは想いを寄せていた真奈美ではなく、つぐみとなった。  
しかし、そんな事を哀しいと思わせる気はつぐみには無い。  
それ以上のモノを与えるのだから。  
「ンッ……!」  
少年の口腔に侵入してきた蠢く物。  
突然の出来事に少年の目が見開かれたが、次の瞬間にはつぐみの行為を真似て舌を動かす。  
生き物のように舌と舌が絡み合い、淫らな水音を発する。  
「んはぁ……ん、ん、ん……ちゅく……」  
融けるような快感に意識を奪われ、少年は身を任せてしまう。  
つぐみはそれを見て薄く笑い、股間に伸ばした手に力を込める。  
少年をイかせるためだけに。  
「んん!!ん……んぐぅっ!」  
目を閉じ、唇を貪りながら少年がビクビクと躯を痙攣させた。  
その間中もつぐみの手と指は動いている。  
中に詰まっている最後の一滴を搾り出すまで止めようとはしないのだ。  
 
全てを出し尽くし、心地好い脱力感に覆われながら唇を離しても、唾液で出来た銀糸と酩酊した目はまだ繋がっている。  
そして肺の底から息を吐き出し、余韻に浸る間もなく少年は己の下半身の有様に気づく。  
「ふふふ、出しちゃったね」  
悪戯っぽく笑い、つぐみは少年の顔を覗いた。  
あまりの恥ずかしさに俯いたままの少年の股間は、精を出し尽くしたにもかかわらず、まだ硬度を失わずにいる。  
やがて気持ち良さが消えて幼い頃と同じ気持ち悪い感触が広がり、その頃と同じバツの悪い顔になる。  
「ご、ごめん……」  
辛うじて口にした言葉はそれだけだった。  
でもつぐみはそれを許す。  
患者に接する時と同じように、天使のような優しさと笑顔を持って、少年を責める事は決してない。  
「いいの。気持ち良かったんでしょ?」  
否定しようにも隠し様の無い事実が臭いと共に残る。  
ヒクついた怒張とブリーフが擦れ、にちゃりと粘液質の音がした。  
自分にも聞こえたのだから当然つぐみも気づかれ、恥ずかしくて何も答えられない。  
しかし依然として硬いままの剛直はまるで意思を持っているみたいに、もっと気持ち良くさせてとつぐみの手の中でヒクンと動いてしまう。  
「このままじゃ帰れないね」  
つぐみの言葉は一体どちらを意味しているのだろう。  
少年の服を気にしたのか、それとも硬いままの肉棒を気にしたのか。  
―――家に来る?  
そう聞かれた時、少年はどちらの意味だと捉えたのだろう。  
無論、若い躯は正直で期待している。  
それを承諾と受け取ったつぐみも当然少年の期待に応える気でいる。  
自分の欲求を満たすためならば、病弱な女の子の気持ちを裏切る事すら出来る。  
それが槇原つぐみの本質であった。  
「その前に……」  
ジッパーを下げて牡自身を取り出すと、独特の性臭が車内に充満する。  
自分の出した樹液で汚れていたが、つぐみにとっては咽を鳴らすほどのご馳走に見えた。  
そして少年の股間に顔を埋め、間近に見えた肉棒に向かって呟く。  
「綺麗にしないといけないよね……」  
吐き出した息がかかる程の近さでつぐみの口が開いた。  
期待に胸を膨らませた少年の全神経はそこに集中し、つぐみが咥える様を見届ける。  
 
「ん、ん、ん、んん……」  
つぐみは唇と舌、頬と咽を使い、外に跳ねた髪が乱れるほど頭を動かして、じゅぽじゅぽと厭らしいまでに甘美な音をわざと聞かせる。  
生温かく、ねっとりとした、初めての口腔奉仕の感触に、少年が再び果てるのも時間の問題でしかない。  
そしてつぐみが咽を鳴らし、吐き出された精液を飲み下す音を少年は聞くのだった。  
 
◇  ◇  ◇  
 
「どうしたの、智久君?」  
真奈美が心配そうな顔で少年を見つめる。  
その少年は想い人を前にして、罪悪感を抱かずにはいられなかった。  
理由はもちろんつぐみとの情事である。  
一週間前、少年はつぐみと産まれて初めての性行為をした。  
車の中で手と口で二回精を放ち、その後つぐみの家で一晩中女の躯を堪能した。  
そのつぐみは真奈美の傍らでいつもと何一つ変わらぬ顔で体温を測っている。  
「……な、なんでもないよ」  
そうは言って見せるものの、少年の顔は何かあったと思わせるに足りる。  
真奈美も少年に対して好意を抱いているからこそ、少年の変化を敏感に感じ取っていた。  
気まずい空気が二人の間に漂い、こうなる事は当然予測出来ていた。  
しかし、少年はここに来たいと切望していた。  
もう一度、つぐみの躯を味わうために。  
(来週も来るんでしょ?その時、またしようね……セックス)  
翌朝つぐみは少年を駅に送り届け、別れ際にそう告げたのだ。  
肉の交わりとも言えるディープキスと一緒に。  
それからというもの、少年はこの日を待ち望み、毎日つぐみとの狂宴を思い出しながらいきり勃った物をしごいていた。  
「37度ちょうど……真奈美ちゃんの平熱は高いから心配いらないわよ」  
日課である体温を測り、何か異常が無いか簡単な問診も行う。  
しゃべる度に少年は薄く口紅を塗ったつぐみの唇を追い、どうしても先週の事を連想させてしまう。  
あの口でキスをして、舌を絡め、口唇奉仕をして、精液も飲んだ。  
ワンルームマンションで玄関に入ってすぐ、我慢出来なくなった少年は服も脱がないまま、鍵もかけずにフローリングの冷たい床の上で童貞を捨て、つぐみは全てを受け入れてくれたのだ。  
そして今日もまたつぐみと……  
そう思うだけで少年は股間を膨らませ、二人が話しかけているのに気づけなかった。  
 
「……久くん……智久くん!」  
「え……あ……な、何?」  
現実に戻ると真奈美とつぐみが見ていた。  
「はぁ……真奈美ちゃんがいるのに心ここに在らずとは何事か!」  
「つぐみさん……その、いいんです……」  
「良くない!それとも悩み事かな?よおし、オネーサンが相談に乗ってあげるぞ」  
少年に詰め寄ったつぐみは真奈美に見えないようにサインを送る。  
もうすぐだから待ってなさい―――と。  
そんな二人を真奈美は不審な目で見ていた。  
 
「つぐみさん……つぐみさん……」  
「こらこら、がっつくんじゃない」  
空きの病室で少年は抱きつき、胸に顔を埋めて頬ずりする。  
口では嗜めていたつぐみも内心は待ちきれなかった。  
手はすでに股間へと伸び、硬くなった肉の棒をジーンズの上から摩る。  
「こんなに硬くして……真奈美ちゃんに気づかれたらどうする気なの」  
「でもつぐみさんとしたのを思い出して……」  
「ふふふ、嬉しい事を言ってくれるね。私の躯、そんなに良かった?」  
優しく語りかけ、その一方で手を情熱的に動かして少年の欲望を高めていく。  
悩ましげな目で少年が見ているのは頼りになる姉ではない。  
白衣を身に纏った、甘美な願いを叶えてくれる淫天使だった。  
「つぐみさん、もういいでしょ?早くさせてよ」  
「ええ、私だって待ちきれなかったんだから」  
くるりと背中を見せ、備え付けのベッドに手をつき、少年に腰を突き出す。  
スカートに映ったヒップのラインは官能的で、焦らす様にゆっくりとスカートを捲る。  
そしてスカートの中、淫天使が穿いていた下着を見て、少年は胸を大きく躍らせるのだった。  
「つぐみさん、それってTバックってヤツ?」  
白く張りのある尻たぶ、その割れ目に細い紐が一本だけ通ったとても卑猥な下着を穿いていた。  
それは太腿までのストッキングと相まって、つぐみのスタイルの良さを一層際立たせた。  
 
「ええ、そうよ。キミに喜んでもらうために選んだの。どう?」  
「素敵ですよ。こんなHな下着を穿いて仕事してるなんて……厭らしい看護師さんだ」  
「ああン!」  
少年に撫で回され、つぐみは声を上げた。  
昂ぶった躯には些細な動作でも敏感に反応してしまう。  
そして尻たぶを堪能した少年の手によって躯を隠す小さな布切れが下ろされ、手入れの行き届いた茂みが空気に触れる。  
真奈美の検診の最中から少年の視線を浴び、高められてきた躯は今ここに昇り詰めようとしていた。  
「ねえ智久くん、つぐみはいけない看護師なの……だから……早く」  
「ええ、厭らしい看護師さんにはお仕置きが必要ですね」  
「そ、そうよ……智久くんの太っとい注射で、つぐみをお仕置きして!」  
カチャカチャとベルトを外している間もつぐみは美尻を振って愉しませている。  
そしていつでも熱くて硬い剛直を挿れてもらえるよう、溢れた蜜が日の光に反射してテラテラと光る。  
「あああ!」  
肉壷を押し広げる剛直がずぶずぶ入ってくると、つぐみはあられもない声を上げて淫らな貌が表に出る。  
つぐみと関係を持った者しか知らないもう一つの貌であり、少年を一晩で虜にさせた女の顔。  
悦びの声を上げ、つぐみも少年に合わせて前後に動く。  
白いナース服を着た雌と下半身だけさらけ出した雄が、誰もいない病室で互いの躯を貪るための肉宴を始めていた。  
「あ、あ、ああ……智久くんので私、いっぱいになってる!」  
シーツを掴んでシワを作る程、先週まで女の躯を知らなかった少年がもたらす快感は大きかった。  
少年もまた締め付けてくる肉壁に顔を歪ませられ、ゆっくりと味わう暇も無く精巣から精子が込み上げてくる。  
「ツ、つぐみさんッ!僕、もう……」  
「いいわ、中に出して!精子でいっぱいにしてぇ!」  
「くっ……で、出るッ!」  
つぐみの望み通りに細い腰を掴んで奥まで突き上げ、最初の一撃を中に出した。  
びゅくびゅくと何度も射精して全て吐き出し終えると、呼吸を整えるためにつぐみの背中に覆い被さる。  
一方、つぐみの昂ぶりは収まらなかったが、中に感じる熱い樹液が心を満たしていく。  
そして火照ったままの躯を密着させ、少年がそっと囁く。  
「……ごめんねつぐみさん。我慢できなくて」  
「謝らなくていいの。いっぱいすればもっと長く出来るようになるんだから……ね」  
早く続きをしましょうと暗に伝え、覆い被さる少年の頬を触り、身体を捻ってキスをしてあげた。  
 
少年もつぐみに応え、ぴちゃぴちゃと音を立てる。  
舌だけでなく手も動かし、服の上から大きな胸を揉みしだく。  
直接ではなかったが、それでも十分な柔らかさが手に伝わり、再び躯が反応してくる。  
「ふふふ……まだいけるでしょ?」  
淫らな顔をして、きゅっと締め付けて少年の躯にも聞く。  
けど聞くまでも無かった。  
蜜壷で締め付けられた怒張は硬いままで、ゆっくりと引き抜かれていき、雁首の部分が淫裂の入り口で止まる。  
「ふぅぅぅん!」  
肺の底から艶声が溢れ、肉と肉の交わりは再開された。  
腰と腰がぶつかり、ピタピタ音が鳴り響く。  
初めは緩やかだったスピードは次第に速くなり、奥へ突き挿れる度に中の樹液と蜜がぐちゅりと混ざり合う。  
融けるほど淫靡な音は少年の欲望を刺激し、積極的にさせる。  
「つぐみさん、横になってくれる?」  
言われた通りに、繋がったままベッドの上で横になる。  
少年が本で見た体位の一つ、側位であり、つぐみの太腿に跨り、片方の足を大きく開きながら抱える。  
後背位では有り得ない挿入感を得て、更に膣内の奥深くまで怒張を届かせる。  
「す、すごい……さっきまでより……ずっと、ずっと奥にぃぃぃ!」  
「こっちもすごいよ!さっきと違う所に擦れて……くぅっ!」  
「あ、あ、あ、イきそう……もっと奥をぐりぐりして……」  
シーツを握り締め、自分の弱い所を教えて責めさせる。  
だらしなく緩んだ口からは涎が流れ、閉じる事を考える気も起こらない。  
スカートは本来の役目を果たせず、腰まで捲れて少年の性欲を煽る物にしかならない。  
抱えられた足のつま先はピンとなり、押し寄せる快感に耐え、少年と自分が果てるまで長く肉棒を堪能しようと内壁が蠢く。  
「つぐみさん……また、出そう……」  
「ね、ねえ、今度はお口に出して……智久くんの精子、飲んであげるから……」  
つぐみの言葉に少年の突き上げる一撃一撃は力強くなる。  
ギシギシとベッドを軋ませ、注挿のスピードが限界近くまで速くなる。  
切れ切れに漏れるつぐみの声、目には躯の芯からくる快感で涙が溜まり、官能的な響きが少年を絶頂へと導かせようとする。  
「あ、ああああ!」  
最初につぐみが果て、肉壷が収縮を繰り返す。  
捕らえた獲物を逃がそうとせず、全てを搾り取ろうと肉襞。  
それに耐え、少年が怒張を引き抜き、整ったつぐみの顔に先端を向けた。  
 
惚けた瞳が怒張を捉えると口を開け、ここに出してと舌を差し出す。  
「くぅぅう!」  
最後の仕上げに手でしごき上げ、小さな口めがけて発射した。  
勢い良く飛び出した精液は口だけではなく、頬にも鼻にも降りかかり、つぐみは恍惚とした表情で全てを受け止める。  
「ん……んちゅッ……ふむっ」  
白い樹液を出し尽くしてもつぐみは亀頭の先に吸い付き、竿の中の物まで啜る。  
それが終わっても顔を汚した白濁液を指で集め、赤ちゃんのように一本ずつちゅうちゅう音を出して吸う。  
とても美味しそうに目をうっとりとさせ、ちろちろ舌を覗かせて綺麗にする。  
人の命を守る看護師なのに、今の姿は男の欲望を吐き出させる娼婦のようだった。  
「んふ」  
口の中に生温かい樹液を溜めたまま、目がすうっと細くなる。  
つぐみは少年の見ている前で、両手の平に全ての精液を垂らし、舌先から流れ落ちる淫靡な動きを見せながら白い水溜りを作った。  
「いっぱい出したね」  
嬉しそうに話すつぐみの顔は淫らで、見ている少年の方が恥ずかしくなるほどだった。  
ずずず……ちゅる……  
手の平に掬った清水を飲むように白濁とした液体を飲み干す。  
咽の奥に絡みついたが、上を向いて流れ落ちやすくさせ、呻き声を出しながら飲み下す。  
「は……ああ……」  
腹の底から息を吐き、少年の出した樹液は全て胃の中に流し込まれた。  
それら全てを少年は見届けていた。  
どれだけつぐみがふしだらで、男の吐き出す精液が大好きな精飲天使である事を。  
そして少年に想いを寄せる女の子―――杉原真奈美もまた一緒になって見ていた。  
「と……智、久……君」  
扉を少しだけ開け、何かに取り憑かれたようにその光景を凝視する。  
目の前の二人は愛欲の限りを尽くし、真奈美が覗いているのに気づかない。  
例え気づいていても愛欲の虜になった少年はやめるのだろうか?  
二人は真奈美に覗かれているのも知らず、着ている物全てを脱ぎ、ベッドの上で抱き合う。  
つぐみが上になり、お互いの性器を愛撫する体勢で少年は指を淫裂に挿れた。  
二本の指が出し入れされてつぐみの躯は大きく跳ね上がり、同じ女である真奈美ですらドキリとする貌を見せる。  
看護師としてのつぐみしか知らなかった真奈美には信じられなかった。  
硬いままの肉茎を握ったまま悶える女としてのつぐみの姿が真奈美の記憶に鮮明に焼き付けられる。  
 
「つぐみさん、しゃぶってよ。精子欲しいんでしょ?」  
「だって智久くんの指が気持ち良くって……ああッ!!」  
ぐちゅっと雌穴に指が突き入れられ、背中を大きく反らして声を上げた。  
それでも手は肉棒を離さず上下にしごき上げ、少年の若い精液を浅ましく欲しがっている。  
その握られた少年の肉棒は大きく硬いままで、初めて男性器を見た真奈美は声も出せずにいた。  
(あ、あ、あ……あんなのが挿るの?)  
カチカチと歯を鳴らし、恐怖のあまり腰が抜けてへたり込んでいたが、開いたドアから覗き見る光景からは逃れられない。  
真奈美が見ている前でつぐみが剛直を咥えると頭をがくがく動かして、唾液と唇と剛直が擦れ合う音を聞こえるように鳴らす。  
優しく凛々しいつぐみの印象が音を立てて崩れていく。  
「ぷはぁ!」  
咥えていた物を離すと剛直がブルンと跳ねた。  
真奈美には凶器にしか見えないグロテスクな形状。  
くびれた部分に赤く濡れた舌を這わせると、少年が眉をひそめて悶えた。  
(…………)  
見ていた真奈美に変化が現れる。  
胸がムカムカしてきてパジャマの裾を掴む力が大きくなる。  
「ん……おお、お……」  
つぐみは大きくて長い肉の棒を根元まで呑み込んでいく。  
「うあッ!つぐみさんの咽に当たって……き、気持ち良い」  
唇を噛み締め、表に表れる黒い炎。  
少年に褒められたつぐみが嬉しそうな顔を見せる度に真奈美の黒い部分が大きくなる。  
そして初めて真奈美は人を憎んだ。  
「ずるい……」  
恨めしくつぐみを見て、はっきりと自分の感情を言葉に表した。  
「んあ……ああ……」  
ゆっくりと吐き出し、唾液で滑りの良くなった竿をしごきあげ、妖しく笑いながら肉棒を見つめる。  
そして愛しい人に口付けをするように、全体にキスを何度も繰り返す。  
(ずるい……つぐみさんずるいよ……)  
本当だったら今すぐ少年の元に走って行きたい。  
けど、それが出来ないのは怖いからだ。  
もし少年が自分よりつぐみを選んでしまったら―――  
そう考えるだけで萎縮してしまう。  
 
つぐみは真奈美が持っていない物を全て持っていた。  
健全な身体、魅力的なスタイル、優しい性格、そして少年を虜にさせる躯。  
どれも真奈美には無い物ばかりだ。  
少年がつぐみを選んだのも当然の事……  
「今度は私が上になるね。お姉さんが気持ち良くさせてあげるから」  
「はい。期待してますよ、つぐみさん」  
(……ずるいよ……つぐみさん)  
涙が零れたのにも気づかない。  
想いを寄せていた少年はつぐみしか見ていない。  
ここにいるのに……こんなに大好きなのに……貴方が望むなら私だって……  
真奈美にも人並みに性欲はある。  
少年を想って病室でオナニーをした事もある。  
いつかきっとそうなるんだと、密かに覚悟を決めていた。  
しかしそれは叶わない夢でしかなかった。  
「ねえ、気持ち良い智久くん?」  
「う、うん。つぐみさんの腰遣いエロ過ぎだよ」  
「うふふ、ありがとう。これからもいっぱい厭らしい事をさせてあげるから……」  
「わかってるよ。精液が大好きなんだよね、つぐみさん」  
「うん!だから沢山出して。智久くんになら妊娠させられてもいいかも……」  
くびれた腰をくねらせながら少年にキスをする。  
結合部では貪欲な雌孔が広がって今にも爆発しそうな剛直が出入りしている。  
少年が見上げているのは形の良い豊乳で、つぐみの動きに合わせて大きく揺れている。  
それに手を伸ばし、愉しむ様に揉みしだくと、つぐみが悩ましげな声を出して桜色の先っぽを尖らせる。  
(…………)  
もう見たく無い。  
俯くと涙が床に落ちた。  
嗚咽が漏れて少年を失くした喪失感に苛まれ、負け犬のように泣きながら誰もいない病室に戻るしかない。  
昔のように自分の殻に暗く閉じ篭るしかない。  
だから真奈美のすぐ後ろに人がいるのに気づけなかった。  
「まさかあの二人がこんな関係だったなんて……」  
ゆっくりとした動作で顔を振り向かせるとそこには……  
「若、先生……」  
 
「これでも飲んで落ち着いて」  
カチャリとティーカップが鳴り、ミルクがたっぷりと入った紅茶を差し出された。  
あの後、若先生の私室に招かれ、真奈美はミルクティーを言われるままに口にする。  
一口飲むと温かい液体が咽を流れ、お腹の中に心地好く広がっていく。  
小さく息を吐き、カップを置くと表面に波紋がいくつも広がる。  
それをぼんやりと見つめたまま、円らな瞳に涙をいっぱい溜めていた。  
若先生はふぅとため息をつく。  
「元気を出して……って言われても無理か」  
想いを寄せていた少年が選んだのがつぐみだった。  
その逢瀬を目撃してしまい、舞い上がっていた分だけ落差は激しかった。  
真奈美とつぐみの差―――  
真奈美には持っていない物全てをつぐみは持っていて、それらを使って真奈美には出来ない方法でつぐみは少年を愛していた。  
故に真奈美は思わずにはいられない。  
―――ずるいと。  
ぐずりと鼻を啜り、思い出したくもない光景が目に焼きついていて離れない。  
浅ましく口で咥え、蜜の滴る肉壷に呑み込み、少年の若い性欲の全てを受け入れるつぐみ。  
目を背けたくなるような行為だが、自分には出来ないからこそ妬む、憎む、羨む。  
あんな風に男のひとを愛せるなんて……  
何よりも少年が悦んでいたのが真奈美を絶望させた。  
「ずるいです……つぐみさん、私の気持ち知ってるはずなのに……」  
目の光が翳り、月明かりに光る涙が零れた。  
辛い事は嫌い、悲しい事から逃げたい。  
つぐみには勝てないと自己完結して、昔の真奈美に戻ってしまう。  
それを留め様としたのは、そばにいた若先生だった。  
「その……槇原君にはちょっと良くない噂があってね」  
ピクリと僅かに肩が震えた。  
それに気づいたのか気づけなかったのか、若先生は続ける。  
「年下の子に興味があって……時々そんな事をするみたいなんだ。だから、その……一時的なものかも知れないし……  
 彼だってほら、性に対する興味が大きい年頃だ。だから……時間が経てば、自然に気づくんじゃないかな」  
 
言葉を一つ一つ選びながら慰めるが、真奈美は何の反応も示さない。  
先程からずっと一点だけを見つめている。  
なんとかしないと―――  
真奈美はそう思わせるには十分な顔をしていた。  
「ぼ、僕の方からも言っておくから。そんな事をするなって。槇原君も大人だし、わかってくれるさ。ただの遊びだったっ……」  
そこまで言った時、自分の失言に気づいた。  
不用意な発言、『遊び』というキーワードに真奈美が初めて反応を見せる。  
「…………遊びって……」  
「あ、いや、それは言い方が悪かったって言うか……」  
「遊びなら何をしてもいいんですか……」  
初めて見せる真奈美の怒り―――ではなく、感情という物が無かった。  
「あんな事をして遊びで済まされるんですか大人って……」  
「だ、だから落ち着いて……ほら、ミルクティーでも飲んで」  
若先生の言葉に従ってカップの残りを飲み干す。  
お腹の中に温かい液体が広がり、じわじわと身体の芯まで染み込んでいく。  
それを横から見ている若先生は見えないように口の端が吊り上げて笑う。  
診察中の貌と同じに。  
そして真奈美はぼんやりとした顔で、何もない宙を見ている。  
「悔しいのかい?」  
頭の中に直接響くような問いかけだった  
それに対して真奈美はこくりと頷く。  
「槇原君が妬ましいかい?」  
「……はい」  
抑揚の無い声。  
「彼が欲しいのかい?」  
「……はい」  
「彼を取り戻したいのかい?」  
「……はい」  
「どんな事をしてでも?」  
「……はい」  
若先生の問いかけに次々と答えていく。  
 
けどそこに感情という物は欠片も無かった。  
心が壊れてしまったのか、それとも心を閉ざしてしまったのか。  
それでも若先生の問いは続く。  
「槇村君から奪ってでも?」  
考えた末、真奈美は頷く。  
横にいる若先生の顔が豹変しているのにも気づかずに。  
「…………はい」  
「よろしい。じゃあ始めようか」  
虚ろな目をしたまま、ゆっくりと若先生の方を向く。  
「は…じ…め…る?」  
「そうだ。つぐみ君に負けたくないのだろう?」  
真奈美はもう一度こくんと頷く。  
頬を染め、躯を火照らせ、息遣いを熱くさせ、胸をドキドキさせて。  
もはや正常な思考は働いておらず、頭ではなく躯が欲しがっているのだ。  
男を―――  
戸棚の端に置かれた小瓶。  
その中に入っていた液体は無くなっていた。  
「僕が教えてあげるよ。女の躯の使い方を」  
「……は……い」  
真奈美は言われるままに返事をした。  
 
 ◇  ◇  ◇  
 
季節は夏休み―――  
少年は学生の身分を活かし、今まで以上に病院に……つぐみに会いに来ていた。  
昨夜もつぐみの家に泊まり、通勤の車に同乗させて貰っている。  
そこで最近病院内で広まっている噂の話になった。  
「幽霊?」  
聞き返したのは少年で、この手の話には興味はあったのだ。  
楽しそうな顔になる一方で、話を切り出したつぐみは反対に酷くうろたえていた。  
 
「そ、そうなのよ智久くん……あのねあのね、夜勤の子が見たって言うのよ」  
ハンドルを握る手にも肩にも力が入ってガタガタ震える。  
少年は何もそこまで怖がらなくても……と言いたそうにつぐみを見ている。  
けど意外な一面が見れたのが嬉しくて、人間何か一つは欠点があった方が可愛いんだなと思っていた。  
普段とのギャップに微笑ましく眺めていると、つぐみが情けない声で少年にお願いしてきた。  
「ね、ねえ……今度当番なのよぉ……だから」  
「いいんですか?病院に部外者が入ったらまずいでしょ」  
「だ、大丈夫よぉ……適当な理由つけてみんな言いくるめるから。お、お、お、お願い……」  
手を合わせ、涙目でお願いするつぐみ。  
だが運転の途中というのを忘れていて少年が慌てる。  
「つぐみさん!前、前!!」  
「お願いよおおお!なんだってするから一緒にいてえ!!」  
「わかりましたから!ちゃんと運転してください!!」  
蛇行しながら走る車。  
二人は街の中心から離れた、緑豊かな場所にある病院に向かっていた。  
 
死にそうな目に遭いながらも、少年は青ざめた顔で真奈美の病室に顔を出した。  
「ど、どうしたの?」  
「いや、ちょっと車酔いしたかも……あははは」  
心配そうな真奈美の目に、流石に心苦しくなって無理に笑顔を見せる。  
お見舞いに来た自分が逆に心配されるなんてシャレにもならない。  
何か話題を探そうと思った時、この季節にはぴったりの話を思い出した。  
「幽霊?」  
きょとんとした顔で真奈美が聞き返す。  
「そ、幽霊だって。夜勤の人が見たっていうか……聞いたんだって。どこからか呻き声がしたのを」  
「呻き声……」  
「場所が場所だからね。そんな話があってもおかしくないか。それに夏だしね」  
彼のオカルト好きは小学校時代に知り合った一人の女の子の影響であるのは言うまでもない。  
その時を思い出すようにして少年はいかにも楽しそうに話していた。  
 
つぐみと関係を持って以来、気まずい雰囲気が続いていたが、最近になって元の少年に戻ってきた。  
慣れてしまえばどうとでもなり、罪悪感も薄まる。  
真奈美に対して抱いていた感情も今は冷め、お見舞いには義理で来ているようなものだった。  
少年はつぐみを愛している。  
その愛が性欲から来るものであったとしても、今の少年は真奈美よりもつぐみを愛していた。  
真奈美はその事に気づいていて、悔しくてしょうがなかった。  
「どうしたの杉原?」  
突然名前を呼ばれ、慌てふためく。  
「な、何?」  
「なんか上の空って感じだったから……もしかしてこういう話は苦手だったかな」  
「う、うん。もしその話が本当だったらどうしようかって……」  
真奈美の顔から元気がなくなっていく。  
だから安心させるために少年は優しく答えてあげる。  
わざとなのか、それとも天然なのか、真奈美にはどうしても庇護欲をかきたてる何かがあるのだ。  
「大丈夫。その時は僕が守ってあげるから」  
たとえその言葉が嘘であっても嬉しくて、真奈美はナイトの少年に笑顔を見せる。  
「頼りにしてるからね」  
「任せて」  
ただの冗談みたいな会話でも、少年となら全部大切な思い出になる。  
昔二人で小鳥の看病をした事も、ガンバレと贈られた言葉も、そして少年を好きな事も。  
だから真奈美は願わずにはいられなかった。  
黒い感情を燃え上がらせ、少年との甘いひとときを想像する。  
「あ、でも夜だから面会時間終わってるね……どうしよう」  
「ふふふ、この部屋に泊まっていく?」  
「な、なに言ってるんだよ!?」  
「あら、私は構いませんよ」  
真奈美は顔を赤らめながら少年に微笑み、少年は真っ赤になりながら反対した。  
そして少年の心臓が張り裂けそうなほどドキドキと高鳴る。  
(…………す、杉原?)  
少年が顔を赤くしたのは別に恥ずかしかっただけではない。  
その時の真奈美に女を感じたからだ。  
つぐみと同じ雌の貌を……  
 
「へえ、幽霊ね」  
病院の一室で若先生はとても愉しそうに話を聞いていた。  
真夜中の病院はとても静かで冷たく、物の怪の類がいても不思議ではない。  
現にここには少女―――真奈美を身悶えさせる淫魔がいる。  
「セ、センセぇ……」  
「ああ、すまないね。真奈美ちゃんの話が面白くて手が止まってしまったか」  
「あああ……はぁぁぁンッ!そ、そこイイです!」  
薄明かりの部屋の中心で少女が喘ぐ。  
分娩用の椅子に座らされ、足が閉じられないように完全に固定されて、両の手首には手錠が嵌められ、犬の首輪から伸びる鎖に繋がれてもいる。  
更に目隠しをされ、だらしなく開いた口と足の付け根から涎を垂れ流し、腰を浮かせ、長い髪を振り乱しながら淫らな雌の声をあげる。  
そして患者を治すはずの若先生の手は真奈美の股間に伸び、指が菊門に埋め込まれていた。  
指を僅かに動かすだけで哀れな少女を狂わせる事が出来る。  
「だいぶほぐれてきたね。指が二本も入っちゃったよ……わかるよね、ほら」  
若先生は指を根元までぐいぐいと埋め込み、直腸の奥まで届かせる。  
それだけでは飽き足らず、二本の指がV字に広げ、腸壁を指の腹で撫で回して真奈美をおののかせた。  
「そ、そんなに……お尻の穴、広げないでくださ……お、お、おおお!」  
拘束されて抗う事など一切出来ない真奈美に更なる試練が襲い掛かる。  
手首の捻りも加えられ、指を広げたまま右に左に菊座を押し回されると、未熟な躯に死にたいくらいの快感が襲い掛かる。  
排泄器官を嬲られるという羞恥心がより一層の刺激となって真奈美の意識を徐々に侵食していく。  
常識を覆い尽くす背徳の快楽は無垢な少女を淫魔へと創り変えていくのであった。  
「お、お、お、お尻があああ!お尻の穴が気持ちイイのおおお!!」  
「だろうね。お尻の穴が僕の指を咥えて離さないよ……本当に厭らしい女の子だよ、真奈美ちゃんは」  
「だってこんなに気持ちイイなんて知らなかったんです!お尻の穴なのに……汚い穴なのにぃぃぃ!」  
身動きが取れない状態で若先生の執拗な責めを受け続け、禁忌の悦楽により意識が白濁して身体が宙に浮く感覚がする。  
気持ち良い事しか考えられなくなった時、その快楽を与えてくれる指が音を立てて突然抜かれた。  
「え、なんで……センセぇやめないで!このままじゃ気が狂います!お尻でイかせてください!」  
顔を振ってイヤイヤする。  
隠し様のない無毛の淫裂からは甘い蜜を流し、餌に群がる鯉のように口をパクパクさせておねだりを繰り返す。  
つい数日前まで何も知らないピュアな少女が、穢らわしい排泄器官でイかせて欲しいとお願いする姿など誰が想像できたか。  
「大丈夫だよ。お尻の穴にはこれをあげるから」  
スラックスとブリーフを下ろし、かちんかちんの剛直をお尻の穴に擦り付ける。  
そこは少し力を入れるだけで、いとも簡単に呑み込んでしまうほど、柔らかい雌孔になっていた。  
 
「これが何か分かるかい?」  
「あ(はぁと)センセーのおチ○チン」  
「アタリ。よく分かったね」  
「だってそれ、すごく気持ちイイんです……今までいっぱいしてくれたから分かります」  
まだ挿れてもいないのに真奈美の貌が綻び、盛りのついた雌犬のように息遣いを荒くして、いつでも剛直を挿れて貰える様に腰を浮かせる。  
「お願いします……早く、お尻の穴に挿れてください」  
肛虐の性行為に取り憑かれた真奈美にはすでに羞恥心は微塵も無い。  
発情した雌の格好を見て、若先生は失笑してしまう。  
「しょうがない子だな。今すぐ挿れてあげるから」  
「はぁぁ……ン、ンンッ、くぅぅぅッ!」  
剛直は苦も無く菊門に埋もれていき、逆流してくる異物に対して真奈美の身体は本能に従って押し戻そうと試みる。  
だがそれは無駄な努力であった。  
無理やり押し込まれ、真奈美は艶かしい悲鳴を上げて身悶えした。  
一番大きくて太い部分の亀頭が菊花を広げ、腸壁を掻き分ける度に、幼さが残る白い裸体が跳ね上がる。  
「らめぇ!お尻の中でおチ○チンが……あ、暴れてるのおお……お、おおおッ……お、お!」  
昂ぶった菊門が灼けてしまう錯覚に陥り、真奈美は半狂乱になりながら達した。  
それでも終わらない。  
膣内の肉壁が雄の肉棒を締め付けるように、菊門が剛直を咥え込んで離そうとしない。  
しかし若先生の力には敵わず引き抜かれ、雁首が菊座に引っかかり、排泄する時と同じように捲れ上がって再び押し込まれる。  
そのおぞましいまで排泄と逆流の繰り返しで、真奈美は昇り詰めた場所から降りられなくなった。  
「あああンッ!おお、お、お、おおおぅッ!」  
あまりにも鋭い快感が脳を突き抜け、イクのが止まらない。  
淫裂から透明な液体を噴き出し、声にならない声を上げて失神するまで続く。  
そして直腸の奥深くに樹液を吐き出され、背徳の性交はようやく終わりを迎えた。  
 
「ん、んちゅッ……ちゅっちゅっ……」  
真奈美は拘束されたままの格好で若先生の肉棒にしゃぶりつく。  
「そうそう。終わったら後始末をしないとね」  
「ひゃい……おチ○チン、キレイにしますね。んむ、ちゅく……」  
手を使わずに唇と舌を使って愛おしく清める。  
最初は上手に出来なかったが、若先生の教育のお陰で少しずつ上達していき、今では歯を立てず、咽の奥まで呑み込めるようになった。  
先端が女の肉壷にも似た柔らかい咽に当たって若先生が僅かに声を上げる。  
その声が真奈美の献身さに火をつけ、口唇奉仕に熱を帯びさせるのだ。  
健気な姿に若先生は優しく微笑みながら頭を撫でてあげる。  
「幽霊って多分僕たちの事かもね。真奈美ちゃんの声が大きいから絶対外に聞こえているよ」  
「で、でも……気持ちイイから我慢できないんです……ごめんなさい」  
不安な目で庇護を求める真奈美。  
そんな小さな少女に若先生は目を細めて、選んだ道は正しいんだと慰めてあげる。  
「謝らなくていいんだよ真奈美ちゃん。素直になれた証拠なんだから智久くんも喜んでくれるよ、きっと」  
不安な表情は消し飛び、愛らしい笑顔が溢れてくる。  
「はい!ああ……早く智久クンにおチ○チンを挿れてもらいたいです……」  
「真奈美ちゃんはまだ処女だもんね」  
「智久クンにあげるんだって、ずっと前から決めてました」  
「羨ましいね。こんなに可愛い女の子の処女をもらえるなんて、智久くんも幸せだよ」  
「ああ……ありがとうございます。ちゅ……ちゅっちゅ……」  
真奈美は嬉しくなって、素敵な事を教えてくれた若先生のために、心を込めて奉仕を始める。  
何度もキスをして、頭を振って、若先生が気持ち良くなってくれるために一生懸命になる。  
真奈美に足りないのは自信だった。  
それさえあればつぐみにも負けない。  
そうさせたのは若先生ではなく、真奈美の大好きな少年だった。  
若先生はきっかけを与えたに過ぎない。  
なぜならば真奈美には雌犬になる素質が初めから備わっていたのだ。  
 
「智久くんにはなんてお願いするんだい?」  
「え…………私の処女を貰ってください……って」  
真奈美は幸せそうに頬を桜色に染め、目の前に大好きな少年を思い浮かべて答える。  
「それだけじゃ駄目だよ。はっきり言わないと伝わらないよ」  
「は、はい。あ、あの……私とセックスしてください。フェラチオだって出来るんです。  
 智久クンの大っきいおチ○チンをお口でじゅぽじゅぽおしゃぶりして、美味しいミルクを飲ませてくださいって言ます」  
真奈美は陶酔した目で恥ずかしい言葉を何度も口走り、幼子が大好きな父親に話すみたいに、嬉しそうな顔をしてなんでも打ち明ける。  
「それからそれから……アナルセックスだって出来きます!」  
「そうだね。真奈美ちゃんのお尻の穴、気持ち良かったよ」  
「そんな……若先生のお陰です。私、智久クンのためなら何だって出来ます、頑張りました。  
 中学生のお別れの時、智久クンが頑張れってメッセージを残してくれたんです……  
 だから私、頑張れたんだと思います……智久クンが喜んでくれるために……だから……」  
「だから?」  
「智久クンのおチ○チン、私のおマ○コに挿れてください!」  
まだ誰の侵入も許していない聖なる地は、来るべき日を想像してちゅくりと蠢いた。  
 
◇  ◇  ◇  
 
ついにつぐみの夜勤の日が回ってきてしまい、真夜中の病院に少年も付き合わされてしまった。  
かくいう少年もまたこの日を待ち望んでいた。  
噂の幽霊騒ぎに興味があり、その真相を突き止めようとして非常灯と月明かりしかない廊下を探検する。  
ちなみにつぐみは怖くて着いて来ていない。  
「つぐみさんには困った物だ」  
もし一緒に来たらどこか適当な部屋でHをしようと思っていたのだが、当てが外れてしまった。  
だが面白い事に幽霊に関する情報が手に入った。  
この病院には地下室があるんだって―――  
いかにもな場所を聞いて意気揚々と地下室を探すのだが、肝心の地下に降りる階段が見つからない。  
「う〜ん、ガセネタかな……」  
困り果てて窓の外を見た時、明かりが点いている部屋があった。  
「あの辺はまだ見てないな……」  
気になった少年はその部屋に向かった。  
 
廊下を歩き、階段を降り、目的の部屋の前で立ち止まる。  
その部屋は若先生の私室であった。  
物音は無く、室内に気配は感じられない。  
中に入ろうか考えあぐねていると、突然後ろから本人に声をかけられた。  
「あれ、智久くんじゃないか」  
「わ、若先生……」  
「こんな時間に何をしているんだい?」  
面会時間はとっくに終わっているのに若先生はいつもと変わらなかった。  
 
「まったく槇原君もしょうがないな」  
結局少年は若先生の私室に招かれ、怒られた。  
その原因がつぐみだと聞くと今度は若先生が苦笑してしまった。  
コーヒーを少年にも淹れて、話を聞きながら若先生はコーヒーを啜る。  
そして話が幽霊騒ぎに移ると、今度は声を出して笑った。  
「幽霊騒ぎ?……っぷ、あははは」  
「な、何がおかしいんですか」  
「ごめんごめん。あれは幽霊じゃないよ」  
怒る少年を手で制していてもまだ笑いは止まらない。  
その笑い方がどことなく変なのに少年は気づいた。  
昼間の若先生と印象が違うのだ。  
「知っているんですか?」  
「うん。なんなら見てみるかい、キミの言う幽霊の正体を」  
若先生は微笑みながら誘う。  
警戒はしていたが幽霊の正体を知りたかった少年は考えた末、その誘いに乗る事にした。  
何よりも若先生の笑い方が気になる。  
誰かに似ている気がして頭から離れなかったのだ。  
 
若先生の後についていき、階段を降りる。  
その階段は初めて見た物で、地下へと続く階段であった。  
この病院には地下室があるんだって―――  
噂話に尾ひれがついて出来ただけなのか、それとも違うのか、地下室の話を思い出した。  
「この病院には地下室があるんだけど長い間使われてなくてね、倉庫代わりにしているんだ」  
夏なのに地下の気温は低く、ひんやりとしていた。  
目の前に伸びる廊下は停滞した空気と薄暗さで、どこまでも伸びているような錯覚に陥る。  
そこを若先生が先に歩き、見るからに厳重なドアの前に立った。  
重苦しい雰囲気に圧されて少年は無意識に後ずさる。  
「怖がらなくていいよ。幽霊なんていないんだから」  
暗くて良く見えないが、恐らく笑っている。  
少年の警戒心が強まった時、微かに物音が聞こえた。  
物音というよりも声―――それも女の声であるのに気づくと若先生は明らかに笑った。  
「聞こえたようだね。中に入って確かめてみるかい?」  
試すように聞く。  
少年は躊躇したが、勇気を出してドアのノブを握った。  
「さあ、キミの目で真実を確かめるんだ」  
神の代弁者のように、少年を新たな世界への扉に立たせる。  
女の声に聞き覚えがある事や、声に熱が帯びているのに気づいていても、少年は確かめずにはいられなかった。  
在りえない―――それだけを願いながら、少年はこの閉じた世界の扉を開けた。  
 
「あ……あは、はは……」  
女がいた。  
それもただの女ではなかった。  
全裸のまま床に這いつくばり、尻を高く上げて男性器を模した器具を菊座に挿れ、自分の手で器具を動かして身悶える雌犬。  
「す、杉原……」  
「あンッ……き、気持ち良いよぉ……」  
ゴーグル型のヘッドマウントディスプレイとヘッドホンをさせられ、真奈美は外界と完全に遮断されていた。  
だから扉を開けたまま愕然としている少年に気づけなかった。  
 
真実はいつだって残酷である。  
寂しい病室で儚げな笑顔を浮かべていた女の子が、こんな冷たい地下室の中で雌犬に変えられていたなどと誰が想像出来ただろうか。  
排泄器官で感じている真奈美が目の前にいるなんて少年には信じられなかった。  
「ああ、誤解しないで欲しいんだけどね、これは真奈美ちゃんが望んだ事なんだ」  
「あ……あんたって人は!」  
人の仮面を被った悪魔に少年は掴みかかったが、若先生は涼しい顔のままだった。  
それだけではなく薄ら笑いを浮かべ、取り憑かれたように快感を貪っている真奈美を指差す。  
「ほら、聞いてごらんよ。真奈美ちゃんが何を言っているのか」  
血が逆流しそうなほどの怒りを感じていたが、少年の耳に真奈美の声が届く。  
小さくか細い声だったが、雌犬にまで堕ちた真奈美が何を言っているのかを聞いてしまった。  
怖くて信じられなかったが、少年は戦慄した顔のまま真奈美に振り返る。  
「智久クン、智久クン、智久クン、智久クン、智久クン」  
白痴じみた顔で少年の名前を繰り返す。  
本人がすぐ近くにいるのに、低い羽虫のような音を鳴らすバイブレーターを菊門の奥深くに呑み込み、少年を想いながら肛門自慰の虜に成り果てていた。  
「杉……原……」  
がっくりと膝が折れ、目の前が真っ暗になる。  
思い出すのは真奈美の笑顔ばかりで、心のどこかではまだ彼女が好きだった。  
それなのに―――  
「真奈美ちゃんはキミの事が好きなんだ。だからつぐみ君に負けないよう頑張ってね」  
「つ、つぐみ……君?」  
聞き逃してしまいそうなくらい小さな違いだったが、若先生がつぐみを名前で呼んでいるのに気づいた。  
ショックで打ちひしがれているはずなのに、少年の頭の回転は早かった。  
「今、真奈美ちゃんが見ている映像を見せてあげるね」  
若先生がスイッチを押すとモニターに映像が現れた。  
男と女がセックスに狂う映像で、それは少年とつぐみであり、つぐみを縛り上げてベランダで犯しているこの映像はまさしく昨夜した事だった。  
「そんな……」  
これを眼前に映しながら真奈美はオナニーをしているのだ。  
少年はつぐみを犯しているのに、真奈美はつぐみと自分をすり替え、自分が犯されているのを想像しているのであろうか。  
そしてこの時の少年の貌は誰かと似ていた。  
 
「キミは知らなかったかもしれないけど、隠しカメラで撮っていたんだ。つぐみ君が仕掛けてね」  
「ごめんね、智久くん」  
「つぐみさん……」  
つぐみが現れた時、少年は総てを理解してしまい、絶望の淵に落とされる。  
だが、それも僅かな時間だった。  
酷く冷静で、絶望の淵に落とされるのを客観的に眺めるもう一人の自分がいた。  
「僕が好きだっていうのは……あれは嘘だったんですね」  
「ごめんなさい。真奈美ちゃんには幸せになって欲しいの」  
これはつぐみの本心であった。  
長い間、真奈美を見てきたからこそ、心からそう思える。  
少年は少しの間、つぐみをじっと見つめていた。  
それを裏切られたショックだと勘違いしたのか、若先生が少年を慰める。  
「そんなに悲観する事はないよ。キミには真奈美ちゃんがいるじゃないか」  
肩に手を置いて、真奈美と呼んだ雌犬を指差す。  
彼女はまだ夢の中にいた。  
そんな真奈美を見て少年の口許が邪悪に歪む。  
「え……ああ、ちょっとボーっとしてました」  
「大丈夫?」  
心配そうにつぐみが聞くが、少年は至って冷静だった。  
邪悪な貌は影に潜んでしまったが、常識という仮面を外せばいつでも表に現れる。  
なぜならばそれが少年の本質だからだ。  
「ええ、もう少し落ち込むかなって思ってたんですけど……意外と平気ですね。それに」  
真奈美を見る。  
「僕には杉原がいるから」  
お見舞いの時、真奈美に見せる笑顔と同じ顔で少年は微笑んだ。  
一つだけ違うのは、若先生と同じように口許を歪ませている所だけだった。  
そして少年は真奈美の元へ歩き、閉じた世界を創り出すゴーグルを取ってあげる。  
「あ……あれ、智久クンがいる……なんで?」  
「こんばんは、杉原」  
映像ではなくて本物の少年を前にしても、自分が裸なのに真奈美は少しも恥ずかしがらない。  
それどころか惚けた顔をして少年に擦り寄ってくる。  
弛緩した躯をゆっくりと動かす真奈美を少年は優しく見守る。  
 
「あ、あの……私、智久クンに言いたい事があるの」  
「何?」  
「その……」  
虚ろな目をしているのに、少しだけ恥じらいが現れる。  
少しだけ躊躇って、それでもはっきりと自分の気持ちを大好きな少年に伝える。  
「私の処女、貰って下さい」  
「杉原ってまだバージンなの?お尻の穴にこんなのを突っ込んでいるのに?」  
「は、はいいいいイイ!智久クンにあげるんだって、私、ずっと前から決めていたの!」  
菊座から出ているバイブレーターを押してあげると、真奈美は悦びながら答えた。  
更に少年の手で気持ち良くなっているんだと考えるだけで、その悦びは何百倍にも膨れ上がるのであった。  
そして少年の手が離れ、脳髄を融けさせる快楽が止まった。  
もう終わりなのと上目遣いで見上げると、少年は昔と変わらない笑顔で自分を見ていた。  
少年との距離が近すぎて、少年の瞳に自分が映っているのが見えた。  
今はつぐみではなく、自分を見てくれている。  
それだけで胸がいっぱいになり、スキスキスキスキスキ―――と少年への想いが泉のように湧き上がる。  
「私とセックスして……」  
ずっと口に出来なかった気持ちを少年に伝える事が出来た、やっと伝えられた。  
一度伝える事が出来たのだから、抑えていた気持ちが一気に膨れ上がり、真奈美は何度も自分の気持ちを少年に伝える。  
「智久クンが喜んでくれるためにフェラチオの練習もしたの。最初は上手に出来なかったんだけど、今ならディープスロートだって  
 イラマチオだって出来るの。咽の奥におチ○チンが当たっても吐き出さなくなったんだよ。それからアナルセックスも出来るのよ。  
 お尻の穴を拡張してもらって……私、頑張ったの。智久クンに相応しい女の子になるんだって」  
「僕に相応しい?」  
「うん。智久クンの専属ペットになるために私、調教してもらったのぉ」  
陶酔した顔で真奈美は足元に縋り付き、雌犬と化して飼い主に擦り寄り、尻尾の代わりに瑞々しい尻を振る。  
「一生懸命ご奉仕するから……」  
真奈美には少年しか見えていない。  
少年に忠実な雌犬になるためにこれまで頑張ってきたのだから当然だった。  
真奈美は自分の思いの丈を声に乗せて叫んだ。  
「智久クンのおチ○チン、私のおマ○コに挿れてください!」  
そして少年は真奈美の想いに応える。  
 
「じゃあ準備をしてくれるかな、真奈美」  
「はぁぁぁ……はい!」  
苗字ではなく名前で呼んでもらえて、真奈美はそれだけで絶頂してしまいそうだった。  
 
「失礼します」  
少年の前に跪いた真奈美はベルトを外してジーンズを下ろすと、ブリーフを下から押し上げる剛直に目が釘付けになる。  
この中にずっと待ち望んでいたものがあると思うと、胸がドキドキしっぱなしだった。  
そして壊れ物でも扱うように大切に大切にブリーフを下ろすと、中からかちかちに硬くなった肉棒が現れた。  
「はぁぁぁ……」  
急角度を描き、脈動する逞しさに感動して、思わずため息が出る。  
蒸れた匂いを肺の中いっぱいに吸い込んで幸せな気分に浸る。  
映像で見たものよりもずっと素敵で、真奈美は我慢出来ずにいきなりバキュームフェラを始めた。  
「んぶっ、んぶっ、んぶっ……」  
歯を立てないように唇で食んで高速で頭を動かすと、しっとりと汗で濡れた肌に髪が貼り付き乱れる。  
頬がこける程に吸い付き、口の中ではねっとりとした舌を熱い肉棒に絡ませる。  
口腔を擦り、咽に当たり、唇の端から空気が漏れて下品な音をさせてもなおバキュームを続ける。  
そうする事で自分がとても厭らしく淫乱に見えて、喜んでくれると思ったからだ。  
真奈美は今まで習った事を全て出し切って、少年を気持ち良くさせようと一生懸命だった。  
「ん……気持ち良いよ、真奈美」  
「あはぁ?ありがとう……」  
大好きな少年に気持ち良いと誉められ、頭を撫でて貰えた真奈美は嬉しくて舞い上がりそうになった。  
しかし少年はまだ絶頂の証である精液を吐き出しておらず、雌犬は飼い主のために口唇奉仕を続けなければならないのだ。  
それにご褒美である熱い御主人様のミルクが飲みたくて、躯を火照らせながら奉仕を再開させた。  
智久クンが喜んでくれてる……イク時ってどんな顔をしてくれるのかな……気持ち良いって言ってくれたからご褒美いっぱいくれるよね……  
うっとりとした顔で目を閉じて、肉棒を咥えながら真奈美はすぐ近くの未来に胸を膨らませる。  
自然に頭をスライドするペースが早まり、少年は真奈美の性技に驚かされた。  
「ちょっと待って、真奈美」  
突然奉仕を中断させられた。  
少年に気持ち良くなって欲しかったのに、真奈美は不安でいっぱいになって泣きそうになる。  
「ど、どうしたの……もしかして私、いけない事……した?」  
「ごめん、真奈美のお口が気持ち良くてもうイっちゃいそうなんだ」  
少年は少し恥ずかしそうに、不安な真奈美の頭を撫でて慰めてあげた。  
 
(イきそうだったんだ……お口に出してくれれば良かったのに……)  
正直に少年が言ってくれたお陰で、真奈美は照れながらもとびっきりの笑顔で応えた。  
しかし、雌犬なんだから御主人様が精神的にも肉体的にも満足して頂けないといけないと思い直す。  
(私の身体のどこにミルクを発射するかを決めるのは私じゃなくて、御主人様なのよ……)  
従順な雌犬の真奈美は反省して、改めて少年に聞き直す。  
「お口に出しますか?それとも顔にしますか?私のどこに出しても構いません。おっぱいでもお尻でも……あ」  
つい先程、決定権があるのは少年だと思い直したのに、どうしてもお願いしたい事が出来てしまった。  
「どうしたの真奈美?」  
自分を見下ろす優しい飼い主を前に、少しだけ期待を込める。  
真奈美の蜜壷は肉棒を挿れてもらいたくて、フェラチオをしている最中からずっと濡れていたのだ。  
「……おマ○コにしますか?お、お好きな方をお選びください」  
少年はくすりと笑い、真奈美がおねだりしているのがわかる。  
全身からシテシテ光線を発している真奈美の姿がとても可愛かった。  
「じゃあ、せっかくだから真奈美のおマ○コに出してあげるね」  
「あぁ……ありがとうございます!」  
頬を染めて愛らしい笑顔を見せる。  
こんな顔をされてはお願いを聞かないわけにはいかない。  
ベッドに寝かせると、真奈美は自分から足を開き、無毛の雌壷を露わにした。  
「へえ、真奈美って生えてないんだ」  
「あの……恥ずかしいから、あんまり見ないでください」  
「恥ずかしいのはそっちじゃないんじゃないかな。だって真奈美のここ、もうびしょびしょだよ」  
早く挿れて欲しくて、甘い蜜が次々と溢れていた。  
「堪え性のないおマ○コだ。でもこれならすぐに挿れてあげられるよ」  
「は、早くぅ……切なくてもう待てません」  
「わかってるよ。これがないと生きていけない僕専用のペットにしてあげるね」  
少年は腰を前に動かして真奈美の中に入っていった。  
 
「く……ああんっ、は、はぅぅぅ……」  
少年に処女を奪われ、破瓜の痛みすら快感に変わる。  
夢にまで見た最高の幸せを真奈美は自分の躯の中に感じている。  
うねうねの肉ひだで少年のカタチを確かめ、中を掻き分けられる甘美な快感に震える。  
少年を抱きしめ、何度も名前を呼びながら、産まれてきた事を感謝した。  
「いい、いい、いい、気持ち良いの!智久クンのおチ○チン、美味しいよお!」  
「真奈美の中もすごく気持ち良いよ……待っててね、いっぱい出してあげるから」  
「うん!早く飲ませてください、温かいホットミルク……ずっと待ってたんです、いつ飲ませてくれるか楽しみに待ってたんです!」  
真奈美の足が絡みつき、少年を奥へ奥へと導く。  
躯の奥深く、子宮の中に射精して欲しくて躯が勝手に動いている。  
少年も真奈美の中が予想以上に気持ち良くて、早く真奈美に射精したくて腰遣いが早くなる。  
「智久クン、智久クン、智久クン、智久クン、智久クン……」  
緩んだ口は大好きな少年の名前を繰り返す事しか出来ない。  
それでも名前を呼んだ分だけ幸せな気持ちになれて、小さな躯が絶頂への階段を昇っていく。  
膣内の肉壁は精液が欲しくて蠕動を繰り返し、少年を射精へと導いていく。  
「ま、真奈美……!」  
「智久クン、私も、……ああ、あああああぁぁ!」  
「んあああ!」  
躯を仰け反らし、目の前が真っ白になった。  
意識が白濁した中、子宮に温かい感覚が広がる。  
それが少年の精液なんだとわかった時、敏感になっていた躯がもう一度跳ね上がり、真奈美は更なる高みへと昇り詰めた。  
 
「真奈美」  
それだけで分かったのか、真奈美はのそのそと躯を動かし、少年の股間に顔を埋める。  
さっきまで自分の膣内に入っていた肉棒を舐めて綺麗にする。  
愛おしくて、可愛くて、幸せな気持ちにさせてくれる少年の生殖器を丹念にしゃぶる。  
いじらしい姿を見せる真奈美に少年は笑顔を向けながら髪を梳いてあげた。  
 
「どうだった、真奈美ちゃんの躯は」  
「ええ、最高でしたよ。まさかあの真奈美がこんな事までしてくれるなんて……とてもじゃないけど想像出来ませんでした」  
「キミが好きだからこそ、ここまで頑張れたんだ。真奈美ちゃんを褒めてあげるんだね」  
改めて股間を見下ろすと真奈美はまだ嬉しそうにおしゃぶりを続けていた。  
肉棒を扱う舌遣いも唇も、口腔の感触も心遣いも、全てが申し分ない。  
自分の事を想い続けてくれた女の子が自分専用のセックスペットになってくれたのだから、不満なんて一つも無かった。  
「もし良ければつぐみ君も好きにしてくれたまえ。キミが望む時にどこだって命令に従うよ。つぐみ君は僕の奴隷なんだ」  
「随分気前がいいんですね」  
真奈美の咽をくすぐりながら話す。  
当然真奈美は目を細めて、気持ち良さそうに咽を鳴らす。  
もう一つの手は真奈美の尻穴へと伸びていく。  
「何、キミは僕と同じだよ。僕には分かるんだ。キミなら僕の趣味を理解してくれる」  
「若先生の趣味?」  
「ああ……キミならすぐに分かるよ」  
暗い暗い地下室の中で二人は同じように黒い微笑をたたえていた。  
 
 ◇  ◇  ◇  
 
少年と真奈美は若先生とつぐみに連れられて、某市のホテルへとやってきた。  
そこの1フロアを借り切って行われるパーティーに参加するため、少年は正装に着替えていた。  
少年はドレスを身に纏った真奈美をエスコートしながら、若先生たちの後に続く。  
セキュリティが厳重で、要所要所に黒服のガードらしき人間が配置され、今日行われるパーティーが外界と完全に遮断された物なのだと伺える。  
フロントからこのフロアまで案内されるにしてもそうだ。  
フロントで若先生が招待状を見せると奥からこのホテルの支配人が出てきて、その支配人が自ら案内している。  
そして両サイドを黒服が固める扉の前に立ち、仰々しく頭を下げる。  
「ごゆっくりお愉しみください……」  
そこはまさに別世界だった。  
銀幕の輝く特設ステージではドレスを着たままの女が何人もの男に躯を弄られ、陶酔しきった貌で声を上げていた。  
いくつも配置されたテーブルでは紳士淑女が人目を憚らず抱き合い、わざと周りに聞こえるように艶声を上げて愉しんでいる。  
互いのパートナーを交換し合い、名前も知らない人間の淫具で喘ぐパートナーを眺め、倒錯した性行為を愉しむ者までいる。  
肉欲の饗宴ともいえるパーティーだったが、若先生とつぐみとも関係を持っている少年と真奈美には、これが異常には見えなかった。  
非日常が日常に変わるくらい爛れた関係に溺れ、若先生の言う『人とは違う趣味』を少年は理解してのめり込んだのだ。  
 
「……すごいパーティーですね」  
少年にエスコートされていた真奈美が腕にしがみつき、控え目に育った胸を押し当ててきた。  
声には澱んだ劣情がすでに込められており、物欲しそうに咽を鳴らしながら、すぐ近くで愛し合う牡と牝を見ている。  
真奈美もまた少年のパートナー―――セックスペットとして『人とは違う趣味』に溺れた。  
目の前で少年がつぐみとまぐわう光景をたくさん見せられ、自分も若先生に気持ち良くされる姿を存分に見てもらった。  
堕ちるまでさして時間はかからなかった。  
「ねえ、智久クぅン……」  
濃厚な性臭に中てられ、少年に上目遣いで媚びる。  
ぐいぐいと胸を押し付け、膝丈までのフレアスカーを揺らして「ここでして」とおねだりしているのだ。  
少年は丸みの帯びた尻たぶを撫でてそれを軽く窘める。  
「まだダメだよ。ほら、若先生が呼んでいる」  
若先生は特設ステージに近いテーブルで老紳士に挨拶をしていた。  
温和な感じのする老紳士で、どこかで見覚えのある顔だった。  
確か政治家の―――とここで詮索はやめた。  
ここでは素性などどうでもいいのだ。  
「すいません若先生。なんか圧倒されてしまって……」  
「いや、いいんだよ。何しろ初めてだからね。それよりもこちらは……」  
若先生に紹介された老紳士は少年が予想した通りの人物だった。  
けどここでは同じ趣味を持つ同好の志であり、特有の威圧感は無かった。  
「初めまして、お若い人たち。座りながらで申し訳ないが……」  
股間に和服姿の女性が貌を埋めていたせいで老紳士は座ったままだった。  
長い髪をあげ、眼鏡をかけた女性は和服に身を包んでいるにもかかわらず、その躯のボリュームはとても豊かに見えた。  
「そちらのご婦人は初めてですよね。以前は別の女性でしたはず」  
「最近引き取った娘でね、なんでも実家の呉服屋が潰れて、行く当てがなかったらしい。この娘は妹で、ステージにいるのが姉なんだ」  
「姉妹ですか。それはお優しいことで……」  
若先生と老紳士が談笑しているのを聞いていたのか、和服姿の女性は嗚咽を漏らしながら一筋の涙を流した。  
すぐ近くの特設ステージではワインレッドのドレスを着た姉が吊るされ、幾人もの男に躯を嬲られている。  
黒革の目隠しをされているせいで感覚が鋭くなっているのか、少年たちがこのパーティールームに入った時からイきっぱなしだ。  
まだ抵抗のある妹とは違い、この状況を心の底から愉しんでいるのが伺える。  
ゆったりとしたスカートの中に潜った男が何をしているのか、少年には容易く想像出来た。  
 
「ま、またイク!イっちゃうよ……イ、イクぅぅぅ!!」  
腰を戦慄かせて姉は何回目か数えるのも空しいほどの絶頂を味わった。  
躯が震え、背中を大きく仰け反らせ、自分の飼い主と妹に聞こえるほど大きな声で叫ぶ。  
姉は自分が最高に輝いている姿を見て欲しかった。  
「ぬおっ!」  
その瞬間、老紳士が妹の口内に放ち、妹は咽奥でそれを受け止め、眉を顰める。  
ごつごつした手が頭を押さえているせいで飲み下すしかなく、こくこくと咽を動かして大量の精を胃の中に流し込んだ。  
「こふっ……こほ……」  
「ふむ、姉にはまだまだ及ばないが、なかなか具合が良かったぞ」  
「あ、ありがとう……ございます」  
それで終わりではなく、後始末が待っている。  
雌犬としての調教をきちんと受けているようで、唾液と精でまみれたグロテスクな肉茎を舌で丹念に清める。  
涙を溜めながら男根奉仕に没頭する和服美人に、少年も真奈美も惚れ惚れする。  
特に男に尽くす雌の姿に真奈美は魅入っていた。  
その姿に自分を重ねると、緩んだ口からほうっと熱い吐息が漏らしてしまう。  
(ああ……早く智久クンのおチ○チンが欲しい……)  
躯も疼いてドレスの上から自分の花園を撫で、フレアスカートの中は甘い蜜の匂いで満ちていく。  
少年も真奈美の変化に気づいていた。  
折れてしまいそうな細い腰に廻した手で真奈美を引き寄せる。  
当然真奈美は期待に満ちた目を嬉しそうに少年に向け、甘えた声を出す。  
「智久クン……」  
少年に抱き寄せられた真奈美は、悦に浸りながらドレスとお揃いの純白の手袋のまま少年の逞しい肉棒を愛でる。  
少年の躯を知り尽くしている真奈美の柔らかいタッチは控え目だったが、その気にさせるには十分だった。  
それを眺めていた老紳士の頭に妙案が浮かんだ。  
「可愛らしいお嬢さんじゃないか。どうかね、ワシと一緒に愉しまないか?」  
「よろしいのですか?」  
「もちろん歓迎するよ、お若いカップル殿」  
 
断る理由の無い少年は老紳士の申し出を受け、真奈美も少年に倣ってスカートを摘んで軽く会釈をした。  
そして真奈美は老紳士の隣に座り、太めの身体にしな垂れ「よろしくお願いします、おじさま」と挨拶をする。  
純白の手袋をしたしなやかな手を、隆々と天井を向いたままの剛直に伸ばしながら……  
「僕たちはこの方とご一緒しますが、若先生はどうします?」  
「キミたちは先生と愉しんでいきたまえ。僕たちはまだ挨拶が済んでいない人がいるからね。では先生、失礼します」  
「ああ、こちらも碌に相手が出来なくてすまなかったね」  
老紳士は真奈美の肩を抱きながら若先生に手を振る。  
肩を抱かれている当の真奈美はすでに周りが見えておらず、肉棒をしごくのに夢中だった。  
改めて少年がテーブルに着くと、身なりを整えた和服姿の女性がすでに待っており、ぺこりと軽く会釈をしてきた。  
落ち着いた色に染めた紬を着ており、節目がちの面影が少年の被虐心を刺激して、思わず黒い微笑みを浮かべてしまう。  
老紳士はそんな少年を頼もしそうに目を細めて眺めていた。  
「あらおじさま、そちらの方たちは?」  
ステージが終わったのか、姉が戻ってきた。  
その顔はまだ紅潮したままで全身から雌のフェロモンを放つ。  
お色直しをしてきたのか、ステージで着ていた赤ではなく、涼しげな水色のドレスだった。  
そして一番目を引いたのは真奈美よりも短く、少し屈めば中身が見えてしまいそうな程、深く切り込まれたスカートだった。  
「おお、ステージの方も終わったか。なら改めて紹介しようか」  
老紳士が促すと姉は濡れた目を向ける。  
まるで少年を値踏みするように視姦して、しかしすぐに愛らしく可愛らしく微笑んで挨拶する。  
「初めまして、姉のユカリです」  
「……妹のミユキと申します」  
姉の後、和服姿の女性はミユキと名乗った。  
どこかで聞いた事のあるような名前だったが、これから彼女を抱くのだから少年の興味はすぐに消え失せた。  
「初めまして智久です。それから今、先生のお相手をしているのが私のパートナーの真奈美です」  
「ま、真奈美です……よろ、よろしく、お願い……致しますぅ」  
「こちらこそよろしくね、真奈美ちゃん。おじさまの手つきって厭らしいでしょ。私とミユキを毎晩その手で啼かせてくれてるのよ」  
「はいッ、イイ……おじさま……そ、そんなにコリコリしちゃダメ……やぁ、摘まないでぇ!」  
真奈美は老紳士の愛撫を受けて自己紹介もままならなかった。  
挨拶が終わると姉のユカリが少年にソファを勧めた。  
そこは真奈美が老紳士に嬲られる様を見るには絶好の特等席で、少年が腰を下ろすと姉妹は両サイドに座った。  
 
姉が少年に口付けすると、妹は隣に座りながら股間に手を伸ばす。  
硬くなった肉棒を取り出し、躊躇う事なく口に咥える。  
その業は老紳士に鍛えられており、少年を唸らせた。  
頭を押さえ、もっと奥へと突き上げても吐き出す事はなく、咽奥の温かい柔肉で受け止める。  
情熱的な口唇奉仕は精神的にも肉体的にも少年を心行くまで満足させた。  
「どうですか、妹のお口は」  
「すごくいいよ。僕と同い年なのによくここまで……」  
「くす……だって妹はお口専用の性処理ペットですもの」  
姉の言葉を聴き、ミユキの目が哀しくなる。  
「お口専用って……そこしかまだ使ってないの?」  
「ええ、ですから妹はまだ処女です。前も後ろも……」  
驚いた少年に姉はさも面白そうに笑う。  
その意味は二人の話を聞いていた老紳士が答える。  
「この娘の処女を散らす相手を探していてね。どうだね、ミユキの処女を貰ってはくれんかね」  
先程の値踏みをする視線や笑顔はそのためだった。  
少年の驚きは次第に薄れ、笑顔で老紳士の申し出に応えた。  
その時、少年の肉棒は期待で膨れ上がり、咥えていたミユキは直に感じ取った。  
(この人が私の処女をもらってくれる……)  
契りを結ぶ相手が少年だった事にミユキは心の底から感謝した。  
「私でよければ喜んで」  
「そうか、それは良かった。ミユキ、おまえからもお願いして差し上げろ」  
「はい……智久…………さま、不束者ですが、どうかよろしくお願い致します」  
ミユキは新婚初夜の妻の如く、その場で三つ指を付いて少年に頭を下げた。  
まだ乙女のミユキを気遣い、少年はどこか別の部屋へと誘おうとしたが、ミユキは首を横に振って丁寧に断った。  
「お気遣い有難いのですが、ここで構いません。おじさまの前で私を女にしてください」  
ミユキはふかふかのソファに背中を預け、足を広げると、褄下の部分が広がる。  
吸い付くほど白い太腿が現れ、さらにスリットは広がっていく。  
白い足袋を履いた両足をソファの上に乗せるとM字を描き、生え揃ったヘアが晒された。  
無論、下着など無粋な物は一切身に着けていなかった。  
 
「さ、智久様。どうぞおあがりください」  
妹の両膝を押さえた姉のユカリが誘う。  
後ろでは早くも真奈美を貫いている老紳士がにこやかに笑いながら少年を見ている。  
下半身だけ着物を肌蹴させた和服美人というのも画になり、しばし魅入っていた少年は自らの手で肉棒を取り出した。  
急角度を描いた若茎は逞しく、ユカリを、そしてミユキをため息が出るほど感動させた。  
「それではいきますよ、ミユキさん」  
「は、はい……どうか存分に私の躯をお愉しみくださいませ」  
すでに準備の整っていた花弁を押し広げ、肉棒が蜜壷に入った。  
「は……あああッ……い、いた……」  
身を引き裂く痛みにミユキが悲鳴を上げた。  
しかし破瓜の痛みよりも女に成れた嬉しさが上回り、次第に女の悦びに目覚めていく。  
もともと老紳士の手によって開発されてきた躯は男を受け入れた事により、スイッチが入ったかのようにミユキを急速に女へと変えていった。  
「ひ……はぁぁ……あああッ、駄目、智久様……わたし……ッ!」  
ミユキは躯の芯からくる快楽に戦慄き、少年の背後に手を回し、指がタキシード越しに背中にめり込む。  
少年の腰遣いは優しく、時には荒々しく女を責め立て、絶頂へと導いていく。  
そして膣内の肉壁を収縮させたミユキは、少年の樹液を搾り取るようにして、初めてのセックスであるにもかかわらず達した。  
 
「キミを相手に選んで正解だったよ」  
性行為を終え、姉と妹を侍らす少年を、老紳士は頼もしそうに見ていた。  
その老紳士も対面座位で真奈美を貫いている。  
特に圧巻だったのが異形とも言える肉茎で、真珠まで埋め込まれていた。  
邪悪な凶器で真奈美を一体何度絶頂させたのだろうか。  
それでもまだ足りないのか、真奈美は貪欲に老紳士の上で腰を振る。  
「やだッ、いやぁぁぁ……またイっちゃうよぉ……ご、ごめんなさい智久クン……  
 ま、またおじ様の、イボイボのおチ○ンチンで……………………イ、イクぅぅぅ!!」  
老紳士にしがみ付き、パートナーである少年の視線を感じながら真奈美は果てた。  
老紳士もまた同時に果て、結合部から白い樹液がごぽっと溢れる。  
それを見ていた少年は黒い欲望を漲らせ、姉妹の躯を嬲り始める。  
女になったばかりの妹をソファに寝かせ、その上に姉を重ねて、先ずは妹の蜜壷に己の肉棒を挿れた。  
自分の妹が男に貫かれる悦びに喘ぐ姿を見て、姉は愛おしく口付けをする。  
しなやかな手は豊満な双乳を揉みしだき、結合部のすぐ上の女芯を愛し、背徳の姉妹相姦に没頭する。  
「はぁ、はぁ、はぁ……ま、真奈美……」  
少年は老紳士の男根の虜になるパートナーを眺めながら、姉妹を犯すという倒錯した性行為にのめり込んでいた。  
真奈美はふしだらに股を大きく開いて腰を落とし、陶酔した貌で老紳士と濃厚なキスをして愛し合っている。  
果たして何度、その小さな躯に老紳士の精を受けたのだろうか。  
悔しくもあったが、今の真奈美はとても綺麗に感じた。  
自分の知らない貌を持つ真奈美が見せる最高の瞬間を目に焼きつけ、少年は姉妹に大量の精を放つのであった。  
 
――――――END  
 
 

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