「ウフフっ、元気になってよかったね。もうちゃんと上手に飛べるようになったし、さえずりもとってもキレイ」  
「……真奈美」  
「えっ? あ、あの……ごめんなさい」  
 鳥たちと話すことに夢中になっていて、真奈美は僕の存在を忘れていたようだ。  
 ちょっと寂しいけど、僕は真奈美のそんなところも大好きなんで不満はない。  
 
 ここは杉原家が所有する山林だ。僕たちは一緒に山を散策している。  
 高校を卒業した真奈美は新年度から東京で暮らすことになった。  
 もちろん真奈美の体調のことを考えれば環境のいい高松で過ごすのがいいはずだ。  
 それでも真奈美は東京に出てくることを望んだ。当然ご両親は難色を示した。  
 最終的には東京に真奈美の叔母さんが住んでいることでご両親も折れた。  
 それだけ真奈美の決意が固かったからだろう。  
 そして僕は真奈美を迎えに来た。  
 前日に高松入りし、昨夜は真奈美のご両親に挨拶も済ませた。あとは出発するだけ。  
 空港には夕方行けばいい。それまでまだしばらく時間はある。  
 『東京に行ってしまえばしばらくは高松に戻ってくることもないだろう。だから小鳥さんに挨拶がしたい』。  
 そんな真奈美の申し出を受け、僕たちは山に登った。  
 そうして、真奈美が馴れた小鳥たちと楽しそうに語らっているのを見ていたんだ。  
 
「この前真奈美が言ってた『小鳥さん』って……」  
「はい。この子たち、前に巣から落ちてケガしていたのを私が助けてあげたんです」  
 言いながら真奈美は小鳥のくちばしに指を持っていく。  
 それをついばむようにして小さく鳴く小鳥に真奈美が目を細める。  
「それで、今でもこうして時々私の家のバードフィーダーに遊びに来てくれるんです」  
「なるほどね」  
「かわいい……でしょう?」  
 僕の同意を求めるように、小首を傾げて真奈美が聞く。  
 小鳥もそうだけど、そんな真奈美もとってもかわいいと思う。  
「うん……」  
 真奈美もだよ。そう言いかけて、そこは飲み込む。  
 そんな僕の声の微妙な調子を感じ取ったらしく、真奈美がちょっとだけ怪訝そうな顔をする。  
 ……昔からこういう気配を読むのが真奈美は上手かったっけ。  
 だけど真奈美は何もなかったかのように少し離れたところの木を指差す。  
「あっ、ほらっ、あそこに大きなムクの木が見えるでしょう? あの木の梢にこの子たちのねぐらがあるんです」  
 腰をかがめる。そして真奈美が指した方角を見る。自然と僕たちの距離が縮まる。  
「あ、あれか……。優しいんだね、真奈美は」  
「えっ? 私がですか? あ、あの……そんなことないです」  
 頬を染めて真奈美がうつむく。だけどすぐに顔を上げると、  
「ただ、この子たちを助けることで私、自分にもできることを見つけたような気がするんです」  
 そう力強く言った。  
「うん」  
「私は空を飛べなくたって、飛ぶ手助けはできるはずだって」  
 そこまで言って、真奈美の顔にまた朱が差した。  
 そして僕を見上げて言葉を継ぐ。  
「あっ……でも本当はこのこと、昔、あなたが私に教えてくれたんですよ」  
 そうだ。中学3年のとき、僕は真奈美にそう言った。  
 あの時からかもしれない。僕が真奈美に魅かれたのは。  
 3年ちょっとかかったけど、その気持ちは今こうして形になり、僕たちは付き合っている。  
 去年の春、真奈美からの手紙をきっかけに僕たちは再会した。  
 あれから一年。真奈美は僕にとって、なくてはならない大事な存在になっていた。  
「真奈美は僕にとって何よりも大切な人だよ。真奈美がいることで僕は元気をもらってる」  
 素直な思いを口にした。だけど真奈美はあわてて言葉を返す。  
「そんな……。あなたがいなかったら私、きっと今でも弱い真奈美のままでした」  
 そして、  
「あなたが勇気をくれたんです。いつも優しく励ましてもらって、私……」  
 かすかに瞳を潤ませ、真奈美が僕に寄り添った。  
 なんだか胸が苦しくなる。切ないような、ドキドキするような……。  
「真奈美……」  
 そんな気持ちに背中を押され、僕は真奈美のあごに指をかけ、心持ち顔を上向ける。  
 そのまま、そっと唇を合わせた。  
 
 背中に回していた手からかすかに真奈美の震えが伝わる。  
 キスは初めてじゃない。緊張や恐怖が真奈美にあるとは思えない。  
 触れあっただけの唇を離す。  
「寒い?」  
 四国がいくら温暖とはいえ、山の上は市街地に比べれば気温だって低い。  
 春のまだ浅いこの時期は、ややもすると少し肌寒い。  
「大丈夫です。……だって、あなたがいるから」  
 真奈美はそう言ったけど、僕はジャケットを脱いだ。  
 そうして後ろから羽織らせる。それから前に回って襟を合わせる。  
「これで大丈夫だね」  
 微笑みかける僕に、真奈美も  
「ありがとう……真奈美、幸せです」  
 はにかんだ笑みを浮かべた。  
 
 もう一度、今度は丁寧にキスをする。  
 頬や首筋に唇を押し当てて吸い、耳たぶをはさみ、甘噛みする。  
 唇をこすり合わせ、髪をなでる。うなじに当てた手を静かに動かす。  
「……ん」  
 小さく鼻を鳴らして真奈美が僕にしがみつく。……感じているみたいだ。  
 だけど唇はまだ開いてない。力は入ってないけど、閉じたままだ。  
「真奈美……」  
 名前を呼んでから唇を重ねた。  
 
 閉ざされた真奈美の唇を舌先で何度かなぞるとわずかに開かれる。  
 その隙に口内にもぐりこませる。  
 舌をからめ、唾液をすする。歯列を数えるように舌を動かし、上あごをこすりたてる。  
「んんっ……」  
 甘い声で真奈美が悶える。  
 腰に回していた手を引き寄せる。僕たちの下半身が密着する。  
 そうしながら体重を預けると、真奈美がひざを折った。  
 
 下草の上に真奈美を横たえ、そのままのしかかった。  
 すでに痛いほど勃起している。興奮も限界近くまで高まっている。  
 剛直を真奈美のやわらかい体に押し当ててるだけで達してしまいそうなほどだ。  
 真奈美が……真奈美が欲しい!  
 射精したい! たぎった欲情を真奈美に受け止めてもらいたい!  
 兇悪な欲望に衝き動かされた。  
「真奈美っ!」  
 スカートをたくし上げ、手をもぐりこませる。  
 ひざに触れ、太もものあたりまで進んだとき、その手が真奈美によって止められた。  
「だ、ダメですっ! ……こ、小鳥さんたちが見ています」  
 泣きそうな顔で僕に懇願する真奈美を見ていると、なんだかいけないことをしている気になる。  
 ……だけども射精の欲求が僕を追い込んでいる。  
「真奈美……ダメ?」  
 直接の言葉にしなくても、僕の声の調子から意味が伝わっているはずだ。  
 恥ずかしい話だけど、セックスできるなら、いや、射精できるならどんなことでもする気になっている。  
 僕の声に含まれた追い詰められた響きを感じ取ったのだろう。真奈美が僕の顔を見た。  
「手で……してあげますね」  
 言うなり、ジーンズの前に手が添えられた。  
 
 はじめて真奈美と結ばれたのは去年の秋だった。  
 お父さんの上京に同行してきた真奈美と、僕たちは男と女の関係になった。  
 真奈美を抱いたあと、宿泊先まで送っていった僕は杉原のおじさんに交際の許可を求めた。  
 隠れてこそこそ付き合うようなことはしたくなかったからだ。  
 それに、真奈美にいい加減な気持ちじゃないことをわかってもらおうと思ったんだ。  
 幸い、僕は杉原家から真奈美の大切な男友達として認められ、公認の関係になった。  
 ……真奈美の処女をもらってしまったことだけは伏せたけど。  
 真奈美が東京に来ることはあれ以来なかったけど、代わりに僕は高松に何度も出向いた。  
 そしてそこで幾度となく肌を合わせた。  
 性的なことに関心のある年頃だったせいもあって、僕たちはいろんなことを試した。  
 興味のままにお互いの体や性器を手や口で愛撫しあった。オナニーの告白や実演もした。  
 さまざまな体位や本で読んだだけの知識も実践した。行為のあれこれに没頭した。  
 絶頂する姿も見せあった。そして精液と愛液にまみれて、僕たちは何度も登りつめたんだ。  
 そんな恥戯の結果、最初は痛みしか覚えなかった真奈美も性の快感を得るようになっている。  
 それでも真奈美は性的に未熟な部分があるのか、『濡れる』のに時間がかかるのは変わっていない。  
 だから充分な前戯が必要だったんだけど、それは僕にとって楽しみであり、喜びでもあった。  
 だけど今は真奈美が僕に奉仕してくれようとしている。  
 
「うっ!」  
 ジーンズ越しにたださわられただけなのに、得も言われぬ快感が股間から脳天に突き抜けた。  
 充分に昂ぶっていた剛直がビクビクと打ち震え、トランクスの中が生温かくなる。  
 ……射精してしまった。  
 でもそれは暴発といった感じで、勃起は少しも衰えない。  
 それどころか、出し足りないと言わんばかりにトランクスの中で存在を主張している。  
 それでも溜まった欲望が少しだけ解消され、僕は冷静さを取り戻していた。  
「ありがとう、真奈美」  
「……え?」  
 ジーンズの上から勃起をなでさすっていた真奈美が怪訝そうな顔を向ける。  
 まだ満足させてあげてないのに……。そう言いたげな眼差しだ。  
「いっしょに気持ちよくなろう? ね、真奈美」  
 深い色をたたえた瞳を覗きこむように問いかける。  
「……でも」  
 一瞬、ためらうような間が開く。真奈美も本当は嫌がってるわけじゃない。  
「真奈美といっしょにイキたい」  
 耳元でささやきかける。  
「こ、ここじゃだめです……」  
 羞恥で真っ赤になりながら、真奈美は僕の目を見ずに答えた。  
「真奈美……」  
 重ねて問いかけた僕に、  
こくん  
 観念したのか、真奈美がためらいがちにうなずいた。  
 
 ロングスカートの裾から手を入れてたくし上げ、ショーツをつかむ。  
「真奈美、お尻あげて」  
 ずり下げたショーツと一緒に体を移動させ、足先から抜く。  
「貸してください」  
 脱がせたショーツは、いつものように真奈美が隠した。僕には見せたくないらしい。  
「真奈美、足開いて……」  
 言いながら、真奈美の股間に顔を寄せるため体をずらす。真奈美を口で感じさせるんだ。  
 ……のはずだったけど、真奈美が僕を止める。  
 そして  
「あなたの顔をずっと見ていたいんです……」  
 小さな声がした。  
 女性器を口で愛撫するのが僕は好きだった。だけど真奈美が拒むなら無理強いはしたくない。  
「うん」  
 微笑みを返すと、左手で真奈美の首の後ろから手を回すようにして肩を抱いた。  
「逆らったりしてごめんなさ……」  
 僕の行動をやめさせたことを詫びようとする真奈美の言葉を、唇でふさいだ。  
 
 唇を離し、本格的に真奈美の股間に気持ちを集中する。  
 いつの間にか閉じられていたひざに手を入れて割り開く。  
 そうして太ももやその内側を手のひら全体で愛撫する。  
 指先を使って、触れるか触れないかの力でなで上げる。  
 ……すべすべして気持ちがいい。  
「あ、ん…」  
 わずかに開いた口から、真奈美のかわいいあえぎ声が聞こえる。  
「真奈美」  
 見つめあいながら手を奥に進めた。  
「!」  
 濡れたひだの感触と共に、真奈美がかすかに身じろぐ。  
 このままクリトリスや膣口を攻めるか、それとももう少しじらすか?  
 悩んだあと、僕は恥裂の中心をわざと避け、和毛に覆われた恥丘に手を持っていった。  
 
 やわらかく盛り上がるその部分は女性的な丸みを帯びていた。  
 どちらかといえば痩せ型の真奈美だけど、そこは対照的にふっくらとしている。  
 恥毛を指でまさぐる。こんもりとした丘を指先で軽く叩く。手のひらを押し当てて圧を加える。  
「んん…ん」  
 そのたびに真奈美から鼻にかかったような声が洩れる。濡れた響きが僕の性感をあおる。  
 そろそろいいかな?  
 少し性急かとも思ったけど、ためしに割れ目に沿って中指をすべらせてみた。  
 
 指先に熱いぬめりが感じられた。  
 そのぬめりを指にまとい、左右のひだを円を描くようになでまわす。  
 さらには熱くほとびった肉ひだをつまんで軽く引っ張ってみる。  
「ん…あ」  
 かわいらしい口元から切なげな声を洩らして真奈美が鳴いた。  
「大好きだよ」  
 瞳を覗きこむようにしてささやく。  
「わ、私もです……」  
 そう言うなり、真奈美が両腕を僕の首に回してすがり付いてきた。  
 頬と頬がふれあう。ぬくもりが伝わる。息遣いを感じる。真奈美の髪が甘く香る……。  
「真奈美」  
 真奈美に対する気持ちがふくらむのを感じ、僕は名前を呼んで行為を再開した。  
 
 湿ったやわらかいひだを指で開きながら溝の中を優しくかきまぜる。  
「くぅん……」  
 鼻を鳴らすようにして真奈美があえぐ。顔が見えないせいで想像がいや増す。  
 いま真奈美は、どんな淫らな顔をしてるんだろう……。  
 
 もっと真奈美を乱れさせたい。そう思った僕は攻撃先を変えることにした。  
 恥裂から湧き出す粘液を指先にまぶすと、ひだの合わせ目にある小さな突起に触れた。  
「ひゃんっ!」  
 いきなりだったせいか、真奈美が背すじを反らせて嬌声を上げた。  
 片手で真奈美の肩口を抱きしめて動きを押さえる。もう片方の手はクリトリスだ。  
 優しく、そしてゆっくりと指の腹を使って回すように揉みこむ。  
 そして真奈美の様子を確かめながら、少しずつ力を加えていく。  
「はぁん……」  
 艶を帯びたなまめかしい声を出して真奈美が身じろぐ。  
 痛がってはいない。だったらもう少し強気に出ても大丈夫だ。  
 僕は指を立てると指先や爪を使ってクリを転がした。弾いたり振動させたりといった動きも加える。  
 肌の中に埋め込むように強く押さえつけると真奈美の体がぶるぶると震えた。  
「あっあっあっ……」  
 気ぜわしい呼吸が耳元を熱くする。触れあった頬も汗ばんでいるように感じる。  
 間違いなく真奈美は性感を得ている。  
 その証拠に真奈美は腰を浮かせるようにして僕の手にクリトリスをこすりつけている。  
 貪欲に快感を得ようとしているんだ。  
 それに応えるため、僕はクリトリスをさらになぶった。  
 
 爪を立てて引っかくようにする。爪の硬い部分で叩く。指先でつまんでこすってみる。  
 浮いていた腰は上に突き出されるようになっている。……イクのが近い?  
 これまでの経験から僕はそれを確信した。  
 執拗な僕の攻めに真奈美の腰が細かく蠕動を始める。  
「いや……あんっ…ぅふっ……あっ」  
 身もだえしながら息が上がっていく。  
「真奈美、イクの? イキそうなの? いいよ、イッてもいいよ」  
 耳元で淫らにささやく。  
 それに応えるかのようにコリコリした感触がより強くなる。  
「んっ…んっ……んんー……あっんんーーー!」  
 あられもない声を上げて真奈美がすがりつく。  
「イク! 真奈美イッちゃう! ……あっ、ああっ!」  
 切羽詰まった声が真奈美から洩れた。  
 イカせる!  
 これで最後とばかりに、クリトリスを指の腹で揉むようにしながら強く押し込む。  
「ひゃんっ! んんーーーー!」  
 悲鳴にも似た声を上げて真奈美の全身がこわばった。  
 硬直しながら僕の肩に顔を押し当て、声にならない声で絶頂する。  
 ……そしてブルブルと身を震わせたあと、静かに真奈美の力が抜けた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
 荒い息がゆっくりと鎮まっていく。それとは逆に、僕の呼吸は荒くなっていく。  
 今の行為ですっかり興奮した僕の股間ははちきれんばかりになっている。  
 射精しないと収まりそうもない。出したくてたまらない。  
 達したばかりだから真奈美は充分に濡れている。苦痛もないだろう。  
「真奈美、入れたい」  
 そう声をかけ、トランクスごと脱ぎ捨てた。  
「……あ」  
 ぼんやりとした目が僕を見る。  
 スカートをまくり上げて真奈美の下半身をあらわにする。そして位置を合わせると  
「行くね」  
 言葉と同時に腰を突き出した。  
 
「んんっ!」  
 深く貫かれ、真奈美の体が上へずり上がった。  
 その肩を押さえると僕は何かに憑かれたように腰を叩きつけた。  
 そんな乱暴な行為なのに、真奈美の体はくすぶっていた性感の熾き火が燃え上がったようだ。  
「あぁ…はぁ、やぁ……んくぅっ…んっ!」  
 下から僕にしっかりとしがみつき、自分も腰を振って快楽を得ようとする。  
「あふぁあ……ひゃぁんっ!」  
 イッた直後で敏感になっていたせいか、真奈美の膣は収縮し、僕を締めあげる。  
 そして奥に引き込もうとする蠕動や、亀頭部でうごめく内部の凹凸が僕を追いつめていく。  
 ……腰の奥で生まれた射精感がどんどん大きくなっていく。  
 
 いくらセックスに慣れてきたとはいえ、まだ僕は女体の経験をそれほど積んでいない。  
 どちらかといえば早漏かもしれないし、もしかしたら真奈美が『名器』なのかもしれない。  
 射精感がぐんぐん押し寄せる。……イキそうだ。  
「やっあっぁぁん……あんっ!」  
 足を僕の腰にからませて真奈美がよがる。二人の腰が、そして性器が一体になったかのように錯覚する。  
「あぁっ! な、なにかヘンな気持ちになっちゃいますっ!」  
「真奈美、僕も…僕もイクよ……」  
 あまりにも早い絶頂の予感。正直もったいないとは思うけど我慢できそうもない。  
「な、中は…中はダメぇ!」  
 反射的に真奈美が叫んだ。そしてとっさに僕を押しのけようと腕を突っ張らせる。  
 その反動で背中がのけぞったことで角度が変わり、絶妙な刺激が勃起に伝わった。  
 ダメだ、イク……。  
「真奈美っ…真奈美っ! ……っっ!」  
 ぎりぎり直前で引き抜いた剛直から勢いよく精液がほとばしった。  
びゅくっ! びゅるっ! どびゅっ! びゅっ!………  
 白濁がびちゃびちゃと音を立てて降り注ぐ。  
どぴゅっ! びゅっ! ずびゅっ!………  
 真奈美の真っ白な下腹部や太ももに叩きつけるように射精が続く。  
「ぐっ、んんっ! むんっ!」  
 頭の中が混濁するような強烈な快感に、僕の口から快楽のうめきが洩れる。  
「あ、熱いです……」  
 ぶちまけられた精液の熱を感じたのか、真奈美も浮かされたようにつぶやく。  
 恍惚とした真奈美の声を聞きながらたっぷりと精を吐き出し、僕はようやく射精を終えた。  
 
「はぁはぁ…真奈美」  
 整わない息で真奈美の名前を呼ぶ。  
「……ぁ」  
 焦点の合わない視線が僕を見上げる。イッた直後で体に力が入らないんだろう。  
 それでなくても短時間で2回もイッたんだ。動けないのも無理はない。  
 僕は真奈美に羽織らせたジャケットからティッシュを取り出すと下半身に目を向けた。  
 膣口がまだヒクヒクと細かく震えている。そのまわりにも精液がまき散らされている。  
 それだけではなく、粘液はおへそから続くなだらかな曲線を穢し、薄めの陰毛にからまり、内ももを伝っていた。  
 淫猥な眺めだった。  
「じっとしてていいからね」  
 声をかけ、真奈美を彩った欲望の残滓をティッシュで拭っていく。  
「んん…は、恥ずかしいです……」  
 羞恥の感情と共にくすぐったいのだろう、真奈美が身じろいだ。だけど弛緩した体はすぐには言うことを聞かない。  
 朱を散らしたように頬を染め、僕が後始末を終えるまで真奈美は横を向いていた。  
 
「小鳥さんに見られちゃいました……」  
 服を整えた真奈美が恥ずかしそうに言った。  
「真奈美、僕の顔を見ていたいって言ったけど、見てなかったよね?」  
 僕は違う話題で返す。  
「……え?」  
「ほら、僕の指でイッちゃったとき」  
 見る見る真奈美の瞳に涙がたまっていく。  
「くすん……そんな…そんな意地悪を言わないでください」  
 涙声が僕に抗議する。  
「ご、ごめん…真奈美を泣かせるつもりなんて僕は全然……」  
 今夜から真奈美は東京住まいだ。詳しくない東京で戸惑うことも困ることもあるかもしれない。  
 そんな時、真奈美が頼りに出来るのは叔母さんと僕しかいない。それなのに、真奈美を泣かせるなんて僕は……。  
「くすん…いいです。許してあげます」  
 鼻をすすりながら真奈美が笑顔を向けてくれた。  
「本当にごめんね」  
「くすっ、怒ってませんよ」  
 もう一度謝った僕の腕に両腕をからめた真奈美が、いたずらっぽい笑顔で見上げた。  
 この笑顔が僕は大好きだ。この笑顔をいつまでも守りたいと僕は思った。  
 
 
             おわり  
 

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