自室に入る。制服を着替えることもせず学生鞄から一冊の雑誌を取り出す。それは学校で友人から借りて来たものだ。
表紙には同じ年頃の女の子が写っている。彼女を囲み、芸能人の名前やメイクやファッションという文字が配されている。
東京や横浜から広がりつつあるらしい流行についての最新報告ともある。
高校生や中学生を対象にした、若い女の子向けのよくある雑誌の一つだった。
私は自分で洋服を買ったことはない。普段はお母様やおばあ様が見立ててくださった服を着ているし、それに不満はない。
けれども、私だって自分で着てみたい服はあるし、お化粧や装いに関心もある。
そう言って借りてきたのだけれど、本当の理由は別にあった。
ぺら、ぺらっ
ページをめくり、目指す記事を見つける。……あった。
『投稿企画・彼との初体験』。
この夏に意中の人と一線を越えてしまった女の子たちの告白手記のコーナーだった。赤裸々な内容が、過激とも言える筆致でつづられている。
それを学校で目にしたとき、私は居ても立ってもいられなくなった。……どうしても読みたい。
でもこの手の本を買うのはためらいがある。下校の途中で中島さんに本屋さんに寄ってもらうのも気が引ける。
雑誌を借りることは思いのほか簡単だった。
『若菜もたまにはこういうの見て勉強しなよ。高校生のうちしか着られない服ってあるよ!』
そう言って、友人は気安く貸してくれた。私の本当の目的も知らずに。
誌面に目を落とす。
『カレの指が乱暴に私のアソコに』
その情景が頭に浮かぶ。文中の女の子を自分に置き換えて読みすすめる。
いつしか私の右手はスカートにもぐりこんでいた。そして下着の上からゆっくりとなぞる。
「んっ……」
洩れ出る声をおさえながら左手でページをめくる。
『クリちゃんをカレがいじってきたら、頭の中に火花が散ったみたいに』
指をショーツのすき間からねじ込むように侵入させ、敏感な突起に触れた。
ビクッ!
それでも指は止まらない。ここまで来たらもう戻れない。
性感が高まっていくのが意識される。でも指が動かせない。もどかしい……。
私はとうとう下着を取ってしまった。
狭い空間から開放されて、指の動きに自由度が増した。
溝に沿って激しく指を動かすと、
くちゅ、ぬちゃ…
淫らな水音が立つ。
「あっ、あっ!」
何度かした行為だけあって、どこをさわれば快感が得られるのかを私は知っている。
その部分を的確にこすりたてるうち、頂が見えてくる。
東京に住む愛しい人の名前を呼びながら絶頂に向かっていく。そうしながらも目は文字を追っていく。
『行くよって言って、カレの熱くてたくましいアレが私の中に入ってきたの』
あの人に貫かれる自分を想像した。
「んんーっ!」
嬌声を洩らすまいと食いしばった歯から押し殺した声が上がる。
「あっ、好き…好きです……」
私は目を閉じ、彼の顔を思い浮かべながら一心に恥ずかしい突起をこすりたてた。
「もっと、もっとしてください……」
はしたないことを口走りながら快楽をむさぼる。体中が熱い。意識が薄れていく。もう何も考えられない……。
「あ、ダメ……イキます……」
次の瞬間、私は
ビクンッ
と体を跳ねさせると絶頂した。
「また、してしまいました……」
ティッシュを使いながら後悔の念が胸にわき上がる。
「こんな女の子だって知られたら……嫌われてしまいます」
悔恨の情がよぎるものの、この悦楽のとりことなった体はまた疼きはじめていた……。
おわり